著者
奥崎 穣 曽田 貞滋 齊藤 隆
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

オオルリオサムシとアイヌキンオサムシは北海道内で体色とその多型頻度を変化させながら系統分岐を繰り返してきたことが分子系統解析から明らかとなった.体色進化の地理的パターンは2種間で異なっていたが,2種の体色は北海道北部でよく似た赤い色であることが分光計測によって確かめられた.またDNAバーコーディングの結果,オサムシの捕食寄生者3種が確認され,北海道北部にはそのうちの1種,ヤドリバエ科Zaira cinereaのみが生息していた.2種のオサムシの赤い体色はこの寄生バエに対して隠蔽色として機能しているかもしれない.今後はZ. cinereaの成虫を捕獲して,オサムシの体色への選好性を調査していく.
著者
大森 勇門
出版者
大阪工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

食品における結合態D-アミノ酸の存在と異性化を促進する要因について解析を行った。サプリメントとして販売されているコラーゲンペプチドには、結合態D-ValがD/D+L比20%程度の非常に高い割合で存在することを見出した。一方でダイズやホエー由来ペプチドでは結合態D-Valは検出されなかった。またAspジペプチドをモデルとして異性化を促進する加工処理を検討した。電子レンジでの加熱において、アルカリ条件では700 W、30秒で異性化が進行することを見出した。既知の条件よりもかなり低い温度と短時間で進行することが明らかになり、マイクロウェーブが結合態アミノ酸の異性化を促進することが示唆された。
著者
大倉 正敏
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

豚レンサ球菌は豚やヒトに重篤な疾病を引き起こす重要な人獣共通感染症起因菌であり、莢膜多糖の抗原性の違いにより30以上の多様な血清型に分類されている。本研究では現在、血清型別に使用されている全35血清型参照株の莢膜多糖合成に関わる遺伝子群[Capsular polysaccharide synthesis(cps)gene cluster]について比較・解析を行った。その結果、本菌の血清型は「cps gene clusterの交換による大規模な変異」及び「cps gene cluster内の少数の遺伝子の塩基配列置換や欠失・挿入などによる小規模な変異」の両方により多様性を創造していることが示唆された。さらに、解析により明らかとなった、複数血清型共通遺伝子及び血清型特異的遺伝子を利用し、2回のマルチプレックスPCRにより分離株の血清型を推定する型別法を開発した。
著者
福島 鉄也
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

オーダーN・全電子・フルポテンシャル遮蔽KKRグリーン関数法に基づいた電子状態計算パッケージKKRnanoに局所構造解析プログラムを組み込み、ユーリッヒ研究センターのBlue Gene/Qと理化学研究所の「京」上でプログラムの最適化チューニングを行った。 実際に開発したKKRnanoプログラムを、世界で初めて高エントロピー合金、熱電物質、太陽電池材料、永久磁石材料等に適用し、局所環境効果が電子状態や磁気特性等の物性に与える影響をミクロな立場から理論的に解明した。
著者
鈴木 真弥
出版者
東京外国語大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究はグローバル化の趨勢が指摘されるインドにおいて、急速に変貌しつつあるカーストとダリト運動の動態を検討すると同時に、英国のダリト移民にも注目することで、人びとのカースト意識やダリト運動の展開に与える影響を検討した。バールミーキ・コミュニティを事例として、インドで1990年代以降から試みられてきた公益訴訟という手法を活用して自コミュニティの権利や不平等を訴える動きを分析した。さらにバーミンガムのバールミーキ移民に着目し、ライフヒストリー、カースト差別の経験、カースト別の宗教・社会活動を検討することにより、英国のカースト問題や国境を越えた運動のネットワーク形成の可能性と課題を明らかにした。
著者
安藤 正規 安藤 温子 井鷺 裕司 高柳 敦
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

日本国内に生息する大型の草食動物であるニホンジカ(以下、シカ)とカモシカとの生息域や餌資源を巡る種間競争について、 (1)自動撮影装置を用いた両種の土地利用傾向調査、(2)次世代シーケンサーを用いたDNAバーコーディングによる両種の餌植物構成調査、を実施した。(1)の結果より、森林内の利用傾向は両種間で季節的、空間的に異なることが明らかとなった。また(2)の結果より、特定の餌植物種は種間で出現頻度に偏りが見られたものの、餌植物の種構成自体はほぼ差がないため、シカによる下層植生の衰退は両種の餌資源の競合をより強める可能性があることが示唆された。
著者
金 允姫 橋爪 真弘 本田 靖
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

