著者
中道 正之
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

ニホンザルのメスは、生涯を生まれ育った集団で暮らす。このようなニホンザルメスの加齢に伴った行動変化、特に20歳を超える高齢個体の行動に焦点を定めて、2つの集団で行動観察を実施した。高齢個体の中で、老眼になっているものがいることを発見した。毛づくろいは、毛を分ける手指近くに目を近づけるのが一般的であるが、25歳前後の個体の中には目の位置を手指から離す個体がいる。これは老眼であると推測される。高齢メスは社会的孤立傾向が目立つが、特に優劣順位が低い個体において、毛づくろいを受ける個体が少なくなるなど顕著であった。他方、親しい個体を亡くした高齢メスが新しいパートナーを見つける柔軟性も保持していた。
著者
丸山 マサ美 吉田 眞一 小宗 静男 下川 元継 下川 元継
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、本学医学部の古い史料を現在の教育に活用することにあり、新しい教育方法論を模索することにあった。研究成果として、これまでに講義・討論を中心とする教育から、調査・整理、成果報告において、学生の積極的参画は、本研究目的の第一段階の達成とする。研究成果『九州大学医学部標本・史料集(ISBN 987-4-9944005-10-9)』は、九州大学学術情報リポジトリ-により、広く学内・外に公開した。 今後さらに、倫理教育における古い史料の位置づけ、教育への適性など量的・質的な視点からの評価・考察から新しい教育方法論は構築される。
著者
栃内 文彦 研谷 紀夫 玉井 建也 山本 博文 佐倉 統 宮本 隆史 佐野 貴司 添野 勉 飯野 洋
出版者
金沢工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

近現代科学史資料の体系的・効率的な収集・保存のための方法論の確立に向けた実践的考察を、東京大学大学院情報学環社会情報研究資料センター収蔵の地質学者・坪井誠太郎に関する資料(以下、「坪井資料」)の調査を通して行った。資料調査の結果、坪井資料が日本地質学史研究において高い価値を有することが示された。こうした資料の収集・保管に際しては、資料の付加価値を高めるためにも、研究者に着目して<研究者資料>として資料を体系化することが有効であることを実証することができた。
著者
藤吉 亮子 岡本 一将
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

レジスト材料の感度増加を目指すため、電子線とレーザーまたはXe光を同時または逐次的に照射する新規プロセスについて研究を行った。電子加速器からの電子線とNd:YAGレーザーを逐次的に照射する「パルスラジオリシス-レーザーフォトリシス法」による光吸収分光実験により、レジスト分子の電子線誘起中間体の光分解反応が起こることを明らかにした。さらに、電子線とXeランプの可視光域の同時照射を行い、レジスト感度が増加することを示し、本プロセスの有効性を明らかにした。
著者
加賀谷 真澄
出版者
秋田県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究「明治に出版された渡米の手引書に関する研究」は、明治の渡米ブームに乗って海を渡った若者たち(その中でも特に私費留学生)の出身階層を明らかにし、さらに当時の社会が期待した「海外雄飛する青年像」を考察する目的で実施された。「渡米の手引書」や、それに関連する資料を調査した結果、当時の知識人や苦学生の支援団体が、経済的に恵まれない階層の若者をサポートし、米国に送り出そうとする大きな動きがあり、実際に数多くの勤労学生が海を渡ったこと、そして、西海岸より就労も修学も困難である東海岸のラトガース大学に入学していた学生(力行会出身の学生)がいたことが確認できた。
著者
荻野 晃
出版者
長崎県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

体制転換期(1988~1989年)のハンガリー外交について、ソ連、東ドイツ、ルーマニアとの関係に焦点をあてて考察した。2013年度には、カーダール書記長の退陣にいたるまでの対ソ関係を分析した。次に、2014年度には、西ドイツ亡命を希望する東ドイツ市民へのオーストリア国境の開放をめぐる東ドイツとの交渉過程を検証した。最終の2015年度には、1980年代後半の難民流入をめぐるルーマニアとの関係を中心に論じた。研究を進めていく過程で、体制転換の国際的背景としてのヒトの移動の自由の重要性を理解できた。
著者
土岐 祐一郎 宮田 博志
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

