著者
山田 悟史
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究はドクターヘリ及びドクターカーの運用効果を算出し,基地病院とランデブーポイントの配置計画を検討したものである。運用効果の指標は,医師による医療行為開始時間,救命率,人口をもとにした4指標である。対象は関西広域連合とし,場外離着陸場のランデブーポイント化,三次救急病院を候補とした基地病院の追加の運用効果をGISと既往研究から算出した。これに基づき,場外離着陸場のランデブーポイント化,及び基地病院の追加の効果上昇が平坦化する施設数,効果が大きい適正配置を提示した。具合的な方法,数値や施設名称・位置については研究成果報告・発表済み原稿を参照して頂きたい。
著者
望月 新一
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

14年度は、「Hodge-Arakelov理論」のDiophantus幾何への応用に向けて理論を具体的に定式化する上で大きな進展を見た。主な発見および新しく得た視点は次の通りである:(1)以前は、この応用を妨げている技術的な障害を取り除くための手段として、遠アーベル幾何によるアプローチを考えていたが、様々な理由により、13年度に検討していたアプローチでは不十分であることが判明した。しかし、遠アーベル幾何の精神を受け継ぎながら、Galois圏だけでなく、もっと一般的な圏や圏論によるアプローチが有効になる可能性が高いことが分かった。(2)この圏論的アプローチを実現するための技術ないしは「言語」として、圏論や、集合論における「宇宙」の概念を活用した宇宙際幾何(inter-universal geometry)を開発した。(3)圏論的なアプローチでは、遠アーベル幾何におけるGrothendieck予想に対応する様々な結果を証明した。その中で代表的なのは、log schemeの圏に関するものである。なお、最近では、このような結果を、archimedeanな構造が付いているlog schemeの場合に拡張し、またこの結果の延長線上にある理論の中で、数体上の大域的な数論的Frobenius射(=正標数の関数体上のp乗写像の類似物)という興味深い対象も構成している。(4)Hodge-Arakelov理論との関係でいえば、以前考えていたHodge-Arakelov理論の基本定理である「比較同型」よりも、theta convolutionという対象による定式化の方が、圏論的なアプローチとの相性がよいことが分かり、そのような観点による、圏論とHodge-Arakelov理論との「融合」を推進することにした。また、Diophantus幾何への応用と直接は関係ないが、正標数のコンパクト双曲型代数曲線のGrothendieck予想の証明の完成に向けて様々な技術的な進歩があった。
著者
門田 耕一郎
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

喫煙者が禁煙後に一時的な体重増加や便秘が認められることが知られているがメカニズムについて、未だ不明である。今回我々は、同意を得た禁煙を希望する喫煙者に、喫煙時と禁煙治療終了後に体重などの身体測定や呼気水素試験により小腸通過時間を測定し、禁煙前後での変化について調べた。また、同意を得た未喫煙者にも体重などの身体測定や呼気水素試験を行い、喫煙者と未喫煙者についても検討した。本研究では、禁煙後に明らかな体重増加は認められたが、小腸運動の明らかな変化は認められなかった。また、喫煙の有無により小腸運動に差はなかった。本研究の結果より、禁煙後の体重増加や便秘には小腸運動は関係がないことが示された。
著者
浦本 武雄
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

正規言語の分類理論であるEilenberg理論を公理化し、その整数論への応用例を見つけた。特にBorgerが定義した意味でのWitt vectorに対するChristolの定理の類似を証明した。その後、この定理の続編としてBostとConnesによって導入されたBost-Connes系というC*力学系の数論的部分代数とWitt vectorのなす代数が同型であることを観察している。このことから、Witt vectorをmodular関数の変形族の特殊値によって実現できるだろうことを示唆を得て、それに関する観察を得た。
著者
倉井 淳
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

黄砂時粉塵の長期曝露が発癌に関与する可能性について,気道上皮構成細胞株を用いて検討を行った.その結果,比較的短時間の黄砂時粉塵による細胞株刺激でも,炎症発癌に関与するサイトカイン,酸化ストレスマーカーが誘導され,粉塵の長期曝露が発癌に関与する可能性が示唆された.また,鳥取県内に長期在住している非喫煙肺腺癌患者の術後肺標本における元素解析を蛍光X線法で行った.喫煙肺腺癌患者の標本でも同様の解析を行い両群間で元素成分について比較検討を行った.黄砂に付着する重金属などの非土壌成分について明らかな差異は認めらなかった.長期粉塵曝露が肺組織へ与える影響については今後さらなる検討が必要と考えられた.
著者
平之内 俊郎
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