気温は自殺との関連が高い気象因子として考えられ、気温の上昇と自殺リスクの増加に関する多くのエビデンスが報告されてきた。しかし、正確な気温-自殺の非線形関係を推定する研究は不足していた。本研究は、12カ国341都市・地域の自殺死亡者数と気象データを収集し、同一の統計解析法を用いて気温-自殺の非線形関係について包括的な研究を試みた。結果、気温-自殺の非線形関係は全体的に気温上昇に応じて自殺リスクの増加が観察されたが、非常に高い気温では、自殺リスクがもはや増加せず、水平状態に達したり、わずかに減少することが明らかになった。また、非線形推定曲線を介して自殺リスクが最大となる臨界温度範囲を確認した。
著者
鈴木 多聞
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

戦前から戦後にかけての昭和天皇と宮中を重点的にとりあげ、戦争終結のタイミングや条件の問題と戦後秩序の見通しの問題を明かにした。諸外国での文書館で史料調査を行い、史料を収集することができた。また、『昭和天皇実録』をカレンダー化し、時間の流れを整理することができた。研究成果の一部はすでに「『聖断』 と『終戦』の政治過程」(筒井清忠編『昭和史講義 最新研究てみる戦争への道』(筑摩書房、2015 年) 「鈴木貫太郎と日本の『終戦』」(黄自進・劉建輝・戸部良一編『「日中戦争」とは何だったのか』ミネルヴァ書房、2017年)として発表している。
著者
八田 卓也
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

以下の2つの知見を得た。①既判力を訴訟物を基準とせず判決理由中の判断に既判力を及ぼす必要がある局面が存在し得る。②既判力の作用局面のうちの前訴後訴の訴訟物が矛盾関係に立つ場合については、日本法・ドイツ法ともに近時これを拡大する傾向がある。しかし、ドイツ法は既判力の本質論として一事不再理説を採用しておりこの場合の処理が容易である(後訴の却下でよい)のに対し、日本法では拘束力説が採用されておりこの場合の処理が困難である(前訴判決の既判力を前提として後訴を判断しなければならない)。以上よりドイツと異なり日本ではこの場合の取扱いには慎重さが求められる。
著者
中野 張
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

非線形放物型偏微分方程式及び線形確率偏微分方程式に対するメッシュフリー選点法の厳密な収束と,適用に有用な基底関数のクラスとグリッドについて研究を行った.その結果,これらの方程式が全空間で定義されている場合に,収束が厳密に保証される動径基底関数のクラスとグリッド構造及び補間点数の取り方を明らかにした.また,これらのことを数値実験においても確認した.以上の成果により,多次元の有限期間確率制御問題及び拡散過程のフィルタリング問題に対し,相対的に高速で計算可能かつ厳密に収束が保証される数値解法の開発に成功したことになる.
著者
西村 忠己
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

骨導超音波知覚を解明するために、同様に周波数の高い高周波気導可聴音の知覚と比較検討することが重要であると思われる。その理由として骨導超音波が知覚できるのは、骨伝導のため、内耳に達したときに生体の非線形性により可聴音が生じるため聞こえているのではないかという説があるからである。本年度の検討では骨導超音波の聴取閾値を気導音の聴取閾値との相関関係を聴力正常者及び難聴者で求めた。仮に特定の周波数の可聴音が生じているとすると、骨導超音波の聴取閾値はその可聴音の聴取閾値と強い相関を示すはずである。つまり非線形性により高周波可聴音が生じているとするとその聴取閾値と強い相関関係を認めると推測される。実際に測定を行うと、骨導超音波の聴取閾値は高周波可聴音の聴取閾値と強い相関関係を示さず、また相関係数は、ピッチが明らかに低い低周波数の可聴音との相関係数よりも低い値を示した。このことから骨導超音波の知覚はピッチが高周波可聴音と似ているにもかかわらず、その知覚メカニズムは異なることが示された。また補聴システムに関する検討では、言語音を変調する方式についてAMとFM変調の優位性について脳磁図を用いて検討した。その結果AM変調と比較してFM変調の方が周波数弁別能の点について劣ることがわかった。しかしある程度の弁別が可能であることからFM変調を補助的に使用していくことが可能であると思われた。なお骨導超音波の臨床応用に関しては難聴者においても一定の効果が認められたが、症例数の問題や骨導超音波補聴器そのものが試行錯誤の段階であることも有りその効果の定量は困難であった。
著者
比良 友佳理
出版者
京都教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は著作権侵害の刑事罰・刑事手続が、著作物ユーザーに与える萎縮効果を分析し、表現の自由とのバランスがとれた著作権法の刑事罰のあり方を検討するものである。著作権侵害が刑事事件化されることで、被疑侵害者は強い萎縮効果を受ける。著作権法を表現規制立法であると認識した上で、刑事罰の種類や重さが比例性を満たすものであるかを検討することが必要であることを、欧州の裁判例や学説を参照しながら明らかにした。
著者
森實 瑠里
出版者
愛知医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

