著者
田中 美保子 鳥巣 哲朗 田中 利佳 生駒 明子
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

全顎的なインプラント補綴患者で咬合接触面積、最大咬合力、咀嚼能率、硬さ認知能を測定した。縦断研究でインプラント手術前、上部構造装着日、装着1-2週間後、装着3か月後の4回分析した結果、咬合接触の増加と並行して咬合力は短期的に回復したが、咀嚼効率は咬合力と連動していないことが示唆された。横断研究では、歯牙対歯牙、歯牙対インプラント、インプラント対インプラント、義歯対インプラントの4群で比較し、咀嚼機能には歯根膜の関与が、硬さ感覚にはOsseoperceptionの関与が示唆された。本研究の成果は、インプラント治療後の咀嚼適応に対する指標の明示や咀嚼力発現メカニズムの解明に貢献するものと考える。
著者
石田 久之
出版者
筑波技術短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

■点訳或いは音訳(対面朗読などを含む)ボランティア活動を行なっている団体に、会員数、活動形態、養成、活動の問題点などを対面或いは電話によりインタビューした。■【ボランティア団体への入会に際して】ボランティアというものは、その能力に左右されず、ただ個人の自発的な意志によってのみ、活動が保障されるものであると思われるが、残念ながら誰でもが自由にボランティア活動に参加できるものではない。それは、活動の質というものが問われるからである。点訳・音訳活動については、点字図書館や社会福祉協議会などでボランティア養成講座が開講されている。これら養成講座の受講をボランティア団体への入会の条件としている場合がある。点訳の場合、点の打ち方や、分かち書きを知る必要がある。音訳の場合、発声の仕方、読み方など普通の会話とは違った、聞き易い読み方があり、それらをある程度自分のものにしておかなければならないのである。養成講座の受講が必要な団体、必要でない団体の数は、音訳、点訳を問わず、ほぼ半々となっている。それぞれの主張するところは、必要とする場合、先に挙げた理由の他に、現在では、点訳物・録音物の貸し借りは全国規模に広がっており、全国水準の力量が必要であり、それに合わせるためには、入門講座の受講は最低限必要というものである。他方、必要としないという団体の主張は、善意を基礎としての活動であり、入りたいと考える人には、是非来て頂きたいとの理由である。しかし技量がどうでも良いというわけではなく、入ってからの勉強の重要性は十分認識されている。■【養成講座主催者側から見た課題】点訳・音訳養成講座は、ボランティア団体への入会窓口という側面を持っている。そのような立場から養成講座受講者をみると、(1)定着率の低さ、(2)若い人の少なさ、(3)有償で働きたいという人が少なくないというような課題がある。
著者
岡田 洋子 井上 ひとみ 茎津 智子 菅野 予史季 三田村 保 佐藤 雅子
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究の目的は、死をタブー視し子どもとの会話を避ける傾向が強い日本社会において、命の大切さや生きること、死についてどのように教え学ぶか、その方略の開発と実践・評価である。対象は協力の得られた小学校の低学年78名、高学年80名、中学生112名の合計270名である。方法は各学年用に作成したDeath-Educationプログラムの実施前および実施後に、「命」「生きること」について原稿用紙1枚程度に記載、提出を願った。分析は提出レポートから(1)コード化を行い、データがどのカテゴリーに属するか(2)サブカテゴリー化(仮説設定過程)を推定し、(3)カテゴリー化を試みた帰納的・記述的方法である。Death-Educationプログラムの作成は、小児看護の立場で行なう目的・指針と認知的発達段階を考慮し作成した。低学年は作成した「命」について考える視聴覚アニメを、高学年は生徒に身近で具体性に富む少年の闘病生活ドキュメンタリーを、中学生は先天性疾患で入退院の経験・障害を有する高校1年生自身による体験談と、骨腫瘍の少年の闘病生活ドキュメンタリーを併用した。倫理的配慮は、中学生には成績に一切関係がない、参加するか否か(途中で出ても)自由である、本人および家族から承諾書にサインを頂き実施した。結果は各学年とも実施前より後の方が1)記載内容が増加、2)一般的知識から感情を伴った表現内容に変化、高学年以上ではさらに3)死と対峙する仲間の闘病生活から(1)そういう仲間の存在をしらないで生きていた自分の発見、(2)健康は当たり前なことではなく、とても大切なことの実感、(3)健康・命の大切さと親への感謝の気持ち、と多くの学び(衝撃)を得ていた。さらに4)死の否定的側面ではなく、生きることに目が向けられていることが確認できた(From Death to Life)。
著者
塚本 明
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

