著者
石河 晃 舩越 建 石井 健 大内 健嗣 清水 篤
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

落葉状天疱瘡は全身の皮膚に水疱、びらんをきたす自己免疫疾患であるが、自己抗体が抗原に結合してから水疱発生までの機序は明らかではない。本研究では正常ヒト皮膚器官培養にクローン化した抗体を局所注射し、経時的に超微細組織変化を観察した。病原性抗体注射後2時間後にはデスモソームの減少が見られ、22時間後にはデスモソームの消失と細胞離開が見られた。デスモソームの数が減少することによる細胞離開の経路が存在することが推察された。
著者
保地 眞一
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

凍結乾燥(FD)ウシ精子を長期間冷蔵保存した後、受精シグナルを発する各種能力がどの程度正常に維持されているのかを調べた。排卵マウス卵子を用いた異種顕微授精系において、FD区では対照区よりも精子由来卵活性化因子の活性が劣る傾向があったが、致命的とまでは言えなかった。同種顕微授精系で作製した前核期卵の解析では、FD行程が精子に加わることは雄ゲノムに能動的脱メチル化が誘起される時期や脱メチル化のレベルに問題を引き起こさなかった。精子中心体の微小管形成中心機能についてもFD行程による問題は認められず、FD精子のDNA断片化もコメットアッセイでは観察されなかった。
著者
京兼 純 堤 保雄 片倉 勝己
出版者
明石工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

色素増感太陽電池(DSC素子)は一般に液体電解質を利用して発電しているが、本研究では液体電解質の持つ欠点を克服し、高い電気伝導が期待できるゲル電解質に着目し、変換効率の向上と長寿命化を目指して実施した。ゲル化にあたっては、フッ素系オリゴマーとポリエチレングリコールを基盤とした2種類の材料を使用した。特にフッ素系ゲル電解質を用いたDSC素子の諸特性は、開放電圧Voc=0.6 [V] , 短絡電流Jsc=5.8 [mA/cm^2], Fill Factor:FF=0.56, 変換効率η=4.4 [%] となり、変換効率に関しては2006年度の研究開始時におけるDSC素子に比べ、1.6倍強程度まで向上し当初の目標(変換効率η=5 [%])に近づけることが出来た。
著者
水本 信一郎 辻 元 志賀 啓成 黒川 信重 中山 能力 服部 俊昭
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

4個以上の楕円保型形式に付随したよい性質をもつディリクレ級数をみつけることは、保型形式の理論において基本的であり、同時に困難な問題としてよく知られている。水本は、ディリクレ級数と限らない一般の級数まで範囲を広げれば、2n個の楕円保型形式からよい性質をもつ級数が得られることを発見した。この級数は新しい特殊関数を含み、解析接続と関数等式を持つ。このような関数を数論的に研究することは現時点では殆どなされていない。今後の研究により未知の性質の解明されることが望まれる。黒川は多重三角関数を構成し、研究した。さらにその発展として、多重三角関数のq-類似、絶対テンソル積、絶対微分、圏のスペクトルを研究した。志賀は境界付きリーマン面が擬等角写像で変形されるとき、境界上の連続関数に対する第1種境界値問題(ディリクレ問題)の解の変動を調べ、パラメータに関する実正則性などを証明した。またリーマン面が退化するときの解の変分についても考察した。辻は随伴直線束の正則切断の拡張定理をsubadjunction theoremの形にまとめて、多重種数の変形不変性の結果を拡張した。またモジュライ空間の準射影性を完全に一般な形で証明した。服部は双曲幾何のディオファントス近似への応用を研究した。中山はlog Hodge理論の研究を行った。主結果はbaseがlog smoothのときのlog Hodge構造のvariationの関手不変性である。またlogアーベル多様体論の研究を行ったが、その解析的理論はほぼまとまり、論文を準備中である。
著者
保 智己
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

松果体と副松果体の神経節細胞は脳の3か所に投射しており、特に松果体は脳の深部にまで軸索を伸ばしていた。最も背側の投射部位では脊髄へ投射している巨大ニューロンの樹状突起と結合していた。さらに電気生理学的な実験からこの経路が波長(「色」)情報を伝達していることが示唆された。また、波長識別に関与する緑光受容細胞の視物質も紫外光受容細胞と同様に光再生している可能性が示された。明暗情報に関しては少なくとも遊泳活動リズムへの関与が示された。
著者
加藤 哲男 君塚 隆太 岡田 あゆみ
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

