著者
千葉 龍介
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

近年,自律ロボットによる家庭内・オフィス内作業が達成されつつあるが,未だその作業効率には疑問が残っており,適切なロボットの行動計画を行う必要がある.本研究では,家庭内・オフィス内という未知・動的な環境で高効率かつロバストな行動を達成するため,ロボットの行動計画法の提案を行う.家庭内での掃引作業を例に採り,遺伝的プログラミングにより高効率性を,遺伝的アルゴリズムによりロバスト性を獲得する.これらを同時に行うための競争的共進化手法を提案し,シミュレーションによりその有効性を検証する.
著者
神代 英昭
出版者
宇都宮大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,(1)フードシステムの変貌メカニズムの解明(特に2000年以降の食料供給構造の国際化を重点的に),(2)地域農業再編と川上(農業部門)主導型のフードシステム発展の可能性の検討(特に生産・加工・販売を一体的に行う「六次産業」的活動を行う事例研究を重点的に),の2点を中心に研究を進め,「地域農業再編と川上主導型フードシステム発展の可能性」について検討した.特に,こんにゃく,砂糖,大豆などの地域特産物を素材として研究を進めた.
著者
飯田 直樹
出版者
(財)大阪市文化財協会
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、現代人にとってもっぱら相撲興行というスポーツ娯楽を提供する存在としてしか認識されていない相撲集団が、歴史的には様々な社会的役割を果たしていたことを、大阪相撲という相撲渡世集団に即して明らかにした研究である。天満青物市場など市場社会や蔵屋敷(各藩が大坂に年貢米などを販売するために設けた施設)、さらにはそこで荷役労働に従事した仲仕と呼ばれる肉体労働者、賤民身分(穢多・非人)などと大阪相撲との関係を具体的に明らかにした。
著者
油納 健一
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

"権利の無断使用(特許権の侵害)"に対して不当利得制度を用いた場合に、特許権者をいかに救済できるのかが、本研究の課題であった。ドイツの判例・学説を中心に詳細に検討した結果、特許権者は特許権侵害者に対して、特許権の使用可能性という利益を請求することができると考えるのが、ドイツにおける現在の支配的見解であり、日本法においても重要な示唆を与えうるものであることが判明した。もっとも、使用可能性という利益は、無形・無体の利益であるため、価格算定を行う必要があり、ここでは算定基準をいかに考えるかが問題となる。返還義務の対象の問題と同様に、ドイツの判例・学説を中心に検討した結果、客観的市場価格を基準とすることが最も妥当であることが判明した。これにより、不法行為制度に限らず、不当利得制度によっても、特許権保護を全うできる理論構成を提示することができ、今後の実務にも参考になることが期待されうる。
著者
武田 邦宣
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

ハイテク産業における合併規制の違法性判断基準のあり方について、米国および欧州との比較から、日本法への示唆を得ることを目的に研究を行った。2004年度に「ハイテク産業における企業結合規制」にて米国反トラスト法における規制事例を網羅的に検討した後に、その後の米国法をフォローするとともに、改正後のEC集中規則の適用事例を整理・検討している。そこでの成果は、独占禁止法の適用余地が少ないと考えられてきたハイテク産業においても独占禁止法適用の価値は大きく、またこれまでの伝統的産業とは異なる全く新しい違法性判断基準作りが必要というものである。「市場獲得のための競争(competition for the market)」は、その分析基軸になるものと考えている。ECではしばしばそのような考え方を規制事例に確認することができ、米国においても政権による揺らぎはあるものの、同様の反トラスト法思想は既に存在するものと考えられる。以上のような比較法研究と同時に、日本法との比較を行うための準備作業を進めた。具体的には、我が国におけるこれまでの企業結合規制の特色を抽出するために、過去の公表相談事例を整理・分析した。本年度はその成果を「企業結合規制にみる公取委の市場画定・市場分析手法」にて公表することができた。また、昨年度のジョンソン&ジョンソンの事例に見られるように、市場の国際化に伴い外国会社同志の合併が大きな問題になるものと考えられることから、市場画定、独禁法の域外適用の問題について基礎研究を蓄積しつつある。
著者
田井 健太郎
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究プロジェクトでは、近世兵法書を用い、中世に展開された武術の特性について、戦闘技法構造の側面と萌芽的武士倫理性との関連の側面から明らかにした。また、兵法書の中での近世初期の武士倫理が、戦闘者的武士身分観と士的武士身分観の混在状態から、武を司る者による徳治という倫理観への発展がみられることを明らかにした。
著者
福川 裕徳
出版者
一橋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