近世伊勢神宮の門前町、宇治・山田の社会構造を、神社特有の触穢意識の規定性と、穢れを忌避するシステムに注目して分析を加えた。近世の宇治・山田では、中世以来の神社の触穢規定に反して、実生活においては触穢の影響を回避する工夫がなされている。また穢れの判定には、幕府の遠国奉行・山田奉行に比べて神宮はむしろ軽く済ませる志向を示した。宇治・山田という都市が諸国からの参宮客によって経済的に成り立っており、参宮を規制する触穢規定の適用が好まれなかったことが背景にある。だが同時に清浄さを重んじる伊勢神宮は世間の見方に影響を受け、触穢を蔑ろにすることも許されなかった。宇治・山田の社会が死穢の影響を避けるためには、これらを処理する専業者、拝田・牛谷と呼ばれた被差別民を不可欠な存在とした。なお、外来の被差別民を含め、彼らへの忌避意識は江戸時代前期において強くはない、だが中期以降に、山田奉行、朝廷世界からの働き掛けにより、次第に触穢意識も変容を迫られる。特に幕末期には、被差別民、仏教、異国人が一体となって排除されるようになり、直接・間接的に近代以降の触穢意識を規定していくこととなる。なお、報告書においては伊勢神宮長官機構で作成された公務日誌中の触穢関係記事の一覧、宇治・山田の基礎的な資料である『宇治山田市史資料』の年次一覧、神宮領の基礎的な文献である『大神宮史要』の江戸時代中の記事について編年にした一覧表を付した。
著者
岸本 文紅 米村 正一郎 内田 雅己
出版者
独立行政法人農業環境技術研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

土壌有機物分解の温暖化に対するフィードバックとその制御メカニズムの解明は、農耕地土壌の炭素隔離の気候変動に対する将来予測を行う上で緊急な課題である。本研究は、土壌を温める野外操作実験による土壌有機物の分解に及ぼす温度上昇の効果を定量的評価し、その制御メカニズムの解明を目的とした。その結果、圃場スケールでの実験的加温(深さ5cmで+2℃)により、土壌有機物分解によるCO_2発生は冬春のコムギ作で2~13%促進され、夏秋のダイズ作では10~18%低下した(新しい知見)。夏の高温乾燥条件下では土壌水分ストレスによるCO_2発生の低下が加温区でより大きかったためと考えられ、土壌有機物分解に及ぼす温暖化の影響予測には土壌水分との複合作用を考慮することが重要であることが示された。
著者
若穂井 透 塚本 恵美 高橋 幸成
出版者
日本社会事業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

2007年の改正少年法によって、重大触法事件の家庭裁判所への原則送致が導入され、児童相談所先議の原則が変容し、児童福祉優先の理念が後退するのではないかと危惧されたが、児童相談所の家庭裁判所への送致事例及び非送致事例(同年11月1日~翌年10月31日)を調査し分析した結果、大勢としては変容し後退していない現状が示唆されるとともに、児童福祉優先の理念を再構築するための課題もあることが明らかになった。
著者
塚田 泰彦
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、「創発的綴り(invented spelling)」の生産的な事例を体系的に記述研究することと、その記述のための基礎研究として、日本語表記体系の習得過程の実態を発達段階を想定して捉えることである。この2つの研究については、先行研究がなく、本研究はこの方面のパイロット的な研究となる。はじめに、準備研究として試行的に収集したデータに基づき7段階の日本語綴りの能力の発達段階(仮説)を設定し、日本語綴りの習得の実態を把握する体系的な調査問題を作成した。この調査問題について、幼稚園・小学校1年生を対象に、調査協力校でデータ収集を行い、その分析結果に基づいて、発達段階の確認と創発的綴りの生産的な側面について、言語学的・教育学的視点で考察を行った。調査協力校の実績は、幼稚園1校(1カ年1回)、小学校3校(2カ年2回、6月前後と12月前後)である。結果として、次の点が確認された。1) 仮説的に設定した7段階の発達段階は基本的に支持された。2) 複数の協力校での比較によって、学校ごとに発達段階上の実態の差異も確認された。3) 創発的綴りについては生産的側面と非生産的側面について相対的な評価が難しい例が確認されたが、これらの解釈を「教育的意義」の視点で検討することが、重要であることが明らかになった。4) 幼稚園での実態、特に習得段階の個別差の大きい点が明らかになった。創発的綴りの体系的記述については記述方法など、課題も残された。
著者
奥村 史朗 齋藤 浩之 斎藤 浩之
出版者
福岡県工業技術センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

