著者
高橋 麻理子
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では、マクジャク(鳥綱キジ目キジ科クジャク属)の求愛行動を調査し、先に報告されている同属インドクジャクの求愛行動と比較した。比較の結果、オスの上尾筒(目玉模様の付いた長い飾り羽)を使ったディスプレイ行動が2種間で酷似した一方、繁殖期の音声はオスとメスともに2種間で異なり、音声の特徴の性差はマクジャクで小さかった。本研究の結果は、上尾筒を使ったオスの求愛行動が2種の共通祖先によって獲得された古い形質であること、一方で求愛音声が2種の分岐後に新しく変化した形質であることを示唆している。
著者
平山 真理
出版者
白鴎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では裁判員裁判で性犯罪が審理される場合(以下、性犯罪裁判員裁判と言う)の課題をさまざまな観点から考察した。これらの課題は、量刑の変化とその理由、被害者への配慮、裁判員の負担、被告人の処遇や性犯罪対策に対する裁判員の期待等である。これらの課題について性犯罪裁判の傍聴や弁護人、また被害者団体へのインタビューを通じて考察を行った。また、比較法的視点として、米国、英国、ドイツ、ベルギーにおける市民参加型裁判の傍聴、調査を行い、とくに性犯罪事件等における課題を考察した。また、性犯罪者対策や性犯罪被害者支援について諸外国の実践例を考察した。
著者
高橋 浩二
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

前年度から引き続きヒスイの穿孔実験と遺跡出土ヒスイ製品に関する調査を実施した。ヒスイの穿孔では、舞錐法に加えて、竹管と銅管の穿孔具による弓錐法を用いた比較実験を行ったところ、およそ3.5時間(銅管)〜6時間(竹管)で深さ0.5cmの穿孔が可能な舞錐法に対して、弓錐法ではそれぞれ約6倍の時間を要すると考えられること、また銅管と比較して竹管の穿孔具では穿孔に約1.7倍の時間を要するが、穿孔具の先端に触材(実験では海砂と金剛砂を使用)が定着しさえすれば竹管でも効率的な穿孔が可能であるという結果を得た。加えて、技術的専門性が高いとされる穿孔過程に関しては、穿孔前の下孔作出と穿孔具軸心の垂直維持が重要であるということがあらためて明らかになった。なお、熟練度によっても穿孔の効率が異なるため、今後さらにデータを蓄積する必要がある。次に、弥生から古墳時代のヒスイ勾玉を中心にして資料の観察を行った。古墳前期以前のものは擦切技法を用いることによって、緑色半透明な色質の部位を効率的に取り出して勾玉を作出するのに対して、古墳中期以降のものは白色不透明化の傾向にあり、擦切技法は急激に衰退していったものと考えられる。また、韓国(新羅)出土のヒスイ勾玉については、新しいものほど白色化の傾向にあり、日本列島における変化との対応関係から、段階的に流通していった可能性が高いという見通しが得られた。
著者
佐々木 秀明
出版者
いわき明星大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島第一原発事故により,多量の放射性物質が環境中に流出した。種子植物とラン藻における放射性物質の蓄積能力に関する調査を行った結果,種子植物に高いレベルでの放射性物質蓄積は観察されなかったが,陸生ラン藻イシクラゲにおいて高い蓄積が観察された。福島県二本松市において,イシクラゲはセシウム137を607,000 Bq/kg蓄積していた。イシクラゲの放射性セシウムの蓄積量は,土壌の放射能濃度が高いところに生育するものにおいて,高い傾向があった。また,栽培実験の結果,イシクラゲは汚染土壌から放射性セシウムを吸収した。これらの結果は,イシクラゲによる放射性物質蓄積は,汚染土壌の浄化に役立つ事を示している。
著者
美作 宗太郎
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