歯周病は口腔の主要な感染症であり、その原因となっているのは口腔内バイオフィルムであるデンタル・プラーク中に存在する細菌である。本研究は、歯周病原性バイオフィルムの形成に関わる因子について解析するとともに、その形成を抑制あるいはバイオフィルム細菌に対して抗菌性を発揮するような機能性タンパク質について検索した。培養細胞やマウスを用いて、シスタチンやガレクチンなどの機能性タンパク質のバイオフィルム形成抑制作用や内毒素活性抑制作用などを解明した。
著者
長岡 直人
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

安定な電力供給に資するため,雷サージ,電気鉄道,配電系統高調波などを解析するソフトウェアおよび解析モデル構築ツールを開発した。回路解析と電磁界解析プログラムを相互補完的に用いて新たな知見を得ると共に,実機・縮小モデルを用いた実験により精度確認を行った。提案法は実用精度を有すると共に,従来と比して高速な解析が可能となり,本研究の成果は安定かつ高品位な電力供給,安全・安心な社会構築に貢献する.
著者
寺内 文雄 久保 光徳 青木 弘行
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,触知覚や操作に対するフィードバック感覚を利用して,直感的に情報を伝達するための方策について検討した。具体的には,飲料の種類を識別できる飲料パッケージ用触覚記号や薬剤の種類を示唆するパッケージ用触覚記号を提案することと,押しボタンスイッチの操作感とスイッチの物理特性の関係を解明することを試みた。本研究の結果は以下のように要約できる。1)晴眼者と視覚障害者を対象とした実験によって,内容物に対応した飲料パッケージ用触覚記号の形状と材質を明らかにした。2)薬剤パッケージを対象として,薬効を示唆する触覚記号と容量の異なるパッケージが存在することを伝える触覚記号の具体案を示した。3)押しボタンスイッチを対象として,スイッチの操作感と操作目的,スイッチの物理特性の関係との対応関係を明らかにした。さらに,スイッチの操作感評価においては,時間の要因を考慮する必要があることを示唆した。
著者
楳田 洋太郎 田久 修
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、直交変調構成の包絡線パルス幅変調(EPWM)スイッチング動作型送信機について、実験的に初めて電力増幅器を用いた変調精度評価を行った。また、直交変調型EPWM送信機の実質的な電力効率の指標として、復調後信号点における振幅の大きさを表す実効復調電力効率を提案した。さらに、周波数可変で、電力損失、変調精度劣化を抑えつつ、量子化雑音による帯域外輻射を低減するため、180°ハイブリッド電力合成を用いた電力増幅器挿入型トランスバーサルフィルタを提案した
著者
蔵中 しのぶ 福田 俊昭 山口 謡司 相田 満 野口 恵子 谷 晃
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

