著者
高田 秀志
出版者
立命館大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では,情報の発信元を判断可能とする情報として,情報の公共性および状況の公共性に基づいて,個人に関わるどのような情報を開示すれば良いかの枠組みを構築した。また,情報自体の配信と,配信情報に付与された情報に対する評価を,リング型P2Pネットワークで構築した場合の実現可能性についてシミュレーションにより検証した。さらに,どのような個人であるかを認識できるように,SNS上への投稿から特徴的なものを抽出する手法およびユーザをランキングする手法について検討し,アンケート調査により評価を行った。
著者
吉川 昇
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

近年、薄型テレビの出現により旧来のブラウン管は廃棄される傾向にある。ブラウン管用ファンネルガラスは鉛を含むため、廃棄には脱鉛が必要である。本研究はマイクロ波加熱を利用した鉛の迅速酸浸出を行い、ガラスの廃棄/再利用を可能にする事を目的とする。本研究ではマイクロ波印加鉛ガラスの酸浸出速度に関する基礎的研究と、大気系での大量処理の可能性を調べた。
著者
加藤 清明 得字 圭彦
出版者
帯広畜産大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

「ゆきひかり」とイネ4品種のそれぞれを65%含む飼料を4日間給餌したラットを解剖し、大腸での遺伝子発現をDNAマイクロアレイ法で比較解析した。他の4品種群と比較して、ゆきひかり群で4倍以上の発現レベルとなった184遺伝子と1/2以下の発現レベルとなった109遺伝子を選定した。ゆきひかりで発現減少していた遺伝子群には、受容体をコードするものが多く、発現が増加していた遺伝子群には、物質輸送に関わるものが多かった。続いて、上記トータルRNAを用いたリアルタイムRT-PCR法によって、ゆきひかり群で発現が減少している2種の遺伝子を特定し、ハイスループットスクリーニング法の基盤を整えた。
著者
山本 泰彦 太 虎林
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

血液の赤血球中に酸素運搬体として存在するヘモグロビンが示す高い酸素運搬能は、協同的酸素結合機能によって支えられている。私共は、ヘモグロビンにおいて酸素が結合する部位であるヘムの電子構造に着目し、従来の研究とはまったく異なる新しい観点で研究を行い、ヘム、ヘム鉄、そして軸配位子ヒスチジンの間の電子的な相互作用がヘモグロビンの協同的酸素結合機能の調節に重要であることを実証することに成功した。
著者
鈴木 研
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

三次元半導体実装用金属バンプに用いられる銅はヤング率が結晶方位によって異なる材料である.本研究では,実装構造内残留応力低減のため,ヤング率が最も低い(100)面に配向した銅バンプ作製を可能とするめっき条件,下地材料の探索を行った.(001)面配向のβ-Taバリア層上に銅シード層を形成しめっき成膜した銅薄膜で(100)面配向の増加を確認した.このめっき銅薄膜のヤング率をナノインデンテーション試験により評価したところ,(111)面配向単結晶銅より約20 GPaも小さいヤング率(平均127 GPa)を得た.以上より,結晶方位を制御しためっき銅バンプの作製による低ヤング率化の実現可能性を実証した.
著者
小保方 潤一
出版者
京都府立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

藻類を摂食するウミウシの中には、個体や卵の中で、藻類のmRNA配列に由来するcDNAが見いだされる場合がある。しかし、この特異な遺伝子水平転移の機構は分かっていない。一方、最近、蛍光発色団に結合するアプタマー配列を用いてRNA分子を蛍光標識する手法が開発された。本研究では、このRNA標識技術を用いて、藻類のRNA配列が捕食者中でどのように挙動するのかを検出する新規実験手法の開発にチャレンジした。研究期間の大半は、植物体中でのRNA蛍光標識法の開発に費やしたが、得られた蛍光強度は水平転移を検出するには不充分だった。現在引き続き、RNAの蛍光強度を高めるための検討を進めている。
著者
下野 孝一 江草 浩幸
出版者
東京海洋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

