著者
齊戸 美弘
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、針型形状の試料前処理デバイスを開発し、火災現場空気試料の迅速なサンプリングおよび分析前濃縮を行うとともに、その試料を精密分離分析することにより、空間分布が精密解析可能な新規火災原因解明技術の開発を行った。これにより、従来法の問題点を大幅に改善するとともに、火災現場における迅速かつ広範な検証用空気試料の採取が実行できることが明らかとなった。開発したデバイスは、常温でも一定時間までの試料保存が可能であり、従来よりも早い段階で確実に火災原因の断定が可能である。また、石油ストーブへのガソリンの誤給油等の火災原因究明にも応用可能であることが確認できた。
著者
岩崎 博之 中井 専人
出版者
群馬大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

測定原理の異なる二つの雨量計で得られた10秒降水量データを用いて,発達した積乱雲群を構成する対流セルの微細構造を調べた.二つの雨量計で得られた10秒降水量の時間変化には,明瞭な1-2分周期の変動が認められ,多くの場合,その二つの位相は一致していた.この事実は,1-2分周期の変動は測器の測定誤差ではなく,実在の現象であることを意味している.つまり,一般に積乱雲の構成単位と考えられている対流セルの内部には,更に小さな複数の降水コアがおおよそ1km間隔で分布していると考えることができる.しかし,降水コアには周期性が認められるが,降水コア通過に伴い地上気象要素が変動する事実は認められなかった.
著者
山田 朋子
出版者
中村学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

幼稚園教諭と保育士が存在する認定こども園での実習評価票の課題を明らかにした上で現在の幼稚園と保育所の実習評価項目をもとに「認定こども園の現状に即し、自己評価と実習評価を兼ね備えた」新たな保育教諭育成の実習評価票を開発する研究である。全国保育士養成協議会策定のMS実習評価票と保育者自己評価項目案をもとに自己評価も可能な新たな評価項目を検討した。結果、幼保連携型認定こども園も従来の実習に準拠した受け入れ状況にある。双方の組織理解のもと保育教諭、幼稚園教諭、保育士に共通する普遍的な保育者の資質を発揮する保育実習で、実習評価票には自己評価と保育者実習のポートフォリオの役割が求められることが示唆された。
著者
佐野 健太郎
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

計算性能の低下をもたらすメモリウォール問題を解決するために、可逆データ圧縮をリアルタイムに行うバンド幅圧縮ハードウェアを提案し、実応用問題に適用可能な基盤技術を創出した。数値データの連続性を利用した予測に基づく圧縮アルゴリズムと複数のデータストリームを扱うための符号化方式、およびそのハードウェアを設計した後に、FPGAによる実装を行った。ベンチマーク問題として格子ボルツマン法に基づく流体計算を用い、実際に動作する高性能ストリーム計算システムを構築した。計算途中データのDDR3メモリへの読書きを圧縮したところ、正しい計算が行えることと、データストリームの実効バンド幅を向上できることを確認できた。
著者
市野 良一
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

この研究は,ネオジム磁石(Fe-Nd-B合金)に使用されているNdやDyなどの希土類元素の安定確保という観点から,使用済み磁石や磁石スクラップからの希土類元素のリサイクル技術の開発である.450℃の溶融塩中に,廃磁石からNd,Dy元素のみを選択的に溶出させることにより,Fe-Bは固体として回収し,一方,浸出したNd,Dyは溶融塩電解により陰極上に金属として回収する.電解浴である主要溶融塩成分を除外して考えると,溶融塩中の希土類元素は98%以上であり,鉄は2%以下であり,希土類を選択的溶出できた.一方,この溶融塩を用いて電解したところ希土類元素の組成が95%以上の析出物が陰極上に得られた.
著者
酒井 たか子 ブッシュネル ケード 山田 亨 柳家 さん喬 亀井 敦郎 菫 然
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

落語は日本独自のユニークな形態を持つ話芸であり、日本文化のエッセンスが凝縮されているが、日本語学習者にとって難しいと敬遠されがちである。日本語学習者の笑いを中心とする理解を明らかにするために、研究材料の作成および理解を分析するための方法を検討した。研究材料は、留学生の聞き手を対象とした約20時間に及ぶ映像、音声を収集した。江戸落語・上方落語、新作落語・古典落語、初級対象・中上級対象とバリエーションを持たせ、映像の編集、文字化を行った。学習者の理解を測るための方法として、会話分析の手法のほか、アンケート、絵による表出などを実施し、その有効性を明らかにした。
著者
朴 美貞
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