パラスポリン4はCACO-2細胞をはじめとする哺乳動物ガン細胞由来の培養細胞に対して高い細胞傷害活性を示す一方で、正常細胞に対しては細胞傷害活性を示さないことから、その作用機構を解明することでガン治療薬・ガン診断薬としての利用化が期待できる。本研究においては、パラスポリン4をヒト培養ガン細胞に投与した際のパラスポリン4や細胞内外の物質の挙動をいろいろと検討し、パラスポリン4が細胞膜に対する穴空けトキシンであることを解明した。
著者
渡辺 克昭
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

未来を常に既に先取りし、進歩を追求し続けてきたアメリカ的想像力が、その例外主義的なヴィジョンを根底から揺るがす惨劇といかに向き合ってきたか。このような視座から、アメリカ文化を特徴づける進歩のデザインと技術を唐突に打ち砕く死の表象を相関的に分析しようとする試みは従前なされていなかった。本研究は、20世紀アメリカの日常に浸透する進歩の言説と、度重なる惨事や破局によって前景化される死への眼差しがいかに交錯してきたか、そのダイナミズムを多様な表象分析を通して描出した。その結果、互いにフィードバックし合う両者の間には、互いにエネルギーを供給し、新たな関係を生成する界面が存在することが明らかになった。
著者
大賀 正一 野村 明彦
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

伝染性単核症(IM)の原因であるEpstein-Barrウイルス(EBV)は、免疫不全時に再活性化しB細胞リンパ腫/リンパ増殖性疾患(LPD)を、またT/NK細胞に感染して慢性活動性EBV感染症(CAEBV)や血球貪食症候群(HLH)などのリンパ網内系疾患を発症する。EBVがT細胞に感染したCAEBVやHLHは予後不良なEBV^+T-cell LPDである。私たちはCAEBV患児のT細胞活性化とoligoclonal増殖を明らかにし、活性化T細胞にEBVコピー数が多いこと、この細胞群のサイトカイン発現に異常のあることを明らかにした。このことはCAEBVにおける活性化T細胞の増殖が反応性というより、腫瘍化段階(clonal evolution)である可能性を示唆する。また、移植後LPDの発症予測に末梢血のEBV-DNA定量が有用であることも明らかにした。1)CAEBV-T細胞におけるEBV量とサイトカイン発現患児の末梢血よりcDNAを作成して、T細胞抗原受容体Vβ,Jβ領域遺伝子を用いたinverse PCR法により、T細胞レパートアを解析しoligoclonal増殖を明らかにした。このT細胞をCell Sorter(EPICS-XL)によりHLA-DR陽性(活性化)と陰性(非活性化)群に分画しDNAとRNA(cDNA)を作成した。DNAを用いてEBV-DNAの、cDNAを用いてサイトカインmRNAの発現量をreal-time PCR(TaqMan)により定量した。活性化T細胞はEBV量が多く、Th1(IFNγ,IL-2)/Th2(IL-10,TGF-β)いずれのサイトカインも高発現していた。2)EBV^+T/B-LPDにおけるEBV-DNAモニタリングの有用性EBV-DNA定量(全血)が移植後B-LPDおよびCAEBV(T-LPD)の発症と病勢の指標になることを証明した。
著者
藤井 亮輔
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

