著者
近藤 俊明 出口 保行 VALENTI Stavros COX Brian
出版者
東京未来大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

不登校の予兆行動を検証するため、計6校の、小学1~3年、小学4~6年、中学1~3年の3グループを、3年間、継時的に追跡調査した。不登校査定尺度(Kearney, 2002)を用い、(1)嫌な刺激を避ける、(2)社会的評価を避ける、(3)他者の注意を引く、(4)楽しいことが出来る、の4つの機能を持つ行動群を、学年ごとに分析した。4つの行動群のうち、(1)嫌な刺激を避ける、(2)社会的評価を避ける機能を持った行動群が、小学1年から多くの学年において不登校に影響を与えていることが明らかになった。さらに、早期からの、上記行動群に焦点を当てた介入が、不登校の予防に有効であることが考察された。
著者
橋本 エリ子
出版者
福岡教育大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

高齢者に声楽療法を継続的に実践することにより、心身共に健康である状態を維持でき、さらに心のケアや人との交流が円滑となり、その人らしい老いを実現することが可能となることが分かった。また、緩和ケア病棟において日本の唱歌・童謡など昔子供の頃に歌い、また聴いたことのある懐かしいクラシック声楽作品を用いたことにより、これまで食事が喉を通らなかった患者さんが進んで食事を摂るようになるなど、回復が見られ、声楽療法の有効性が明らかとなった。本研究により、音楽という言葉を越える芸術媒体を通して行われる声楽療法の重要性と健康な歌唱を継続することにより、生きる喜びなどの生き甲斐再生や支援となる得ることが実証できた。
著者
梅野 圭史
出版者
鳴門教育大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

昨年度の研究結果より、「体育授業の場における葛藤価値検査」の診断結果は、体育授業改善の指標になり得る可能性の高いことが推察された。とりわけ、「体育授業に対する価値観」が形成される小学4年生において両者の密接度の高いことが示されたことは、この時期に葛藤内容を多分に含んだ運動教材を導入すれば、彼らの道徳性の発達に大きく貢献するものと考えられる。そこで今年度は、小学校4学年3学級を対象に「スポーツか、暴力か」の葛藤を含みもった「スポーツチャンバラ」を実践し、単元前後の比較より葛藤価値判断力がどのように変容するのかについて検討した。その結果、4段階からなる葛藤価値検査の診断結果に対して、χ2検定を施したところ、単元前と単元後の間に有意差は認められなかった。しかし、S3段階とS2段階を境に、EX-S3段階とS2-S1段階とに大別した場合、単元後に葛藤価値判断力が有意に高まるとする結果が得られた。これには、学習者行動分析における「従事」の「間接的活動」が関係していることが認められ、スポーツチャンバラの審判活動に積極的に関与できるかどうかが葛藤価値判断力に影響を及ぼすものと考えられた。以上のことから、スポーツチャンバラにおける審判活動が積極的に展開できれば、葛藤価値判断力が高まることが認められるとともに、葛藤価値検査の有用性が確かめられた。
著者
澤田 純男 後藤 浩之 米山 望
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本課題は,固体か流体かに依存しない支配方程式を理論的に導出し,その支配方程式に基づいた数値解析コードを開発して,固体と流体との中間的状態にある媒質の動的な挙動を高精度に解析することを目指したものである.固体と流体の双方を取り扱うことのできる支配方程式をラグランジュ形式で導出し,線形弾性体からニュートン流体までシームレスに解析できることを静的解析,および動的解析によって検証した.本解析コードを飽和砂地盤の動的解析に適用し,液状化地盤の揺動現象を再現することができた.非液状化層や埋設構造物を想定した側壁付近で,励起された鉛直振動に伴う液状化が確認された.
著者
冨永 伸明 山口 明美
出版者
有明工業高等専門学校
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,内分泌かく乱物質であるBisA曝露を多世代にわたって行った線虫受精卵のヒストンH3のメチル化およびアセチル化修飾状況を定量的に解析することに成功した.線虫は,BisA曝露で経世代的に産卵数が減少することを報告しているが,本研究の結果から,その際に受精卵中の細胞において特異的なヒストンH3Lys4のジメチル化修飾体,Lys9のアセチル化修飾体が減少していることが分かった.このことは,内分泌かく乱物質の経世代的な影響はエピジェネティックな修飾として次世代の受精卵に受け継がれる可能性が高いことを示すものである.
著者
大山 正幸 竹中 規訓 中島 孝江
出版者
大阪府立公衆衛生研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

