著者
黒澤 美枝子
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

体表への触刺激は心地よさ、リラックス効果、不安・抑うつ感の軽減作用などを有することから、薬物療法を補助する療法として臨床的にも注目されている。その効果には脳内のドーパミンやセロトニンが関与する可能性が示唆されているが、これまでそれを直接証明した研究はなかった。我々は、皮膚に加えた触刺激によって、快感や動機付けの発生に密接に関わる「側坐核のドーパミンの放出」が増加すること、一方、嫌悪感や不安の発生に重要な「扁桃体のセロトニン放出」が逆に減少することを、ラットにおいて明らかにした。
著者
三田 肇
出版者
福岡工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

立体構造が制御された核酸中の特定の部位に、機能発現を誘起させるための分子を配置することにより、高度に設計された新規機能性材料を合成することを目指した研究を進めた。本研究期間では、テロメア部位のモチーフ配列d(TTAG3)がK^+存在下で形成するパラレル四重らせん構造に補欠分子族であるヘムを組み込んだヘム-核酸複合体を合成し、外部配位子の配位や酸化還元特性とその制御機構の解析を行った。さらに、四重鎖DNAのダイマー化反応などを利用し、2つのヘムを組み込み、ヘム間距離を変えたヘム-核酸複合体の形成について検証した。四重鎖DNA中にヘムを組み込んだヘム-核酸複合体を構築可能なことを明らかにした。ヘム-核酸複合体は、分光学的性質がヘムタンパク質・ミオグロビンに類似しており、様々な化合物を軸配位子として結合し、酸化還元応答も得られることが明らかとなった。また、Mg^<2+>イオンなどの存在により安定なダイマー構造をとることや、塩基配列を選択することによりモノマー中に2つのヘムを組み込むことが可能なことも明らかとなった。さらに、2つの異なるダイマーを形成する四重鎖DNAを組み合わせることにより、ヘテロダイマーを構築することも可能であることが明らかとなった。以上のことより、異なる軸配位子をもったヘムを特定の距離に配置することが、このヘム-核酸複合体では可能になることを示した。
著者
福本 義憲 園田 みどり 中居 実 古屋 裕一 黒子 康弘
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ドイツ語圏における第一次大戦期から第二次大戦後にいたる社会文化的なディスクルスの形成と再生産のプロセスを解明するために、研究実施計画に示された枠組みにしたがって、福本、古屋、黒子は社会文化的ディスクルスの形成における「認知的・道具的合理性」および「道徳的・実践的合理性」レベルについての理論的・個別的研究に従事し、中居、園田は「美的・実践的合理性」レベルでの諸現象の研究を行った。研究素材は、1910年から1960年までのほぼ50年間の、ドイツ語圏の各種メディア(新聞・雑誌・文学を含む文字メディア、さらに演劇・歌謡・美術などの芸術メディア、映画・ラジオ・TVなどの技術メディア)に広く渉猟し、その中で上記の理論的枠組みに照らして重要でありかつ時代と地域的特徴をよく表していると思われるものを取り上げて、各人が詳しく分析を試みた。福本は、社会文化的事象のディスクルス分析の理論的考察(「テクスト・ディスクルス・ディスクルス分析」)を行うとともに、第一次大戦前後の権力(Macht)をめぐるディスクルスの形成と再生産の過程を解明するため、特にチューリッヒ・ダダの反市民的ディスクルスの特徴を体現しているヴァルター・ゼルナーを取り上げ具体的かつ詳しく論じた。中居はウィーンのリートの特徴分析を行い、民衆歌謡における社会文化的ディスクルスの形成とその再生産の事情を明らかにした。園田は劇作家カール・ツックマイアーの『ケーペニクの大尉』を取り上げ、「制服」のディスクルス装置を第二帝政期ヴィルヘルム二世統治下のベルリンの時代と地域性と照らし合わせて詳しく論じた。黒子は、メディア現象のエコノミー、自然科学の文化主義的理解、技術的装置と言語の関係などについて、ハーバーマス=スローターダイク論争に即して論じた。その際、黒子は、20世紀の科学技術およびそれをめぐるディスクルスを、ローマ時代に淵源を持つフマニスムスにつながる問題として問い直すとともに、このフマニスムスの問いを発展させ、ゲーテに始まる「世界文学」ディスクルスのもつ社会・経済・文化史的な射程を、マルクス、ブレヒトにおける再編成を通して究明した。古屋は、ベンヤミンのメディア概念の現代的射程をめぐって考察するとともに、マルクス・バウアー『伝達のただ中-ヴァルター・ベンヤミンのメディア概念-』翻訳と注解を行うことで、ベンヤミン研究に貢献を果たした
著者
泰松 齊
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

