著者
畠山 裕康
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、細胞内の任意の分子の一分子計測を容易に可能にする材料と手法の提供を目的とした。そのために、極めて安定で明るい蛍光ナノ材料、量子ドットに対して、低分子リガンドと特異的共有結合を形成するタグタンパク質を利用した目的分子との特異的結合能の獲得と細胞膜透過性ペプチドを利用した細胞膜透過性の獲得の2点を試みた。前者については目的を達成したものの、後者は導入効率等に課題があったため断念した。しかし、エレクトロポレーション法により低い細胞毒性にて高効率な細胞内導入を可能にすることができた。これにより細胞内におけるミオシンの一分子計測を行うことができ、本研究の目的を達成することができた。
著者
高田 保之
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

超撥水面上で,過冷却下において安定的に存在する蒸気膜の性質を解明することを目的として,超撥水コーティングやテフロン(PTFE)コーティングを斑点状に施した出伝熱面を作成し,プール沸騰実験を行った.その結果,PTFE を斑点状にコーティングした伝熱面は,通常の銅面に比べて,低過熱度で沸騰を開始し,核沸騰熱伝達特性もすぐれていることが分かった.また,沸点以下で発泡を開始する現象を発見し,溶存空気が現象に深く関係していることを確認した.
著者
松本 和子
出版者
東京理科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

キプリングを中心に彼とその周辺作家の小説に登場する男性性が弱体化した人物の検証を通じて、当時、時代を支配していた帝国主義の理想とは乖離した人物が描かれる事例が散見することが確認された。そして、多くの場合、そうした登場人物は作者から断罪されるどころか理解をもって描かれており、大英帝国の衰退と、帝国主義の隆盛の狭間を生きることを余儀なくされた作家の内面を探る切り口になり得る可能性が見出せた。
著者
土居 幸雄 下山 亜美
出版者
京都女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

主要な食物アレルゲンである卵白に替わり得る機能性タンパク質として、グアーミールに存在する起泡性アルブミンGFA(guar foaming albumin)の食素材としての利用を検討した。GFAの起泡性、泡沫安定性、泡沫サイズについて、添加物の影響を詳細に調べたところ、いずれの場合も卵白と同程度以上の利用特性を示した。GFAの乳化特性については、牛血清アルブミンと同程度の乳化活性と許容量が示された。
著者
仁科 博史
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012

Hippoシグナル伝達系は、近年、発生・分化・器官サイズ・癌の発症進展を制御することが明らかにされ、国内外から急速に注目されている。本研究では、hydrodynamictailveininjection(HTVi)法という簡便に肝臓特異的に遺伝子を導入する方法を用いて、Hippo系主要標的転写共役因子YAPの活性のgainoffunctionによる肝癌誘発状態を作り出し、マイクロアレイ解析によって、マウス肝臓での転写情報を解析することを目的とした。その結果、1)効率の良い肝癌誘発系の確立に成功した。また、2)cDNAマイクロアレイによる発現解析を行い、YAPによって発現が亢進する遺伝子を約20種類同定することに成功した。ヒト肝癌発症のメカニズム解明に貢献する研究成果であると考えられる。
著者
松本 敏郎 高橋 徹 山田 崇恭 山田 崇恭
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

固体中に動吸振構造を有する別の材料定数を持つ固体を埋め込んだ周期構造により有効な振動遮断特性を有する構造を,数値計算の支援により創成するための方法論の開発を目的として,境界要素法による動弾性体の無限周期構造と有限周期構造に対して固有振動数を解析する方法,および動弾性体に対して形状の制御にレベルセット関数を用い,得られた境界を実際に要素分割して境界要素法により最適なトポロジーを得る方法を開発した。
著者
バティ アーロン スチュワート ジェフリー
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

研究者たちは新しく「スピーキング伝達能力客観テスト(OCST)」を開発した。OCSTはタブレットPCを用いた計時情報ギャップ型テストである。伝統的な口頭運用能力テストの構成要素がテスト所要時間の原因になる事を前提に、発話者が評定者に新しい情報を述べる時間を計る。英語が第一(L1)及び第二言語(L2)である86名を対象にテストを行い、L2タスク完了時間にL1基準のスコアを当て、データは多相ラッシュ・モデルで解析された。仮説通りテストの客観的デザインは評定者の影響を弱め、評定者をモデルから除外できた。受験者の信頼性係数として0.88が観測され、多くの主観的なスピーキング能力テストの数値を上回った。
著者
横田 隆司
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

大震災時の避難行動をシミュレートする新しいシミュレーションシステムの構築のための萌芽的研究として,大きくは東日本大震災における避難行動のモデル化とそれに基づいたシミュレーションシステムの開発の二つの内容の研究を行った。その結果,児童や障害者など多様な人間の避難行動への配慮の必要性が明らかになったと共に,浸水被害想定や津波可視化などの課題に対して住民が簡易に利用できるシステムを構築することができた。
著者
澤口 聡子 加茂 登志子 米山 万里枝 滝口 清昭 坂本 慎一 大脇 敏之 多木 崇 栗原 千絵子 加藤 則子 佐藤 啓造 京相 雅樹 平澤 恭子 加茂 登志子 杉山 登志朗 森 友久
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

