著者
松元 賢 土屋 健一 セイン・サン・エ ハ・ヴィエト・クオン
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、まず、熱帯アジア土壌病害調査として、ベトナム北部紅河流域やミャンマー中山間地区の病害調査を行い、熱帯地区をモデルとした土壌病害発生シミュレーションの基礎データを収集した。また、高温障害の植物根圏に及ぼす影響解析では、九州大学ファイトトロン(人工気象装置)において擬似的な熱帯環境を構築し、熱帯の水田環境におけるイネ紋枯病の発生様相についてのモニタリングに成功した。さらに、香草植物や薬用植物の抗菌・殺菌成分を素抽出し、土壌燻蒸による土壌病害の生物的防除への利用可能性について検討した結果、極めて殺菌・抗菌作用の高い植物成分として、オイゲノールや精油成分の抽出に成功した。
著者
SEAN・M Chidlow
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、医療に関する文学作品や映画を日本語と英語の二ヶ国語で紹介するウェブサイト上のデータベース、医療人文学データベース日本版(Medical Humanities Database Japan;以下MHDJ)を構築することであった。本研究によって、英語で書かれた文学作品25本、日本語で書かれた文学作品20本、映画作品21本を収録した英語と日本語の二ヶ国語のウェブサイト上のデータベースを構築した。本研究で製作したMHDJはhttp://www.medicalhumanitiesjapan.com. で公開している。
著者
高田 洋子 高田 滋 高田 滋
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

わが国では介護保険制度導入後,在宅ケアを中軸とした地域福祉システムの再構築が始まっている。地域福祉の主体である自治体,市民,福祉・介護及び保健・医療専門職の連携が求められている。この点で先行する幾つかの自治体および福祉団体の事例を調査検討して,その優れた有用性と課題を把握し,今後の研究の課題を明らかにした。
著者
SCHWARTZ LAURE
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

西洋における日本美術への眼差しや研究の歴史を辿る中で、本研究では、優れた学芸員であり著名な知識人であったジョルジュ・サール(1889~1966)の思想と功績を明らかにすることができた。サールは、ルーヴル美術館初のアジア美術部門の創設に携わり、次いで同部門の国立東洋美術館(ギメ美術館)への移管を指揮し、そこで1941年より学芸員を務めた。本研究では、20世紀前半のフランスに影響を及ぼした極東美術、とりわけ日本美術の概念やその普及に関わる重要な歴史と発展について考察することができた。
著者
堀 美代 村上 和雄 坂本 成子 大西 英理子 大西 淳之 一谷 幸男 山田 一夫
出版者
公益財団法人国際科学振興財団
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

幼若期の社会的隔離によって引き起こされるストレス脆弱性に対する快情動の効果を検証した。仔ラットどうしの遊び(rough and tumble play)をモデルにしたtickling刺激は、50kHz音声の表出と側坐核のドパミン分泌を促し、恐怖条件づけの恐怖反応や自律神経系のストレス応答を軽減させた。これらのことは、幼若期において他個体との相互作用を伴う遊び行動が、快情動形成およびストレス応答性の獲得に影響を及ぼす可能性を示唆する。
著者
原田 融 平林 義治 梅谷 篤史 小池 貴久
出版者
大阪電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

2重荷電交換反応である(K〓,K〓)や(π〓,K〓)などを用いたハイパー核の生成・崩壊のスペクトルを歪曲波インパルス近似の範囲で計算し、反応機構を理論的に調べた。その結果、ハイペロン混合に起因する戸口の状態を経由する1段階過程が重要であり、今後のJ-PARC実験によるデータとの比較によって〓N-ΛΛおよびΣΝ-ΛΝ結合など相互作用の性質についての貴重な情報が得られることが分かった。さらに中性子星の内部構造を解き明かす手掛かりにもなる。
著者
萩尾 生
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

スペインのバスク自治州政府が1994年以来実施している在外バスク系同胞支援策は、在外同胞の帰還支援よりも、スペイン中央政府を介さない自治州政府と在外同胞との関係性の構築に主眼があった。また、帰還すべき「バスク本土」の領域性と「在外バスク系同胞」に対する民族性に関して、自治州政府と在外バスク系同胞との間には認識のずれがある。予算と受益者が限定的な在外同胞支援策の意義と効果は、つねに議論の姐上にある。
著者
小池 説夫 林 高見 山口 知哉 吉田 均
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

