著者
錦織 淳美
出版者
岡山大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

○研究目的 :病院-薬局薬剤師の真の連携を実現するために、病院薬剤師による入院患者の服薬アドヒアランス評価および患者指導データを薬局薬剤師と共有し、患者の外来診療での服薬アドヒアランス総合評価を各種病態・検査値の変化と共に経時的に観察する。さらに、如何なる患者の特性が服薬アドヒアランスの維持に影響を与えるかを薬局薬剤師からの情報をもとに明らかにする。○研究方法 :対象は岡山大学病院循環器内科病棟に入院歴のある冠動脈疾患、心不全の慢性疾患患者とし、以下の調査を行った。1, 入院患者のこれまでの服薬(服薬アドヒアランスを含む)に関する自己評価、2, 病院薬剤師による服薬評価、3, 薬局薬剤師による服薬評価、4, 外来での病識・薬識の経時的変化調査、である。薬剤師は、患者の入院・外来通院中における病識・薬識・内服コンプライアンスを各5段階で評価を行った。また薬局薬剤師は、処方薬の残数チェックにより、服薬アドヒアランスの厳守度を経時的に評価した。また、心血管リスク因子として脂質検査値(LDL、HDL、TG)、血糖検査値(HbA1C(NSGP)、IRI)や腎機能検査値(Cr、UA、K)を経時的に調査した。さらに、患者の疾病再発率と患者の特性との相関を検討した。○研究成果 :計10例の患者情報を収集・解析した。病院および薬局薬剤師間で病識・薬識・内服コンプライアンス評価が一致する場合がほとんどであったが、一部、評価が異なる場合もみられた。アドヒアランスに問題のある患者が抽出され、より効果的な指導や処方提案につなげていくことが可能であることが明らかとなった。また病院との患者情報共有により、適切に患者服薬指導を実施することができたと薬局薬剤師からの高い評価を受けた。今後、研究を継続し、外来患者の薬物治療管理・検査値変化・予後改善について調査を重ねていく。
著者
安原 由美子
出版者
つくば国際大学東風小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

「研究の目的」4年生の説明文の読解学習に、学習者が自らの学びをメタ認知し、<鉛筆対話>を取り入れ学習者同士が学び合う授業を行った。そのことにより、学習者は教材に向き合い筆者とかたり合うことで批判的な読みを行い読解力が育成されることがわかった。そこで、低学年においても読解活動に<鉛筆対話>を取り入れることの有効性について実践研究を行う。「研究の方法」「書く」ことに抵抗がなくなってきたと思われる2年生を対象に研究を行った。5月の初期段階と2月に自身の担当学級と大阪とで行い比較検討を行った。その間も説明文学習においては、<鉛筆対話>を取り入れた実践を継続する。また、<鉛筆対話>を取り入れない指導も行い比較検討する。「研究の成果」2学年においても、「思い」を交流し合うことはできる。単に(わかったこと)を交流し合うのではなく、(わからないこと)も出し合うようにした。友だちとの考えの違いに気付かせるための方法としては有効である。また、説明文の読み取りの手順を意識化させることにより「説明文の書き方」に目が向くようになってきた。学年末には、「筆者の書き方の上手なところ」を発見し、自分の書き方に取り入れようとする様子も見られた。(こんなことも書いてほしいなあ・なんで書いていないのかなあ)などという教材文に対して積極的に関わるようになってきた。しかし、低学年の場合は「思考」が拡散する傾向があるため時間を制限し、指導者として学習者同士が話し合う論点を明確に示す必要がある。私立と公立の児童に大きな違いはないが、「書きなれている」という点では、私立の児童の方が量的に多く書ける傾向がある。今回茨城の指導者に説明文指導についてのアンケートを行った。前回の大阪・秋国と比較しても「説明文の指導法」に変化がなく、指導者として「力のつく」指導法を模索する姿が見えた。学年の発達段階にそった<鉛筆対話>を取り入れた実践を開発していきたい。
著者
乾 義文
出版者
株式会社エリジオン
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

小学校英語については各学校の活動のばらつきにより、円滑な接続の観点から中学校との緊密な連携が重要である。また、小中の接続時期における生徒の情意面は不安定であり、入学前の不安を中学校時期に楽しさへ変えるものは、「わかる/できる」という安心感であることが分かっている。本研究ではこれらの課題を解決する手段として、小中学生の交流学習を含む新たな英語学習モデルを作成し、その効果を検証した。新たな英語学習モデルでは今回開発したWEBサイトにアクセスして交流学習を行う。事前に交流する小中学生のペアを登録しておき、まず小学生が英語にしたい文章を日本語で入力する。次に中学生がその文章を英語に翻訳し、発音する。その際に英語の堪能な協力者がその内容に対して指導を行う。完成したら文章や音声を小学生がアクセスできる形で登録する。そして小学生はその内容を確認して自分の話したかった文章を実際英語で話す。この一連の流れにおいてデータはサーバ上に登録される為、交流は非同期的に行うことができる。本研究では上記の英語学習モデルを小学六年生とその小学生が翌年通う中学校の三年生の間で検証した。中学生の英語の内容に関しては中学校の英語教師が確認した。交流学習実施後に小中学生双方にアンケートをとり、授業を担当した教師にも聞き取り調査を行い、その効果を測定した。その結果、中学校で学ぶ英語に対する不安が少なくなったと感じた小学生は55%であった。また、中学生には教えるという意識が働き、伝わりやすい発音などを心掛けている様子が確認でき、自身の英語学習にも有効だと感じた生徒が97%いた。本研究成果から、新しい英語学習モデルにより小中学生双方にとって効果の高い英語学習が行えることが明らかになった。実施に当たっても同期的な交流と異なり学校間で実施日を一致させる必要がなく負担の少ない形で行えるため、今後広く利用されることが期待できる。
著者
毛利 千里
出版者
香川高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

