- 著者
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宮本 久雄
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2004
平成18年度は従来の3人称的言語による人間論,宗教論,文化論の分析を突破して現代世界の苦悩にみちた現実に学的に関わろうとして「物語り論」(ナラトロギア)によって1人称の「わたし」がどう他者と和解し,共生しうるのかという可能性を探求した。それが新倫理学構築の契機となるように出版やシンポジウムや研究交流を推進した。そのためまず第一に,東京大学出版会から平成19年の1月から3月にわたって「物語り論シリーズ」を刊行した。第1巻は「他者との出会い」,第2巻は「原初の言葉」,第3巻は「彼方からの声」をテーマとし,文学,精神医学,社会思想,自然科学,哲学,芸術などあらゆる分野から物語り論を探求した。第2に東アジアとの交流を深めるべく,韓国西江大学で出張講義をなし,また同大学の哲学・倫理学の教師と学生と共に東京でシンポジウムを開いた。5月の京都国際会館のシンポジウムでは,日,中,韓にユネスコの参加者も加え,「和解と共生」をテーマに活発な議論が展開された。さらに秋期には,ウィーン大学,プラハ大学で東方キリスト教諸派の代表者も含めて「宗教間対話の共生」のテーマの共催シンポジウムを開いた。その成果は『雑誌エイコーン』にのせられ刊行された。本年度はこうして新エチカの多様な地平が拓かれた。