WCに2.5 vol%以上SiCを添加することでWCの焼結性が改善された。WC-4.85 mol% SiCセラミックスは1900℃の無加圧焼結で十分緻密化するが, WC粒径が7μm以上となり, 硬さが低下した。VC 添加は粒成長の抑制には効果的であるが, 焼結を阻害し, 常圧焼結には適さなかった。Cr_3C_2の添加は粒成長を抑制するとともに, 少量添加で, 焼結性を向上させ, 緻密な焼結体の1800℃での作製を可能とした。
著者
高山 洋一郎 藤田 孝之 前中 一介
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

ワイヤレス通信システムの普及・高度化に伴い,広ダイナミックレンジの高効率,低ひずみ特性の可能性を持つ送信用マイクロ波電力増幅器としてドハティ増幅器が注目されている.ドハティ増幅器は,B級動作のキャリア増幅器およびC級動作のピーク増幅器を直接結合して,低RF電力レベルでキャリア増幅器(CA)の特性を,高RF電力レベルでピーク増幅器(PA)の特性を取り出して,低RFレベルから高RFレベルにわたって優れた特性を実現しようとする増幅器である,しかしながら,2台の増幅器の一般的な直接合成特性の解析・設計理論は確立していなかった.本研究者らは,マイクロ波域での電力増幅器の解析・設計に適応できる理論を提案し,Si MOSFET電力増幅器を設計製作してその有効性を示した.まず,ドハティ増幅器を構成するCAおよびPAへのRF入力信号が等分配の場合について詳細な検討を行った後,本研究者らが提案したより一般的な出力合成回路構成法およびその設計法を拡張して,CAおよびPAへのRF入力信号の配分が等分配でない場合の一般的なマイクロ波ドハティ増幅器回路の設計法を検討提示した.この設計法によりRF入力電力分配比率を変えた場合のドハティ増幅特性を検討し,より高性能のドハティ増幅器構成法の可能性を示した.入力不等分配回路は直接分配型およびウイルキンソン型を試作検討した.アイソレーションがない直接分配型は安定性に課題があるため,ウィルキンソン分配回路により1GHz帯2WクラスのSiMOSFET電力増幅器を製作評価して詳細な検討を行った.その結果,不等分配によりさらに低レベルでの効率の向上を期待できる広ダイナミック特性入出力を確認した.
著者
松永 昭一 山内 勝也 小栗 清
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では統計的手法に基づき正常肺音と異常肺音を識別する手法の研究を行った.本手法の特徴は異常肺音を正確に検出するために,音響特徴を扱うための統計モデルと,呼気/吸気に含まれる音響的特徴セグメントの生起順序に関する統計モデルを用いる.また,韻律情報を用いて乳児の情動クラスを推定する手法の研究を行った.本手法の特徴は泣き声のセグメントと無音セグメントの継続時間の割合を韻律情報として用いることであり,従来のスペクトル情報を用いた手法より識別性能が大きく向上した.
著者
中嶋 康文 上野 博司 溝部 俊樹 橋本 悟
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