学際研究の試みとして、日本文学を軸としつつも、中国文学・歴史学・建築学・情報学の諸分野から参加者をえた本研究は、従来、歴史学の一分野として、また、建築学の対象として発展してきた茶の湯研究・茶室建築に対して、日本文学研究の書誌学・本文解釈学、注釈研究・出典研究の方法論を導入することによって、茶道文献の読みそのものを格段に深めることができた。一方、日本文学の側からいえば、茶の湯や茶室建築の用語、茶室の寸法等、日本文学の対象の外にあった茶道文献に対して、新たなアプローチをおこない、日本文学研究における茶道文献の有効性を実証することができた。茶の湯を「場」として成立した「座の文芸」の特質は、日本文学のさまざまなジャンルとも複雑に絡み合っている。分析対象として選定した『茶譜』の本文校訂と注釈作業をおこなうなかで、日本文学研究における茶道文献の有効性を検証し、日本文学と茶道史研究の関係論を構築するための基礎データの集積を進めることができた。さらに、国際的な意義として、第二年度のヨーロッパ日本研究協会への参加、日EU交流年認定イベントに認定されたチェコ・カレル大学でのインターナショナル・ワークショップ「茶の湯と座の文芸」の主催、第三年度の中国・魯東大学における国際学会への参加は、茶の湯と日本文学というテーマに対する国際的な関心の高さを実感させてくれた。本プロジェクトが主催したチェコでのワークショップには、ヨーロッパから4名の研究発表者の参加をえた。大東文化大学語学教育研究所『語学教育フォーラム』第11号として刊行された研究報告書には、論文編として、蔵中しのぶ「茶の湯と座の文芸」、福田俊昭「五山文学にみえる茶」、山口謡司「『茶譜』の諸本について」、相田満「茶文化のオントロジ」、野口恵子「茶の湯と連歌-共営する場に関する一考-」、さらに、大東文化大学語学教育研究所客員研究員ションタル・マリ・ウエーバー「『茶譜』巻-における茶人のネットワーク-ネットワーク分析による寛永文化の時代区分論の試み-」、谷晃「『茶譜』論考(一)」の論文7本、「『茶譜』人名索引」、注釈扁として『茶譜』巻-注釈を掲載した。本研究の取り組みは、これを基盤として、他のさまざまな分野の研究への進展とコラボレーションの可能性を秘めている。第一に大東文化大学東洋研究所において「茶の湯と座の文芸」研究班をたちあげ、国会図書館本を底本とし、東洋研究所刊行物として継続して『茶譜』全18巻の注釈研究を完成させるとともに、第二に情報学の分野からは、『茶譜』データベースの作成に着手するとともに、相田満が手がけてきたシーソラスとのコラボレーション、第三に建築学の分野からは、矢ヶ崎善太郎を中心として、『茶譜』の寸法を忠実に復原した茶室建築の画像化を予定している。
著者
山川 正 田中 俊一
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

酸化LDLは血管平滑筋に対する分化、増殖、遊走促進作用を有し、動脈硬化の成因として非常に重要であるが、その機序は不明であった。そこで、酸化LDL刺激により発現する遺伝子をDNAチップを用いて網羅的に解析し、helix-loop-helix Id3(Id3)の発現亢進、サイクリン依存性キナーゼ抑制因子(CDKインヒビター)であるp21WAF/Cip1とp27Kip1発現の低下が認められた。酸化LDLによるId3発現亢進はId3promotor/luciferaseのchimera plasmidを用いた解析およびActinomycinDを用いた実験から、転写の亢進及びmRNAの安定化によるものであることが明らかとなった。更に、Id3発現亢進はp38MAPKの阻害剤SB203580およびp38MAPKのdominant negative mutant用いた検討により、p38MAPKを介していることが示唆された。次に、Id3 dominant negative mutantを強制発現させたところ、p21WAF/Cip1とp27Kip1発現の低下傾向が認められたが、その効果は部分的であり、他の機序が示唆された。以上のように酸化LDLは血管平滑筋増殖作用は細胞周期関連蛋白であるhelix-loop-helix Id3が関与していることが明らかとなった。しかし、まだ不明な点も多く残されており今後の検討が必要である。
著者
板垣 正文 若狭 有光
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

核融合装置における磁気センサー信号からプラズマの外側の磁場とプラズマ境界形状を推定する新しい3次元計算手法が開発された.磁場センサーおよび磁束ループ信号に対応する境界積分方程式を連立させ,3次元ベクトル・ポテンシャルを未知数として解く.未知数の数を減少させるため,定式化においてはプラズマの回転対称性を導入した.大型ヘリカル装置について逆解析した結果,多数の磁気センサーをプラズマ外に配置すれば,磁場分布と最外殻磁気面形状をある程度の精度で推定できることがわかった.
著者
坪木 和久
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