研究目的本研究の目的は、拡張現実技術:ARによる新しい表現手法を放射線シミュレーションソフトウェアに導入し学習者の試行を重視した体験・問題解決型の安価な放射線遮へい実験に関する教材を開発することである。研究方法教材はブロック型の材料、USBカメラ、マーカー、ソフトウェア、パソコンから構成している。この教材の利点は、学習者が実際の材料に触れ、重さや質感を直感的な操作を可能である。ソフトウェアの開発環境はVisual Studioを用い、量子線計算コードEGS4とシミュレーション結果を表示するARアプリから構成されている。EGS4とは電子・陽電子・ガンマ線などの量子線に関してベンチマークの実績が豊富な電磁カスケード輸送コードである。ARアプリは画像認識技術を原理としたツールで「マーカー」と呼ばれる任意の図形を判別し、実写画像と3次元CGの合成表示できるアプリケーションである。3次元CGはEGS4の出力をAR用に変換し作成した。材料は電子密度の違う材料として、発泡スチロール、コンクリート、鉛を用い、エネルギーは原子力発電所で発生する大きさ:10MeVを中心に1MeV、100MeVの3種類とした。研究結果本システムを2010年10月に東京で行われる国際会議「SNA and MC 2010」へ日本原子力研究開発機構の協力のもと出展し、専門家らに対してデモンストレーションを行った。その時に得た知見を参考にシステムのさらなる改善を行った。さらに一般への公開として本学の学園祭と愛媛大学の理化学イベントに四国電力、日本原子力学会中国四国支部と共同で展示した。300~400名程度の人がブースを見学・体験してくれた。参加者にアンケートを実施し9割以上の人が参加したことで自然や科学・技術への興味が高まったと回答があった。これより本教材の教育的な効果の高さを実証することができた。
著者
山内 誠
出版者
仙台高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、平成24年度奨励研究「電気自転車とリヤカーを利用した災害時用支援ミニステーションの構築」(課題番号24918019)で開発した電動補助リヤカーの問題点を改良し、災害時の救援物資運搬や要救助者搬送に有効な改良型アシスト付電動補助リヤカーの再開発を行った。また、避難後の支援装備として人力発電とソーラー発電装置の開発を行い装備品としてシステムへの組み込みを行った。これらをセットとし、電源供給や照明設備等を兼ね揃えた電動補助リヤカーを母体とした、災害時用支援ミニステーションの再構築を実現させるため、以下の研究活動を行った。研究実施計画に沿って報告する。1. 災害時用の電動補助付リヤカーの改良、及び設計・製作駆動システムの検討を行い、マイコンにて駆動2輪の電流によるトルク制御を実現した。リヤカーの車体は、コンセプトを活かしつつ構造を見直し、軽量且つ強度のある構造とした。2. 人力による電気自転車用発電装置とソーラー発電装置の開発とミニステーションヘの組み込み避難後の照明・携帯電話充電等の電源確保は重要であることから、発電装置の開発を行った。電気自転車を利用した人力発電装置とソーラー発電装置の開発を行い、実用性を確認した。3. 発電装置の性能と発電効率の評価人力・ソーラー両発電装置の発電性能を評価し、発電性能と発電効率の改善を試みた。電源は100V, 24V, 12Vを利用でき、複数のUSBコンセントでの使用と、持ち運びも可能なものとした。4. 電動補助付リヤカーを母体とした発電装置を有する災害時のためのミニステーションの再構築電動補助付リヤカーの周辺設備に必要と考えられる電源・USBコンセント、防災用品、照明装置、及び発電装置等の組み込みを行い、災害時のための支援ミニステーションの再構築を行った。5. 実用性の評価と商品化の検討、研究取りまとめ電動補助リヤカーを母体とした災害時支援ミニステーションの完成度を確認。今後も更なる改良を行う。本研究の開発コンセプト・成果を各種研究発表会にて紹介し、防災・減災について啓蒙活動を行いたい。
著者
松田 政子
出版者
山形大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、幼児が意欲的に取り組み表現する楽しさが味わえるような、造形遊びの教材とその提供方法について実践を通し考えていくことを目的とした。そこで、文献や先行事例、各種研修会による素材とその活用方法についての教材研究を積むと共に、3歳児の保育にこれらを取り入れ、その有効性について検証してきた。その結果、以下の1〜3の成果が得られた。1 粘土は、容易に形を作ることが出来、繰り返し楽しめる魅力的な素材である。また、安全な小麦粉粘土、造形のしやすい油粘土、着色できる紙粘土、ダイナミックに活動できる土粘土など色々な種類がある。手作りで楽しめる新聞紙粘土や、糊粘土、石けん粘土などもある。これらの中から、子ども達の育ちに合わせて粘土を選び準備していくことで、のびのびと活動する姿が見られた。素材の特性をよく知る、そして子ども達への願いに応じた提供をしていくことは、保育者の欠かせない役割であるといえる。2 3歳児は、クレヨンであれば、ぐるぐる点々ジグザグをリズム良く描くことに、絵の具であれば色水作りや塗りたくりに喜んで取り組んでいた。偶然の形や変わっていく形を見立て、お話しする様子も多く見られた。これまでは、自分の顔を描くなど保育者側に出来上がりのイメージがあり、描き方など誘導してしまうことが多かった。だがそれ以上に、子ども達が自由にかかわり、試しながら、素材の面白さを見つけていけるような活動が、幼児の興味を引き出すとわかった。3 市販の画材の他、石や木の枝、草花などの自然物、箱やロール芯などの廃材、ストローや毛糸など身のまわりのもの等、実に様々なものが造形の教材となる。また、紙ひとつの素材をとってみても、描く、切る、貼る、組み合わせる、並べるなど、多様な造形遊びが考えられる。幼児期の造形遊びでは、これらの教材との出会いを作り、子どもと共に「色」と「形」の面白さに心を動かしていく保育者の感性と姿勢が、幼児の興味と意欲を引き出すということが成果として得られた。
著者
玉木 宏樹
出版者
島根大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