毎年5名の喘息症状有症者を対象に、9月から約3カ月間、週毎の室内の亜硝酸(HONO)や二酸化窒素(NO_2)やオゾン(O_3)の濃度を測定し、毎日の喘息発作や呼吸器症状を調べた。その結果、U検定ではNO_2と喘息発作との関連に有意差は無かったが、HONOと喘息発作との関連に有意差が認められた(P=0.0013)。また、測定局データを利用した多変量解析後でも、HONOと喘息発作との関連に有意差が認められた。今回の結果は、NO_2よりHONOの方が喘息発作との関連が強いことを示唆する。
著者
蝶野 成臣 辻 知宏 楠川 量啓
出版者
高知工科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

単純せん断流中で回転し続けるタンブリング液晶が“液体状圧電体”になり得るかどうかを調べるため、せん断印加時に液晶が発生する分極値の時間変化を測定した。本研究が一定の成功を収めれば自在形状のマイクロ力学センサの開発に繋がる。内径6 mmの外筒と外径5 mmの内筒からなる同心二重円筒間に液晶を充填して、内筒を回転させて液晶にせん断を印加した。使用した液晶は4-cyano-4'-octylbiphenylである。内筒回転数が0.2 rpmのとき電位差はパルス状の波形を示し、その大きさは最大で±70 mVに達した。従ってタンブリング液晶が圧電体に適していることがわかった。
著者
稲垣 成哲 楠 房子
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は,科学系ミュージアムやフィールドでの学習における近未来の学習支援のためのデザイン指針と評価手法を明らかにすることである。近年の科学系ミュージアムやフィールドには,従来のHands-onタイプの展示だけでなく,ユビキタス社会を反映した様々なテクノロジが実験的に導入されており,それらによって可能になった近未来型のインタラクティブな学習支援・展示支援の現場が出現している。最終年度では,(1)文献・資料の収集とデータベース整理,(2)国内外の事例に関する実地調査,(3)デザイン指針の策定とその評価手法の開発及び試行,(4)成果発表を行った。まず(1)については,科学教育関連図書や博物館・フィールド学習関連図書及びこれらの関連領域の学術論文を収集し,科学教育の観点からみた学習支援のためのデザイン指針の理論的枠組及びその評価手法に関する仮説的提案を行った。(2)については,当該テーマにおける先進的な学習支援・展示支援の実例として,国外では,ベルギー自然史博物館,ポンピドーセンター,シュトゥットガルト自然博物館,メルセデス・ベンツ・ミュージアム,ビトラデザインミュージアム,ゼンケンベルク博物館等における新しいタイプの学習支援・展示支援のあり方について実地調査をした。他方,国内では山口情報芸術センター,北九州市立いのちのたび博物館等において調査を行った。(3)については,申請者らが従来から取組んでいる兵庫県六甲山を対象にした「実世界と仮想世界をインタラクティブに統合したフィールド学習」を題材にして,上記(1)における仮説的提案の適用可能性について調査した。最後に,(4)については,日本科学教育学会第34回年会(広島大学)において,テクノロジを利用した新しい学習支援・展示支援研究4件から構成された自主企画課題研究「インタラクション・デザイン・学習II」を組織した。
著者
高須賀 俊輔
出版者
秋田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

ホスファチジルグリセロールリン酸(PGP)は、カルジオリピンの前駆体として知られるミトコンドリアにあるグリセロリン脂質の一つである。我々は、このPGPの独自の生理機能の解明を目的にして、PGP結合タンパク質の同定を試みた。その結果、既知の脂質結合ドメインを有するミトコンドリアタンパク質は、いずれもPGPに結合しないことが明らかとなった。PGP結合タンパク質は新規のリン脂質結合ドメインを有している可能性が示唆された。
著者
斎藤 雅一
出版者
埼玉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