集中豪雨や豪雪をもたらす激しい降水系は、メソスケール(中規模、水平スケールで数10kmから数100kmの規模)に組織化された対流システムである。これをメソ対流系と云う。メソ対流システムのリトリーバルでは、ドップラーレーダーの速度場の解析法を発展させるとともに、雲解像モデルの開発が不可欠である。メソ対流系は100kmオーダーの構造を持っており、それを構成する積乱雲は数キロメートルオーダーの構造を持っている。これらのシミュレーションにはこうした異るスケールの構造を同時にシミュレーションできるモデルが必要である。ここで開発するべき雲解像モデルは、広域の領域を非常に細かい解像度で覆うものでなければならない。そこで高速の並列計算機で実行できる雲モデルの開発を行った。ここで開発したモデルは、基本方程式系は非静力学圧縮系で、座標系は地形に沿う3次元直交座標である。変数は、流体力学過程について、流れの3成分、温位、気圧、雲物理過程について、水蒸気、雲水、雨水を用いている。雲物理過程は現在のところバルクの暖かい雨のみを含むが、将来的にはバルクの冷たい雨、さらに詳細な雲物理過程の導入を計画している。この新モデルは並列計算機用にデザインされたもので、大規模な領域、高解像度のシミュレーションができる。このモデルのテストとして、ドライの大気では山岳波、KH不安定等をテストした。また湿潤大気では、1999年9月24日に愛知県豊橋市で、台風18号に伴って発生した竜巻のシミュレーションを行った。広領域でかつ100mの水平解像度のシミュレーションで竜巻の親雲となる準定常的なスーパーセルが形成され、その中心部付近で竜巻に相当する規模と強さの渦が発生した。これより雲解像モデルの並列計算により竜巻をその親雲と同時にシミュレーションでき、そのメカニズムを解析できる可能性が示された。この他に既存のモデルを用いて、梅雨時に小規模な山岳の風下に形成される降雨帯のシミュレーションを行い、その形成メカニズムについて調べた。
著者
瀬戸 宏
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

中国演劇のリアリズムと話劇は密接に結びついている。リアリズムを主な内容とする演劇は、日本では近代劇とも呼ばれる。このため、本研究では、まずリアリズムの演劇、話劇、近代劇の相互関係を研究した。『話劇と近代劇』(西洋比較演劇研究会会報二十三号)にその研究成果が詳述されている。続いて、中国演劇のリアリズム概念を作品に即して具体的に考察するため、中国におけるリアリズムの演劇の代表作とされる曹禺『雷雨』を分析してその近代性を明らかにし、中華人民共和国建国後の上演とテキスト出版において『雷雨』の近代性が変質せざるを得なかったことを具体的に分析した。この面での研究成果は、『曹禺「雷雨」の近代性』(『野草』63号)、『曹禺作品上演史からみた中華人民共和国50年-曹禺「雷雨」を中心に』(『現代中国』74号)で詳述した。また、演劇のリアリズムを中国だけでなく世界演劇全体の中で考察するため、『演劇学論集-日本演劇学会紀要』三十八号「演劇のリアリズム」特集編集責任者となり、共同討議「演劇のリアリズムとは何か」を主宰し冒頭発言と討議の結語を担当・執筆した。研究の過程で「曹禺作品上演史からみた中華人民共和国50年」(日本現代中国学会第四九回学術大会)、「試論《雷雨》的家庭性質」(曹禺誕生九十周年記念学術研討会)の題目で口頭発表をおこなった。さらに、中国演劇におけるリアリズム概念の成立過程をより厳密に考察するため、中国現代演劇運動が主に展開された上海・北京の五四運動時期新聞記事・上演広告を調査した。調査結果は、平成十三年度中に論文・資料研究として公表する予定である。全体として、研究課題についてかなり大きな成果をあげることができたと考えているが、残された問題も多く、今後も研究を継続していく。
著者
西 敏行 花岡 良一
出版者
富山工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