平成19年度は,まず,既存研究等の検討および理論的考察に基づいて構築した監査人の外見的独立性への影響要因を分析するためのフレームワークをさらに精緻化した。そこでは,外見的独立性への影響要因として,監査人の態度,リスク要因(脅威),リスク緩和要因(セーフガード)の3つの要因を設定し,それぞれの要因の具体的内容及びそれらの相互関係について明らかにした。さらに,個々の影響要因を検討するのではなく,これらの諸要因が全体としてどのような影響を外見的独立性に対して与えているのかを,構築したフレームワークに基づいて実証的に明らかにするため,当初予定していた研究方法を変更し,外見的独立性を対象とした大規模なアンケート調査(日本会計学会スタディ・グループによって1998年に実施)から得られたデータを用いて共分散構造分析を行った。多母集団分析(市場関係者と監査役)を行った結果,監査(人)(態度),競争の程度(リスク要因),ローテーション(リスク緩和要因),外部環境(リスク緩和要因),規制環境(リスク緩和要因)といった諸要因が外見的独立性に与える影響が明らかとなった。すなわち,監査役については,態度だけでなく,リスク緩和要因も外見的独立性に影響を与えているが,市場関係者については,外見的独立性に影響するのは態度のみであり,リスク緩和要因は影響を与えないことが示された。こうした結果は,監査人の独立性に対する企業外部の監査利用者の知覚は近年の制度改革によって導入された監査人のローテーション制度によって必ずしも改善されない可能性があることを示唆している。これらの分析結果については,近く論文として公表予定である。
著者
岩渕 光子
出版者
岩手県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

住民対象の検診受診者で睡眠健康教室参加希望者35名に、調査内容を説明し同意を得て、昼寝レクリェーション、ミニ講義、グループワーク、軽運動を週3回、2週間実施した。教室初回には睡眠に関する習慣を振り返り各自目標を設定し、教室開催の度に達成状況を確認した。教室は冬期間の開催であり雪や道路の凍結が心配されるため、不参加でも自宅で取り入れるよう習慣の継続を促した。教室終了後はフォローアップ教室、支援レターの送付を行い、教室終了2年後までの睡眠状態と生活習慣の変化を追跡調査した。実施前、直後、1年後、2年後のすべてに回答のあった11名(男性3名、女性8名、71.18±6.08歳)を分析対象とし、介入の効果及び留意点を検討した。1 睡眠に関する困り度は、実施前「非常に困っている」1名、「少し困っている」3名であったが、2年後は、1名は「少し困っている」のままであったが、3名は改善が見られた。2 「朝の気分」(五肢択一法)は、実施前と直後、1年後及び2年後との間で改善の効果が見られ維持されていた(p<0.05)。「起床時刻」は2年後と直後、1年後の間で差があり、時間の経過と共に早くなっていた(p<0.05)。3 入眠にかかる時間は2年後16±13分と実施前30±28分、直後25±22分との間で短縮する傾向(p<0.1)がみられ、改善には長期的な視点が必要であると考えられた。4 「時間の規則性」(四肢択一法)は、不規則であった人も全員、直後には規則的な時間に改善するが、起床時刻では直後と1年後、入眠時刻では実施前と1年後、睡眠時間では直後と1年後、2年後の間に不規則になる傾向(p<0.1)がみられた。規則的な生活の理解について、もっと、支援内容に追加していく必要があることが示唆された。
著者
浅利 宙
出版者
宇部フロンティア大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