Alarminの一つとして注目されているadenosineは数.Mの低濃度から強い炎症性サイトカイン産生抑制能を有する。また組織損傷の強い熱傷では血中adenosine濃度が有意に上昇していることが明らかになった。熱傷のさいに遊離されたadenosineは局所における過剰な炎症を抑制する生理的な働きを果たしている可能性が示唆された。
著者
杠 俊介
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

ミュラー筋の神経支配の詳細を検索するために研究を行った。平成14年度、ヒトの上眼瞼と眼窩内の解剖と組織学的検索により、ミュラー筋は近位部で涙腺神経につながる神経から神経支配を受けており、その中に、遠心路である無髄のカテコールアミン作動性交感神経節後線維と、求心路と考えられる有髄の自律神経でない神経線維が含まれているという結果を得た。すなわち、ミュラー筋は、涙腺神経内を通ってきた交感神経節後線維の刺激により収縮を起こすとともに、ミュラー筋自体の緊張状態を涙腺神経につながる有髄神経を介して中枢に伝えており、それが上眼瞼挙筋の不随意収縮、すなわち開瞼の持続を起こすものと推察した。平成15年度は、実際に涙腺神経を切断した場合に眼瞼に変化が現れるかどうかを動物実験により検討した。実験動物としてラットを選択した。まずラットの脳から眼窩内、さらに眼瞼にいたる神経の走行を実体顕微鏡下に観察し、三叉神経第一枝の分枝と涙腺神経の位置を同定した。ラット15体で、三叉神経第一枝の分枝である眼窩上神経の中枢端および涙腺神経の切断実験、ならびに上頚部交感神経節の切除実験を各群5体ずつ行った。眼窩上神経の切断を行っても眼瞼には変化は生じなかった。涙腺神経を切断すると上眼瞼の下垂を生じた。上頚部交感神経節の切除を行うと、上眼瞼下垂のみならず眼球の突出が無くなり、下眼瞼の下方移動も悪くなり、結果的には3群の中では最も瞼裂幅が狭くなっていた。この結果は、涙腺神経内に上眼瞼挙上に関係した神経線維が存在することを示唆するもので、ヒトの解剖と組織検索から推察した内容に一致するものと考えた。
著者
佐賀 典生
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、運動後に生じる筋損傷・筋痛を軽減するため、自律神経活動に着目したコンディショニング(温浴、水浴または交代浴)方法を明らかにする研究を行った。その結果、筋損傷・筋痛時に行う交代浴は、処置の前後で副交感神経活動を高め、日々の自律神経機能全体の働きを高める可能性が示唆された。また、筋損傷・筋痛時に行う交代浴は、抗酸化と酸化ストレスの比率である潜在的抗酸化能の低下を抑制する可能性があり、筋損傷に伴う炎症反応の悪化を抑制する可能性が示唆された。本研究で用いた交代浴は、自律神経活動をコントロールし、筋損傷からの回復の方法として有用である可能性を明らかにした。
著者
丸田 章博
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

アナログ-ディジタル(A/D)変換における標本化および量子化の操作を光領域で行なう方法として、ファイバの非線形光学効果を用いる方法についての原理確認実験を行なった。本年度は、ファイバ中の四光波混合(FWM)による標本化操作とソリトン現象を用いた量子化操作の連続実験(実験I)を行なうとともに、周波数の異なるパルスとの衝突によって、高次ソリトンを複数個のソリトンに分裂させる実験(実験II)を行なった。まず、実験Iでは、中心波長1556.5nm,パルス幅6ps,繰り返し周波数25MHzの光パルス列と中心波長1561nmの連続光を全長261mの分散シフトファイバ(DSF)に入射させ、発生したFWM光を帯域幅1nmの光フィルタによって切り出し、さらに全長1036mの非零分散シフトファイバ(NZ-DSF)に入射させた。連続光のDSFへの平均人射電力を変化させ、ファイバ出射端で自己相関波形を観測した。ソリトン次数(含まれるソリトンの数)に特徴的な自己相関波形が観測されたことから、標本化されたパルスの振幅に応じた個数のソリトンが発生していることを確認した。次に、実験IIでは、パルス幅2.7ps,中心波長1554nmの2次ソリトンと、パルス幅2.6ps,中心波長1550nmの基本ソリトンを、全長10049mのNZ-DSF入射端で衝突させ、出射端でその自己相関波形を観測した。3つのピークを持つ自己相関波形が観測されたことから、2次ソリトンが18ps離れた2つのソリトンに分裂したことを確認した。この操作によって、高次ソリトンに含まれるソリトンの個数を数えることができる。以上、2つの実験結果から、連続的に変化するアナログ信号の振幅を離散的なソリトンの個数に変換することによる光領域での量子化操作は原理的に可能であることを示した。
著者
江口 航生
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012

