著者
門谷 裕一
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

分枝形態形成は、外分泌腺の基本的な組織形成様式である。細胞膜非透過性の蛍光色素存在下で器官培養した胎生期マウス顎下腺をタイムラプス共焦点顕微鏡で観察したところ、上皮集塊内の細胞がダイナミックに移動、変形することが判明した。分枝形態形成は上皮集塊基底部のクレフト形成に始まる。このクレフトは上皮集塊の内部に向かって尖端をくねらすように侵入したが、これにはクレフト基部の微細線維束を芯とする細胞質突起が関わることが示唆された。
著者
鳴海 一雅 齋藤 勇一 千葉 敦也 高橋 康之
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

複数の原子が結合しイオン化したクラスターイオンが高速領域(ボーア速度以上)で固体と衝突する際に誘起される二次電子放出には、近接効果と呼ばれる未解明の物理過程がある。本研究では、この効果に、励起電子の生成過程に由来するものと励起電子の固体表面までの輸送過程に由来するものがあること、さらにどちらの寄与が支配的であるかは解離したイオン間の固体中での距離に依存することを明らかにした。
著者
大見 サキエ 宮城島 恭子 坪見 利香 河合 洋子 金城 やす子 岡田 周一
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

研究1.小児がんに関する啓蒙のための研修会実施。(1)例年実施しているA地区小中学校教員(13名の希望者)11名の参加者あり、医師、看護師等の講演の後、教員が実際直面している問題等についてディスカッションした。具体的には、クラスメートへの情報提供の方法、特別支援学校の子どもたちのことをどう説明したらよいか、復学時の校内での教員全体の勉強会の必要性、指導要録の枚数と診断書の枚数、提出について、保護者の協九が得られない場合の対処について等である。そこで作成した子ども理解のための小冊子を回覧したところ、学校の教員向けでも活用できるとの意見があり、配布することとにした。(2)C市の小中学校教員43名を対象に同様の研修会を実施。教員は病院の医師や看護師の話を熱心に聞いていた。研修会の結果はアンケートを配布し、郵送にて返送してもらうことになっており、結果の整理はこれからである。研究2.調整合同会議を実施し、退院した子どもの保護者の面接調査を実施し、退院時合同会議を実施した全員の子どもの保護者12名の面接調査を実施した。データは逐語記録におこし、現在、分析中である。学校に慣れていく(適応していく)それまでの保護者の気持ちを重点的にデータを収集した。全員、復学後登校していたが、まだ、治療中の子どももあり、多様であった。研究3.H20年度からのこれまでの活動を振り返り、教育支援プログラムや連携構築に必要な事項について研究者間打ち合わせ会議を実施し、今後の活動の方向性について、主には研修会の継続、周囲への働きかけ(特に教育委員会)、連携のための文書、子どもが入院した時から、どのような働きかけが必要かを見極めるマトリックスの作成等検討した。
著者
小松 彦三郎 清水 克彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

この間の精力は、ほとんど2008年8月に東京で開催した関孝和三百年祭記念数学史国際会議の組織とこの会議録編集に費やされた。研究代表者自身は、関による連立代数方程式の未知数消去の理論(1683)及びその後の日本人数学者による研究の詳細とその独自性を明らかにした。これらは、従来、江戸時代の関流数学の伝統と、これをほぼそのままに受け入れた近代の数学史家の解釈によって理解されてきたが、今日の目では批判に堪ええない。この他、ケルビン卿(1855)とヘヴィサイド(1887)の電信方程式に対して新しい解法を与えることができた。
著者
平野 勝也 和田 裕一 森田 直子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究により,街並みメッセージが,場所単独のイメージのみ成らず.係留効果を通じて,場所が展開する場合において,大きく場所のイメージに影響することも明らかにした.そのことにより,既に明らかになっている場所単独のイメージと,表通りから裏通りに入ると言ったような場面展開のパタン整理を,様々な繁華街において調査を実施することを通じて,繁華街を創り上げていくデザインボキャブラリーとしての取り纏められた.
著者
藤原 均 野澤 悟徳 前田 佐和子 三好 勉信 品川 裕之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

地表から大気上端(~700km高度)にいたる領域の気温、風速、組成変動を計算可能な数値モデルが研究代表者らのグループによって世界で初めて開発された。この数値モデルシミュレーションとレーダー観測データから、下層大気に起源を持つ高度300 km付近の超高層大気変動のいくつかを明らかにした。特に、極冠域では従来認識されていた以上の激しい大気変動を観測、シミュレーションの双方から明らかにすると伴に、低緯度領域では、これまではシミュレーションでは再現不可能であった真夜中の温度極大の再現に成功した。
著者
池添 隆之
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