全国の成人男女2,000人に訪問調査を行った(有効回答率68.1%)。その結果、調査日直近の1ヵ月以内に鍼灸を受けている者(月間鍼灸受療者)の割合は2.2%(受療回数:4.6±3.7回/月)で、このうちの鍼灸単独受療者の割合は0.8%だった。また、年内に鍼灸受療を経験した者(脱落者)は7.3%(同4.2±5.6回/年)で、うち鍼灸単独受療者の割合は3.6%と推計された。一方、調査日直近の1ヵ月以内に按摩を受けている者(月間按摩受療者)の割合は5.3%(同6.2±7.3回/月)、うち按摩単独受療者の割合は3.9%だった。また、年内に按摩受療を経験した者(脱落者)は15.5%(同5.8±8.9回/年)、うち按摩単独受療者の割合は11.0%と推計された。
著者
海老原 修
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

平成11年12月〜平成13年1月に実施したアンケート調査「運動部顧問の指導信条に関する調査」の追跡調査を実施した。平成14年12月〜平成15年1月にかけて、高等学校運動部顧問552名、中学校顧問314名の合計866名を対象に郵送調査を実施した。前回と今回2回の調査にともに回答された対象者は294名であり、第1回調査に回答されないが第2回調査にのみ回答された対象者は167名で461名の回答を得た。また、アンケート調査実施に際しては、神奈川県教育庁、神奈川県高等学校体育連盟、中等学校体育連盟より、調査票作成や郵送法の配布・回収方法、および県内学校運動部の問題点について意見を交換した。さらに、同じような学校運動部と地域スポーツの関係に課題をかかえる地域の専門家とのヒアリングや意見交換を重ねた。すでに、アソシエーションとコミュニティを対比して運動部とスポーツ活動の関係性の限界を予測し(2000)、総合型地域スポーツクラブ、民間フィットネスクラブ、企業スポーツクラブ、学校運動部の4機関から、2機関または3機関が合同でクラブを形成することが現実的対応と提言したが、学校運動部の変化は、この提言に沿った形で変化している。このように抜本的な運動部活動の在り方を模索する事態を迎えたとき、先に指摘した4機関の合併にともなう外部指導者導入が運動部存続の活路のように思えるが、ヒアリング調査やアンケート調査からは、顧問教師の指導信条に著しい変化は認められず、指導者の指導信条が多様化する子どもたちのニーズに追いつけない事態を危倶する。今後は外部指導者の指導信条を知り、学校運動顧問のそれと比較することが必須の作業となる。
著者
谷澤 俊弘 増田 直紀
出版者
高知工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

次数による選択的ノード除去に対する強相関複雑ネットワーク上のパーコレーション転移を記述する解析的表式を導出し,その表式を用いてスケール・フリー・ネットワークの選択的ノード除去に対する脆弱性を著しく改善するネットワーク構造を見つけることができた。この構造はほぼ同じ次数を持つノード同士が結合し,さらにそれらの同次数ネットワークがゆるやかに相互結合するという独特な階層構造を持っている。その他にも,囚人のジレンマゲームにおいて協力者同士が形成するクラスターがパーコレーション転移を起こすことなどを含む有益な結果を数多く得ることができた。
著者
阿部 晶子 稲葉 大輔 岸 光男 相澤 文恵 米満 正美
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