今年度は、「比較」を意識しながら、1)遺族支援に関する文献研究(遺族支援の考え方と海外や国内の支援動向の特徴を把握する)、2)遺族支援グループに対する参与観察調査、3)グループの加入者に対する調査の3つを実施した。1)死別によって悲嘆状態に陥った人を同様の経験をした遺族がケアする一連の活動を「遺族間相互支援プログラム」という。海外では遺族への個別訪問活動が少なくないようであるが、わぶ国の場合は、医療・看護専門職による遺族会の組織化活動、ならびに、遺族等によって形成された遺族支援グループによる諸活動が多くを占めるというプログラム展開上の特徴が指摘できる。2)昨年度からの遺族支援グループに対する参与観察を今年度も継続して実施した。特記すべきなのは、参与観察している遺族支援グループが、従来の遺族支援活動に加えて、社会に向けた情報発信活動を展開した点である。参与観察を継続していた遺族グループでは、加入者を対象に在宅看護調査を実施し、その結果を関連の研究会にて報告した。これらの一連の動きは、同様の多くの遺族支援グループが活動展開に悩みをもつなかで、立ち上げ→組織化に引き続く展開のあり方として参考事例になるであろう。3)在宅看護調査からは、終末期の在宅看護では同居家族が看護の中心となるが、特に配偶者との二人暮らしの場合は別居家族(親族)のサポートが大きな意味をもつことが分かった。また、インタビュー調査による事例の比較からは、終末期のあり方は個別性が強いにもかかわらず、家族に対する病状の適切な説明が多くの患者・家族に共通するニーズであることを確認できた。特に終末期のあり方は、看取りの過程にとどまらず、看取り後の遺族の立ち直り過程にも大きな影響を与えている。これらの「声」を集約するところに、遺族支援グループのもつ社会的意義を指摘することができる。
著者
安野 智子
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、異なる意見を持つ人とのコミュニケーションが、政治的寛容性に及ぼす効果を検証するため、郵送式スノーボール調査(無作為抽出によって選ばれた対象者に調査票を郵送し、さらに対象者が「日頃よく話す相手」として3人まで言及された人たちに、類似の調査票を対象者から直接送付してもらう調査)を行った。多摩市有権者800名を対象に調査を行い、本人票237回収率29.6%),他者票284票の回答を得た。政治的寛容性に関する項目のうち、「異なる価値観の人を寛容に受け入れるべきだと思うか」という問いに関する回答(「そう思う」〜「そうは思わない」の5段階、ただし対象者で「そうは思わない」という回答が存在しなかったため、実際には4値)の規定要因を検討した。その結果、他者票の回収数をコントロールしても、現実に異なる意見を持つ人とコミュニケーションを取ることが、政治的寛容性を高めるという知見が得られた。また、メディア接触(新聞・テレビ)は政治的寛容性に負の効果を持っていた。年齢と性別については先行研究と逆の結果(女性のほうが、また年齢が高い方が寛容)が得られているが、年齢については寛容性と線形の関係ではなかったこれらの結果は、International Political Science Association(IPSA)2006年度福岡大会、および日本社会心理学会第47回大会(東北大学)にて報告された。今後、加筆訂正の上、論文として学術雑誌に投稿の予定である。
著者
成田 千恵
出版者
日本女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、個々の重症心身障害児(者)の体温調節障害の特性や身体の変形の程度、精神活動レベルを生体情報等の詳細な実測より客観的に評価し、それを基に個人の障害や生活環境の状況に適切に対応した衣服要素を検討することで、重症心身障害児(者)の衣生活における温熱性快適性の向上を目的としている。今年度は、これまでに計測を実施した重症心身障害児(者)、および健常者の衣服内環境と生体情報等の計測データの比較検討を行った。寝たきりの重症心身障害児(者)の衣服内環境の計測結果において、個人により衣服内湿度の変動レベルに差違が観察された。これまでの計測結果から衣服内湿度の変動は精神的ストレスの影響が反映されていると予想されることから、変動レベルの差違が障害の程度に影響を受けているとも考えられる。計測対象とした重症心身障害児(者)では部位による皮膚温変動に個人による特徴が観察されているが、健常者の長時間にわたる皮膚温計測においても、皮膚温変動には大きな個人差がみられ、重症心身障害児(者)にみられるような特徴的な皮膚温変動のケースが観察された。また、身体の変形が観察される重症心身障害児(者)においては、着用している健常者用衣服のサイズが身体に適合していないことにより衣服による保温性が十分得られないことが考えられる。衣服による保温性を高め、かつ介護者が無理なく着脱させることが可能である適切なゆとり量を検討するため、健常者を用いて異なる身体的障害を有する重症心身障害児(者)を模擬した被験者実験を行い、着脱による衣服開口部の伸張を計測し、障害により着脱に必要とされるゆとり量の差異について検討した。
著者
菅野 剛
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