一つの細胞が分裂し、全く同じ二つの細胞が創られることで細胞は増殖を続ける。この分裂の過程は分裂期キナーゼという酵素群によって精密に制御されている。これらキナーゼの機能破綻により細胞が無秩序に増殖しがん化が引き起こされていることが予想される。この度我々は分裂期キナーゼの一種であるポロ様キナーゼに注目しその白血病化への関与について検討を行った。ポロ様キナーゼは正常の造血細胞と比べて、急性白血病細胞で異常にその発現が亢進していた。そしてこのキナーゼを阻害剤を用いて不活化すると白血病細胞の増殖は抑制された。これらのことから、ポロ様キナーゼは白血病細胞の増殖に関与しており、格好の治療標的分子となり得る可能性が示唆された。
著者
家田 章正
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

オーロラ爆発上空では、磁力線に沿った電流(沿磁力線電流)が観測される。この沿磁力線電流が、東西電流ペアであるのか、南北ペアであるのか、あるいは両者の競合であるのかを明らにすることが、オーロラ電流系の駆動源を理解するために重要である。本研究では、地磁気データとオーロラデータを用いた地磁気逆計算法により、沿磁力線電流を面でスナップショット推定し、その成分を分解した。その結果、西向きジェット電流の南北で、推定した沿磁力線電流の、ホール成分とペダーセン成分が反相関していた。この結果は、東西ループ電流に関係した電場が、南北方向の分極電場を生成したことを示唆している。
著者
長谷川 博俊
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、高機能性蛍光・磁性ビーズ(FFビーズ)に上皮細胞で発現している抗原に対する抗体を固定し、血液中や便中の上皮細胞を効率よく磁気回収を行い、回収した細胞を用いての診断を行うことを目的とした。抗EGFR抗体固定化FFビーズとA431(EGFR高発現株)を用い、細胞回収率の検討を行った。回収した細胞を用いてのタンパク質発現や遺伝子異常の検索、癌細胞の同定は臨床検体を用いるには至らなかった。また、大腸癌担癌患者における血清bFGFと、大腸癌細胞の上皮細胞および血管内皮細胞に発現しているPLGFの検討を行った。静脈侵襲および術前CEA値との間に有意な相関を認めた。
著者
太田 隆英
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

Rhoファミリータンパク質の制御分子であるRhoGDIβ(Rho GDP-dissociation inhibitor β)は癌の悪性進展に関わることが知られているが、その役割は依然として不明である。本研究では、免疫蛍光染色法やGFP 標識RhoGDIβを用いてRhoGDIβの細胞内局在を明らかにするとともに、RNAiによりRhoGDIβをノックダウンした時の影響を詳細に観察し、RhoGDIβがcentrosomeの機能の制御や細胞極性の制御を通じて癌悪性伸展に関与することを示した。
著者
萬 伸介 森岡 正臣 田端 輝彦 森岡 正臣 田端 輝彦 西城 祐子 山尾 健一 小畑 達哉
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

林鶴一の算術・数学関係の教科書の蔵書のデータベース化の結果は冊子「資料『林文庫邦書目録原稿』(修正版)」としてまとめた。この冊子とそのリストにある蔵書(1065点)は宮城教育大学附属図書館で管理されることになった。公開に向けて作業中である。教材開発については、附属学校教諭と協力し複数の試案を作ることができている。授業実践も一回であるが実施することができた。
著者
池田 泰子 足立 さつき 中野 泰志
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

研究成果は、(1)ひらがな文字に関する課題(絵記号の理解課題から文章読解課題)の健常児データを整理し、2013年7月に「ひらがな文字検査」を発売する。(2)今まで明らかにされていなかった音韻分解と音韻抽出能力がひらがなの読み書きにどのように影響しているのかを明らかにした。(3)文字の読み、書きではない関連課題23課題を3歳~6歳の健常児に実施し、スクリーニングに有効な課題として18課題が検出された。
著者
菅井 康祐 神崎 和男 山根 繁
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

音声学的な知覚・認識能力を適切に判別するテストを作成するための基礎調査として,従来型のリスニングテストがこれらの能力をどの程度予測するのか調査を行った。1つ目のディクテーション・インタヴュー課題では従来型のリスニングテストで同程度の習熟度と判定された学習者間では,ある程度の傾向は見られるものの異なる特性も見られた。単音節語の語頭の子音のみを入れ替えたミニマルペア識別課題では,正答率についてはそれほど大きな差は見られないものの,反応時間においては学習者間・課題間に大きな差が見られた。これらの結果により従来型のリスニングテストは子音の識別能力を弁別できないことが明らかになった。
著者
岡崎 克則 井上 恵美
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)のC末端側サブユニット(HA2)に存在するαヘリックス領域のアミノ酸配列がH1〜H15亜型ウイルス間でよく保存されていることを見出し、本領域に含まれる10残基のペプチドを培地中に添加するとウイルス増殖が1/10程度に抑制されることを示した。感染細胞内で新たに合成されたHAの三量体形成を阻害することによってHAの輸送あるいは機能的発現を阻害するものと考えられたことから、エンドサイトーシス非依存性のトランスフェクション試薬を用いて本ペプチドを積極的に細胞内に導入することによって抗ウイルス活性を増強することを試みた。その結果、ウイルス感染前および後におけるペプチド導入でもウイルス増殖抑制効果は認められなかった。三量体形成に与る粗面小胞体〜ゴルジ体への導入には、エンドソームを経由する経路が有効なのかもしれない。新型インフルエンザに備えた抗体医薬を開発するため、H5およびH2亜型HAに対するモノクローナル抗体の作製を試みた。両亜型HA間で共通かつ分子表面に存在する7残基のアミノ酸配列を見出し、これをマウスI-A^b MHCクラスII分子結合カセットに挿入したペプチドを合成した。本ペプチドをC57BL/6マウスに免疫し、SP2/0細胞を用いてハイブリドーマを作出した。得られた800余りのハイブリドーマのうち1クローンがA/Singapore/1/57(H2N2)の感染性を中和する抗体を産生していた。現在、効率を上げるためにMAPペプチドを免疫したマウスの脾細胞を用いてハイブリドーマを作出している。
著者
瀬戸 宏 飯塚 容 田村 容子
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