【研究目的】去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の標準治療としてドセタキセル(DTX)が使用されるが、徐々に耐性を示し予後不良となる。当院では、DTX耐性CRPCに対し、DTXにサリドマイド(Tha)を併用することで再び前立腺特異抗原の低下を認めた症例を経験している。既に我々はヒト前立腺癌PC3細胞(PC3)を用いた曝露実験において、Tha単剤では抗腫瘍効果がほとんど認められないにも関らず、Tha/DTX併用においてはDTX単剤と比較して抗腫瘍効果が増強することを報告している。また、併用による抗腫瘍効果の増強と抗癌剤の細胞外排出機構ならびに耐性化に関与するとされている多剤耐性遺伝子1(MDR1)との関連性は低いことを報告している。本研究では、抗癌剤による癌細胞の細胞死に関連している内因性アポトーシスに及ぼすサリドマイドの影響を検討する目的にて、PC3ならびにDTX耐性PC3(DR-PC3)を用いた研究を行った。【研究方法】DR-PC3はPC3をDTX50nMで4ヶ月以上培養することで確立した。Cell viabilityの測定はWST-8を用いて行った。アポトーシスの解析はAnnexin V-FITC/PI染色後、FACS Calibur flowcytometerにより行った。目的とするタンパク質の発現はイムノブロットで確認した。アポトーシス抑制タンパク質であるBcl-2、Bcl-xLとの関連性は、これらに対するsiRNAのトランスフェクションによりタンパク質の発現を選択的に抑制した状態で確認した。【研究成果】DR-PC3に対するDTXのIC_<50>(Half maximal inhibitory concentration)は800nMでありPC3におけるIC_<50>6.25nMと比較して約100倍の抵抗性を示した。PC3においてsiRNAのトランスフェクションによりBcl-xLの発現を抑制した結果、DTXによるcell viabilityの有意な低下ならびにアポトーシスの著明な増加を認めた。これらの結果、Bcl-xLがPC3のDTX感受性の増強に関与していることが示唆された。現在、ThaがBcl-xLの阻害に影響を及ぼしている可能性について、PC3ならびにDR-PC3を用いて検討を行っている。これらの検討により、DTX耐性CRPCのDTX感受性を回復するための薬剤としてのThaの有用性が明らかとなる。
著者
古川 勝哉
出版者
上越市立中郷小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

