著者
武田 啓司
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

マイクロSQUID磁束計はマイクロ~ナノメーターサイズの微小磁性体1個の磁性を測定するのに適した高感度な磁気測定装置である。これまで6K以下で動作するフランスグループの低温超伝導タイプのみが開発されていたが、申請者らはより高温までの測定を目指して高温超伝導タイプを開発した。分子性強磁性体のマイクロ結晶の磁化曲線測定を行い、温度4-70K、磁場8kOeまでの範囲でスピン感度10^8μBを達成し、更にダイポール計算との組み合わせにより、初めてマイクロSQUIDスタンドアローンで磁化の絶対量決定に成功した。
著者
山本 佐和子
出版者
同志社大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、中世室町期の「抄物」について、多くの先行説を類聚・列挙した「編纂抄物(集成抄物、取り合わせ抄物)」の言語研究資料としての性格を明らかにすることを目的として、文献資料の発掘・調査と言語事象の記述研究を行っている。本研究課題以降には、この種の抄物について、抄物の成立時期半ばの1530年頃から最末期の織豊期にかけて、公家・高家に漢籍注釈書として受容される様相を書誌学・文献学的調査によって明らかにし、その言語的特徴の由来を考察する予定である。今年度は、2018年度に研究発表した、中世後期~近世の注釈書における文末表現「~トナリ」について使用実態と文法的性格を論文にまとめ、抄物の成立背景と言語的特徴は、抄物と同時期の古典講釈・注釈史の中で捉え直す必要があることを指摘した。本研究では一昨年度までに、建仁寺両足院蔵「杜詩抄」に一般の仮名抄には殆ど見られない文末表現「ヂャ」や「ゾウ〈候゛〉」等が認められることを指摘してきたが、「~トナリ」もその一つである(約220例使用)。一方で、「~トナリ」は近世以降の通俗的な注釈書・学習書では多用されている。論文では、注釈表現「~トナリ」が、応仁の乱以降、即ち、口語的な仮名抄の多くが作られた時期と同時期に成立した「源氏物語」「伊勢物語」等の和文の注釈書で、原典の解釈(当代語訳)を示す用法で多用されるようになる実態を明らかにした。注釈書においてこの種の定型的な「~トナリ」が多用された要因には、当時の言語変化(亀井孝「言語史上の室町時代」『図説日本文化史大系』4、1957年)及び、古典の受容層の拡大・変容による注釈書の質的変容(伊井春樹『源氏物語注釈史の研究 室町前期』桜楓社、1980年)が関わっていると考えられる。
著者
武村 史
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ナルコレプシー確定診断のために現在は、ルンバールにより脳脊髄液を採取して、オレキシンの測定を行っているが、侵襲性の高い検査であり、血液や尿による測定と確定診断が可能になることが望まれる。今回の研究では、50mlの尿からの抽出や、通常測定の10-20倍の検体量による血清中のオレキシン測定を試みた。共に測定値の検出はなされたが、類似の物質を測っていると考えられて、より高い選択性を持った抗体が必要と思われた。
著者
宮本 いずみ 貝沼 純 前田 浩
出版者
久留米大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

看護師以外の職種が手術の器械出し業務を行っているがその職種の違いによる器械出し業務の実態は明確にされていない。本研究の目的は、職種別の器械出し業務の現状と器械出し時の状況判断とアセスメントを明らかにする。全国の器械出し業務従事者に,郵送法にて器械出し業務に関する質問紙調査を実施した。質問紙の回収は629人。235人が看護師以外の職種も器械出しをしていると回答し,医師81名,臨床工学技士81名,医療器材を取り扱う業者5名などであった。その理由は,看護師不足が最も多かった。看護師以外の職種は看護師と同じように器械出し業務を実施していることが明らかとなった。
著者
大庭 雅道
出版者
一般財団法人電力中央研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

高解像度大規模気候予測アンサンブルデータを用いて、日本に域における風力発電量の将来の変化について調べた。+4度温暖化実験の計算結果を分析した結果、数%程度の風力発電量の低下傾向が見られた。特に夏から秋にかけて全域で減少傾向、冬から春にかけては日本の北で増加、南で減少する傾向が見られた。気象パターン分類により気象場の発生数を分析したところ、この変化は前者では擾乱成分の発生数が、後者では気候背景場の変化が主要因となっていることが示された。
著者
鈴木 光幸 本田 由佳
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