1.文明戯は辛亥革命前後に上海を中心に栄えた演劇である。1913年から15年にかけて上海の新聞『申報』に掲載された文明戯の劇評等100編を整理し、瀬戸宏の個人サイト上で公表した。2.文明戯の研究をおこなった。研究内容は、文明戯と映画の関係、文明戯と伝統演劇の関係、文明戯と中華人民共和国建国後の通俗話劇との関係、文明戯が描いた朝鮮の形象、文明戯の重要演目であるシェイクスピア作品の受容史などである。
著者
青山 義之 武井 雄一 須田 真史
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)を行った際の脳血液量変化を近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)を用いて測定することにより、気分障害(大うつ病性障害、双極I型障害、双極II型障害)、および適応障害における脳機能の特徴の検討,および適正な刺激条件の設定を目的とした。rTMS中の対側脳機能反応性は疾患群によって異なる反応を示し,その反応は状態像による相違を認めなかった.
著者
久保田 裕子 メータセート ナムティップ 平松 秀樹
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日本とタイ国の関係が緊密化した明治期から現代に至るまでの日本近代文学に関して、タイ国を描いた文学テクストの調査・収集を行った。収集した文学テクストを基盤として、両国の歴史的関係性を示すタイ国内で刊行された日本語雑誌などの同時代資料と照合し、タイ国をめぐる文化表象が構築される過程を明らかにした。三島由紀夫、村上春樹などの日本近代文学のテクストを分析し、そこに描かれたタイ国の表象分析を行った。
著者
岡田 由香 大林 陽子 緒方 京 神谷 摂子 志村 千鶴子 高橋 弘子
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

看護系大学を拠点に地域と連携し、未就園児とその養護者を対象とした子育て支援事業を通して、子育て支援ネットワークを確立し、継続的な子育て支援活動を定着させるシステムの構築に取り組んだ。結果、大学-行政-地域という子育て支援ネットワークによる子育て家族への支援、学生への生きた教育現場の提供について成果を確認することができ、看護系大学の特色を活かした子育て支援活動のシステムを機能させる事業へと継続された。
著者
塩田 洋 江口 洋 四宮 加容
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

角膜ヘルペスとは単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染による角膜疾患であり、再発を繰り返す扱い難い眼疾患の一つである。その治療薬には現在アシクロビル眼軟膏が第一選択薬として使用されている。本研究は角膜ヘルペスに対し水溶性でかつ安全な治療薬の開発を試みた。1)DNAポリメレース遺伝子発現の抑制を狙いDNAポリメレースを規定する遺伝子配列をよく検索し、HSVに特徴的な21塩基配列の部を選択し、二本鎖RNA (dsRNA)を合成した。これは21塩基対からなるsiRNAであり、理論的にはDNAポリメレース遺伝子発現を抑制する。角膜ヘルペス感染防止実験として、兎角膜にHSVを接種し1時間後から、A群はsiRNA点眼液を、B群は対象として溶解液を点眼し、HSV接種48時間後の病像を点数方式で比較判定した。残念ながら両群とも樹枝状潰瘍を形成し、siRNA点眼液には感染防止効果は認められなかった。次に角膜ヘルペス治療実験として、兎角膜にHSVを接種し48時間後から、C群はsiRNA点眼液を、D群は対象として溶解液を点眼した。5日間の治療後に両群の病像を点数方式で比較判定した。残念ながら両群とも地図状潰瘍を形成しており、siRNA点眼液に治療効果は認められなかった。2) carbocyclic oxetanocin G (C. OXT-G)点眼液の治療効果我々が開発中のC. OXT-G点眼液と欧米で市販されているtrifluorothymidine (TFT)点眼液との治療効果を比較した。兎角膜にHSVを接種し樹枝状潰瘍の出来た48時間後から0.1%C. OXT-G点眼液群、1%TFT点眼液群と生理食塩水点眼群に分け4日間治療した。その結果、C. OXT-G点眼液とTFT点眼液は同等の優れた治療効果を示した。研究中のC. OXT-Gは、角膜ヘルペスの新しい水溶性治療薬になり得るものと判断した。