解離性同一性障害における複数人格を音声録音しSOFTware PRAATの基本周波数分析で人格識別することが可能であった。PRAATの関係する要因を用いた個人を対象とする(nested)多値logistic回帰分析および一般線形モデルを構築し、前者において0.5<odds ratio<1.0、後者において尤度比・LR統計量>0.05を一つの目安として、専門医にアクセスする対応方針で臨床研究をすすめ得る。薬剤使用時の客観指標としてMetaRNA(複数のRNA・mRNA分子種)測定モデルを作成し治療や研究の潜在的なnavigationを与え得る。anticiper de ja saisirを推唆。
著者
雑古 哲夫
出版者
関西大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

バイオフィードバックトレーニングは,競技者が目に見えない精神性を電気信号として捉らえ,精神状態を即時に映像として映しだし,映し出された映像と身心の変化を対比させ,身体状況と精神状況の関わりを認識させることにより,身体を抑制,精神をコントロールし,不必要な筋緊張の出現を抑え,競技成績の向上を目的として考案したトレーニングである。バイオフィードバックトレーニングを実施した競技者の大会成績は、弓道は2011年度に第59回全日本学生弓道選手権大会男子団体戦で準優勝の成績を上げた。日本拳法では2011年度第56回全日本学生選手権大会男子団体5位、女子団体戦優勝、全日本拳法女子個人戦ではトレーニングを行った女子学生が,社会人も含めた全日本総合選手権大会で個人優勝した。
著者
石井 徳章 阿南 景子
出版者
大阪電気通信大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

急激な出力調整が難しいという欠点を補うために考案されたスターリングエンジン・DCモータ方式のハイブリッド車両を実現するために、その第1段階として、「駆動トルク配分機構およびその制御システムの開発」に重点を置いた駆動装置の実験シミュレータを製作した。ただし、スターリングエンジンはACモータに置き換えた。駆動トルク配分機構には、遊星歯車を用いた配分機構を用いた。駆動トルクの配分制御には最も簡単なクラッチ機構を利用して実現し、滑らかな動力配分が可能であることを実証した。
著者
万 里
出版者
鳥取大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では国内外市場調査,無等級時間付割引販売の試験的実施を通して,青果物流通費用の削減,等級外品廃棄削減の可能性を検討してきた。青果物購入に関する消費者調査の結果,青果物の鮮度,安心・安全重視などから直売における等級外青果物の販売には余地があり,都市部にもっと農産物直売を増やすべきである。また,2012年から2年間における無等級時間付割引販売の試験的実施の結果,包装なし・等級分別しない青果物は相応の価格で販売でき,選別包装費用の削減による低価格販売が実現し,国際競争力強化につながると考える。
著者
澤 進一郎
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、植物感染性センチュウを用いた分子遺伝学的研究手法の確立を行った。さらに、センチュウ感染過程における、植物細胞の脱分化、多核化、再分化過程における分子機構に焦点を当て、その分子機構にせまるべく、エフェクタータンパク質のプロテオーム解析、また、候補遺伝子を用いたY2Hスクリーニングを行った。
著者
松吉 大輔
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、質問紙により測定される自閉症傾向 (Autism-Spectrum Quotient, AQ) の個人差と、実験により測定される行動成績との相関を男女別に検討することで、自閉症スペクトラム (ASD) を構成する行動特性の連続性の男女差を明らかにすることを目的とした。視線認知、低次幾何学形態認知、顔の短期的な遅延再認、顔再認記憶の行動成績との関連を検討した結果、視線認知かつ男性のみにおいて自閉傾向を示すAQとの相関が認められた。この結果は、視線認知が必ずしも両性の自閉症中間表現型となっていないことを示すのみならず、自閉傾向と行動を考える上で性差を考慮することの重要性を示したと言える
著者
加藤 圭子 澤井 信江 土師 俊子 稲垣 寿美 徳永 香里 中川 栄太 川平 明子
出版者
滋賀医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では、日本の要介護高齢者が好む粥の誤嚥予防について検討するために、食事援助中の粥の粘度の経時的変化を明らかにした。また、食事援助中の粥の基本的な性質の経時的変化等についても明らかにした。
著者
平野 哲郎
出版者
立命館大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