「朝鮮博覧会(1929)」を契機に日本国内における「文化住宅」の朝鮮への受容と展開、京城の都市計画を中心に異文化統合に至る「植民地都市」の特質を解明した。植民地研究における非文字資料に関する史料的価値を見出し、コレクターや研究者を中心とする共同研究会を主宰した。これによりコレクターと研究者の間の乖離を把握し、相互の協力体制を整えながら非文字資料に関する評価と活用に関する将来的・総合的視点について調査・検討を行った。
著者
山口 扶弥 藤野 成美 梯 正之
出版者
広島都市学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

出産後5日~6ヶ月に母親のうつ状態を縦断的に調査し,産後支援のあり方を検討する.研究協力が得られた産婦人科に通院中の妊婦に無記名自記式質問紙調査を実施.調査項目は母親の抑うつ傾向,生活上の困難,必要な支援等とした.分析方法は日本語版EPDSを用い,従属変数をうつ傾向有無,独立変数は各質問項目とするロジスティック回帰分析を行った.配布数170名,有効回答は101名(回収率59.4%).うつ傾向の者は,産後2週間で20.8%,5日で19.8%と多かった.産後5日は母親自身の気持ちや体調が影響しているが,産後14日は生活環境,子どもを世話する上での悩み等に変化し,初産婦はうつ傾向になりやすかった.
著者
中込 四郎 江田 香織 小谷 克彦 浅野 友之
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では、アスリートの現実適応(パフォーマンス向上)と個性化(心理的成長)との関係性について明らかにすることを目的に、次の下位研究課題を設定して取り組まれた。(1)内界探索型メンタルトレーニングプログラムの有効性、(2)アスリートの自己形成における「対話的競技体験」の持つ意味の検討、(3)「コツ」獲得に伴う内的変容。これらの検討課題から、アスリートの現実適応と個性化との間には共時的関係性が認められることが明らかとなった。
著者
辻 吉祥
出版者
青山学院女子短期大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は、〈近代〉日本における最も包括的なイデオロギーである「社会進化論」「優生思想」と、その文学に与えた影響、相互浸透関係を明るみに出すことを眼目とする。国際的視野でその実証資料を収集する一方、明治・大正期の解放思想・文学が、今日の発想からは死角となる形で自然史的思考の侵蝕を受けており、文学的〈近代〉における「社会」性が今日からする定義とは異なること、その経緯の重要な諸点を明確にすることができた。
著者
日高 昇平 藤波 努
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は社会的な学習メカニズムの解明を目指し、その一つの基礎となる身体動作の模倣の計算論的モデルの構築を目的として行った。身体模倣の実現には、複数の感覚器・効果器の間で、さらに自己と他者の間で表現を変換する必要があり、高度な計算過程を要する。制御理論に基づく既存手法では、十分な情報が与えられた下での、精密な運動制御を可能とする。しかし、既存手法では、完全な情報が得られない他者の運動から、身体的な制約の異なる自己の運動への対応付けは困難である。本研究は、異なる身体間の複数の感覚器・効果器上の運動パタンが、力学的な位相空間に変換できる事に着目し、この位相構造の類似性に基づく模倣学習理論を提案した。
著者
久野 義徳 小林 貴訓 児玉 幸子 山崎 敬一 山崎 晶子
出版者
埼玉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

目はものを見るためにあるが、アイコンタクト等の非言語コミュニケーションのためには他者に見せる機能も重要である。また、人間と共存するロボットとの目としては、人間に親しみやすい感じを与えるものが望まれる。そこで、この2点について、レーザプロジェクタにより種々の目の像を投影表示できるロボット頭部を試作し、どのような目の形状がよいかを被験者を用いた実験により調べた。その結果、人間の目の形状程度から、さらに目を丸く、また瞳も大きい形状が、親しみやすく、また視線がどちらを向いているかが読みとりやすいことが分かった。また、目や頭部の動かし方についても調査し、人間に自然に感じられる動かし方を明らかにした。
著者
須田 良幸
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

代表者の開発したスパッタエピタキシー法を用いて提案した高濃度Pドープ基板上へのGe直接平坦化成長する方法について系統的に解析し,Si/Ge界面に90°転位が発生し,僅かな歪を残して平坦成長する機構を解明した.この転位はスパッタ法でのGeの短い表面泳動長とドープP原子に起因して発生すると考えられる.Bドープ基板でも同様の現象が見られ,本手法を用いたGe仮想基板の作製への応用展開が期待される.
著者
中島 俊介
出版者
北九州市立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究は、平和・文化的活動を軸にした地域活動が学生およびそれに関わる地域住民のメンタルヘルス向上にどのように寄与するかを検討したものである。プロジェクト型学習と心理教育の視点から解明することを目指した。平和活動の企画を学生自らが企画し地域住民がこれを支援した。その効果を共同体感覚尺度(高坂,2011)で測定した。さらに参加者の感想文を質的に分析した。その結果、平和活動後に「所属感・信頼感・貢献感」と「.平和と人権について理解できたという感覚」の向上が示された。またメンタルヘルスの向上に平和活動の必要性と有効性が議論された。
著者
佐道 泰造
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