高圧架空配電系統において、絶縁電線は、電柱にがいしとバインド線により支持されている。配電線の近傍に落雷が発生した場合、電線の心線には誘導雷サージ電圧が侵入する。このサージ電圧が、電線の支持点に到達すると、がいしの絶縁破壊に続きバインド線先端から電線表面に沿って沿面放電が進展する。この沿面放電が、電線溶断事故などの原因となる。このような災害を未然に防ぐためには、沿面放電現象の特性解明が重要となるが、現在では未解明な点が多く存在している。本研究では、誘導雷サージの波高値V_m(V_m=±90、±100kV)、波頭長T_f(1.2≦T_f≦100.0μs)が、電線表面を進展する正、負極性沿面放電にどのような影響を及ぼすかを観測し、以下のような新しい知見を得た。1、正極性沿面放電(1)進展長について波頭長T_f=1.2〜8.0μsでは、波高値の上昇とともに単調に増加し、進展長に相違は見られない。しかし、波頭長T_f=10.0〜100.0μsでは、波高値の上昇とともに進展長は単調に増加するが、波頭長が長い場合ほど短くなる。T_f=1.2、100.0μsにおける進展長をV_m=-100kVの場合について比較すると、T_f=100.0μsでは、T_f=1.2μsの場合より、約30%に減少する。(2)進展様相について 波高値、波頭長が変化しても影響を受けず、電線表面をジャンプしながら進展する。2、負極性沿面放電(1)進展長についてT_f=1.2〜20.0μsでは、V_mの上昇と共に進展長の増加、減少領域が現れる。しかし、T_fの増加と共に、進展長の減少領域は縮減する。T_f=50.0、100.0μsでは、V_mの上昇と共に進展長は単調に増加するようになる。しかし、T_fの増加と共に進展長は抑制される傾向を示す。(2)進展様相についてV_m≦100kVでは、T_fの増加とともに放電先端で発生する離散的なジャンプ現象が抑制される。負極性沿面放電では、放電先端におけるジャンプ現象の衰退が進展長を助長することが明確になった。
著者
太田 浩一 菊池 孝信
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

マイクロアレイ法による炎症関連遺伝子の検索1)ラットの足底にリポポリサッカリド(LPS)を投与し、投与後2,6,12,24時間めに、虹彩・毛様体組織(各時間8匹16眼)を切り出し、total RNAを抽出した。2)total RNA中のpoly(A)+mRNAより、2本鎖cDNAを合成し、gel matrix上のDNAオリゴヌクレオチドプローブ(UniSet Rat I Expression Bioarray chip ; Motorola Life Sciences)をハイブリダイズさせ、洗浄、streptavidin-Cy5による染色を行う。Axon GenePix Scannerでスキャン後、発現量を解析(CodeLink ; Motorola社)解析した。3)9,911遺伝子中、1,930遺伝子(約20%)の発現 がいずれかの時間において2倍以上に増加、または0.5倍以下に減少した。4)いずれかの時間において3、5、10倍以上の増減した遺伝子数はそれぞれ、(991,748),(402,327),(140,95)であった。5)増減遺伝子数は6時間、24時間後に多く、経時的な発現変化のクラスター解析中である。6)既報同様、その遺伝子発現が確認されている炎症性サイトカイン(interleukin(IL)-1beta, IL-6)ケモカイン(RANTES)、iNOS等に関しては、別個体のmRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCRを行い、マイクロアレイの結果と同様、2ないし6時間後の発現の著増(正常眼に比し、20から500倍)が確認された。新たにimmediate early genes(Jun B,c-Fos,and c-Jun)の発現が明らかとなり、特にJunBの発現は免疫組織化学染色にて確認された。
著者
川端 寛樹 田島 朋子 田島 朋子
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

1)国内分離のライム病病原体であるボレリア・ガリニゲノムからマダニ唾液腺へのボレリア接着因子として、機能未同定の遺伝子を複数検出した。表層抗原であるBB0616ホモログは、マダニ唾液腺への接着に関与していると思われる。一方、その機能ドメイン、接着リガンドなどは未同定である。2)国内分離ボレリアのマダニ中腸への接着性についても検討を行った。ボレリアの中腸組織への接着は、未吸血マダニ中腸組織で見出された。また、接着阻害実験に用いた細胞間マトリックスの一部は、その接着を阻害した。他方、これまで知られているglycosaminoglycansへの結合能は本ボレリアでは見出されなかったが、ボレリアのマダニ中腸組織への結合を阻害した。今後、これらボレリアの接着因子の同定を試みている。
著者
三嶋 雄二
出版者
(財)癌研究会
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

抗体医薬は、副作用が少なくがんの治療効果を高める反面、治療費が高額になる傾向があり、医療経済学の観点から、効果の期待のできない患者に対する投与は避けることが重要である。そのためには治療効果を正確に予測する技術が必要とされている。本課題では、各種抗体医薬の効果予測技術を確立することを目的とし、顕微鏡下で生きたがん細胞の抗体医薬に対する感受性を評価する方法を確立することで、迅速かつ被験者への負担の少ない診断法を開発した。
著者
越後 成志 橋元 亘 森川 秀広
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