世田谷区で実施した郵送調査データ(世田谷区在住の25歳から64歳までの男女について選挙人名簿より系統抽出、有効回収票374通、有効回収率23%)を分析し、社会的ネットワークの測定法について研究を行った。主な調査項目は以下の通りである:対象者の性別、年齢、居住地域、居住年数、学歴、世帯収入、個人収入、地域での困りごとと対策への参加の有無、社会活動への参加の有無、親しいつきあいの相手3人までについての様々な項目、職場・地域・友人/知人における職場の種類と人数、名刺・年賀状・電子メールのやりとりの人数、主観的健康状態、階層帰属意識、ソーシャルサポートなど。回収率は決して高いとは言えないが、空き巣等による犯罪被害が世田谷区で多いことによる警戒や、個人情報保護法の施行とプライバシーへの関心が高まっている時期に調査を実施していること等も理由として考えられる。回収票には無回答による欠損値が少なく、協力者は丁寧に回答している傾向等の特徴も見られた。ただし、男性に比べ相対的に女性の方が回答しており、世田谷区地域の特徴を反映して世帯年収の分布が高めに偏っているなどの注意点がある。調査から得られた主な知見として、性別・年齢を始めとする社会的属性ごとの、社会的ネットワーク指標への無回答率の違い等の基礎的な確認、困りごとを感じている程度・生活満足度などの世田谷区での地域差、性別・年齢・学歴・収入等の社会的属性による社会的ネットワークやソーシャルサポートの相関関係の把握、社会関係と生活満足度の関連等があり、様々な分析を進めた。また、吹田市で行った既存調査データとの比較項目により、社会的ネットワークの測定項目群をMTMM(多特性・多方法/Multi-Trait Multi-Method)データとして捉え、構造方程式モデリング(SEM)を適用することで、指標の信頼性と妥当性について検証を行った。
著者
本多 壮太郎
出版者
福岡教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,英国の大学剣道クラブ指導者を対象とし,指導者の修練観や指導観,指導上の問題点などを質問紙及びインタビュー手法によって明らかにした。指導者の考えは,「修練観」「使命感」「指導観」「ギャップ感」といったカテゴリーに分けられ,各カテゴリーに関する内容が構築されるに至った過程も解釈された。これにより今後,英国大学剣道の更なる普及と発展に貢献する指導・修練の方法論を構築するための価値ある研究資料が蓄積された。
著者
別府 賢治
出版者
香川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

スモモの自家和合性に関わるS遺伝子を特定するとともに、自家和合化のメカニズムを解明した。また、S遺伝子による自家和合性の遺伝を確認するとともに、自家和合性個体選抜のためのDNAマーカーを作出した。これにより、スモモの自家和合性品種の育種を効率的に行うことが可能となり、このことは園芸的意義の大きいものである。
著者
中野 正昭
出版者
明治大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、大正期に流行した浅草オペラがどのような舞台だったかを、オペラ座の検閲台本を基に考証した。従来、浅草オペラは西欧オペラを<簡略化>したものに過ぎないと考えられてきた。しかし、上演台本を調査・分析した結果、実際には、台詞や場面を新たに書き加えたり、興行法に従うために一つのグランドオペラ作品を複数回に分けて上演するなど、当時の日本の観客が既知の演劇文化の文脈の中で享受できるように工夫を凝らした、日本独自の演劇として<再構成>されたものであることを、具体的な作品の上から明かにした。
著者
藤崎 洋人
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