「発達適合的再現」と「誇張」を視点とし,系統性と競争課題を明確にした「ベースボール型」ゲームの単元を提案するとともに,「ベースボール型」ゲームの教材的可能性を探ることとを研究の目的とし,(1)発達適合的再現を視点としたゲームの工夫,(2)「誇張」を視点とした競争課題の明確化,(3)子どもの学びから「ベースボール型」ゲームの教材的可能性を探ることを研究内容とした成果を次の4点にまとめる。○「ベースボール型」ゲームにおいて,「発達適合的再現」と「誇張」の両方の視点からゲームを修正することによって,「ベースボール型」ゲーム本来の面白さを損なうことなく,学習内容を確実にかつ楽しく学ぶことができる。○「ベースボール型」ゲームを初めて学習する第3学年の子どもでは,1塁ベースと本塁だけを設定したゲームから始めることによって,「打者がボールを打った後,1塁ベースを経由して本塁(ゴール)を目指す」という進塁の原理を理解することができるようになる。○第6学年の子どもでは,主に「誇張」の視点からゲームを修正し,段階的に競争課題を示していくことにより,自分で状況を判断しプレーすることができるようになる。○打者(走者)と守備が次の塁に到着(送球)するまでの速さを競う二次ゲームにおいて,打者(走者)をどこでアウトにするか判断したり,次の塁を陥れる/阻止するといった攻守の作戦を考えたりすることは,「ゴール型」の他のゲームに戦術や技能が転移する可能性がある。また,「ベースボール型」ゲームは,他の「型」にはない「進塁すること」を学習することができる唯一の教材である。このことから,「ベースボール型」ゲームは,教材的価値が非常に高いと判断できる。
著者
石谷 優行
出版者
神奈川県立横浜平沼高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

本研究は,昨年度,一昨年度に引き続き、「黒板での授業」「コンピュータの画面での表示や操作」「具体物」を直感的に生徒がとらえ,その中のおもしろさ,不思議さといった点に着目して発展的に考えられるようになるかについて検証したものである.本年度は,本校2年生,数学Bの「ベクトル」の授業に焦点を当て上記の3点を絡めた授業展開を行った.本年度の大きなポイントは,「具体物」のひとつとして「折り紙」を導入したことにある.今回,中心的に取り上げた例題は「平行四辺形ABCDにおいて,辺CDを2:1に内分する点をE,対角線BDを3:1に内分する点をPとする.3点A,P,Eは一直線上にあることを証明せよ.」である.すでに生徒たちはk倍が示せれば3点は一直線上にあるということが「黒板での授業」から分かってはいるものの,代数的処理のみに依存してしまいkの意味するところをはじめとして「実感を伴って分かっている」とは言い難い状況にあった.そこで,この問題を折り紙を使って実際に折ってみようということを何回か実践した.まず正方形から平行四辺形を作るところで生徒たちは、試行錯誤していたが,ある生徒の感想「正方形から平行四辺形を作るのは最初はいろいろ考えてもうまくいかなかったけど,ただ単に平行な線が2組交わればいいっていうことだけに気づいたらすぐできた.難しく考えなくてよかったんだと思ってほっとした.」を見てみるとこの感想は,数学は常に「難しく考えて解くもの」ということにとらわれているところから,「そうでなくていいんだ」と,ほっとしたことをまさに表現していると感じる.そして折り紙による2:1に内分する点や3:1に内分する点の折り方などまさに「折り紙の独壇場」といったところであった.また,折り紙を使った授業では、生徒同士による相談や意見交換など,言語活動が自然発生的に生まれるメリットもあった。そして最後に,3点A,P,Eが一直線上にあることを,定規を用いることでk倍の意味を確認していった.生徒たちは「仲間のどのものも本当にそうなる」と確認し,まさに教科書に書いてあることが実感を伴ってわかった瞬間であった.このあとPCにより,同様の操作を行い,平行四辺形を様々に変化させてもこの関係性が成り立つことを確認した。また,マウス操作のコンピュータのみならず,タッチパネル式PCやグラフ電卓等でも検証した.また生徒たちにオリガミクスの芳賀氏の「芳賀第一定理」を紹介したところ、後日,なぜそうなるのかとレポートにまとめた生徒も居て,その達成感はまた次のものをやってみようとする意欲につながって行った.通常行われている単なる「黒板での授業」だけでは得られない成果が本実践により得られた.
著者
松平 雄策
出版者
新潟大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

未曾有の被害をもたらした東日本大震災。2年経過した今日でも未だに、震災の爪跡を残した被災地の様子がマスコミ等で映し出されます。当研究は震災直後、陸路等の寸断で孤立した人々を映像で目の当たりにし、空路を使用し安全を考慮した無人の輸送システム,飛行ロボットを開発できないものかと思い、先ずは動力となる小型ジェットエンジンから着手しました。さらに、研究者の所属する熱工学研究室では、様々な熱機関も講義に取り入れており、学生にエンジン構造を享受するのにも役立つものと思い、この研究テーマとしました。研究者が所属する研究室に於いては、創造性豊かな技術者を育てるため、無人航空機UAV (Unmanned Aerial Vehicle)用の超小型ジェットエンジンの開発と、それを活用した民生利用UAVに、1システムの検討を創造教育に取り入れています。今回頂きました科学研究費補助金の助成により、小型模型のジェットエンジン(外郭寸法φ150mm×200mm)を製作(参考文献:ENGINES FOR MODEL AIRCRAFT by KURT SCHRECKLING)、さらにリニアガイドとロードセルを組み合わせた推力測定装置を開発しました。ジェットエンジンは手作りながら良好なアライメントが得られ(エア・コンプレッサーのエア吹きつけのみで、8000rpmを出力)、軸振れによる振動も少なく、高回転数までスムーズに運転可能となりました。またこの装置は、学生に対しても教材として活用し、熱機関,ジェットエンジンの構造を知るのに、一役を担っています。最後になりましたが、平成24年度科学研究費補助金を助成していただき、誠にありがとうございました。
著者
重岡 洋平
出版者
広島商船高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