通常の花が咲くイネに比べて、花が咲かない突然変異の閉花性イネは、暑さ(38℃)あるいは寒さ(12℃)の温度処理いて稔実歩合が高く、障害を受けにくかった。閉花性イネは、めしべの上に受粉する花粉の数が非常に多く、また発芽している花粉数が通常のイネに比べて多かった。閉花イネでは花の中の温度が外気温より2℃低いことが分かった。このことが暑さの害を低くしていると推測された。
著者
松村 潔 小林 茂夫
出版者
大阪工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究ではマウスの脳出血-発熱モデルを作成し、血小板由来サイトカインCD40Lが発熱に関与している可能性を検討した。マウス視索前野へのコラゲナーゼ投与は脳出血を引き起こし、発熱とシクロオキシゲナーゼ2(COX-2)の発現を引き起こした。CD40Lの脳内投与は発熱と脳血管内皮細胞でのCOX-2発現を引き起こした。これらの結果はCD40Lが脳出血時に内因性発熱物質として働く可能性を支持する。
著者
佐藤 勝明 玉城 司 伊藤 善隆 神作 研一 藤沢 毅
出版者
和洋女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

『続猿蓑』の連句について付合分析を行い、「かるみ」が高度な思考活動と句作段階での捨象・推敲を伴って実現することを、明らかにした。それが同時期の俳壇全体の中でどう位置付けられるかを明らかにするため、元禄期の全俳書を調査し、その基礎的なデータを刊行した。その中から、地方俳書の一つである『備後砂』に着目し、その分析を通して、「かるみ」とは異なる地方俳諧の実態を明らかにした。
著者
高野 文英 太田 富久 石垣 靖人 矢萩 信夫
出版者
日本薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

研究代表者は研究機期間内に、冬虫夏草属菌が産生する消化管免疫調節物質の構成成分を明らかにする研究を行った。その結果、ハナサナギタケ培養物に強い免疫調節活性があり、精製の結果、糖タンパクであることが判明し、詳細な解析の結果、ペプチドは8種類のアミノ酸、糖はβ(1→3)グルカンから構成されることが分かった。さらに詳細な構造解析の結果、免疫賦活化高分子は多糖とペプチドの混合物であった。また、冬虫夏草属菌を用いた機能性食品等に配合されるプロアントシアニジンやニンニクについても経口免疫アジュバント活性を調べたところ、強い活性を示すことを明らかにすることができた。
著者
山室 信一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

明治国家は、欧米からの思想連鎖によって国民国家形成を進めた。しかし、そこでは国民国家としては幼体成熟ともいえる形で植民地領有国家すなわち帝国へと転化していった。しかしながら、これまでの日本のみならず欧米における政治学研究においても、この二重性をもった国家に関しての理論研究は、皆無であるような状況にある。こうした理論状況に鑑みて、本研究は植民地を有するに至った近代日本の統治システムが総体としていかなるものであったのかを史料的・理論的に整理し体系化することによって「国民帝国」という概念を新たに提起すべく、歴史的ならびに理論的に究明してきた。同時に、それによって明治国家の世界史的位相について新たな意味付けを行うとの目的をもって出発し、ウェストファリア体制以降の国際体系のなかにあった日本の近代国家としての二重性をもった国制的性格と法政理論の特徴について明らかにするという課題の下に史料的蒐集と論理的精緻化を図ってきた。ここで国民帝国とは「主権国家体系の下で国民国家の形態を採る本国と異民族・遠隔支配地域から成る複数の政治空間を統合していく統治形態である」と定義した。そのうえで、国民帝国とは(1)世界帝国と国民国家の拡張でありつつ、各々がその否定として現れる矛盾と双面性を持ち、(2)その形成・推進基盤が私的経営体からナショナルなものに転化し、(3)世界体系としては、多数の帝国が同時性をもって争いつつ手を結ぶという競存体制とならざるをえず、(4)その本国と支配地域とが格差原理と統合原理に基づく異法域結合として存在するものである、という4つのテーゼに収斂するものであることを提起した。今後は、王朝家産帝国の崩壊から国民国家が形成されたと見なされてきた中国が、むしろ家産帝国性を残したまま国民国家となったという意味で、日本とは逆方向での国民帝国となったのではないかという仮説を論証していきたい。
著者
池川 清子 吾妻 知美 西村 ユミ 守田 美奈子 蓬莱 節子 仁平 雅子
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