う蝕原性細菌であるミュータンスレンサ球菌は生後19か月から31か月の間に主な養育者が母親である場合、母親を由来として児に定着すると報告されている。しかしながら,我が国における定着時期についての調査は少ない。そこで我々は岩手県平泉町において生後3か月時点から,児のミュータンスレンサ球菌の検出,母親の唾液中ミュータンスレンサ球菌数,齲蝕の発生および育児習慣について追跡調査を行い,これらの関連について検討中である。今回は、2歳6か月時にう蝕の認められた児と、う蝕の認められなかった児について1歳時、1歳6か月時、2歳6か月時の各時期における育児状況のアンケート結果およびミュータンスレンサ球菌の検出状況、母親の唾液中ミュータンスレンサ球菌数との関連について比較検討を行った。その結果、2歳6か月児のう蝕有病者率は21.1%、一人平均df歯数は0.93本であった。2歳6か月時におけるう蝕発症の関連要因を知る目的で、2歳6か月時のう蝕の有無を目的変数としてロジスティック回帰分析を行った結果、1歳時における哺乳瓶による含糖飲料の摂取,大人との食器の共有,2歳6か月時における毎日の仕上げ磨きの有無、1歳時および1歳6か月時におけるミュータンスレンサ球菌の検出状況が有意な関連要因であった。また、ミュータンスレンサ球菌の検出時期と2歳6か月時におけるう蝕発症との関連をみてみると、1歳時からミュータンスレンサ球菌が検出された児は、2歳6か月時に初めてミュータンスレンサ球菌が検出された児に比較して有意に高いう蝕発症率を示した。今回の調査結果から、児の口腔内のシュクロースの存在がミュータンスレンサ球菌の早期定着を促し、その早朝定着がう蝕発症要因の一つであることが示唆された。
著者
渡邉 正樹
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は,学校を中心とした効果的な歯科健康教育プログラムの開発を目指して、子どもたちの口腔保健行動の実態を明らかにし,家庭や地域との連携のありかたを検討することにある。まず最初に,現在の日本における学校歯科健康教育の実態を総括し,問題点を明らかにした.つづいて,小学生の口腔保健行動の特徴と関連要因に関する調査結果について報告した.その概要は次のとおりである.口腔保健行動には,歯口清掃行動,摂食行動,受診受療行動があり,それらには性差と共に学年ごとの特徴ある変化があるため,それぞれ別々に考えていく必要がある.歯口清掃行動は,学年が上がるにつれ,適切な行動がとれるようになる.摂食行動と受診受療行動は,学年が上がるにつれ,適切な行動がとれなくなってくる.口腔保健行動は,男子より女子の方が適切な行動がとれるという傾向がある.また口腔保健に関する自己効力・態度・意欲からも女子の方が積極性に取り組もうとする傾向がみられる.ここではさらに学年に応じた歯科健康教育の達成課題についても明らかにした.その次に養護教諭を対象とした歯科保健指導の問題点に関する調査の結果について報告した.その中で,地域・家庭・学校との連携が不可欠であること,しかし実際には多くの障害があることなどを明らかにした。特に家庭との連携の困難さは深刻であった.これらの結果に基づいて最後に,米国の包括的学校保健プログラムを参考に,新たな包括的学校歯科健康教育プログラムの提示を試みた。
著者
杉本 貴人 福谷 祐賢 佐々木 一夫
出版者
福井医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、家族性アルツハイマー病(AD)のアミロイド前駆体蛋白717遺伝子変異(APP717)6例とプレセニリン1遺伝子変異(PS-1)7例、非家族性ADでアポリボ蛋白E(Apo-E)E4対立遺伝子の保有個数が異なる例(計33例)、正常対照6例で、海馬皮質亜野での神経細胞脱落と神経原線維変化(NFT)形成を定量的に解析し、これらの遺伝子変異と神経細胞死との関連について検討した。方法は海馬前額断でKluver-Barrera染色とGallyas-HE染色を行い、海馬体をCA4,CA3,CA2,CA1,subiculumの5亜野に分けて観察し、NFTを有しない核小体の明瞭な神経細胞、核小体が明瞭な神経細胞内の原線維変化(i-NFT)神経外原線維変化(e-NFT)の密度を測定し、罹病期間、神経細胞脱落の程度、神経原線維変化の程度との関連を調査した。その結果、APP717例ではCA2とCA1において非家族例よりもNFT形成が高度で罹病期間での有意差がなく、この部位ではAPP717遺伝子変異がNFT形成に強く影響していることが示唆された。PS-1例では、CA3とCA2、CA1で対照例や非家族性例よりも神経細胞脱落が強くNFT形成も高度で、PS-1がi-NFT(NFTを持ちながら生存している神経細胞)からe-NFT(神経細胞死)への過程に関与している可能性が示唆された。またApoE E4対立遺伝子ではCA2以外においてNFT形成に関与があり、特にCA1で強いことが示された。CA2は正常加齢ではNFTがもっとも出現しにくく、ADのNFTにもっとも脆弱性のある部位と指摘されている。本研究でもCA2はApo-E E4の影響をうけにくい部位であることが示され、CA2におけるNFT形成は特別な状況でAPPやPS-1遺伝子変異と関連をもっている可能性が示唆された。
著者
川勝 忍 大谷 浩一 和田 正 奥山 直行
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1.レビー小体型痴呆28例とアルツハイマー型痴呆49例、正常対照30例について、XE-133吸入法シングルフォトンエミッションCT (SPECT)により局所脳血流量を測定した。平均脳血流量はDLBではADや対照と比較して有意に低下していた。脳萎縮の程度はアルツハイマー型痴呆と差がないことから、レビー小体型痴呆においては、網様体賦活系など脳幹機能の障害と関連して大脳皮質の血流が低下している可能性が考えられた。部位的には、アルツハイマー型痴呆では側頭頭頂葉の低下がみられるのに対して、レビー小体型痴呆では側頭頭頂葉に加えて、後頭葉での有意な局所脳血流量低下を認めた点が特徴的であった。これは、幻視の出現との関係が推測された。2.次に、アポリポ蛋白E多型について検討し、ε4アリルの頻度は、対照0.07、アルツハイマー型痴呆0.25、レビー小体型痴呆0.17であり、アルツハイマー型痴呆では有意に高く、従来の報告と一致していた。また、レビー小体型痴呆では有意ではないが高い傾向がみられた。これは、レビー小体型痴呆の多くで老人斑アミロイド沈着が広範囲に認められることと考え合わせると、アミロイド沈着促進の遺伝的危険因子であるアポリポ蛋白Eε4が、アルツハイマー型痴呆の場合と同様に、レビー小体型痴呆でも作用している可能性が考えられた。なお、対象のなかレビー小体型痴呆1例については剖検により診断を確定した。3.以上より、レビー小体型痴呆は、画像所見およびアポリポ蛋白E多型からみた遺伝的危険因子において、アルツハイマー型痴呆と共通する病態を有する疾患であることが推察された。
著者
児玉 安正 佐藤 尚毅 二宮 洸三 川村 隆一 二宮 洸三 川村 隆一 吉兼 隆生
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