○研究目的本校の商船学科学生は、本校における4年半の授業や実験実習に加えて、1年間の大型練習船による国内外の航海実習を通して、航海に必要な知識や技術を学んでいる。この航海実習において船舶での輸送航路の重要な要衝となる海峡や運河等を通過し、実際に航海実習で目にすることは学生にとって非常に有用である。しかし、近年は燃料の様々な問題から海外航路の重要な通過点である海峡や運河等は通航しなくなった。そこで本研究では世界中の船舶の航路の中でも重要な役割を担っている運河を模型とし、運河の往来および構造を視覚約に学ぶことができる教材の開発を目的とする。○研究方法運河の模型として、世界三大運河の一つであるパナマ運河を選ぶこととする。パナマ運河は年間1万隻以上の船舶の通航があり、世界的に見ても重要な運河である。また、閘門式と呼ばれる閘室内に船舶を入れ閘門を閉じ内部に水を貯め高低差のある運河をつなぐ構造を持ち、パナマ中央部のガトゥン湖も運河の一部として利用している特殊な運河である。この運河を模型にするにあたり、他の研究や教育にも活用されているLEGO EDUCATIONを用いて製作する。また閘門の門が開閉する構造や水を送るポンプなどの複雑な構造は、パーツの組合せで複雑な動きを可能にするLEGO TECHNICを使用することで再現する。○研究成果閘室とポンプをブロックのみで製作したことで、ブロックを組合せた部分から水が漏れ出てしまい、ポンプは水を送る量が少なくなってしまう。閘室も同様に隙間から水が漏れるため、水位の上昇に時間がかかってしまう。また、ブロックそのものが浮力の強い材料であるため浮力を考慮した構造にする必要が生じる。模型を製作する上で、ブロックを大量に使用するため上にあげた部分への考慮と、模型そのものの構造に配慮する必要がある。本校学生と共同で製作し、学生から改良する点はまだ多いが視覚的に体験できる良い模型になったとの評価を得た。
著者
佐藤 加代子
出版者
長崎大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

<研究目的>抗がん剤を含む細胞毒性薬剤の取り扱いの危険性に関しては、医療従事者の抗がん剤曝露を最低限に抑えるために、曝露防止に関して様々な検討がなされており、世界的にガイドラインが作成されている。本邦でも抗悪性腫瘍剤の院内取扱い指針として「抗がん剤調製マニュアル」が出され、医療従事者における抗がん剤曝露に関する注意喚起がなされている。しかし、マニュアルやガイドライン、様々な曝露防止に対する検討がなされているのは、ほぼ注射剤の抗がん剤調製に関する事であり、同様に曝露の危険性が高い散剤についての詳細な検討はない。そこで今回、同じ分包機を使用することによる他剤への汚染、また、汚染された散剤を服用することによる他の患者への影響を最小に抑えることを目的とした。<研究方法>6-メルカプトプリン製剤を自動散剤分包機で分包後、洗浄剤として重曹、酸化マグネシウム、乳糖で洗浄を行った。それぞれの洗浄散剤中に含まれる6-メルカプトプリン量を高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて定量した。<研究成果>洗浄散剤中に含まれる6-メルカプトプリン量は重曹で3回目には検出限界以下、酸化マグネシウムで4回目には検出限界以下、乳糖では5回目でも6-メルカプトプリンが検出された。以上の結果より、洗浄剤として炭酸水素ナトリウムを使用し3回以上洗浄することが最も確実に抗がん剤を洗浄できる方法であることが明らかとなった。当院では、抗がん剤を分包する際は、他の散剤の分包が無い時に行っており、分包後清掃を行っている。効果的な洗浄剤の種類と使用法を明らかにできたことで清掃作業者への影響を最小に抑えることが出来ると考えられる。
著者
若林 教裕
出版者
香川大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