研究成果の概要(和文):主に以下の成果が得られた.(1) 混標数で十分たくさん1の冪根を含むような完備離散付値体に対するMilnor K群の構造の計算(2) p 進体上の楕円曲線の積に対するサイクル写像の像及びChow 群の構造の計算(3) 可換代数群に付随するMilnor型K群の構成と応用
著者
永岡 紗和子
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、自閉スペクトラム傾向の高い若年層向けの強迫性障害の心理教育について描いた漫画を作成し、テキストによる心理教育との効果の比較を試みた。大学生56名を対象に質問紙調査を実施した結果、自閉スペクトラム傾向の高群は、テキストよりも漫画での心理教育の方が治療を理解しやすいと評価する傾向が示された。また、テキストのみの心理教育では、自閉スペクトラム傾向の高群は低群よりも理解度が下がる傾向が示された。これらのことから、自閉スペクトラム傾向の高い若者にとっては、治療を視覚的にイメージしやすい漫画での心理教育が、治療の理解を向上させる可能性があると考えられる。
著者
神原 広平
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

細胞の水の通り道を形成するタンパク質アクアポリンに着目し、シロアリの水代謝システムの解明を試みた。2種のシロアリから新たにアクアポリン遺伝子を獲得し、そのうちイエシロアリでは唾液腺に2タイプのアクアポリンが共発現することを明らかにした。唾液腺を低張液や高張液に浸漬すると速やかに膨潤収縮したことから、これらのアクアポリンは水透過の役割を担うと考えられた。また、銅や亜鉛の存在下では膨潤収縮が認められず、水透過能が金属イオンで阻害される可能性が示唆された。RNA干渉法でアクアポリンの機能を阻害したところ職蟻の排泄に変調が生じたことから、シロアリアクアポリンは消化排泄系に寄与すると考えられた。
著者
長谷川 豪
出版者
久留米大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ナノ粒子状レアメタルの発癌リスクをin vitro発癌試験により検討した。先端産業界で有用なインジウム、ジスプロシウム、タングステン、モリブデンについてAmes試験を行い、ナノ粒子状酸化ジスプロシウム、酸化インジウム、酸化タングステンに変異原性を見出した。Bhas42細胞を用いた形質転換試験では、酸化インジウムと酸化ジスプロシウムに形質転換能を認めたが、粒径による活性の差異は認められなかった。
著者
渡邊 晶規 小島 聖 細 正博
出版者
名古屋学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

関節拘縮の治療と予防に対する低出力超音波パルス治療(以下LIPUS)の効果を、実験動物を用いて組織学的側面から検討した。LIPUS照射により、不動化によって生じた後部関節包のコラーゲン線維束間の間隙の狭小化が改善を示し、関節拘縮に治療に有効である可能性を明らかにした。一方、関節拘縮予防を目的とした介入結果においては著明な差を認めず、LIPUSの有用性を明らかにすることは出来なかった。
著者
酒井 麻衣 鈴木 美和 小木 万布 柏木 信幸 古田 圭介 塩湯 一希 桐畑 哲雄 漁野 真弘 日登 弘 勝俣 浩 荒井 一利
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ハクジラ亜目のホルモンレベル・行動とストレス・心理的幸福との関係を明らかにするため、行動観察および垢と血中のホルモン濃度測定を行った。対象動物は期間中大きな疾病はなく、得られた行動頻度・ホルモンレベルの時、おおむね健康な状態と言えた。顔を壁にこすりつける行動が比較的多かった期間に、血中および垢中コルチゾール濃度が高く、この行動がストレスの現れであることが示唆された。静止時間が多いときほど血中βエンドルフィン濃度が低く、運動量と関係があることが示唆された。また、中層での静止時間が長いほど、血中コルチゾール濃度が高いことがわかり、長時間静止する行動がストレスの現れである可能性が考えられた。
著者
森脇 愛子 藤野 博 生駒 花音
出版者
東京学芸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の児童が適応的な仲間関係構築に至る様相とそれを支える支援法を“過程志向的”に検討するものである。本研究の3つの成果は①ASD児の仲間関係構築を相互作用の変容過程から定量的かつ効率的に把握する最適な評価手続きを精査したこと、②評価手続きを用いた2人組の相互作用量および質の時系列データを活かし、ASD児の関係構築傾向と支援介入の示唆が得られたこと、③仲間関係支援が及ぼす効果が確認されたことである。これらの成果により、ASD児は対人行動の非典型特性を持ちながらも、適切な支援環境下では本人が満足できる親密な仲間関係を構築できるという実証に寄与したと考えられる。
著者
高橋 あやの
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は天文占書を対象とする。『霊台秘苑』や『観象玩占』のテキスト調査をし実態を明らかにした上で、利用可能な資料とすることを目的とする。本研究の研究成果として、以下の4点を挙げることができる。(1)『霊台秘苑』の2系統のテキストの実態解明、(2)『観象玩占』の朝鮮刊本の分析と日韓の受容の比較、(3)天文占書フルテキストデータベースの充実、(4)国際シンポジウム開催、である。(1)と(2)の成果は、学会発表や論文により公開予定である。
著者
神谷 亘
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