血液単球系細胞からのTissue Factor(組織因子)の放出にRaf-MEK-ERK1/2pathway 及びその下流の転写因子Egr-1の関与がRNA 干渉法による遺伝子ノックダウン手技を用いて示唆された。クロドロネート前処理することで、血液中の単球系細胞を抑制したマウスにこれらの遺伝子ノックダウン単球系細胞を注入後、肺梗塞モデルマウスを用いて、肺梗塞の重症度及び生存率を検討したところ、Tissue Factorの発現、炎症系が抑制されることで重症度と生存率が改善した。
著者
石井 勝
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.夏季に下向きリーダが先行する複数の落雷が期待できる鉄塔の近傍での電磁界観測を、栃木県鹿沼市において平成16年度、17年度の夏季に実施した。電磁界観測装置は、電流測定・カメラ観測のため計装されている100m級UHV送電鉄塔から100m程度の場所に設営し、無人で24時間運転された。しかしこの鉄塔での雷電流観測記録は得られず、至近距離の雷撃の電磁界データの取得も叶わなかった。この観測は世界のどこでも試みられておらず、きわめて意義深く重要なので、科学研究費による研究期間終了後も、鉄塔での電流観測が続けられる限り継続する計画である。2.大地に直接落雷した場合と高構造物に落雷した場合の、放電路の等価性において矛盾がないと考えられる帰還雷撃の電磁界モデルを新たに提案し、それを用いて高鉄塔に落雷があった際の近傍の電磁界の発生様相を解析した。鉄塔近傍の数百mの範囲では、鉄塔の影響は電界、磁界で全く異なった様相を示すことが計算上予測される。電流、近傍の電界、磁界の同時計測が1度でも実現すれば、このモデルの妥当性が明らかになり、応用面で重要な、高構造物の遠方電磁界への影響についての議論にも終止符が打たれる。3.公表されたロケット誘雷近傍の電磁界の観測結果を用いて、観測結果をかなりよく再現できる工学モデルを得た。後続雷撃の帰還雷撃電流波は、地上数mの上向き・下向きリーダの結合点から大地と上方に向けて進行を開始し、その速度は光速の数分の1で、大地面で電流波の反射が生じていることが推測される。4.新たに提案した帰還雷撃の工学モデルと、第1帰還雷撃の特徴の、やや長い電流波頭長を組み合わせると、遠方の電磁界波高値と電流波高値の関係が、電流波頭長の短い後続雷撃とは異なってくることを見出した。これが電磁界観測により確認されれば、第1帰還雷撃電流の直接測定と電磁界による推定の相違点が解消される。
著者
山田 晃
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、鉄橋等の交通路上の監視領域内の渦状の突風風速場を非侵襲、遠隔的に測定できる音波トモグラフィ計測法の実現に向けた検討を行った。そのために、交通路の両サイドに数mおきの荒い間隔で設置した音波センサ間の送受信伝搬時間データから、領域内に回転対称な渦が一つだけ存在するという仮定のもとに、領域水平断面内の渦の風速ベクトル場を再現するトモグラフィアルゴリズムを考案した。最初に、提案法に基づいたシミュレーション評価試験を行い、種々の前提条件(風速場の2 次元近似、音波の直線経路伝搬モデルなど)の妥当性や、監視可能な渦の風速場の範囲、センサの設置間隔と風速場の再現精度の関係、などの最適構成条件を明らかにした。さらに、監視領域の両サイドに10 対の音波送受信センサを配置した構成の1/250モデルの模擬試験装置(路幅50cm, 路長40cm)を構築した。本装置では多チャンネル経路間の伝搬時間をリアルタイム測定するために、多チャンネルデジタル信号処理ハードウェア回路を実装した。本試験装置を用いて、伝搬時間の取得精度や時空間的に変動する渦の風速場の再現性能を検証した。特に、実際の場合を想定して、監視領域上を通過する渦の風速場の再現試験を行った結果、想定される突風の通過時間内(1[s]~2[s]程度)に渦の風速場を準リアルタイムで精度よく再現できる性能を確認した。
著者
生野 正剛
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日韓両国の廃棄物政策では、廃棄物発生抑制およびリサイクルの推進による廃棄物減量化、資源節約を目指す方向性、およびその目的達成の手段としての経済的手法の大幅な導入廃棄物管理政策の優先順位で共通している。さらに、拡大生産者責任を、日本では、容器包装・家電リサイクル法等で、韓国では生産者責任再活用制度で導入し、製品の設計・製造段階からの廃棄物発生抑制・減量化・リサイクル推進・省資源を目指している。しかし、韓国と比較して、日本はそれらの政策を推進するための具体的な仕組み.制度において廃棄物発生抑制の仕組みが弱い。すなわち、韓国では、製品となっても、使い捨て用品使用規制および過剰包装規制によって、廃棄物の発生を抑制し、製品購入後にはごみ従量制(有料化)によって廃棄物の減量化を図るという具合に、製品のライフサイクルにおいて廃棄物の発生抑制、減量化に向けた諸制度が有機的に結びつけられている。一方日本では、生産者に対する、設計・製造段階からの廃棄物発生抑制へのインセンティブが弱く、大量リサイクル推進策に終っている。また、各個別リサイクル法を除けば、他の廃棄物発生抑制・減量化・省資源は事業者の自主的取組みとされており、ごみ有料化・レジ袋有料化の実施も地方自治体や事業者の判断に委ねられている。この相違によって、韓国では、一般廃棄物の減量化に一定程度成功しているが、日本ではリサイクルは進んだとしても、排出量は依然として高止まり状態である。したがって、日本においても、使い捨て用品の使用規制、過剰包装規制、容器包装リサイクル法の中での使い捨て容器包装のリデュースとリユースへの転換を図るシステムの導入など、廃棄物の発生抑制のためのより明確な手段を導入する必要がある。
著者
鐘ヶ江 健
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ホウライシダで発見された新規光受容体PHY3は、植物青色光受容体であるフォトトロピンに赤色光受容体フィトクロムの光受容部位が融合した構造をしている。その構造から、PHY3はフォトトロピンと同様の分子機構で、受容した光シグナルをプロセシングしていることが予想された。本研究の結果、PHY3はフォトトロピンの機能に重要なアミノ酸を置換してもその機能に大きな影響を受けなかった事から、PHY3独自の光シグナルプロセシング機構が存在することが明らかになった。
著者
斎藤 博幸 田中 将史
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