われわれは被験者が窮屈な姿勢を取ったとき、頬に触っているのが手なのかと足なのか、という感覚が混乱する可能性があることを発見した。窮屈な姿勢とは、床に座り、足を平行より少し開き気味にして、足(あるいは手)で頬を触ることである。このような状態で、頬を触っているのが手なのか、足なのかの確信度を聞くと、床には座っているが体を折り曲げない場合に比べ、全体の8割近い観察者が、手が触っているか足が触っているかの確信度が低下した。この結果は触覚の新しい錯覚現象である。
著者
林 徹
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、以下の独立開業ないし起業のプロセスのメカニズムの解明に向けて、部分的ながらもそれに資すると思われる事例を提供するものである。感情面における正の変化が生じると潜在的な起業者の見方が一変する。その後、感情面の起伏と経験が非直線的に進展する。物的資源の獲得と相俟って、懐妊期を経て、潜在的な起業者の顕在化に至る。しかし、特定のどの相手とのどのような相互作用が後押し(支援)となって潜在的な起業者(アクター)の正の感情の高まり(愛情)が惹起され、他方で経営資源がいかに束ねられていくのか。AETを背景とするこうした一連のメカニズムの解明は仮説段階にとどまっている。
著者
浮葉 正親
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

磯貝治良の初期作品33篇と在日朝鮮人作家を読む会の同人誌『架橋』のバックナンバー(創刊号.第26号まで)を電子化し、ホームページ「ジローの文学マダン」を作成してインターネット上に公開した(http ://www. isojiro-yomukai. com)。また、磯貝の発表作品目録(1957年~ 2012年2月)、在日朝鮮人作家を読む会の活動記録(1977年. 2012年3月)、『架橋』総目次(創刊号.第31号)を収録した報告書『社会参加としての在日朝鮮人文学.磯貝治良とその文学サークルの活動を通して』(全100頁)を刊行した。その報告書には、磯貝の初期作品33篇を収録したCD「磯貝治良作品集1」を添付した。
著者
澤田 純男 古川 愛子 中村 晋 鍬田 泰子 後藤 浩之
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

固体である地盤を伝播する地震波は重力の作用を無視するが,流体に近い性質を持つと考えられる液状化地盤では重力の作用を無視することができるとは限らない.重力の作用を考慮した数値解析手法によって,液状化地盤を伝播する波をシミュレートしたところ,せん断剛性の低下に対応して表面波が流体中の重力波に似た性質をもつようになること,またスロッシング現象が顕著になることを明らかにした.
著者
古川 哲史
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

薬物の心毒性は、創薬の開発中止・市販薬のリコールの重要な原因となっており、そのアッセイ系、特に開発早期段階のin vitroアッセイ系の確立は製薬業界から大きな期待が寄せられている。今回、多電極アレイ(MEA)システムとソニー株式会社が開発した動くベクトル(MVP)法を用いて、心筋細胞の電気活動と収縮能を同時にアッセイするシステムを構築した。ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いて、陽性・陰性変力作用をもつ既存薬の作用を高精度にアッセイできることを確認した。最近抗がん剤の心毒性が問題となっているが、同心毒性をin vitroでアッセイすることができた。
著者
井元 清哉
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

東京近郊を模倣した 5 地区からなる仮想都市を計算機上に構成し 、会社員・学生・在宅者の3カテゴリーの行動パターンに従う120万人の住民を配置し、学校・会社・商店などでの感染伝達をシミュレーションするためのエージェントベースシミュレーションモデルを構築した。ワクチン接種を実施しない場合の感染割合が30%となるように感染力を設定し、優先接種グループとして会社員、在宅者、ランダムの3通りをシミュレーションした。その結果、会社員に優先接種した場合には、大きな効果が見られた。
著者
遠藤 一佳 高尾 敏文
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

化石タンパク質のアミノ酸配列を決定する前段階として、現世腕足動物の殻体プロテオーム解析と外套膜トランスクリプトーム解析をLaqueus rubellusとCoptothyris grayiの2種について行った。その結果、74種の殻体タンパク質を同定し、これまでに他の動物門で知られる殻体タンパク質と相同ではない新規タンパク質が大部分を占めることを解明した。一方、約39万年前のL. rubellus、C. grayiの化石タンパク質の予察的解析も行い、殻体内の大部分のアミノ酸がペプチド内ではなく、遊離の状態で存在しており、アミノ酸配列を得るためには、化石抽出物の濃縮が必要であることを明らかにした。
著者
松山 郁夫
出版者
佐賀大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究により、①自閉症児者の家族は、自閉症があると社会適応が困難で支援体制が不十分と捉えていること、②障害者支援施設の生活支援員は、自閉症児者の状態に応じた支援が必要と認識していること、③発達障害者支援センターの相談支援者は、自閉症児者の状況把握の困難さ、障害の特性、適応行為の困難さを問題視していること、④地域の支援者は、自閉症児者に対する自立生活と余暇生活に対する支援を重視していること、以上が明らかになった。これらのことは、青年期・成人期の自閉症者に対する地域包括支援を行う上で重視すべき視点と考察した。
著者
三浦 元喜
出版者
九州工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