閉塞性黄疸例に対し、しばしば胆管ステントによる治療が行われているが、その欠点として細胞増殖によるステントの再狭窄がある。マウスを用いてステント内にtumor ingrowthするモデルを作製、超高性能高周波磁界発生装置と非接触型温度センサーを用いた、温度制御化温熱療法を施行することを目的として実験を進め、900kHzの磁場装置を用いることにより市販のステントで十分な発熱が得られることを示した。しかし磁場装置と非接触型温度センサーとの連動した温度制御は達成に至らなかった。
著者
笠 浩一朗
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、英日同時通訳者の発話速度について定量的に分析した。分析では、名古屋大学同時通訳データベースを利用した。また、分析には17人の通訳者が、22講演のデータに対して、4人ごとに通訳を行ったデータを用いた。その結果、同時通訳者の話す速さと講演者の話す速さにはほとんど相関関係がないことを確認した。また、講演者の発話が完了する前よりも、完了した後の方が発話速度が速くなることなどを確認した。
著者
野崎 浩成
出版者
愛知教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では,電子化された新聞記事フルテキストデータベースを対象に,カタカナ語の使用実態調査を実施した。本研究での調査により,海外在住の日本語学習者や成人の外国人留学生を対象とした語彙習得支援環境を構築するために必要な基礎的データを得ることができた。具体的には,国民への定着度や使用頻度の低いカタカナ語を明らかにした上で,それらのカタカナ語の特徴を分析した。そして,それらのカタカナ語について,定着率や頻度が低い理由を考察し,語彙習得を促すための適切な学習方略を提案することを試みた。次に,国立国語研究所(2003)が定めた『第1回「外来語」言い換え案』に示された「カタカナ語62語」を対象に,その使用実態を調査した。その結果の概要は,次の通りである。「カタカナ語62語」のうち1993年と1996年の新聞で使用されていなかった語(オンデマンド,フィルタリング,プロトタイプなどの6語)は定着度が低いこと,「アクセス」や「コンセンサス」のように新聞での使用頻度が高いにもかかわらず,国民各層への定着度が低い語が存在すること,などが示された。さらに,「カタカナ語62語」について電子辞書『大辞林』(第二版)での辞書掲載状況を分析した。その結果,1.複数の見出し語として大辞林に掲載されているカタカナ語であっても,使用頻度や定着度が著しく低い語(モチベーション,アジェンダ,モラトリアムなど)が存在すること,2.大辞林には掲載されていないカタカナ語は16語(オンデマンド,フィルタリング,インターンシップなど)が存在すること,3.2で述べた16語の多くは使用頻度や国民への定着度が低く,複合語(セカンドオピニオンなど)もいくつか含まれていること,などが明らかになった。こうして得られた結果は,日本語教材に掲載するカタカナ語を選定する際の基礎的資料となり,語彙習得支援環境を構築するために役立つ有用な知見となり得る。
著者
中山 晶一朗
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

周知の通り交通混雑・交通渋滞は都市部における大きな社会問題となっている.交通混雑は単に所要時間が増加するのみならず,その信頼性が著しく低下することも問題である.所要時間がはっきりとは分からないことは,時間通りに到着することが出来ず遅刻に至ることになり,また,遅刻を回避するためには出発時刻を早めなければならず,様々な時間的,経済的,精神的損失を生み出すことになる.これまで交通工学では,時間信頼性を考慮しない交通量配分モデル(交通ネットワーク均衡モデル)が既に提案され,実用化に至っている.既往のモデルでも交通システムでの旅行時間を算出することは可能である.しかし,それらでは旅行時間の確率分布を取り扱うことは出来ず,単に一つの値としての旅行時間を算出するのみである.したがって,それらの既往のモデルでは先に述べた時間信頼性を考慮することはできない.昨年度では,時間信頼性を考慮した均衡モデルの基本的均衡概念について明らかにし,道路利用者の経路選択が不確実なため(確率的であるため)に道路ネットワークの状態が確率変動する場合の確率的均衡モデルを構築した.しかし,旅行時間や交通量の変動の原因は経路選択の不確実性のもならず,交通需要が確率的に変動することも重要である.本年度は,昨年度のモデルを拡張し,交通需要が不確実に変動するとともに経路選択が確率的に行われる場合のモデルを構築した.また,モデルを金沢都市圏道路ネットワークに適用するためのデータ整備も行った.
著者
津田 朗子
出版者
金沢医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

幼児期の生体リズムの発達における関連要因の影響を明らかにすることを目的に、1~6歳の幼児を対象に、平成19年~21年度まで体温と生活習慣を調査した。就寝、起床時刻ともに過去の調査より約30分早く、起床時刻は夏季に比べ冬季では有意に遅かった。体温リズムが同調していた子どもは約5割で、リズムの良否には就寝時刻、起床時刻、児の月齢が関連していた。また、長期間の生活要因も影響し、幼少期からの生活習慣の影響は年齢が小さいほど大きくなる可能性が示唆された。