血中や脳内での細胞外脂質輸送を制御しているアポリポタンパク質の遺伝子変異や多型は、脂質異常症やアミロイドーシスなどの疾患発症を引き起こす。その構造的機序解明を目的として、ヘリックス型アポリポタンパク質であるアポA-I及びアポE変異体の高次構造、安定性、脂質結合性並びにタンパク質凝集性などを調査した結果、変異によるN末ヘリックスバンドル並びにC末ヘリックス構造の破壊が疾患発症の構造的基盤であることが示唆された。
著者
野瀬 昭博
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

イネ紋枯病抵抗性は、解糖系の炭素分配クロスロードと名付けた、解糖系からのスクロース合成・澱粉合成・フェニルプロパノイド代謝への分岐部の炭素分配制御によってもたらされていることが明らかとなり、今後この部分における制御特性についての解明が代謝工学的な紋枯病抵抗性の実現に向けたターゲットであることが示唆された。また、現有するイネ紋枯病抵抗性を交配育種的に活用する2種類のQTLが同定され、抵抗性イネ育種に大きな可能性があることも明らかとなった。さらに、現有する抵抗性系統に多収性をもたらす遺伝子の連鎖が示唆され、紋枯病抵抗性と多収性の両立も可能である。
著者
中田 智恵海
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

セルフヘルプグループ(以下SHG)の援助の特性として認知されている接近容易性や即応性がリーダーを疲弊させ、スムースな交代を困難にしている。後継者の育成にはメンバーのエンパワメントを諮る中でリーダーが育っていく。そのためにはピアサポート研修が必要であることが明らかとなり、ピアサポート研修のテキストを作成、改善しつつ、研修を重ねて一定の成果を得た。
著者
馬田 一郎 鈴木 紀子 鳥山 朋二
出版者
独立行政法人情報通信研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

共同作業における作業ミス予測のため、視線検出装置・モーションキャプチャー装置などのセンサによるデータと発話データを用いてミスコミュニケーションが起こりやすい状態を推定することを目標とした。分析の結果、ミス予測については、各作業者が並列で作業を行う状態が続いている状態で共同注視の発生頻度が低い場合、ミスコミュニケーションの発生頻度が高くなる可能性が示唆されたが、共同注視が起こらない場合には必ずミス発生につながるという訳ではないことが観察された。この結果から、現状ではミスを起こしやすい作業チームを共同注視推測データから分類する可能性は有望であるものの、このデータを作業現場でのリアルタイムのミス予防にそのまま応用することは困難であることが示された。
著者
山崎 京美
出版者
いわき短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