原因側と結果側の「変数」の関係に着目することや, 一つの関係を調べるためには多くの変数を適切に制御したり, データを統計的に評価したりすることが科学の世界では重要であることを学習内容に組み込むことで探究する能力・態度の育成に効果が見られた。また, 変数を意識しながら, 関係する条件を一つ一つ明確にしていく教材を開発したり, 変数に着目させるための教師の問いを工夫したりすることで, 条件制御することの意味を実感させたり, 生徒の誤概念を修正したりすることにも有効であることが検証された。以下にその内容(全18時間)を示す。<基礎編(6時間)>1 : 「科学者は何をしているか」→探究学習の視点を与え, 変数に着目する重要性を知る2 : 「変数を見付けるには」→変数を見付ける活動をさせ変数同士の関係を見極める3 : 「パイプ音の高さは何に関係するか」→制御制御の仕方を身に付ける4 : 「画鋲が上を向く確率は」→データを繰り返しとると数値が安定していくことを学ぶ5~6 : 「温泉卵のでき具合は何に関係するのか」→二つの変数が交互に関係して自然現象が起きる作用(交互作用)や失敗を経験させることで, データ取得の重要性を学ぶ<実践編 : 紙グライダーの探究(12時間)>1~2 : 入力(独立)変数と結果(従属)の変数を選出し探究テーマの決定3~8 : 探究 例)「紙の大きさと滞空時間の関係」「羽根の角度と飛距離の関係」など9~12 : 発表の準備と発表会→発表者には入力・結果の変数, データの回数を意識させる<事後アンケート>本プログラム実施生徒45人(肯定的に答えた生徒の%)Q1 : 自ら研究テーマを設定するのは苦にならない方だ? 学習前45%→学習後73%Q2 : 探究の方法は心得ている方だ? 学習前78%→学習後98%理由 : 自分で変数を見つけ多くの変数を制御しながら関係性を見つけられるようになったから理由 : 先生が決めた変数や課題じゃないから, 先生も結果が謎でわからないのが面白い
著者
佐藤 幹哉
出版者
川崎市青少年科学館
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ほうおう座流星群は、過去1956年に一度だけ大出現を記録した流星群である。研究代表者らは、ダスト・トレイルモデルでこの出現を解明し、そして2014年12月に再度出現する可能性を見出していた。本研究の目的は、2014年に予報通りの出現があるかどうかを観測すること、またその出現状況から、ダストが放出された20世紀初頭における母天体のブランペイン彗星(289P/Blanpain)の彗星活動度を推測することである。流星群は、2014年12月2日0時(世界時)の出現ピークが予測されたため、この観測条件と治安や気象条件などを考慮し、スペインのラ・パルマ島で観測することとした。観測方法は、流星群の活動度の測定のために、世界的な標準方法での眼視計数観測と、高感度ビデオ撮像による流星数観測の2種類を実施した。悪天候により島内南部に移動したため、極大時刻を過ぎてからの短時間の観測となったが、ほうおう座流星群の検出に成功した。眼視観測による流星数は、最大で12月2日0時45分~1時15分に6個を記録した。これは、ZHR(天頂修正1時間流星数)で31.4±11.9の規模であった。一方でビデオでは流星を捉えることができなかった。これは写野範囲が眼視観測より若干狭いこと、眼視観測よりも明るい流星までしか撮像できないこと、予定通りの観測継続時間を確保できなかったことが原因だと考えられた。眼視観測による出現規模から、ダストが放出された20世紀初頭の母天体の彗星活動度は、発見当初の1819年に対して約24.4%に減少していたことが推測された。これは、標準等級(H10)に換算すると、母天体が約1.6等級減光していたことに相当する。母天体は1820年から2003年まで見失われていたが、本研究の結果から、20世紀初頭の年代の母天体が、徐々に彗星活動を低下させていたことが推測された。観測結果は、研究代表者が勤務する川崎市青少年科学館にて報告会(2015年1月10日)を実施し、市民に速報した。また研究成果については、日本天文学会春季年会(2015年3月18日)にて発表した。なお、今回のほうおう座流星群については、ブラジル、アメリカ、カナダなど世界規模で検出の観測が行われたため、それぞれの成果を共有した上で論文に投稿する予定である。
著者
工藤 浩二
出版者
東京都立大江戸高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

1 研究目的現在のところ,国内の高校生においては,アイポジション(Bowen,1978)は単独ではなく,適切なアサーションスキル(関係性維持能力や自他尊重の姿勢など)との交互作用によって初めて適応的なものとなるのではないかと考えられている。このことについて検証を行うことを本研究の目的とした。2 研究方法首都圏の高校生(炉221)を対象として,アイポジション,アサーションスキルおよび不適応状態に関する質問紙調査を実施した。質問紙は,アイポジションについては,高校生用自己分化度尺度(工藤・藤生,2010),アサーションスキル(関係調整および他者受容)については,ENDCOREs(藤本・大坊,2007),そして,不適応状態については,日本版GRQ30(中川・大坊,1985)を利用した。分析は,階層的重回帰分析を用いた。独立〓数として,アイポジションおよびアサーションスキル(関係調整および他者受容)を1ステップ目に投入,次いで,アイポジションとアサーションスキルの交互作用項を2ステップ目に投入した。GHQ30で測定した不適応状態を従属変数とした。3 研究成果分析の結果は,アサーションスキルとして関係調整について分析した場合と他者受容について分析した場合のいずれにおいても同様のものとなった。まず,1ステップ目におけるパス係数(標準化係数)の値はいずれも1%水準以上の高い水準で有意な負の値となった。しかし,その絶対値は,3を上回らず,実質科学的な知見として積極的に意味を認められる程度のものではなかった。また,2ステップ目における決定係数の増分の値は有意ではなかった。これにより「アイポジションがアサーションスキルとの交互作用によって初めて適応的なものとなる」ということは確認されなかった。今後,ネガティブライフイベントなど不適応状態の生起に関連する他の要因も含めた上で,より精緻に検証する必要があると考えられる。
著者
平野 智之
出版者
大阪府立松原高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