亜熱帯域には3つの顕著な降水帯(亜熱帯収束帯)があり,梅雨前線帯はそのひとつである.本研究では,各収束帯の生成メカニズムについて研究した.SACZ(南大西洋収束帯)について,ブラジル高原の影響をデータ解析と数値実験の両面から調べた.亜熱帯ジェット気流の役割に関連して,ジェット気流に伴う対流圏中層の暖気移流と降水の関係を論じたSampe and Xie(2010)仮説が梅雨前線帯だけでなく,SACZとSPCZ(南太平洋収束帯)にも当てはまることを示した.梅雨前線帯が南半球の収束帯に比べて向きや緯度が異なることについて,黒潮の影響を論じた.
著者
城崎 知至
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

レーザー核融合では、固体の数千倍に爆縮した高密度プラズマの一部を点火温度まで加熱し、そこから生じる核融合燃焼波が残りの低温高密度燃料へと伝搬することで爆発的な燃焼が行われる。本科研研究においては、核燃焼シミュレーションにおいて重要な高エネルギー粒子によるエネルギー輸送を精密に解く輸送-流体結合コードを開発し、これを用いて点火・燃焼過程の詳細解析を行った。
著者
磯部 祥尚
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、並行システムの設計を支援するため、モデル検査器のように自動的に、かつ定理証明器のように記号的にそのシステムの動作を解析するツールの開発を目標として、(1)定理証明器の証明自動化と(2)モデル検査器の記号処理化の二つの側面から研究を行った。前者の(1)については、並行動作の理論CSPに基づく定理証明器CSP-Proverにモデル検査の自動検査アルゴリズムを実装し、証明自動化の可能性を示した。後者の(2)については、並行システムの構造や各プロセスの動作から、そのシステム全体の動作を記号処理によって自動解析する方法を提案し、その方法を解析ツールCONPASUとして実装した。例えばCONPASUは、無限状態の並行システムから、その動作を理解するために有益な記号ラベル付き状態遷移図を自動生成することができる。