縄文時代の生業を復元する上で、貝塚から出土する貝殻や動物骨(動物遺体)の種名を同定することは動物考古学的研究方法の中で最も基本となる。特に魚骨は多量に出土するにもかかわらず、一個体中の構成部位が多く種数も豊富なために他の脊椎動物よりも同定が難しい。そこで、本研究では遺跡(主に関東)から高頻度に発見される魚種を対象に、同定に有効とされる顎や第1~3脊椎骨の骨格図を作成した。また、遺存体出土情報も加え、インターネット上で検索可能なデータベースを構築した。
著者
岡田 全司 大原 直也 吉田 栄人 鈴木 克洋 井上 義一 源 誠二郎
出版者
独立行政法人国立病院機構(近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1.結核菌症のキラーT細胞分化機構:(1)抗結核キラーT細胞から産出されるGranulysin〔15kdのGranulysin(15KGra)〕が結核殺傷に極めて重要な役割を果たしている発見をした。GraはMφ内結核菌を殺傷した。(2)結核患者キラーT細胞から分泌されるkiller secretory protein(Ksp37)が血清中で低下していることを初めて明らかにした。(3)15K Gra DNAワクチンは結核予防効果を示した。(a)15K Granulysin DNAワクチン(b)9K Granulysin DNAワクチン(c)分泌型9K Granulysin DNAワクチン(d)Adenovirusベクター/15K Granulysinワクチンをすでに作製した。(4)15K Gra Transgenicマウスを初めて作製し、Granulysin transgenicマウスは生体内の抗結核菌殺傷作用のみでなく、結核に対するキラーT細胞の分化誘導を増強した。また、結核菌に対するT細胞増殖能増強作用とIFN-γ産生増強効果を示した。2.新しい結核予防ワクチンの開発(1)新しいDNAワクチンの開発(1)BCGワクチンより1万倍強力な結核予防ワクチン(HVJ/Hsp65+IL-12DNAワクチン)開発に成功した。(2)カニクイザルの系で世界で初めて、結核予防ワクチンの有効性を示した。(Vaccine 2005)これらのワクチン効果とキラーT誘導活性は相関した。3.新しい結核治療ワクチンの開発(Hsp65DNA+IL-12DNAワクチン)上記のHsp65+IL-12DNAワクチンは結核治療ワクチン効果も示し、世界で初めて結核治療ワクチンを創製することに成功した。これらの治療ワクチン効果と、IFN-γ産生細胞の増殖(Elispotアッセイで測定)活性は相関した。
著者
中川 直子 奥野 良信 森川 佐依子 伊藤 正恵
出版者
大阪府立公衆衛生研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1.AH9型およびAH5型インフルエンザウイルスの早期診断AH9型のインフルエンザウイルスは香港でヒトヘの感染例が報告されており、次の新型ウイルスの最有力候補といわれている。AH9型の流行に備えて、A/Duck/HongKong/702/79(H9N5)対するモノクローナル抗体を作製した。既にAH5型のインフルエンザウイルスに対するモノクローナル抗体を樹立しているので、これらの抗体をPAP法に応用することにより新型ウイルスの迅速診断を行いたい。2.新しいタイプのB型インフルエンザウイルス(山形タイプ)の早期発見従来のB型に中和活性を示すモノクローナル抗体5H4を用いて抗原性を調べたところ、大阪府で採取された1998/1999シーズンの株の6%にあたる株は5H4で中和されない新しい抗原性を有した株であった。HA1領域のDNAシークエンス解析の結果、149番目のアミノ酸がアルギニンよりリジンに変化していることが、原因であると示唆された。149番目のアミノ酸がアルギニンであることは、山形タイプに特徴的で、10年来変異がなく、この知見は特筆すべきものであると考えられる。1999/2000シーズンはB型の流行がなく2株のみ採取されたが、この2株とも新しい抗原性の株であった。新しい変異が見られたことで、2000/2001のB型の流行が以前より大きくなることを予想していたが、懸念通り、ワクチン株と抗原性の差異がみられるウイルス株が流行し、その流行が長引いた。今後はワクチン株の選定に貢献したい。3.AH1型インフルエンザウイルスの早期診断1999/2000シーズンには4年ぶりにAH1(Aソ連)型の流行があり、流行株に対するモノクローナル抗体を作製した。次の流行時には、これらの抗体をPAP法に応用することにより、迅速診断ができるだけでなく、今回の流行株との抗原変異の解析が可能となる。
著者
長尾 由実子 佐田 通夫 川口 巧
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

わが国における肝臓癌の95%以上は、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの持続感染が原因です。これらの肝炎ウイルスは、肝臓の病気だけではなく、さまざまな肝臓病以外の病気も起こしてくることがわかっています。皮膚や粘膜に現れる扁平苔癬もその一つです。本研究を通じて、C型肝炎ウイルスに感染している扁平苔癬患者はインスリン抵抗性が高いこと、インスリン抵抗性の高いC型肝炎ウイルス関連の口腔癌は重複癌を発症しやすいことがわかりました。インスリン抵抗性とは、インスリン濃度に見合った作用が得られない状態を指します。C型肝炎ウイルス感染者は、肝臓病だけでなく、扁平苔癬や口腔癌、そして重複癌について注意深く経過観察する必要があります。
著者
片山 薫
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

大規模グラフ集合を効率的に検索するため, 数値的方法と組み合わせ的方法による部分グラフ同型性判定(あるグラフが別のグラフに含まれるかどうか判定すること)手法を開発した.行列の固有値に関するInterlace 定理に基づいたグラフ索引手法とグラフフィルタリング手法を提案すると共に, Messmer らの提案したグラフ分解に基づく部分グラフ同型探索アルゴリズムの改良を行った.これらの提案手法について人工的に生成したデータや実際のデータを利用して評価実験を行い, その有効性を検証した