実体法的側面としては,医療過誤訴訟において医師の過失と患者の損害の間の因果関係が証明されない場合に機会喪失論を適用することを否定したオーストラリア連邦最高裁判所判決を紹介した。同判決は,日本の最高裁判所が相当程度の可能性法理や期待権侵害論によって因果関係の困難を克服しようとしていることと対照的である。訴訟法的側面としては,オーストラリアで普及している専門家を同時的に尋問するコンカレント・エヴィデンスという新たな方式を,これと類似する面のある東京地方裁判所のカンファレンス鑑定と比較した。いずれも裁判官の心証形成を容易にし,より良い判断に資することを目的とする点で共通点がある。
著者
楠 房子 稲垣 成哲 徳久 悟 石山 琢子
出版者
多摩美術大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究で開発したスタンプオンシステムは、「スタンプ」デバイスを用いた展示の理解支援システムである。本システムは3つの特色がある(1)展示物の説明を取得するにはiPadなどのモバイル端末を使用する (2)「スタンプ」と呼ばれる有形デバイスをタッチすると、モバイル・デバイス内に含まれる対応する説明を開始する(3)来館者の自発的な探索活動を支援する。本システムの有効性を検証するために、6年生の児童を対象として、科学博物館で実験を行った。実験結果から、子どもたちは、博物館の展示物の観察を本システムを用いて楽しく行うことができた。また本システムは展示物の理解のために、効果的であることが明確になった。
著者
村山 康雄 稲垣 文雄 DRIER Brian 前川 博史 大塩 茂夫 丸山 一典 高橋 綾子
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究は中学校、高校で行われている簡単な科学実験で使用される表現を日常生活で頻繁に使用される表現に応用しようとするもので、視聴覚教材を作成する。平成21年度に作成した物理実験教材を授業で使用し、学生からの反応を見て、改良を図った。最初のバージョンは学生にとって英語がむずかしいようであったので、より容易な表現に書き換えた。実験で使われる表現を応用した教材として、21年度に作成した「煮込みラーメン」等の教材の改良を行った。同じ題材で表現を変え、また英語のナレーターを変えた複数のバージョンを作成した。アメリカ人、オーストラリア人に英語を読んでもらった。新TOEICではリスニングのセクションがこれまでのアメリカ英語だけではなく、オーストラリア英語等も加わったように、さまざまな種類の英語を学ばそうという流れがあり、本教材作成でもこの点を意識した取組みを行ったものである。実験、料理以外の教材として「万華鏡」の教材を作成した。万華鏡は日常生活において特別なものでなく、子供から大人まで誰でも経験するものであり、使用に際しての表現に実験で用いる表現が応用できる。実験、料理の教材として「弦の振動と波長」、「寿司の作成」を作成した。研究の成果の発表として、シルフェ英語英米文学会の年次大会で実験、料理の教材についての発表をした。
著者
池田 敏彦 飯尾 昭一郎
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では,河川への設置が容易で身近な小規模水力での発電を可能にする環境負荷低減型水車として,サボニウス水車と滝用水車を提案し,各々の特性評価と性能向上を目指した.農業用水路での利用を想定したサボニウス水車については,ランナ設置条件と出力特性との関係解明および,遮へい板と称する一枚の平板で出力特性を改善する方法の検討をおこなった.落差工での使用を想定した滝用水車については,Banki水車をもとに滝用水車専用ロータを設計・製作し,ロータ内部への流れを積極的に利用して出力を得る開放型貫流式ロータを提案し,その出力特性を調べた.また,滝の流量変化によるロータへの流入位置変化による性能低下を防止する方法についても検討した.得られた結果は以下のとおりである.サボニウス水車については,(1)出力特性には流路底面あるいは自由表面とランナとの距離が大きく影響し,付着流による揚力発生,巻込み流による戻りブレード凹面の圧力回復,進みブレード凹面への衝突流が出力特性を支配している.(2)遮へい板の最適設置条件を見出し,出力係数を約1.8倍の47%に増加させることができた.滝用水車については,(3)貫流タイプにしたことで,従来の衝動タイプに生じていた低速回転時のランナ内部での水のよどみが解消され,幅広い回転数領域で安定した出力を得ることができる.(4)衝動タイプと比較して,滝の流量変化に対する出力の変化が抑制される.(5)ランナ単体での出力係数は,衝動タイプの20%増加である74%が得られる.(6)平板による水流制御方法では,衝突時のエネルギー損失および水流の変動が大きく,貫流タイプでも28%の出力係数の低下となる.
著者
都留 稔了
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

橋かけアルコキシドとしてビス(トリエトキシリシリル)エタン(BTESE)を用いて,有機無機ハイブリッド逆浸透膜の開発を行ない,その透過特性の評価を行った。BTESE 膜は 95%以上の脱塩率を示し,逆浸透膜として可能性を明らかとした。90℃でも安定な濾過性能を示しただけでなく,塩素に対しても良好な耐性を示した。さらに,透過機構について,供給溶液濃度,操作圧力,温度依存性を検討した。操作圧力の増加とともに,透過流束および阻止率が上昇したのに対して,塩濃度の増加とともに両者ともに低下した。一方,操作温度とともに阻止率および透過流束が向上したが,その温度依存性は水粘度の温度依存性よりも大きいことから,透過機構は粘性流れとは異なることを明らかとした。