著者
小高 裕和
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

新世代・次世代の高精度宇宙X線観測に向けて、モンテカルロ法に基づくX線放射計算コードの開発を行った。このコードはさまざまな天体に適用可能な高い汎用性を持つフレームワークMONACOとして完成した。物理プロセスとして、高温の降着流における逆コンプトン散乱、光電離プラズマ、低温物質からのX線反射を扱うことができる。これらを中性子星・ブラックホールへの降着流、活動銀河核からの超高速アウトフロー、活動銀河ダストトーラス、白色矮星の降着円盤コロナに適用し、モンテカルロ計算による高精度データをすざく衛星、チャンドラ衛星、XMM-Newton衛星などのデータに適用する仕組みを確立した。
著者
前山 花織
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の発症における役割を明らかにするために、新生児黄疸に関連するUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)遺伝子多型の発生頻度をASD児の集団と日本人の一般頻度と比較し、ASDの発症に関与しているかどうかを検討した。回収したDNAを解析した結果、UGT1A1*6、UGT1A1*28の遺伝子多型の頻度は日本人の一般頻度と変わりなく、少なくともASDの発症に新生児黄疸の発症リスクの一つであるUGT1A1遺伝子多型は関与していないことが考えられた。
著者
和泉 司
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究計画は、戦前の総合雑誌『改造』が昭和初期から企画した〈文学懸賞〉である『改造』懸賞創作が、日本の近代文学の展開に与えた影響と意義について調査・分析したものである。有名雑誌の『改造』が新人の純文学テクストを定期的に募集し、それを誌上に掲載したことは、日本の〈文壇〉を大きく変容させた。一方で、授賞作家たちは〈懸賞作家〉と呼ばれ、コネクションや閥の力が強い〈文壇〉の中で活動するための十分な環境を得られず、数作で消えていったり、戦争協力に積極的になる者も多かった。本計画を通して、現在の〈文学賞〉中心の日本近現代文学の状況を、『改造』懸賞創作の生滅が象徴していることを示した。
著者
宮崎 薫
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ラットiPS細胞を購入し,レンチウィルスベクターにてGFP遺伝子およびluciferase遺伝子を導入した.FACSにてGFP陽性細胞を分取し,GFP陽性ラットiPS細胞のクローニングに成功した.GFP陽性ラットiPS細胞を免疫不全マウスに皮下移植し,in vivo imaging systemを用いた細胞発光の追跡が可能であることを確認した.さらに,6週間後の奇形腫形成を確認した.ラットiPS細胞を,各分化段階に応じて培養液中の各種増殖因子の組成を変えながら培養した.リアルタイムPCRにて,ラットiPS細胞が中胚葉を経てミュラー管系統に分化していることが示唆された.
著者
春日 芳美
出版者
大東文化大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、第二次世界大戦以前の日本における女子体育に着目し、これまでの研究で語られてきた「女子体育関連イメージ」の見直しを図ることである。研究の結果、(1)女子体育と「おてんば」という言葉の関連、(2)女性体操教員と女性スポーツ選手をめぐる言説とイメージの違い、(3)女子体育指導者間の人間関係と体操の系譜、(4)第二次世界大戦以前の日本とヨーロッパにおける女子体育の共通点、が明らかになった。
著者
谷内 通
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,ワーキングメモリ過程の起源について明らかにするため,爬虫類(リクガメ),両生類(アカハライモリ),硬骨魚類(キンギョ)に放射状迷路課題を共通して実施すること,および比較基準としてのラットにおける検討を進めることを目的とした。その結果,リクガメにおける放射状迷路の自由課題,および強制-自由選択法の学習,キンギョにおける放射状迷路遂行を確認した。アカハライモリについては,安定した報酬訓練を実現した。ラットでは,放射状迷路を用いた指示忘却現象を確認することに成功した。これらの知見は,爬虫類,両生類,硬骨魚類におけるワーキングメモリ研究を可能にするものである。
著者
浅香 卓哉
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