マウスの実験系を確立した。NY-ESO-1 発現 CT26を移植後5-FU を投与したマウスにマウス抗NY-ESO-1 抗体 E978を静注すると、72時間後に NY-ESO-1 抗原抗体複合体を観察し、抗腫瘍効果は Fc依存性であった。 研究室において樹状細胞を混合培養した場合、効果は飛躍的に亢進した。これらより、抗癌剤併用抗体療法は、腫瘍内抗原が特異抗体と複合体を作り、抗原提示細胞にFc受容体を介してとりこまれ、CD8T 細胞を抗原特異的に誘導・活性化し、抗腫瘍効果をもたらすことが証明された。
著者
青山 浩之
出版者
横浜国立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究では、国語科の「文字を書くこと」に関する学習の効率化・最適化を図るために、これまで別立てのカリキュラムとして行われてきた書写学習を、国語の言語活動の学習などと効果的に関わらせる方法を実践的に考察し、「言語力」の育成に機能する書字教育カリキュラムを開発した。その過程で、紙面の書きまとめ方により内容理解が高まる点や、要点・キーワードを判断し、速く、見やすく書きとめるメモが内容理解の正確さにもつながる点などを確かめることができた。
著者
関 剛斎 小野 新平 好田 誠
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、ユビキタス元素である炭素をベースとする有機半導体単結晶を用いたスピントロニクスデバイスの開発を目指し、マイクロスピンポンピングという微小磁性体の磁化ダイナミクスを利用する手法により有機半導体および非磁性金属におけるスピンの注入、輸送および検出を試みた。その結果、微小強磁性電極の磁化ダイナミクスを制御できる素子構造の最適化に成功し、マイクロスピンポンピングによるCu細線へのスピン注入、およびCuにPtを接合させることによるスピンの蓄積量の変化を観測した。さらに、有機半導体単結晶であるルブレンと磁性電極の複合化し、ゲート電圧印加下での強磁性共鳴の評価に成功した。
著者
川島 博之
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

都市近郊農民が、宅地用として農地を販売し利益を得ることは、農工間格差の是正に役立つ。インドにおける農地の売買について、インターネットを利用して情報を集めるとともに、現地調査を行った。
著者
木暮 照正
出版者
福島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,日常生活での問題解決力の基盤の一つである認知的柔軟性(文脈状況に合わせて視点や注意を柔軟に切り替えることができる能力),とくに直面する問題にどのように対処しようとするかという点に着目し,成人の学習経験がこの認知的柔軟性の生涯発達変化に及ぼす影響関係について,質問紙及びオンライン型のアンケート法を用いて検討した。自己学習(インフォーマルな学び)に対して意欲や満足感が高い成人学習者は,直面する日常的な問題に対して柔軟な対処をとることができる可能性が示唆された。
著者
福士 幸治
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

新規な遠隔位官能基導入化試薬の創製を進めたが、完成にはいたっていない。その過程で簡便なメソ体のcis-11,12-diamino-9,10-dihydro-9,10-ethanoanthraceneの大量合成法を確立した。このジアミンは、モノイミド化すると残ったアミノ基と縮合環化物を生成するがカルボン酸とはジアミドを与える。今後、ジアミドやアミドエステル誘導体を用い、試薬の開発を進める。
著者
山内 直人 松永 佳甫 西出 優子 金谷 信子 石田 祐 田中 敬文 奥山 尚子
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