陳旧打撲傷を肉眼的に証明することは難しい.そこで,紫外光を利用して陳旧打撲傷を診断する方法を試みた.結果として,390nm付近の波長の紫外光が陳旧打撲傷の可視化に適切であることが判明した.また,測色学的検討によって,打撲傷の色調のうち黄色の成分が紫外光により明瞭になることが判明した.紫外線撮影法については,更なる検討が必要である.
著者
朴 祥美
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、「独特な日本文化」というような、日本文化を他国・他文化から切り離して捉える見方に挑戦し、日本文化政策史をトランスナショナルな文脈から再考する。一方で日本は、戦時期には欧州の文化政策の方法論を受容し、占領期にはアメリカの文化的浸透と競う中で、自国文化に対する自信を高揚させてきた。他方、高度成長期には、自らの文化政策の経験を解放後の韓国に教示してきた。本研究は、一見、一国にユニークな現象に見える「文化」というものが実は他国との関係から「政策」として形作られていくものであることを明らかにする。
著者
吉井 美奈子
出版者
武庫川女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、「選択的夫婦別姓制度」の導入による民法改正が実現した場合、別姓を選択した家族への影響を考察することを目的としている。特に、子どもが成長するうえでのアイデンティティ形成と氏の関係を質問紙調査、子どもの文字選好実験、親の離婚や再婚等で改姓を経験した子ども(18歳以上)へのインタビュー調査などを行い、検証した。その結果、幼い子どもたちの多くは、自分の氏名から文字に興味関心を持つ。また、離婚や再婚を経験し成長した子どもにとって、氏の変更は周囲へ説明する煩わしさを感じる一方で、実生活を優先に考える傾向が見られ、家族や個人の氏への執着は低く、実際の家族関係を優先するという傾向が見られた。
著者
古川 智範 上野 伸哉 下山 修司 二階堂 義和
出版者
弘前大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、慢性的なベンゾジアゼピン系薬剤の使用によって認知機能が低下するメカニズムを探るため、ジアゼパム(DZP)長期投与マウスを用いて研究を行った。行動評価解析結果から、想起能力の低下がDZP長期投与した老齢マウスにおいて認められた。また、DZPを長期投与した老齢マウスでは、想起能力の低下や、CA1およびCA3領域におけるスパインの密度の減少が認められた。一方、海馬CA1領域におけるLTPやアポトーシス、細胞新生に対するDZP長期投与の影響は認められなかった。老齢マウスでは、DZP長期投与によりCA3領域のスパインが減少することで想起能力が低下する可能性が示唆された。
著者
加藤 弓枝
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、江戸時代において、身分的・空間的境界領域の人々による学問の営為がいかなるものであったのかについて注目し、とくに和歌を中心に考察した。その結果、とりわけ非蔵人の学芸活動の実態に関して明らかにすることできた。具体的には、彼らが「書籍講」という独特の「講」を営み、書物を共同購入していたことを明らかにすることができた。これらの成果によって、近世文壇史・文化史へ新たな視点を提示することができた。
著者
赤羽 英夫
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

自然界に存在する地磁気を用いた高感度な地磁気核磁気共鳴(NMR)装置、またはイメージング(MRI)装置の開発を行った。地磁気MRIの開発では、MRIの取得方法であるグラジエントエコー法を地磁気NMRに応用し、2次元、3次元での画像化に成功した 。また、NMR励起パルスに起因するNMR受信システムの不感時間を、 NMR共振器のQ 特性を電子的に変更することにより、短縮することが可能となった。その結果、緩和時間が短い(<100ms)生体サンプルの地磁気MRI画像を世界で初めて計測することに成功した。
著者
徳永 光
出版者
獨協大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本において再鑑定資料の保存機関・方法・期限等に関するルールがなく、かつ再鑑定の実施の要否は裁判所の裁量に任されているため、被告人側が独自に鑑定の実施を望んでも実現に困難が伴うことが把握された。再鑑定の実施を被告人の権利の一つと捉えないため、再鑑定資料の保存義務という問題が生じてこないのが現状であろう。しかし、当事者主義を採用する以上、残存資料へのアクセス権が認められるべきであり、また再鑑定が、雪冤の決定的証拠となりうることから、有罪確定後、刑期が終了するまでの間における鑑定資料保存の義務づけが必要である。
著者
岩田 奈織子
出版者
国立感染症研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