近年「成人病胎児期発症説」によって妊娠前女性の栄養管理が重要視されいる。本研究では、妊娠前女性を対象として、生殖予備能評価として注目されている抗ミュラー管ホルモン(AMH)を測定し、それと体格および血液栄養解析検査を行い、AMH低下者が置かれているライフスタイルの現状を検討した。本研究において日本人生殖可能女性において血清ビタミンDが低値であると血清AMHも低値であり、30歳未満では血清AMHと体脂肪率に正の相関が認められた。すなわち、やせ体型やビタミンD不足は卵巣予備能低下の一因となる可能性が示唆され、妊娠前女性の適切な栄養摂取や適正体脂肪が卵巣予備能の維持に重要であることが考えられた。
著者
山添 淳一
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

カルシウム修飾したチタンインプラントを骨内に埋入した際に早期に骨と結合し、かつ結合強度が高いかどうかを検討した。さらに、歯肉上皮と高度に接着し、インプラント周囲からの外的因子の侵入を防ぐかどうかを検討した。これによりインプラント治療期間の短縮ができ、感染に対して抵抗性の強いチタンインプラント材料の創製をおこなうことができた。
著者
橋口 千琴
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

インプラント治療において糖尿病は相対禁忌の一つとしてあげられるが,血糖値がコントロールされていれば手術を行うケースが多い.しかし実際にオッセオインテグレーションが獲得されているかは不明である.本研究では糖尿病治療薬を服用した状態のモデルラットに対するインプラント周囲骨の形成状態を調べ,糖尿病治療薬を服用することで骨形成が実際に行われているか、評価するものである.
著者
望月 由起
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、現代の日本の小学校受験(お受験)が、ペアレントクラシーによる教育選抜にほかならないことを明らかにした。メリトクラティックな社会観をもつ「教育する家族」が小学校受験(や早期からの中学受験準備)に積極的に参入する現状を実証的かつ具体的に示し、早期選抜問題としての小学校受験や中学受験の「実態」に、真摯に目を向けていくことの必要性を提言した。
著者
日下部 徹
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

肥満 2 型糖尿病モデルマウスを用いて、脂肪細胞由来ホルモンであるレプチンと GLP-1 受容体作動薬であるエキセナチドの共投与は、各単独投与と比較してより強い摂食抑制作用、体重減少作用を示し、かつレプチンが持つ異所性脂肪蓄積の減少作用の増強、GLP-1受容体作動薬が持つインスリン初期分泌促進作用の増強など、互いの作用を増強することが示された。 今回得られた結果は、レプチン/エキセナチドの共投与が肥満 2 型糖尿病に対する有用な治療薬になり得ることを意味する。
著者
多田 恵曜
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

エストロゲンやエストロゲン受容体作動薬が脳動脈瘤形成および破裂を抑制することを見いだした。しかし、エストロゲン補充療法は子宮体癌や乳癌発生などのリスクがある。選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)は副作用が少ないが、SERMによる脳動脈瘤破裂抑制作用を検討した。雌のラットを用い、高血圧誘導、卵巣摘出、一側脳血管への血行力学的負荷を加えることによって脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血をきたすモデルを確立した。SERMであるバゼドキシフェン酢酸塩を投与すると脳動脈瘤破裂を抑制することを見いだした。さらに、エストロゲン受容体の発現上昇、MMP-9/TIMP-2の低下と関与していることを示した。
著者
中下 留美子
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

近年,野生動物と人との軋轢が顕在化し,農林水産被害や人身被害等が頻発し,多数の個体が捕獲されている.しかし,駆除個体の詳細な加害実態は把握されておらず,根本的な被害対策は遅れている.そこで,本研究では捕獲個体の加害実態履歴を明らかにするために,野生動物の一生の食性履歴を明らかにする手法を開発した.ツキノワグマについて,代謝速度の早い組織(血液,肝臓,体毛など)と遅い組織(骨,歯)を組み合わせることで,個体毎に亜成獣~捕獲前までの食性が推定可能となった.本研究は,入手可能な様々な組織を組み合わせて個体レベルの詳細な食性履歴と加害実態を明らかにし,科学的根拠に基づく保護管理策に貢献する.
著者
森本 元
出版者
立教大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

多くの動物で雄のみに見られる特徴的な形質は、性選択の結果であると考えられている。だが、一部の鳥類では、若い雄が雌に似た外観、いわば鮮やかな雄と地味な雌の中間的な色彩であることが知られている。本課題では、この地味な羽色がもつであろう同性内選択(雄間闘争)における利益と不利益について研究を行った。その結果、侵入者の色彩の違いに応じて、なわばり所有者の反応(攻撃行動)が変化することを示唆できた。これは、雄の羽色の違いが、雄同士の闘争に信号として機能していることを示唆するものである。
著者
野口 映
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