SARSコロナウイルスのnsp1タンパク質は、宿主RNA分解促進と40Sリボゾームに特異的に結合することでタンパク質合成を阻害する。nsp1タンパク質によるRNA分解には宿主のRNA分解機構が関与していると考えられる。さらに、SARSコロナウイルスは、nsp1タンパク質によるRNA分解促進や翻訳阻害の存在下においても、効率よく増殖することができる。そこで、SARSコロナウイルスによるnsp1タンパク質のRNA分解促進や翻訳阻害からの回避機構を検討した。その結果、nsp1タンパク質は、ウイルスRNAの非翻訳領域と特異的に結合し、ウイルス由来のRNAと宿主由来のRNAを区別することで、宿主特異的なRNA分解促進と翻訳阻害を引き起こしていることが明らかとなった。
著者
片山 直樹
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

全国各地の野鳥の会から公表されている支部報を用いて、探鳥会記録の電子データ化を進めた。観察された種のリストおよび調査努力量としての観察人数のデータを可能な限り記録した。入力作業は、8割ほど完成したものの、いまだ継続中である。来年度には解析に着手したい。一方、モニタリングサイトサイト1000の鳥類データを用いた解析は、着実に進行した。森林草原サイトと里地サイトの両方のデータをもとに、調査手法が統一されている2009-2020年の個体数データを用いて、個体数トレンドを推定した。推定にはTRIM(Trends and Indice for Monitoring data)を用いて、合計300個体以上が観察された47種を対象として、トレンドを推定した。そして、推定された種ごとの年変化率を目的変数し、各種の生活史形質を説明変数としたPGLS(phylogenetic generalized least squares)を行うことで、種ごとの増減の違いを説明する要因を調べた、その結果、種ごとの年変化率を最もよく説明したのは「生息地グループ」であった。具体的には、森林性グループ(21種)では個体数トレンドが安定していた一方で、里山性グループ(19種)と開放地性グループ(7種)では、平均して年1%以上のペースで個体数が減少していることが示唆された。さらに、調査地選択のバイアスが与える影響も調べた。特に里地サイトでは、何らかの里山保全活動が行われているサイトが多い。そこで保全活動を行っているサイト・行っていないサイトで里山性グループの個体数トレンドを比較した。その結果、保全活動を行うサイトでは個体数トレンドが安定している一方、行っていないサイトでは平均して年2%以上のペースで個体数が減少していることが示唆された。現在、論文執筆中である。
著者
安房田 智司
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

海産カジカ科魚類は、科内で交尾種、非交尾種が含まれるだけでなく、子の保護様式も雄保護、雌保護、無保護と、繁殖様式が特に多様化したグループである。繁殖様式の異なるカジカ科魚類18種について、繁殖行動と性的形質(交尾器形態や雌雄の体サイズ差)や精子特性(精子形態や運動性)を調べた。その結果、交尾の有無および保護様式(雄保護、雌保護、無保護)の違いが、性的形質や精子特性と密接に関係しており、繁殖行動に関連して性的形質や精子が進化したことが示された。
著者
多賀 悠子 伏屋 玲子 浜野 かおる
出版者
国立研究開発法人水産研究・教育機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

クルマエビ漁獲量の減少に伴い,種苗生産に使用する親エビの確保が近年難しくなっている。そのため,陸上水槽で飼育した親エビを用いた採卵技術の確立が求められているが,交尾が十分に行われないことが問題となっており,その原因として水中音や飼育水の振動によるストレスの影響が疑われている。そこで,水槽内で交尾が行われる条件を明らかにするため,曝気による音と振動をはじめとして,水槽壁の衝撃吸収性,水槽サイズや底質と交尾との関係を調査した。その結果,後二者は交尾に影響を与え,アンスラサイト(破砕石炭)を底質に用いた場合には底面積が0.75 m2以上で交尾が行われた。一方,前二者は交尾に影響を及ぼさなかった。
著者
渡辺 崇人
出版者
徳島県立農林水産総合技術支援センター(試験研究部)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ゲノム編集技術を用いて、コオロギのHox遺伝子に最小化プロモーターの下流にeGFP遺伝子を配置したベクターをノックインした結果、予想される発現パターンで蛍光が観察され、エンハンサートラップ系統を作製することに成功した。ノックインの方向及び結合部位を正確に組み込む方法として、MMEJの経路を用いたノックイン技術の導入を試み、標的遺伝子の終止コドン上にeGFP遺伝子を正確に組み込み、その発現を観察することができた。また、PacBioRSIIを用いたRNA-seq解析を行った。抽出したmRNAを分画し、4cellずつシークエンス解析を行った結果、合計で76万リード、2.25Gbの配列が得られた。
著者
渡辺 崇人
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

非相同末端結合によるノックインを試みた結果、フタホシコオロギにおいて初めてノックインに成功し、マーカー遺伝子をゲノムに組み込むことができた。現在コンディショナルノックアウト実現のためにpiggyBacのコンポーネントが組み込まれたノックインベクターを作製し、コオロギゲノムへ導入している。また、次世代シークエンサーのPacBio RSIIを用いてゲノム解析を進めており,これまでに約5Gbのシークエンスデータが得られ,Gap closing解析を行っている。