社会のダイバーシティ(多様性)が、ソーシャル・エクスクルージョン(社会的排除)をもたらすメカニズムを解明するとともに、ダイバーシティをポジティヴに評価・活用して、社会の活力維持につなげるための公共政策のあり方について研究を進めた。各国社会のダイバーシティおよびソーシャル・エクスクルージョンの状況と、各国の経済成長、起業、犯罪など、様々な社会経済パフォーマンスとの関係を定量的に分析した。
著者
羽賀 浩一
出版者
仙台高等専門学校
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本装置は太陽光追尾可能なパラボラ反射板で太陽光を蒸発容器に集光し,蒸発容器内壁に霧状の微細水滴を噴霧して瞬時に蒸発させる高効率な単蒸留法を用いて淡水が得られる。使用した微細水滴は,スリットが形成された回転円盤への海水の導入により得られた。加熱した蒸発容器から黒体輻射による多大な熱輻射損失が発生するが,熱輻射損失を防ぐ選択吸収素材を導入し,淡水化効率40%を達成した。
著者
滝沢 博胤
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、超高圧力反応場用いてLi-B-S系、マイクロ波反応場を用いてLi-Sn-O系新規Liイオン伝導性化合物を探索した。高圧合成法により新規相Li2B2S5の詳細な合成条件および結晶学的データの取得、およびマイクロ波合成法により新規相Li4xSn4-xO8の合成に成功した。Li2B2S5は単斜晶系の骨格構造がBS4面体の連結によって構成されており、一次元チャンネル内にLiイオンが配置していることが明らかとなった。また、Li4xSn4-xO8はラムスデライト構造を有し、一次元チャンネル内にLiイオンが配置していた。
著者
多部田 茂
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

海底熱水鉱床開発の社会受容性に関してアンケート調査を行ない、非専門家は専門家より開発による波及的なリスクをより大きく感じていることなどを明らかにするとともに、環境影響と経済性を統合的に評価する指標を用いて許容しうる環境影響の大きさを求めた。また、環境リスクを専門家アンケートに基づいて定量化し、開発事業のリスクを定量的に分析した。さらに、リアルオプション分析により、意志決定の柔軟性を考慮した事業性評価が有効であることや、環境調査を早い段階で行い不確実性を減少させた場合のほうがより事業が継続する確率が高いことを示した。
著者
森山 優 鈴木 さやか 北原 勤 清水 実 山杢 誠 村瀬 隆彦
出版者
静岡県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

戦時・戦後(占領)期に出版された印刷紙芝居の全貌を把握するため、残存する紙芝居の収集作業を実施した。調査したのは、掛川市内の篤志家の遺族宅に保存されていた印刷紙芝居192点、大阪国際児童文学館の印刷紙芝居113点、名古屋柳城短大所蔵の印刷紙芝居43点等である。また、当時の雑誌『教育紙芝居』『紙芝居』を調査し、記事目録と紙芝居の目録を作成した。上記調査と総合し、戦時期については、ほぼ全容が解明できた。
著者
石野 レイ子 岩井 恵子 伊井 みず穂 兒嶋 章仁 相澤 慎太 五十嵐 純 吉田 宗平 矢部 絵里奈
出版者
関西医療大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

活習慣病予防対策として国民自らが運動の必要性を理解し、主体的に運動を継続できるための支援を検討した。公募して同意を得た成人90名を対象に、体育館で月1回、ミニレクチャー30分、運動90分のプログラムを提供し、自宅での歩数とEXをモニタリングした。生理的変化は、BMI、血清脂質、内臓と皮下脂肪面積と、動機と生活習慣・健康・運動の認識について調査した。12か月後の成果は、支援前に比較して歩数とEXの増加、および皮下脂肪面積が有意に減少し、参加者全員が運動継続の必要性を認識できた。仲間づくりの運動の場を提供し、生理的変化に効果的な運動や手軽にできる運動内容など、やる気を支える支援が示唆された。
著者
金藤 ふゆ子 岩崎 久美子
出版者
文教大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は、保護者や地域住民による学校支援が、教員の職務遂行に及ぼす効果を明らかにすることを目的とした。学校・家庭・地域の連係による教員の推進は、教育基本法に明記される新たな教育の方向性であり、本研究はその効果を教員の観点から解明した。学校支援は、放課後子ども教室事業や学校支援地域本部事業に着目し、当該事業を実施する学校に勤務するか否か別に、教員の意識やストレスを比較分析した。K県全小中学校教員調査、及び全国小学校教員調査を質問紙調査により実施し、分析を行った。保護者や地域住民の学校支援は、教員の職務遂行上の肯定的意識を高め、かつ児童生徒を肯定的に捉える傾向に影響することが明らかとなった。