物性科学において重要なシロールにおいて発現している軌道相互作用を高度に連結した化合物であるヘテラシラ[6]サーキュレン並びにチオフェンを高度に積層してボウル型構造となるヘキサチア[6]サーキュレンを設計し、理論計算により、研究代表者が以前に合成したトリシラスマネンと比べてかなり低いLUMO準位並びに小さなHOMO-LUMOギャップを有することを明らかにした。つまり、これらの分子は重要な機能性分子の構成単位となることが期待された。そこでその合成を検討したところ、有用な前駆体の合成にも成功した。
著者
福村 一成
出版者
宇都宮大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

研究計画当初のケニア国フィールド調査予定がエチオピア国に変更となってしまったが、携帯端末によるフィールド調査システムをアンドロイド端末に実装すること、収集しデータを端末からPC上のデータベースに格納することが出来た。ケニア国で村落への簡易な点滴かんがいの試験的な導入の前後における本システムを利用した村落調査とその分析はケニア国の治安状況等の影響によりエチオピア国に計画変更をした。エ国農業研究所(EIAR)に新設の稲研修研究センタ内に近隣農家研修圃場を準備、協力農家募るための簡易点滴かんがいのを導入し、土壌水分センサー等を準備、近隣農家の聞取り(ベースライン)調査を実施した。
著者
藤原 裕展
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

毛包バルジ部に存在する表皮幹細胞は、発生期を通して幹細胞の性質を獲得するが、そのメカニズムはよく知られていない。本研究では、毛包幹細胞が表皮細胞としての性質に加え、立毛筋制御のための腱様機能を持つという多機能性が幹細胞としての性質決定に関わるとの仮説を立て、それを検証した。バルジ表皮幹細胞の遺伝子発現プロファイルを他の細胞と比較したところ、バルジ幹細胞で筋肉-組織接続部に特徴的な遺伝子の発現が強く誘導されていることが明らかとなった。さらに、バルジで発現する腱組織形成に重要な転写因子Scleraxis 欠失マウスを作製したが、毛包形態や幹細胞の遺伝子発現に顕著な異常は現れなかった。
著者
長谷川 正 丹羽 健
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

ダイアモンドアンビルセル(DAC)という超高圧発生装置と赤外レーザー加熱(LASER)を組み合わせたシステムによって得られる圧力10~100GPa(1GPa=約1万気圧)および温度2000~4000K程度の"超高圧超高温"の"高活性な希ガス超臨界流体"を利用して,新しい希ガス化合物を創製することを目的とした.常圧で気体として存在する物質をDAC内に高密度に封入する方法として,常圧下で気体を冷却し液化して高密度な物質とし,これをDAC内に充填する方法を選択し,今年度は,まず昨年度に開発したダイアモンドアンビルセル内に液化ガスを充填する装置を改良した.特に,昨年度の実験で問題となった次の2点を改良した.観察系において窓に霜が付着し観察が困難となる.ガス導入パイプから流出する希ガスが過剰に冷却されパイプ内で固化する.これらの問題を解決するために,熱伝導を悪くし霜の付着を妨げるために,窓の部分に断熱材を挟んだ.さらに,霜を溶かした際に,水滴が排出されやすくするために,窓の淵の二箇所に切り込みを入れた.また,DACセルにサーマルアンカを取り付けて,ガス導入管パイプのサーマルアンカは外した.充填時にセル下部は上下方向に移動するため,DACセルに取り付けるサーマルアンカはこれを考慮して設計・改良・設置した.さらに,セルとサーマルアンカの接触を良くするために,薄いアルミニウム箔を敷いた.上記の改良の結果,希ガスの液化を容易に達成することができ,新しい希ガス化合物の物質探索が容易になった.研究終了直前に改良に成功し希ガス充填までたどり着けたが,新物質の創製は今後の課題として残された.しかしながら,本研究課題の最も重要な物質創製装置の開発には成功したため,今後新しい希ガス化合物が創製されることは十分に期待できる.
著者
年森 清隆 伊藤 千鶴 前川 眞見子 大和屋 健二 神村 今日子 武藤 透
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