同じ仲間どうしの教え合いという意味のビア・エデュケーションをテーマに、私の所属する府立高校において10年以上にわたって展開されてきた「るるくめいと」というエイズ・ピア・エデュケーショングループの実践について調査研究を行ってきた。まず、現役高校生のグループの1年間の活動のすべてにわたって付添い、公演活動の映像の記録、活動前後のミーティング、学習会の音声記録の収集を行った。また、活動を終えた卒業生のインタビュー調査を行い、それらのデータを原稿に起こして、分析を行った。そこでは、ピア・エデュケーションへの参加により、自分たちが伝えるために学び、対話するという主体的な学習によって、例えば、いじめや性に対する違和感などこれまでの被抑圧感から解放され、新たな自分の生き方や考え方の枠組みを獲得する過程が見られた。私は、その過程を坂本(2005)らの先行研究をもとに、<語る-聴く>場での学習主体の変容過程ととらえ、当事者性の獲得という視角から分析を行った。そこで見られた知見は、<語る-聴く>場が、「語る(伝える)」という実践が継続されて自己変容を伴うことである。このモデルが示しているのは、「聴いた」ことを「語る」実践に反映させてからまた「聴く」ことの連環の重要さである,「るるくめいとに入ったことによって、知識をいろいろ得たっていうのもあると思うけど、性的なことに限らず、他の明らかにおかしい差別的な言葉とかに違うと(言える)」という卒業生は、日常的な堤面での性や差別をめぐる言動を批判的に見ていこうとしている。「語り」、語るために「聴き」という連環は自己省察と新たな百説での実践を導いている。このように調査した高校生や卒業生の言葉から、関係性や相互作用で変容し続ける「主体」の可能性を見ることができたと考える。「語る(伝える)」ために「聴く」という関係性の実践がいわば生成的に継続されている学習活動の意義を発見できた。こうした学習活動を坂本(2005)が提唱した<語る-聴く>の相互作用モデルを拡張した学習の「関係性モデル」であるという仮説に到達できた。これが本奨励研究の顕著な研究成果である。
著者
志賀 健司
出版者
いしかり砂丘の風資料館
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

目的:石狩湾沿岸の海岸線に平行な波状地形、花畔砂堤列は、過去6000年間に徐々に陸化していく過程で形成された(松下1979)。現在は海岸林内だけに20列ほどの連続した砂堤列が残されている。繰り返す砂堤の形成には周期的な気候変動が関係している可能性があるため、本研究では、海岸林内の砂堤列の数や間隔を計測すること、堆積物から古環境を推定すること、を目的とした。方法:海岸林内を踏査し、春季に出現する融雪プール(雪解け水の水たまり)の分布を詳細に調べた。融雪プールは砂堤間低地に形成されるため、波状地形を反映している。また、砂堤間低地の2ヶ所で柱状堆積物を採取し、堆積物中の珪藻遺骸を観察し、植物片の放射性炭素年代を測定した。また、同様の砂堤列地形が見られる北見市常呂町の海岸部において、比較観察を実施した。成果:海岸林内で融雪プールもしくは明瞭な谷地形を精査したところ、海岸線と直交方向の長さ450m内に21の低地が見られた。平均すると砂堤・低地は21m間隔で繰り返していることが明らかになった。海岸線から約400m内陸の地点で採取した堆積物は、上部14cmは泥炭質砂、それより下部は中粒砂で構成されており、堆積環境は海浜~砂丘環境から湿地的環境へ移行したことがわかった。上部の泥炭質砂中では珪藻遺骸群集は淡水生種~陸生種で構成されており、今回の研究では、群集には明瞭な周期的変遷は確認できなかった。下部の砂層からは珪藻殻は検出されなかった。地表下6.5cmの木片の炭素年代は230年前(±30年)であった。平均堆積速度は28cm/1000年となり、この地点が砂丘・海浜的環境から林内の湿地的環境へと移行したのは約500年前であったことが判明した。
著者
谷口 陽子
出版者
岡山理科大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