重症急性呼吸器症候群 (SARS) コロナウイルス(SARS-CoV)は重症呼吸器疾患を引き起こす新興ウイルスである。ワクチンや治療薬はまだ開発されていない。UV不活化SARS-CoV全粒子(UV-V)は多くのエピトープやタンパクを含んでおり、SARSのワクチン候補とされている。しかしながら、ヌクレオカプシドタンパクを含む不活化SARSワクチンはウイルス感染後マウスの肺に好酸球浸潤を示すことが報告されている。今回、Toll-like receptor (TLR) アゴニストがUV-Vワクチンの副反応を軽減するか半年齢のBALB/cマウスで調べた。UV-V、水酸化アルミニウム(Alum)添加UV-Vで免疫した半年齢マウスは、マウス馴化SARS-CoVの感染に対して一部防御を示し、組織学的に肺で肺胞傷害像は見られなかったが、血管周囲に広汎な好酸球浸潤が見られた。一方、リポポリサッカライド、Poly(I:C)、PolyUを含むTLRアゴニストを添加したUV-V(UV-V+TLR)で免疫したマウスでは、肺での好酸球浸潤が著しく減少した。そして肺のサイトカイン量の測定で好酸球誘導に関わるIL-4およびIL-13の値がUV-V免疫マウスよりも低いことが示された。加えて、マイクロアレイ解析でUV-V免疫マウスでは好酸球誘導に関わる遺伝子の発現が高くなっていたのに対し、UV-V+TLR免疫マウスではそれらは低く、むしろTLR3および4の下流に位置する遺伝子の発現が高くなっていることが分かった。これらの結果から、SARS-CoV感染により引き起こされる肺のワクチン誘発性好酸球浸潤はTLRアゴニストをアジュバントにすることにより、回避できると示唆された。
著者
平野 篤
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

生体内に取り込まれたナノ粒子はタンパク質と相互作用して「タンパク質コロナ」と呼ばれる複合体構造を形成することが知られている。安全なナノ粒子の開発にはタンパク質コロナの物性の解明が必須である。当該研究ではカーボンナノチューブおよび荷電性のホモポリペプチドをそれぞれナノ粒子とタンパク質のモデルとして利用し、タンパク質コロナの形成に関する基礎知見を得た。特にポリアルギニンがカーボンナノチューブへ強く結合するという知見は、ナノカーボン材料のタンパク質コロナ形成におけるアルギニン残基の重要性を示唆するものであり、芳香環を有するナノ粒子全般におけるタンパク質コロナの形成機構の理解にもつながる成果となった。
著者
堀部 ますみ
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