近年、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)に対する治療方針について、様々な検討が実施されている。多血小板フィブリンを用いたARONJの外科的治療を検討したが、再生医療等の法律の影響にて達成困難となった。当科でのARONJ発症率は従来の報告よりも高い傾向にあった。抜歯に伴う休薬は減少傾向にあり、休薬によるARONJ予防効果は認められなかった。ARONJに対する治療法に関しては、悪性腫瘍由来よりも骨粗鬆症由来のARONJの治癒率が高く、保存療法と比較して外科療法の治癒率が高い傾向にあった。FDG―PETによる比較では、ARONJは他の骨髄炎と比較して高い集積を認め、炎症の活動性亢進が示された。
著者
光石 鳴巳
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

今年度は、本州西部における縄文時代草創期遺跡の地名表の作成と、前年度までにおこなった愛媛県上黒岩岩陰遺跡出土遺物の資料化作業をとりまとめた。また、北海道における草創期資料の実査をおこない、長野県神子柴遺跡出土資料を検討する機会を得た。縄文時代草創期遺跡ならびに遺物出土地点のデータベース作成については、最終的に本州西半部の21府県を対象とし、978ヵ所を収録した。対象府県は北陸地方(富山県26ヵ所、石川県14ヵ所、福井県12ヵ所)、東海地方西部(岐阜県170ヵ所、愛知県79ヵ所、三重県114ヵ所)、近畿地方(滋賀県36ヵ所、京都府35ヵ所、大阪府110ヵ所、兵庫県100ヵ所、奈良県39ヵ所、和歌山県27ヵ所)、中国地方(鳥取県37ヵ所、島根県17ヵ所、岡山県26ヵ所、広島県44ヵ所、山口県8ヵ所)、四国地方(徳島県13ヵ所、香川県20ヵ所、愛媛県31ヵ所、高知県20ヵ所)である。この一覧表については、『本州西半部における縄文時代草創期の様相』と題する冊子として編集し、本研究の経費の一部によって印刷、刊行した。愛媛県上黒岩岩陰遺跡出土遺物については、実測図の製図をおこない、所見を加えて「上黒岩岩陰遺跡とその出土遺物についての覚書-国立歴史民俗博物館所蔵資料の紹介を中心に-」と題した小文にとりまとめ、『古代文化』誌に投稿した。現時点で掲載時期は未定だが、すでに採用されることが内定している。
著者
岡野 一郎
出版者
国立循環器病センター(研究所)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