本研究では、世代間の経済的格差が拡大し、生き方についての価値観が多元化する少子高齢時代の日本社会において、高齢期を迎える人びとが自らの家族とどのような関係を取り結びながら生活しているのか、その関わりのあり様は高齢者にどのような充足感をもたらすものか、またもたらさないとするならばそれに必要な方策とはどのようなものであるかについて探るため、2004年の中越地震の災害復興地である新潟県長岡市山古志地域を中心に文化人類学的研究を行った。具体的には、聞き取りおよび参与観察調査を実施することから、山古志地域における個々の高齢者の家族間関係-近隣の家関係-地域復興支援員(中越大地震復興基金の運用により、住民主体による集落運営を支援することを目的に設置された制度)の三者関係に焦点を当て、高齢者の家族観を探った。当地域は、震災後の若年人口の流出により、家族と離れて地域に残り一人や夫婦のみで暮らすことを選択した高齢者も少なくない。2005年に内閣府が実施した「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」によると、日本の高齢者の心の支えは、家族、とりわけ配偶者と子どもに集中しているとの報告がなされているが、申請者の調査による限り、当地域の高齢者においては、家族、とりわけ子どもと離れて暮らす高齢者が家族や地域からの孤立に対する不安が生じにくい生活環境創出の工夫が観察された。それは、地域の災害復興プロセスにおいて、様々なイベントや活動が住民主体で運営され、地域の人たちと関わりを持つ機会が日常的に創出されていることによるものと考えられる。このことから、高齢者の家族観は、個々の人が取り結ぶ近隣関係や地域の各種サービスへのアクセスに大きく影響を受ける可能性が指摘され、今後の調査の継続により、高齢期の家族観を多世代間関係、および地域社会の各種サービスへのアクセスの問題としてより包括的に考察していくことが望まれる。
著者
鈴木 康代
出版者
千葉県南房総市立丸山中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

〈研究の目的〉本研究では中学校3年「水溶液とイオン」で,生徒の興味・関心を高め,自主的に学ぶ意義を感じる学習プログラムの開発を目指した。生徒に自ら学ぶ意義を感じさせる手段として,基礎知識を活用して問題解決したり実験結果から考察したことを表現したりする能動的な活動を取り入れること,モデルづくりや実験など体験学習を増やすこと,日常生活との関連を図ることの三つが有効かどうかを解明しようと試みた。〈研究方法〉1「水溶液とイオン」の単元で生徒の自主的な学びを引き出すため,学んだ知識を活用して問題解決し,考えを表現する授業プログラムを開発する。2 生徒の問題解決を助け興味・関心を高めるモデルや教具を開発する。3 学習内容と生活との関連を図り学ぶ意義を感じさせるため,専門家や企業との連携授業を企画・実施する。4 他の単元においても表現活動やモデルづくり,連携授業が有効かどうかを調査する。〈研究成果〉・単元全体を通して「乾電池の仕組み」を探ることを柱とした学習プログラムを組んだ。生徒は自ら積極的に問題解決しようとする姿勢をみせ,生徒の興味・関心を高め,イオンについて学ぶ意義を高めるのに有効であることが明確になった。・考察の際に生徒一人一人に制作させたイオンモデルを使用したことは,生徒の思考を進めることができ,目に見えないイオンについて初めて学ぶ中学生にとって,有効な手段であることが分かった。モデルと合わせて行った簡易電池作りや自作乾電池作りなどの体験学習は電池の仕組みを考えさせる上で有効であった。・企業や大学,博物館,高校の化学部との連携授業は「化学って凄い」と言う感想をひきだし,学んだことが実生活に生かされていることを実感させ,学習意欲向上に有効であった。・新学習指導要領で取り入れられた内容である遺伝・無脊椎動物の単元で,モデルづくり,連携授業,表現活動等同様の支援を入れた授業を実施した。知識の定着と学習意欲の高揚に効果があった。平成24年度の新学習指導要領全面実施に向けて,言語活動を含む新しい学習プログラムを作ることができた。
著者
竺沙 敏彦
出版者
京都府立洛北高等学校附属中
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

学習指導要領では, 数学的活動や算数的活動(今後, 数学的活動と表記する)が重視され, その中で, 日常生活に数学を利用する活動などが規定されている。この背景として, 一つ目には, 数学は日常生活には役に立たないという意識が強いなど, 現実的な場面と数学との関連性についての生徒の信念の弱さが従前から指摘されていること, 二つ目には, PISA調査の結果が学校教育以外の場でも話題になり, また, 全国学力・学習状況調査や教育課程実施状況調査などにおいても, いわゆるPISA型とよばれる具体的な場面を用いた問題が使われ重要視されていることがある。このような背景と共に, 平成20年1月の中教審答申の中で「算数的活動・数学的活動は知識・技能を身につけるとともに, 思考力・表現力を高めたり, 学ぶことの楽しさや意義を実感したりするために重要な役割を果たす」旨が述べられており, 今後は「数学的活動を活かした指導を一層充実し, また, 言語活動や体験活動を重視した指導」を行うための更なる実践的研究が必要である。しかし, 現在の学校教育の中で, 数学的活動は知識や技能を教えることと比較してまだまだ質量とも充分に行われているとは言い難い現状がある。また, その傾向は小中高と学年があがるにつれ顕著である。その中で数学的活動を更に充実させていくためには, 主に教材開発と評価の研究が必要となる。本研究においては, 現実の問題を解決する, ために用いられる数学的モデリング活動の実践場面においての評価, とりわけ観点別学習状況の4観点の評価を客観的に実施するために必要となる教材の開発, 評価問題や評価手法の整備, 解決過程における評価の段階などの整理を行った。