看護の高等教育化が急速に進展しつつある現在、看護学の学的基盤の確立が急務である。本研究では、研究代表者である池川が長年と取り組んできた「看護学の実践学的パラダイム」を基礎理論として、看護学固有の対象と方法を明確にすることをとおして、実践学としての看護学をより詳細に特徴づけ、基礎づけるものを明確にした。本研究の成果は、おおよそ以下の5点に要約される。1.看護学を実践学的パラダイムの視座から体系化するという試みは時代の要請であり、実践を目的とする看護理論の構築という観点からも、今、世界が向かおうとしている動向である。2.看護学を実践学として基礎づけるためには、科学的パラダイムとは異なる方法論の吟味が必要である。本研究では、看護の現象を看護者と看護を必要とする相手とのかかわりの中から立ち現れる出来事として捉え、従来の看護学を現象学的視点から問い直した。3.実践学としての看護学の前提を明らかにするためには、看護実践の構造の解明が不可欠である。本研究では、看護実践と言語、看護実践と行為・技術、看護実践と経験の諸点から看護実践の構造を明らかにした。4.実践学としての看護学の研究方法として、看護の現象をありのまま生き生きと捉える方法として、現象学的解釈学の有用性を明らかにした。5.これまで抽出が困難であった看護実践者の経験を現象学的記述による、方法としての「対話」を確立した。
著者
井上 孝夫
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本の海岸は、だれもが利用可能な開かれた空間(コモンズ)である。そのような性格を持つ海岸について、利用しながら保全する方法を探究した。具体的なフィールドとして、千葉県内の主要な海水浴場を事例とした。調査の結果、営利に偏った利用の制限は定着したが、利用者の利便施設の設置については不十分であり、停滞していることがはっきりとした。公益性を備えた海の家の設置や、利用を第一に考えた防護施設の整備が強く求められている。
著者
寺田 竜太 ニシハラ グレゴリー・ナオキ 嶌田 智
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

九州南部は温帯と亜熱帯性海産植物の分布推移帯(エコトーン)に位置し,温帯域に見られる種類の多くは当地が分布南限となっている。本研究では,温帯域で藻場を構成する16種の分布南限群落の個体群動態を明らかにすると共に,培養試験や光合成活性の結果を基に,温度や光の耐性やストレスの影響を解明した。光合成活性の測定は,藻場構成種16種と共に食用紅藻9種も用い,様々な水温,光条件における純光合成速度や光量子収率(Fv/Fm),電子伝達速度活性(rETR)を測定した。その結果,分布南限の個体群では寿命の短命化や繁茂期間の短縮などが顕著に見られ,高水温の環境が各種の繁茂に影響を与えていると推察された。多くの種において,純光合成速度やFv/Fm,rETRは28℃以上で低下し,最高30℃に達する生育地の夏季水温がこれ以上増加すると,群落の生残に著しい影響が出る可能性が示唆された。
著者
武尾 実 市原 美恵
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,比較的単純な噴火形態を繰り返す火道システムの確立した火山を対象に振動現象の観測データから,火道浅部の内部状態を推定する方法を確立し,一連の噴火活動中での噴火様式変化の推定に結びつけることを目的とした.本研究期間中に,2011年霧島新燃岳の噴火が発生し,準プリニー式噴火,マグマ湧出,ブルカの式噴火という異なる噴火に対する火口近傍で地震,地殻変動,空振という多項目の観測データを得ることに成功した.これらのデータを解析することで,ブルカノ式噴火に先行する傾斜変動の時間的変化と傾斜変動継続時間の関係から,火道内部でブルカノ式噴火の直前に進行するプロセスを解明した.また,微動と空振が同じ励起源から発生するメカニズムを,粘性の異なるアナログ物質を用いた実験により再現した.さらに,微弱な火口活動のシグナルを検出する手段を確立し,火山活動のモニターリングのレベル向上を図った.
著者
緒方 茂樹
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究ではまず、沖縄県教育委員会と連携してえいぶるノートの試作を行った。さらに、宮古圏域における「縦断型ネットワークシステム」への拡充を目指して、定期的な教育相談会と巡回による学校支援・保育所支援を進めた。一方で宮古島における地元の専門家育成を行った。2010年には宮古島市の予算で発達障害児(者)支援室「ゆい」が設置され、先の心理士が専門相談員として採用されたことで、外部からの支援に頼ることなく現地リソースによる支援体制が構築できた。いわゆる「入口」の充実を目的として、児童家庭課と連携した保育所支援を行ったことで支援対象児の早期発見・早期対応が可能となった。
著者
輿水 肇 菊池 佐智子
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