α-ラトロトキシンはセアカゴケグモ(Latrodectus mactans)の毒腺より単離された神経毒である。その作用機序は。哺乳類の神経シナプス前膜に局在する、リガンドが未知の細胞膜7回貫通型受容体CL1(calcium independent latrotoxin receptor (CIRL)/Latophilin 1)に特異的に結合し、神経終末より神経伝達物質の異常放出を促す。その結果、痛み,発汗,呼吸不全などの自律神経の失調をもたらす。α-ラトロトキシンによりもたらされる細胞内分泌顆粒放出のメカニズムは、細胞内外のカルシウムイオンに非依存的に生じることから、この放出がこれまで知られている経路とは異なる、未知の細胞内シグナル伝達系を介している可能性が強く示唆されている。本研究では、CL1の内在性リガンドを単離することにより、神経伝達を含めた細胞内分泌顆粒の放出の新たなメカニズムを明らかにし、神経系,内分泌系における生理的な機能と意義の解明を目的とする。これまでの研究では、細胞内サイクリックAMP(cAMP)濃度の増減をルシフェラーゼ活性でモニターできるよう、cAMP応答配列の下流にルシフェラーゼ遺伝子を繋いだレポーター遺伝子を開発した。更にHEK293細胞とCHO細胞について、このレポーター遺伝子とCL1遺伝子を恒常的に発現する細胞株を樹立し、これらにラットの組織より抽出した生理活性ペプチド画分にて刺激を加えた。複数の画分において細胞株のcAMPを上昇させるものが認められたが、アミノ酸配列を解析したところ、既知のもの若しくは蛋白質が部分分解したものであった。そこで、これら偽陽性を早い段階で排除する目的と、受容体が似ているのならそのリガンドも相同性を持つであろうという予測のもとに、CL1と相同性のあるオーファン受容体CL2,CL3について同様の手法により細胞株を樹立した。これらに共通して反応する画分が最も可能性があるものではないかと考えていたが、検索の結果はこれまでと同様、既知蛋白質が分解したものが大部分であった。また未知のものについても、予想される塩基配列をもとにcDNAクローニングまで行ったが、分泌配列が見当たらず、生理活性ペプチドというよりも何らかの構成蛋白質と考えられるものであった。CL1,2,3が生理活性ペプチドの受容体であることはその構造から十分に予測できることから、恐らくこの結果はリガンドの組織含量が低いことが考えれる。そこで今後は、上記の細胞株を用いた検索を行うと共に、ラットの脳より単離した神経細胞にCL1,2,3とレポーター遺伝子を導入して検索を行うことを予定している。これら受容体は生体内では神経細胞に特異的に発現していることから、通常の細胞株よりも神経細胞を用いた場合の方が、より高感度で反応を検出できる可能性が考えられる。
著者
近藤 哲夫
出版者
山梨大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的はエピジェネティクス修飾により甲状腺癌細胞にTTF-1 を誘導する有効的な方法の確立、TTF-1 による甲状腺機能分子の再誘導の検証、TTF-1の腫瘍抑制効の解明である。結果として一過性発現、安定発現細胞株ともにTTF-1の強制発現のみによっては甲状腺機能分子の発現や甲状腺ホルモン産生を誘導することはできなかった。一方でTTF-1発現誘導により甲状腺癌細胞の増殖抑制がおこることが確認された。cDNAマイクロアレイによってTTF-1発現誘導により有意に増加する遺伝子群と減少する遺伝子群が確認された。 本研究の成果によりTTF-1には腫瘍抑制的機能が存在することが示唆された。
著者
酒井 和子
出版者
久留米大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

透析患者のLOH症候群に起因する、アルツハイマーもしくは抑うつに対して有効な治療はかくりつされていない。我々は透析患者におけるカルニチン濃度と抑うつ状態の程度と相関していることを見出した。血液透析患者に対するL-カルニチン補充療法が、認知機能・抑うつ状態を改善しうるかについて検討した。対象は1年以上血液透析を受けている透析患者。26人全患者に対してカルニチンを静脈注射、または経口で投与した。うつの指標となるSDSスコアは女性では有意差を認めないが、男性では3か月後に有意差をもって改善した。これらの結果、L-カルニチン投与により男性透析患者において抑うつ状態を改善する可能性が示唆された。
著者
冨樫 進
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、中国より日本へ移入された戒律思想、及びその媒体となる言語表現が、奈良時代末期から平安時代初期の日本文化にいかなる影響を与えたかという点を追究したものである。仏教信者の実践規範となる戒律については、奈良時代においては中国における制度の忠実な導入が重視されていたが、平安時代には必ずしも中国の戒律実践に拘泥しない傾向が顕著となっていく。その主な理由として、空海がもたらしたインドの文字・悉曇が仏教的世界観の発達を促進するとともに、中国文化の相対化をもたらした点が指摘できる。
著者
秋元 望 古江 秀昌
出版者
生理学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、慢性疼痛の一つである神経障害性疼痛の発現時にみられる炎症性サイトカインが内臓、特に下部尿路の自律神経制御に与える影響について調べることを目的として行われた。炎症性サイトカインを脊髄に灌流投与を行ったところ、頻尿を誘発するサイトカインと、排尿間隔を広げるものがあることがわかった。また、下部尿路から脊髄への伝達では膀胱と尿道のそれぞれから別々の神経を介して情報が伝達されることがわかった。これらの結果から、下部尿路から脊髄へ入力された圧変化や知覚の情報は複数の種類の細胞に伝達され、これらの細胞にサイトカインが作用し、排尿に影響を与えることがこれまでの研究によって示唆された。
著者
横田 慎一郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