徳島大学病院・歯周病科および福本歯科医院において被験者70名、合計358本の診査を行った。その結果、被験者1名あたりの冷刺激指数(y)は平均歯肉退縮量(x)に対し、y=0.188x+0.194の係数をもって正の相関を示すことが明らかとなった。また苗種別に分析すると、歯肉退縮を認める歯は認めない歯と比較して有意に冷刺激を感じる割合が高く、また歯肉退縮量が多いほど冷刺激の強度も増加した。上記結果から冷刺激による象牙質知覚過敏の発現と強度は歯肉退縮量に関連していることが示された。
著者
湯澤 美紀 湯澤 正通 齊藤 智 河村 暁
出版者
ノートルダム清心女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,学習に困難を抱える子どもの読み書きに関する能力の向上を目指し,ワーキングメモリならびに音韻認識に着目した学習支援の研究を行った。まず,個人のワーキングメモリのプロフィールを測定するために,オートメーティッド・ワーキングメモリ・アセスメント(以下AWMA)の日本語版を作成した(2009年)。次に, AWMAを用い,特別支援学級に所属する児童10名のワーキングメモリのプロフィールを測定した(2010年)。次に,英語の活動を週1回, 14カ月(2010年~2011年)の長期にわたって実施した。学習支援プログラムについては, (1)ワーキングメモリの小ささに由来するエラーの軽減(2)ワーキングメモリプロフィールに応じた支援(3)音韻認識に着目したプログラム内容を目指し,構成した。結果,子どもたちの英語の音韻認識に向上が見られ,最終的には,英語の読み能力を身につけ,主体的に学習に取り組む姿が見られた。
著者
五野井 郁夫
出版者
高千穂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の成果は、類縁集団を基底としたグローバル・ジャスティス運動が世界政治に与えている影響を明らかにしたことである。本研究では、フローバル市民社会としてNGO以外にもオキュパイ・ウォールストリートや香港の抗議行動等、サイバースペースでの紐帯を活用した世界規模で見られる類縁集団ベースの運動を「社会運動2.0」と名付けて分析した。そこではグローバル・ジャスティス運動が、国際規範の形成と強化に寄与しており、これら新たな直接民主主義の波による国境のきわを越えた国際規範形成につき「社会運動のクラウド化」という概念を用いて説明し、現行のヘゲモニーや国際秩序への変更を求める同運動の特徴と動態を理論化した。
著者
丸山 泰弘
出版者
立正大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、まず①“War on Drugs”政策終焉以降のアメリカにおける薬物政策とドラッグ・コート政策およびアメリカ国内のハーム・リダクション政策について調査および研究を行うことを第一目標とし、②国際的なハーム・リダクション政策との関係の中で欧州の薬物政策、とくに社会的資源の役割と諸問題について刑事司法に依存しない薬物政策を検討することが第二目標とした。さらに、③上記①および②を検討することで近年の危険ドラッグ対策のように規制によってのみ対応することの問題点と刑事司法に依存しない日本の薬物政策について検討を行うことを第三目標とし、調査研究及び研究報告を行った。
著者
関 善弘
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

近年、急速に発達したイメージング研究により、ミクログリアが統合失調症の病態に深く関わることがわかってきた。ミクログリアは炎症性サイトカインの産生を介して白質に異常をきたし、病態を形成することが明らかになりつつある。また、統合失調症モデル動物においてオリゴデンドロサイト障害が指摘されており、活性化ミクログリアがオリゴデンドロサイトに影響を及ぼすことが想定されているが、いまだ詳細な報告はない。そこで本研究では活性化ミクログリア/オリゴデンドロサイトの共培養系を用いて、活性化ミクログリアと共培養後のオリゴデンドロサイトの病理学的変化について検討を行い、以下の(1)-(3)の結果を得た。(1)活性化ミクログリアはオリゴデンドロサイトにアポトーシスを誘導した。(2)非定型抗精神病薬であるアリピプラゾール(ARI)と抗生物質であるミノサイクリン(MINO)はオリゴデンドロサイトのアポトーシスを抑制した。(3)MINOは活性化ミクログリアの細胞内においてSignal Transduction and Activator of Transcription(STAT)-1のリン酸化を抑制し、炎症性サイトカインの産生を減少させていた。本実験の結果を受け、統合失調症モデル動物でin vitro実験の結果を検証すべく、免疫組織学的検索、分子生物学的検索や、代謝イメージング法などを用いた動物実験を推進している
著者
谷口 真由美
出版者
大阪国際大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本の少子化が進行している背景の一つには、「リプロダクティブ・ライツ」が保障されていないことが挙げられる。また、何故それが保障されていないのかといえば、「リプロダクティブ・セキュリティ(性と生殖の安全保障)」が確保されていないからであると考える。女性やカップルは、子どもを「産まない」という理由だけではなく、「産めない」(産みたいのに産めない・産んでも育てられない)という事情がある。安心して産める・生んで育てられる社会とはどのような社会なのか。リプロダクティブ・ライツやリプロダクティブ・セキュリティの観点から明らかにする。