著者
西川 克之
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

観光は社会の近代化によってもたらされた諸条件を前提としてはじめて成立したものである。多様な観光現象の分析を試みる際には、そうした諸条件への参照に常に立ち返る必要があると思われる。本研究課題では、近代社会が本格的に展開し始めた時代のイギリスにおいて、絵画というメディアによって誘発され、そこに描かれたイメージを手本として自然景観に美的感興を見出していこうとする観光行動に、近代観光のひとつの原型的なモデルがあるとの仮定に立ち、またそうしたあり方が観光の大衆化とそれへの反発というジレンマとも密接に関連していたという枠組みのもとで、実際の観光現象の分析に応用することを試みた。
著者
玉木 俊明
出版者
京都産業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

近世のヨーロッパでは、国境を意識しないコスモポリタンな商人によって、商業情報が伝達された。その中心は、アムステルダムであった。アムステルダムから同質的な商業情報がヨーロッパ各地に拡散し、ヨーロッパは同質的な情報空間となった。それに対しイギリスは、ロンドンを中心にして人為的に形成された「帝国」の内部で、国家の力によって情報が拡散した。このようなアムステルダムとロンドンとの違いは、近世と近代の違いであった。
著者
加藤 孝久
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

フラーレン系ナノ構造体であるC_<60>やカーボンオニオンは優れた機械的・電気的特性を有することが期待されるものの、そのサイズ制御が困難であるため現状その応用がほとんど進んでいない.本研究では貴金属へのカーボンイオン注入法を用い、カーボンオニオンの粒子径の制御とその増大を試み、スパッタAg貴金属薄膜内へのCH_4プラズマイオン注入により、Ag結晶粒界におけるカーボンオニオンの形成が確認され、イオン注入後の真空アニール処理によって、その粒径は17. 4±1. 7nmに増大することが確認された.本研究により明らかとなったカーボンオニオンの粒子成長プロセスを応用することで、今後のマイクロメートルスケール巨大フラーレン粒子の合成が大いに期待される.
著者
大西 武雄
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

p53 の機能を失ったがん細胞は、低線エネルギー付与(LET)放射線(X 線)によって誘発されるアポトーシス出現頻度が低く、放射線抵抗性を示すことを報告してきた。 今回、重粒子(高 LET)放射線は細胞死シグナルが誘導されやすいのは、生のシグナル系に関連する Akt-mTOR Akt、リン酸化 Akt、mTOR、リン酸化 mTOR, rpS6、リン酸化 rpS6、Survivin いずれのタンパク質量およびそれらの活性が効率的に抑制されることによることが明らかとなった。
著者
松田 ひとみ 奥野 純子 柳 久子
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

特定高齢者に対して昼間の活動性の向上と夜間の睡眠効率を高くするために、計画的な昼寝の導入による効果を明らかにすることを目的とした。ピッツバーグの睡眠質問票、GDS15とSF8の質問紙および活動量計と連続血圧計により日内変動に関する測定を行った。その結果、75歳以上の高齢者は夜間の睡眠の質が低く、翌日の昼寝を40分以上とることによって補完していること。また昼間の睡眠は午後5時前に行うことにより、夜間の睡眠の質を低下させることなく、昼間の活動を促進させ疲労を回復させていると考えられた。さらに高血圧疾患のある高齢者は、夜間の睡眠の質が低下し、昼寝による効果が得られていない可能性が見いだされた。
著者
岩崎 弥生 張 平平 浮ヶ谷 幸代
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は、精神保健医療福祉資源の乏しい地域におけるメンタルヘルスの関連要因を、個人的資源および社会文化的資源の視点から明らかにして、資源の乏しい地域におけるメンタルヘルス支援の開発を検討したものである。メンタルヘルスの関連要因として、身体的健康状態、対処スキル、農業生産性、地域の世代内・世代間交流、共同体の信頼・結束などが示され、メンタルヘルス支援の開発において、コーピングスキルや地域の世代内・世代間交流などを活用・強化する対象者との協働による対話型のアプローチの重要性が示唆された。
著者
井上 克巳 坂間 千秋
出版者
国立情報学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

時間的に変化する離散系を標準論理プログラムで記述し、その上での帰納推論方式を新たに考案し、状態遷移規則を学習するための方法論を提案する。基本方式として状態間の変位からブーリアンネットワークの状態遷移規則を自動的に学習するLFITを提案し、これをベースに様々な効率化や拡張方式を開発した。効率化にはBDDによる簡約化やトップダウン・アルゴリズムが、拡張には遅延効果・多値ドメイン・確率遷移を有するネットワークと非同期式更新が含まれる。LFITの応用では、遺伝子制御ネットワークやセルオートマトン学習、ロボットの行動規則学習、論理を自動的に学習する論理発見に適用した。
著者
中田 芳樹
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