我々は、IL-18の抗腫瘍効果の詳しいエフェクター細胞に関してマウスの系を用いて解析を行い、その抗腫瘍効果のエフェクター細胞がNKT細胞ではなくNK細胞であること(論文投稿中)、またIL-18がNK細胞を活性化し腫瘍細胞をアポトーシスに陥らせる結果、樹状細胞を介して効率良く腫瘍特異的CTLを誘導すること(Tanaka et al. C. Res. 2000,60:4838-4844)などを明らかにしてきた。平成13年度は、ヒトでのIL-18の抗腫瘍効果、特にその詳しいエフェクター細胞の解析を行った。ヒト末梢血をHuIL-18で14日間刺激・培養し、リンパ球の表面マーカーの変化を解析したところ、CD3-D56+(NK)細胞が著明に増加することが分かった。また、その際の培養液中のIFN-γ産生量をELISA法にて測定したところ,IL-2単独で培養した場合と比較して、多量のIFN-γ産生がみられることを明らかにした。IL-18の添加培養でNK細胞が増加していること、またIFN-γの産生増強がみられたことより、IL-18がヒトにおいても抗腫瘍効果を発揮することが予想された。そこで次に、IL-18により活性化されたリンパ球が腫瘍細胞に対してアポトーシスを誘導するかどうかを検討した。HuIL-18を添加培養したヒト末梢血リンパ球とヒト腫瘍細胞株とを8時間共培養した後、腫瘍細胞をAnnexin-V, Phi-Phi-Lux, PI等で染色することによりアポトーシスの検出を試みた。その結果、IL-2単独で培養した場合と比べてIL-18+IL-2で培養したとき、腫瘍細胞のアポトーシスが増強された(論文準備中)。以上のことより、ヒトの系においてもIL-18が抗腫瘍効果を有することが明らかになり、ヒト悪性腫瘍治療への臨床応用の可能性が示唆された。
著者
荻田 喜代一 米田 幸雄
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

ddY系雄性マウスにKA(30mg/kg)を複腔内投与し、一定時間経過後に海馬および大脳皮質から細胞核抽出液およびミトコンドリア抽出液を調製した。ゲル移動度シフト法によりそれぞれのAP-1DNA結合能を解析したところ、KA投与はいずれの部位でも細胞核抽出液およびミトコンドリア抽出液中のAP-1DNA結合を著しく増強させることが判明した。AP-1DNA結合能はKA投与後1時間で有意に増強し、その増強は3日後まで持続した。また、スーパーシフト法およびウエスタンブロット法により、本結合増強に関与するAP-1結合蛋白質はc-FosおよびFos-Bであることが判明した。さらに、KA投与動物で発現したc-Fos蛋白は細胞核内ばかりでなくミトコンドリアのマトリクス内にも存在することが免疫電子顕微鏡法により明らかとなった。次に、ミトコンドリアDNA(mtDNA)へのAP-1の結合について解析を進めた。mtDNAの転写調節部位と考えられる非翻訳領域についてAP-1認識配列を検索したところ、10箇所にAP-1類似配列(MT-1〜MT-9と命名)が見出された。これらの類似配列の中で、MT-9がAP-1結合に対して最も著明な拮抗作用を示した。また、放射性MT-9プローブを用いたゲル移動度シフト法は、KA投与動物から得られたミトコンドリア抽出液中にMT-9結合蛋白質が存在すること、およびそのMT-9結合蛋白質がAP-1構成蛋白質であるc-Fos、Fos-B、c-Jun、Jun-BおよびJun-Dにより構成されることを示した。さらに、ゲノム免疫沈降法によりc-Fos蛋白質がmtDNAに結合することも確認された。以上の結果より、カイニン酸シグナルにより発現した転写因子AP-1は細胞核のみならずミトコンドリア内にも移行し、mtDNAの転写調節領域に結合することが明らかとなった。これらの事実は、グルタミン酸シグナルがmtDNAの転写に影響を与えることによりミトコンドリア機能変化を起こす可能性を推察されるものである。