視覚モデルへの直感的な操作から対応するソースコードを生成して提示するシステムAnchorGarden の有効性について検証を行った. 2011 年にメソッド呼び出しやデータ構造,返却値の可視化を実現したが,統計的な有効性は十分検証されていなかった.そこで大学2 年生の C 言語学習者約 100 名を対象とし,分数クラスのオブジェクト状況を図示する問題について,システム利用群の正解率は未使用群に比べて有意に高かった.このことから,オブジェクトの状況を操作しつつ,自動生成されるソースコードを観察することにより,ソースコードの表す意味を短時間のうちに,直感的かつ正確に理解できることを確認した
著者
永井 正夫 ポンサトーン ラクシンチャラーンサク
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では、全国の交通事故の3割を占めている追突事故に焦点を絞って、運転中の居眠りや不注意を外乱変動とみなし、ドライバパラメータや操作量の分析にモデルベースのロバスト設計手法を導入して、人間機械系のドライバモデルを定量的に扱う手法の確立を目的として研究を実施した。2年間の研究期間の具体的な実施内容は以下のとおりである。(1)シミュレータ及び実車による走行実験により、速度制御にかかわる運転行動パラメータを抽出し、(2)調布と富士河口湖町の間の高速道路における公道実験データを収集して、(3)走行時の運転行動データとドライバモデルの出力との比較による眠気状態の分析を実施し、(4)顔画像による居眠り状態の分析と比較することにより、ドライバの注意力低下を判断できることを示した。基本的に、前後運動の理想的な速度制御モデルは、リスクポテンシャル理論に基づいており、結果的にはバネマス系で構成されるドライバモデルとして構築をした。この成果をさらに拡張して、アクセル・ブレーキペダルによる速度制御モデルだけではなく、ハンドル操作に基づく車線維持制御モデルと統合することにより、より精度よくドライバの居眠り状態や注意力低下状態を判断できるモデルを構築した。この成果は事故を未然に防ぐことを目的とした予防安全技術への応用として期待される。
著者
白井 裕子 佐々木 裕子 井上 清美 島田 友子 稲垣 絹代
出版者
愛知医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

1)野宿者の生活への参加観察等から、野宿者の健康や生活上における知恵や工夫について調査を行った。寒さ・暑さ対策、暴行を防ぐ、生活用品の入手方法、その場所に住まい続けるための方法(地域住民との関わり方)などが明らかになった。2)調査で明らかになった野宿者の知恵や工夫を、研究者らが行っている健康支援活動の中で、個々に紹介しながらその人の健康を高める方法をともに考えあった。3)梱包用エアーマットを活用した寒さ対策と、砂糖と塩でつくった経口補水液を活用した熱中症予防の方法について、野宿者に実際に生活の中で試してもらった。効果があったという意見も多く、野宿者に共通して広く紹介できることが明らかになった。
著者
茂木 創 立花 亨 木村 正信
出版者
拓殖大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究「食料・エネルギー備蓄におけるデフラグメンテーション費用」は、食料やエネルギーの国家および民間備蓄の有効かつ即効性のある活用について考察したものである。本研究では、「不測の事態」が発生した状況下では、「規制緩和」よりも透明性が確保された下での「規制された経済社会体制」の方が効率的に危機を回避できる可能性について考察した。
著者
井口 由布
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究はマレーシアにおいて女性がどのように表象されてきているのかを、女性器切除(FGM)をめぐる言説をみることによって、植民地主義、ナショナリズム、多民族社会、イスラムとの関係から明らかにしようとした。本研究においてわかったことは大きく以下の二つである。第一に、マレーシアのFGMが近年のイスラム復興の動きの中であらためて見いだされかつ強化されており、その動きがマレーシアのマジョリティであるマレー系を中心としたナショナリズムと呼応していること。第二に、FGMの研究とそれにともなう言説がアフリカにおける状況を中心に形成されており、マレーシアの状況に合致しないことである。
著者
小野 昌彦
出版者
明治学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

不登校経験者が入学者の8割を占めるA定時制高校入学者に対して、2年間、入学時、年度末に学力テストを実施した結果、入学者の学力は、算数は小4、語彙は中1の段階の生徒が最も多い事が明らかになった。また、不登校経験高校生及び大学生を対象に個別支援を実施した結果、的確なアセスメントを実施すれば、学力補充は可能であることが示された。不登校経験者の学力実態を実証的に明らかにした日本で初めての研究といえる。