超短パルスレーザーを用いてナノサイズの金属流体プロセスを瞬間的に誘起し、金属の直立構造が周期的に配列する構造を形成する。今年度は下記の成果を得た。1.装置の改良:前年度に開発した透過型回折格子と縮小光学系を組み合わせたフェムト秒レーザー干渉加工装置に対し、光束毎に位相・振幅を変調する装置を追加した。2.新規ナノ形状の達成:薄膜材料、膜厚、基板、干渉加工条件などをパラメーターとすることにより、下記の成果を得た。これらにより、(1)~(4)の研究目的を達成し、さらに(5)の新規ナノ形状を創製した(1)曲率半径7.5nmの極小ナノウォータードロップの形成(金)(2)最小頂点曲率半径約2nm(平均値5.4nm)の金ナノウィスカーの形成(3)金ナノウィスカーのアスペクト比:約17(4)最小頂点曲率半径約6nmの銀ナノウィスカーの形成、ナノクラウン周囲のナノスパイク頂点曲率半径:7nm、アスペクト比>5(5)位相・振幅変調による「多重周期構造」「倍密度構造」「周期破線構造」の創製本手法は従来のナノマテリアル形成法に対し、「従来に無いナノ形状」「正確な周期構造の自動生成」「素材の自由度」「加工速度」「大面積一括加工」等の点で優れており、ナノテクノロジーやメタマテリアルなどのナノマテリアル応用分野全般において新しい応用が期待できる。
著者
竹見 哲也
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

「台風はどこまで強くなり、想定される風水害はどの程度の規模なのか?」この問いに対して、様々な大気・海面水温の条件において発達する顕著な強度の台風を気象モデルによる数値シミュレーションにより再現し、顕著台風により想定される風水害を評価することを目的とした。実事例の再現シミュレーションとともに、仮に経路がずれた場合にどのような風水害が生じうるのかという観点から、台風の経路を操作したシミュレーションも実施した。関東地方・中部地方・近畿地方において過去に顕著な災害をもたらした事例、さらには2013年11月にフィリピンで大災害をもたらした事例を対象として台風による風水害のハザードを評価した。
著者
芳賀 京子
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は古代ギリシアで祀られていた神像を、アイスキュロスにならい、神話にさかのぼる由来を持ち圧倒的な神性を備えていた「古き神像」と、アルカイック時代以降に彫刻家が新しい大理石彫刻・ブロンズ鋳造技術を用いて制作した「新しき神像」に二分し、それぞれの神性の特質について文献資料や現存する礼拝像の詳細な調査により考察するものである。その結果、前者の神性は強力だが接触的・限定的で、像の力が神の意志とは無関係に機能したのに対し、後者は像が神のダブルイメージとして機能することで視覚的かつ広範囲に力を及ぼし得たこと、その「新しい」神性を意識的に礼拝像に賦与したのがフェイディアスだったことが明らかとなった。
著者
土岐 精一 雑賀 啓明
出版者
独立行政法人農業生物資源研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

高等植物における相同組換えを利用した遺伝子ターゲッティングの高効率化をめざし、相同組換えを活性化する化学物質を探索した。相同組換え頻度を計測することができるシロイヌナズナのモデル実験系を用いて237種類の化学物質を評価した結果、相同組換え頻度を向上させると考えられる化学物質が15種類選抜された。また、DNAの二重鎖切断(DSBs)処理で顕著な発現誘導を受けることが知られているRad51遺伝子の発現解析の結果、特に効果が高いと思われる3種類の化学物質はDSBsを誘導しない可能性が示唆された。
著者
小田切 優樹 丸山 徹 渡邊 博志
出版者
崇城大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では標的分子をBRに絞り込み、BR捕獲型HSAドメインの設計と新規BR除去療法としての有用性を評価するため、以下の検討を行った。得られた知見を要約する。(1)進化工学的手法であるファージディスプレイ法を駆使してBRの詳細な結合部位の同定を可能にし、さらに1.6×105個の変異体の中からBR高親和性HSAドメインII変異体を拾い上げることに成功した。(2)今回作製した新規BR尿中排泄促進剤pan3_3-13は、抗体製剤よりも製造コストが低く、従来の血液浄化法の基盤を成す血液透析に替わり、侵襲性の低い新たな血液浄化法の道を拓くことが大いに期待される。
著者
楯 真一
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

酵母基本転写因子 Tfa2 を対象として,Mediator サブユニット Gal11 結合を担うintrinsically disordered (ID)領域(Tfa2-mbd: Tfa2 mediator binding domain)の立体構造解析を,13C 検知および 1H 検知多次元 NMR スペクトルにより行った.ID 領域特有のNMR シグナルの重なりを,シグナルの分散の良い 13Cおよび 15N の化学シフト軸で展開する 3D スペクトルを用いることで効率的にシグナル帰属をすすめた.その結果,Tfa2-mbd は,(1)過渡的に低存在率の3本の helix からなる構造を取ること,(2)この過渡的立体構造形成は,ホモ二量体構造形成と連動すること,(3)さらに,過渡的に形成される Tfa2-mbd は,Gal11 との結合に不可欠であることを明らかにした.今回の研究を通して,Tfa2 の ID 領域が過渡的に形成する低存在率構造が,Gal11 を介した基本転写因子のリクルートメントに関わることを示した. ID 領域の過渡的構造形成を利用する機能制御機構という新しい機能的側面を明らかできた.
著者
浅野 輝子 服部 しのぶ 村井 はるか 津田 守 花村 加奈子
出版者
名古屋外国語大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