メタボリックシンドロームに関連した最終的な死因においては心血管病が大きな割合を占めている。そこで、今回の研究は、肥満・メタボリックシンドロームにおける心筋毒性のメカニズムを解明することを目標とし、その鍵となる代謝ストレスとして、食事の種類により大きく組成が異なり、メタボリックシンドロームで血中濃度が上昇している遊離脂肪酸に着目した。特に血中遊離脂肪酸の30-40%を占める長鎖飽和脂肪酸であるパルミチン酸に着目して実験を構築した。長鎖飽和遊離脂肪酸の果たす役割を検討する方法として我々が独自に確立した単一種遊離脂肪酸の経静脈的投与法を利用し、さらにそのメカニズムのとして、免疫細胞の活性化・動員、それに続く慢性炎症の心機能障害への寄与を解析した。まずパルミチン酸持続投与モデルにおいて心室のmRNAレベルを検討すると、パルミチン酸負荷が心臓内に炎症を惹起する事を確認した。さらに、フローサイトメーターにより細胞集団の変化について検討をおこなうと、免疫細胞の集積が生じており、このことが炎症の惹起においては一つの重要なメカニズムであることを見いだした。メタボリックシンドロームの病態においては、代謝ストレス以外にもneurohumoralな刺激が合併することにより病態が惹起されている可能性を考え、アンジオテンシンII負荷をパルミチン酸負荷に加えると、心筋内の炎症が強く増幅されることが明らかとなった。以上のin vivoでの検討を元に、現在心筋プライマリーカルチャーにおけるパルミチン酸およびアンギオテンシン負荷の影響を観察することによって、心筋細胞内での現象と、免疫細胞との相互作用によって生じる現象を分けて考えることができると考え、現在実験系を構築している。
著者
石井 辰典
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、他者の不幸を喜ぶという感情経験;シャーデンフロイデが、不公正な人物への罰達成に伴う快感情に由来するという仮説を実証的に示すことであった。不公正者に罰を与える動機はサンクション行動傾向尺度(森本他, 2006)や応報信念尺度(Gerber & Jackson, 2013)などで多角的に測定し、そして様々な不幸場面(就職活動での失敗、傷害事件で懲役刑を受けるなど)を用いてシャーデンフロイデの測定を行った。その結果、社会正義を目指す動機ではなく、不公正者を苦しめようとする動機の高さが一貫してシャーデンフロイデを予測することが示された。
著者
宮下 ちひろ
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

北海道出生コホート研究の参加者1262人の妊娠初期の母体血清葉酸値は7.3 ng/ml(中央値)で、7歳喘息群と非喘息群で有意な差はなかった。血清葉酸値(連続値)または葉酸サプリメント摂取と7歳喘息リスクに関連はなかった。本研究では、妊娠中の葉酸摂取による生後の免疫への負の影響は認められなかった。全体で葉酸と喘息の関連が明確でなかったが、遺伝要因については、DNA抽出や唾液の採取を実施しており、今後さらに血清葉酸値の欠乏・低値・充足群に層別化して検討する。
著者
唐澤 重考
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

約16,000個体の標本データに基づき日本におけるワラジムシ亜目の分布データベースを構築した.また,このデータに基づき外来種オカダンゴムシの日本における分布制限要因を調べた結果,その分布には最寒月の気温が大きく影響していることが明らかとなった.加えて,日本に侵入したオカダンゴムシのmt DNAのCOI領域に5つの遺伝子型があることを明らかにし,本種は5つの原産地から持ち込まれたことを示唆した.さらに,琉球列島の4島(奄美大島,沖縄島,宮古島,石垣島)のワラジムシ相調査,および,福岡県宗像市の草地における群集生態学的調査から,現在のところ外来種による在来種の排他現象は生じていないと考えられた.