機械学習手法により感度64.9%、特異度69.6%の患者転倒リスク評価モデルを構築した。成績は従来研究と同等程度で、構築に延べ40日間の計算を必要とすることから効率がよいとは言えない。次に、過去に電子カルテ実装した転倒リスク判別ツールの影響を、実装前後期間で比較したところ、入院患者の患者の転倒発生確率は、実装後期間において低下し、実装後期間におけるツール使用患者と非使用患者では不変であった。また、転倒報告書と転落報告書を機械学習手法により実験的に分析したところ、臨床現場での転倒関連概念の認識が曖昧である可能性を示唆した。いずれも電子カルテ等データを用いた後ろ向き観察研究として実施した。
著者
伊藤 亜里
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

免疫記憶の柱の一つである、抗体産生を長期に行う長期生存形質細胞を取り巻く環境については明らかになりつつあるが、それ自体の性質の変化は明らかではない。我々は、骨髄の形質細胞で脾臓に比べて発現が高い遺伝子として、亜鉛を結合するMT1とMT2を同定した。MT1,MT2高発現形質細胞の遺伝子発現を調べたところ、Flt1, Hmox1など、細胞のストレス低減に関連する遺伝子群と発現の相関が高かった。脾臓の形質細胞ではMT1とMT2の発現がIL-6刺激によって上昇した。これらの結果から、長寿命形質細胞は、骨髄環境内でIL-6などの生存刺激を受けてストレス耐性機能を獲得している可能性が考えられた。
著者
柴田 識人
出版者
国立医薬品食品衛生研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

重篤な疾患を引き起こすウィルスは数多く存在するが、抗ウィルス治療薬の充足率は決して高くない。私はこれまでに酸化コレステロールである25ヒドロキシコレステロール(25OHC)が宿主細胞の生存に影響を与えずに、ウィルスの複製を抑制することを見出している。本研究では、宿主細胞における25OHCの受容機構、そしてそれに伴うストレス関連遺伝子の発現誘導機構を解明した。本結果は25OHCの持つ抗ウィルス作用の分子機構を明らかにすると共に、25OHCを基盤とした新たなウィルス治療薬開発の可能性を提示するものである。
著者
清水 節
出版者
金沢工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、日米の史料を用いて「宗教法人法」の起草過程を分析したものである。GHQの民間情報教育局宗教課、文部省宗務課、宗教界指導者の各見解と議論された論点を明らかにした結果、日米の文化的・歴史的背景に起因する法観念の相違や、各々の理想とする宗教法人像の相克が顕在化し、対立と妥協の末に本法が生み出されたことが解った。また、本研究の一環で「国有境内地処分法」の起草過程も明らかにした。
著者
江尻 桂子
出版者
茨城キリスト教大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

幼児・児童における危険認知能力の発達過程について、実験的に検討した。その結果、こうした認識が芽生え始めるのは年長児頃であること、正しい危険認識に基づき、危険回避行動ができるようになるのは小学1年以上であることが示された。また保護者へのアンケート調査から、保護者らは不審者の連れ去りに関して不安を感じてはいるものの、そうした事件に子どもが自ら巻き込まれる可能性は低いと考えていること、また、我が子の危険回避能力について必ずしも正しく認識しているわけではないことが示された。これらの結果をもとに、幼児・児童における発達水準に応じた防犯教育のあり方を提案した。
著者
IP Ivan
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

Positive Representationsに関する研究を行った。主にPositive Representationsのクラスター構造を発見して、普遍R行列の分解を作った。それを使って、A型の場合、最も重要な予想二つがやっと証明した。特に、Borel部分のテンソル積分解を明示的に書けて、さらに、シレダ・シャピロによってPositive Representationsのテンソル積分解も同じようなアイデアで証明した。彼らとの共同研究でPeter-Weyl定理も同様に証明した。また、ペナー・ゼットリンの共同研究によって、N=2 タイヒミュラー超空間を作って、奇次元など色んな性質を研究した。
著者
安冨 素子
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

我々はオートファジーが食物アレルギーにおいて何らかの役割を果たしていると考え、新規治療法を開発するために、食物アレルギーのマウスモデルを用いて、オートファジー機能の修飾が下痢や低体温などのアレルギー症状に与える影響を検討した。その結果、オートファジー機能の修飾により即時型の食物アレルギー症状が軽減することが示唆された。