Muse細胞調整後、精子幹細胞の無いW/Wvミュータント雄マウス精巣内に移植して定着性を検討し、次の点が明らかになった。長距離移動によるMuse細胞のダメージは無く生細胞数を確保できる。移植前培地中に長時間置くと凝集が起こり、移植効率が下がる。移植用培地からアルブミンを抜くと効率良く微小注入できる。移植後3ヶ月では、GFPのシグナルは認めらないことから、単純なMuse細胞移植では精子細胞分化への誘導はできないと思われた。
著者
南部 功夫 和田 安弘 大須 理英子 大須 理英子
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、直感的で操作が容易な脳情報バーチャルキーボード構築に向けた基礎検討を行った。最初に、脳波(EEG)を用いて、運動実行時および想起時の個々の指運動(想起)を予測できる可能性を明らかにした。次に、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)により、運動準備時には対側の運動前野や補足運動野に高精度な指運動情報(系列)が含まれることがわかった。最後に、機能的近赤外分光計測(fNIRS)を用いた運動情報の抽出を目指し、fNIRS信号に混在する頭皮血流アーチファクトを除去し、脳活動の推定精度を向上させる手法を開発した.以上の結果は、脳情報を利用したバーチャルキーボード構築に貢献すると期待される。
著者
藤井 範久
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

トレイルランニングレース上位入賞者の走動作を分析し,実験室内での走動作と比較することで,不整地における走動作の特徴を明らかにすることを目的とした.その結果,舗装路(整地)に比べトレイル(不整地)では,支持時間の割合が大きくなる,離地距離が長くなる(身体後方まで足部を地面に接地し続ける),路面の「柔らかさ」に応じて接地時の膝関節角度を調整している,ことなどが明らかとなった.膝関節角度の調整は,長距離走における力学的エネルギー利用の有効性の観点からも支持できるものである.路面に凹凸があり,路面の一部が高い時には,膝関節を屈曲させた姿勢で接地することで,バランスを維持しようとしていた可能性がある.
著者
守 真太郎
出版者
北里大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

競馬、天気予報、クレジットリスクに関する予想について、スケール不変性の観点から研究を行った。競馬市場では、単勝馬券の馬の得票率と勝率がほぼ一致することが知られていたが、得票率が1%以下のときは一致せず、得票率0%からカウントした勝馬の数と負け馬の数の間にべき乗則が成立することを見出した。この発見を基礎に、多数の人が集団で予想を形成する過程をモデル化し、集団実験で検証を行った。最大の成果は、ヒトが他人の情報をコピーするという先天的な性質が、集団というマクロレベルの相転移を引き起こすことである。
著者
吉田 司雄 林 真理
出版者
工学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

近代日本における西洋近代科学受容についてはすでに多くの研究があるが、そのほとんどは専門家の言説に焦点化したものであった。しかし、近代科学が大衆化する過程に関わったのは専門家だけではなかったし、そうした大衆レベルでの科学受容が近代日本社会の重要な部分を構成している。本研究では特に、科学言説と日本探偵小説との交差を問題とし、さらに戦前日本の植民地であった台湾や韓国においてどのように浸透していったかを検討した。
著者
桝本 智子
出版者
神田外語大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

原爆の歴史をいかに次世代に伝えていくのか、様々な視点から検証した。まず、原爆が製造されたロスアラモスではいかに原爆が語られてきたのかを調査するためロスアラモス研究所の科学者を含む関係者へのインタビューを行った。現地で語られる原爆は科学的偉業であり、原爆投下後よりも試験爆弾成功までに重点を置いている。もう一つの目的の「対話」と次世代への伝え方に関しては、「はだしのゲン」を現地で上映し参加者とのディスカッションを行った。また、現地の学部生の授業でもこのトピックを取り上げてもらい、ディスカッションを行った。その後のフォローアップから、この授業が核兵器に対する認識に変化をもたらしたことが分かった。
著者
速水 敏彦 小平 英志 青木 直子
出版者
中部大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

家事の動機づけを測定する項目を収集し質問紙を構成し、成人女性に実施して因子分析を行った。その結果、興味関心・効力感、義務感、生活習慣、生活必要感、代替者不在感の5つの因子が抽出された。また、各家事の動機づけが現実の家事行動とどのように関係するのか、さらに専業主婦と就業者では動機づけに違いがあるのかについても検討した。さらに家事の動機づけの高低を規定するパーソナリティや価値観、家族の人間関係との関連についても調べた。