国営武蔵丘陵森林公園の都市緑化植物園「街路樹見本園」の87種の標本木の樹高、幹周、枝張の30年間にわたる計測を完了させ、これらの樹木データをもとに、無剪定を想定した成長曲線を作成した。樹高、幹周、枝張りの成長曲線から、樹種の違いによる成長量の特性を総合的に解析した。街路樹に多く用いられる緑化樹木の成長量を都市の暑熱環境を改善する効果とどのような関連性があるかを分析した。
著者
熊谷 日登美
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

レンチオニンによる血小板内情報伝達阻害の検討シイタケ中の環状硫黄化合物の中で最も含有量が多く、シイタケ独特のフレーバー成分であるレンチオニンを用いて、血小板凝集抑制作用の有無を検討した。レンチオニンはアラキドン酸凝集、およびU-46619凝集に対して濃度依存的に血小板凝集を抑制した。また、シイタケ精油中のレンチオニン濃度を算出したものと、レンチオニンの血小板凝集抑制作用を比較したところ、その効果はほぼ同じであった。このことから、シイタケ精油の持つ血小板凝集抑制効果は、ほぼレンチオニンによるものであることが明らかとなった。次に、レンチオニンの血小板凝集抑制作用機序の解明を行うため、種々の血小板凝集惹起物質(A23187,PMA,PAF,ADP)を用いて検討を行った。レンチオニンは全ての血小板凝集惹起物質に対して、濃度依存的に血小板凝集を抑制した。このことよりレンチオニンの作用は、血小板内の情報伝達物質による血小板凝集カスケードには関与せず、血小板の接着や形態変化、活性化に関係する血小板膜や各種受容体、もしくはそれらに伴うタンパク質のリン酸化反応を阻害していることが示唆された。レンチオニンのex vivoにおける血小板凝集抑制作用の検討レンチオニンを経口摂取した場合でも血小板羅集抑制作用を示すか否かを明らかとするため、ラットにレンチオニンを経口胃内投与し、一定時間後に採血した血液の血小板凝集抑制作用を測定した。その結果、レンチオニンは経口胃内投与後、8〜20時間後において、コントロールに対し有意に血小板凝集を抑制した。さらに、レンチオニンを食事として摂取する場合、どの程度摂取すれば血小板凝集抑制作用を示すのかを明らかとするため、レンチオニンの投与量を変化させ、レンチオニンが血小板凝集抑制作用を示す最低投与量を検討した。その結果、レンチオニンは1mg/kg以上の投与量でコントロールに対し有意に血小板凝集を抑制した。
著者
山下 直子 レイ トーマス
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

里山林構成種を対象として、光環境の変動に対する個々の樹種の生理的可塑性を明らかにし、 種の共存に関わる林冠ギャップの役割を検証することを目的とて、異なる光環境で生育させた 里山構成種の葉の形態的・構造的可塑性と成長との関係について解析した。その結果、陽葉と 陰葉の比率(可塑性)が高いほど、成長量が高く、落葉広葉樹は常緑樹よりも、相対的に葉の 形態的・構造的可塑性が高い傾向であった。異なる光条件に応じて、どれくらい構造的に性質 の違う葉を作れるかどうかが、各樹種の適応能力を規制する要因となっていることが示唆され た。