集積回路(LSI)の省電力化に向け、高性能なトンネル型トランジスタが要求されている。しかし、従来のSiを用いたトンネル型トランジスタでは、オフ電流が低減できるものの、オン電流が小さいとの課題がある。本研究では、トンネル型トランジスタの高性能化を目指し、絶縁膜上のGe結晶薄膜のバンド構造を直接遷移型化するための歪み導入プロセスを創出するとともに、Ge結晶薄膜への高濃度ドーピング技術を開発した。これにより、LSIプロセスとの整合性が良好で、高いオン電流を有する高性能なトンネル型トランジスタの基盤技術を開発した。
著者
外崎 明子 佐藤 正美 七澤 朱音 浅野 茂隆
出版者
独立行政法人国立国際医療研究センター
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

座りがちな生活習慣は肥満やメタボリック・シンドロームの発症リスクの上昇と関連し、座ったままで過ごす時間がインスリン抵抗性を高めるためであると推測されている。乳がん化学療法を受ける患者では座りがちな生活スタイルとなる傾向にある。本研究はパイロットスタディとして、乳がん化学療法中の患者を対象に活動強度別活動時間とインスリン抵抗性、体重増加率、身体組成の変化との関連性を検証する。インスリン抵抗性はHOMA-R(Homeostasis Model Assessment Score)で評価する。データ収集中の現時点で、体重増加率は3.OMETs(metabolic equivalent)以上の活動時間数と強い負の相関関係にあり、化学療法中の体重増加抑制には中等度以上の身体活動量が影響する傾向が認められた。
著者
中尾 篤人
出版者
山梨大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

正常時でも血漿中のヒスタミンの濃度は昼夜において変動し、とりわけ夜間に高くアレルギー症状に相関することが示唆されている。しかしその血漿ヒスタミン濃度を調節するしくみはよくわかっていなかった。本研究では、マスト細胞が定常状態において時計遺伝子依存的に自発的かつ概日性にヒスタミン放出を起こし血漿ヒスタミン濃度の日内変動を調節していることを明らかにした。本成果は血漿ヒスタミン濃度を標的としたアレルギー疾患の新しい予防や治療に役立つ。
著者
高田 豊 安細 敏弘 邵 仁浩 粟野 秀慈 中道 郁夫 吉田 明弘 後藤 健一 園木 一男 藤澤 律子
出版者
九州歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

心機能と口腔機能の関連について高齢の患者で検討した。心機能は携帯型24時間心電図と心エコー検査と血清NT-pro-BNP濃度で、口腔機能は歯数、アタッチメントロス、ポケット深さ、アイヒナー指数で評価した。重回帰分析を使用して性別と年齢の影響因子を補正しても、アイヒナー指数と上室性期外収縮、心室性期外収縮、心室性頻拍に有意な関係を認めた。現在歯数と心室性期外収縮連発、上室性頻拍との間にも関連があった。本研究結果から、咀嚼機能や残存歯数と不整脈の間には関連があることが示唆された。
著者
杉安 和憲
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

ポリチオフェンは最もよく研究されてきた導電性高分子のひとつである。応用範囲が広い材料であるからこそ、その基礎的な知見を得ることは極めて重要であり、実験および理論の両面から様々な議論が行われている。本研究では、特殊構造ポリチオフェンを用いて、ポリチオフェンの電気伝導メカニズムに関する新しい知見を得ることに成功した。
著者
福原 幹夫
出版者
公益財団法人電磁材料研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

Ni中心の20面体Ni_5Zr_5Nb_3クラスターから構成されたセンチメートルサイズのNi-Nb-Zr-H系アモルファス合金リボンは約223Kまでの低温領域でアモルファス度の上昇に伴って銀より4桁良好な弾道伝導性を示した。~8GPaまでの超高圧の負荷によってもその効果は見られなかったが、アモルファス合金特有の負の温度電気抵抗係数(TCR)が22-25Kで金属結晶特有の正に変換する奇妙な現象を観察した。本アモルファス合金の弾道伝導機構はクラスター問の一電子のトンネリングによって説明がつく。