セツキシマブはEGFRを標的とした抗体薬であるが、その作用機序は解明されているとは言い難い。本研究は、ジェネティクス、エピジェネティクス、immunologyといった多方面から解析する事で、セツキシマブの作用機序解明を試みた。次世代シークエンサーによる遺伝子変異解析では、対象とした細胞においてEGFRの有意な変異はなく、HRAS変異が一部の細胞でみられる程度であった。エピジェネティックな検討では、ある種のHDAC阻害剤との併用により、EGFRのmRNA値の上昇を認め、セツキシマブ感受性を獲得するものがみられた。特に影響の強くみられた細胞では、形態的に細胞間の結合性の低下がみられた。
著者
高木 麻紀子
出版者
東京藝術大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

報告者の最終目的は中世末期の世俗美術の展開の諸相の解明である。本研究では中世末期にストラスブールを中心とするアルザス地方で制作された世俗主題のタピスリーに注目し、その図像源泉と形成、伝播、機能を、作品分析を基盤としつつ受容の観点からも考察することを目的とした。まず作品群のカタログ作成を通じ、当時のアルザスのタピスリーで特に人気があり且つ重要視された主題が野人であったことが浮き彫りになった。さらに中世末期の世俗図像の展開という観点から考察した結果、15世紀以降の造形芸術における野人図像の変遷において、15世紀前半のストラスブールのタピスリーが重要な媒体となっていたことが具体的に明らかになった。
著者
竹村 瑞穂
出版者
日本福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究のタイトルは、「遺伝子ドーピングに関する倫理学的研究:原理的研究から行動規範の策定まで」であり、競技スポーツ界における遺伝子ドーピングに関する応用倫理学的考察を主眼とした研究である。遺伝子ドーピングとは、「遺伝子操作技術を、健康なアスリートが、治療目的ではなくパフォーマンスの向上を意図して利用するドーピング」のことであり、とくに21世紀に入ると現実的な懸念の対象となってきた。科学技術の進歩に対して倫理学的研究が遅れている状況の中、遺伝子ドーピングに関する倫理学的諸問題を明確化し、対応策につながる見解を提示した。
著者
清野 豊 大橋 宣子 河野 達郎
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究ではラットを用いて、βアラニンの脊髄後角における電気生理学的実験を行った。βアラニンが脊髄後角において抑制性シナプス伝達に関与していることを突き止めた。またこの作用には、濃度依存性があることをつきとめた。関与している受容体についても調査を行い、βアラニンはClイオンチャネルを介して作用する点、GABAA受容体には関与せず、グリシン受容体を介している点を明らかにした。
著者
森下 義隆
出版者
独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、近年、野球現場において多くの選手が取り組んでいる「増量」に着目し、打者の体重が打撃パフォーマンスに及ぼす影響について検討した。その結果、①即時的な増量は通常の打撃よりも全身の回転運動の勢い(角運動量)を増大できるものの、それをバットに伝達することができず、スイング速度を低下させてしまうことが示唆された。また、②体重そのものではなく除脂肪量(筋量)を増加させることがスイング速度の向上に寄与することが明らかとなった。以上のことから、打者の競技パフォーマンスの向上を目的に増量を行う場合、脂肪量ではなく除脂肪量によって体重が増加するように食事やトレーニングを調整することの重要性が示された。
著者
栗林 佳代
出版者
佐賀大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

まず、フランス訪問権に関する法理論および立法過程に関する検討を行った。1970年の訪問権の立法は判例および学説を承認するかたちでなされた。それゆえ、フランスの訪問権は実社会に要請にそうものであり、訪問権の主体は父母・祖父母・第三者と広い。さらに、特に父母の訪問権は、1987年および1993年の法改正により離婚後の共同親権制度が導入されたことにより、訪問権は例外的に単独親権となった場合にのみ機能するものとして変化した。そして、フランス法の検討をもとに、わが国の面接交渉権について批判的に検討し、法理論の再構築をした。
著者
山崎 康一郎 水藤 昌彦 我藤 諭 脇田 康夫 益子 千枝 池 愼太郎 菅原 美穂
出版者
大阪人間科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

非行・犯罪行為のあった障害者への司法と福祉の連携による対応が必要であることが指摘されているが、性犯罪・性加害行為のある知的障害者については日本には支援状況や支援方法に関する十分な知見がない。そこで、支援の状況について明らかにし、今後の支援における示唆を得ることを目的として、障害福祉事業所職員への質問紙調査および面接調査を実施した。その結果、性加害行為の要因や支援方法に関する見立てが十分になく、また多機関連携が不十分な状況が示された。今後の支援では、支援の必要性は広く認識されているが、専門的な知識や支援方法がないなど支援者が困難を感じている状況が示唆された。