あいち医療通訳システム認定者にアンケート調査を行い、派遣実績調査報告書をまとめた。オーストラリアとニュージーランドにて医療通訳者にインタビューし、海外での実情を調査した。日本通訳翻訳学会第16回年次大会において研究発表を行い、あいち医療通訳システムの全国的周知が出来た。国際医療通訳シンポジウム&ワークショップを行い、国内外の現状、課題点について意見交換が出来た。日本語を話す世界中の医療従事者向けに「Introduction to Healthcare for Japanese-speaking Interpreters and Translators」を出版した。
著者
小森 悟 黒瀬 良一 高垣 直尚
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

風波水槽に界面活性剤を微量に混和させた溶液を満たし,その水面上に風を吹かせることにより,水面波の測定実験を行った.その結果,界面活性剤の影響は低風速域において特に顕著で,風波の発生を完全に抑制すること,また,砕波が生じる高風速域において界面活性剤は砕波を促進することが確認された.さらに,直接数値計算法を用いることにより,表面張力の低下は風波の波高を増加させること,このため界面活性剤による風波の抑制作用は表面張力の低下によるものではないことを明らかにした.また,粘性の変化も確認できなかったため,このような抑制作用は,マランゴニ効果によって引き起こされていると考えられる.
著者
平木 岳人
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

アルミニウム産業の持続可能な発展を指向し、アルミニウムドロス残灰についてその構造的および化学的特性について調査した。そこでは特に、ドロス残灰の簡易アップグレーディング法確立のため、粒径と構成相の関係について明らかにした。ドロス残灰は発生元によらず平均100-200μmの粒径であった。また種類によらず、粒径が大きくなるほど金属アルミニウム含有率は高くなり、窒化物および塩素含有率は低くなる傾向であった。メッシュサイズ200μmのふるいを用いた分離により、効果的に有価な金属アルミニウムを回収しつつ、リサイクルにおいて不純物となりやすい窒化物および塩素含有率を低減可能であることを示した。
著者
福原 史子 奥山 清子 蜂谷 里香 岡本 純子
出版者
ノートルダム清心女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

コスミック教育は、あらゆる事物は宇宙の一部で、一つの全体的調和を形成するよう相互に結びついていることを発達段階に応じて学習、認識するよう促す教育である。まず、研究の第一人者C.M.トルードゥーの業績研究をもとに、今日的意義をキャリア教育やESDと関連づけて検討した。加えて、幼稚園における2年間の実践研究から、命の誕生や持続のために必要な要素を感じ、興味・関心をもち、コミュニケーションを図りながら協同して学び合えるコスミック教育の実践方法を導きだした。
著者
山岡 由美 安藤 寛美
出版者
岩手県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究で明らかになったことは、在宅勤務を希望する精神障害のある人たちは増加しているが、在宅勤務の対象者としての社会的認知は低く、先駆的な取り組みはあるものの支援の方法については模索段階であると言える。早急の課題として実現可能なことは、在宅就業障害者支援制度における登録支援団体の位置づけを明確にし、少なくとも福祉施設と同等な財源的保障を行うことである。さらに、地域の福祉施設との交通整理の役割を担う機関の必要性である。障害者就業・生活支援センターは、医療、教育、福祉そして雇用に関係する機関の連絡調整および総合的援助を行うものであり、本業務が遂行できるよう機能強化を図ることであろう。
著者
森山 英樹 三浦 靖史
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

骨折治癒促進法について、特定の分子を対象とした研究が多く行われてきたが、複雑な骨折治癒過程のすべてを促進する分子は見出されていない。本研究では、臨床的に古くから認められいる脊髄損傷後に骨折が早く治癒する事実に基づいて、ある特定の分子を対象としない、従来になかった骨折治癒促進法の基盤となる知見を見出すことを目的とした。脊髄損傷後の骨折が、実際に通常の骨折よりも早く治癒する否か、実験的に骨折治癒過程を検討した結果、脊髄損傷後の骨折の治癒期間は、通常の治癒期間よりも約40%短いことを実証した。そして、骨折治癒を促進する原因を探索した結果、脊髄損傷後の筋緊張亢進であることが明らかになった。
著者
猩々 英紀 馬淵 正 安達 登
出版者
山梨大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では細胞内小器官の生活反応を指標とした新たな法医診断法を開発するために、高分解能蛍光顕微鏡を用いた3次元画像解析により細胞内小器官の形態を可視化し、脳損傷の痕跡が生活反応としてミトコンドリアの形態に保存されているか検討した。脳組織標本において、頭部外傷後の大脳皮質でミトコンドリアの形態が変化する事が示唆された。また、培養細胞ではミトコンドリアの形態は細胞が死に至る過程を反映しており、死後の細胞においても生活反応として保存されている可能性が示唆された。以上の結果から、高分解能蛍光顕微鏡を用いた3次元画像解析はミトコンドリアの生活反応を指標とした法医診断の開発に有用である事が示唆された。