著者
堀田 義太郎
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

差別概念の哲学的な分析論の主要な議論を検討した。①被差別者に与える害や不利益に注目する帰結主義的な立場としての不利益説、②差別者の動機や悪意に注目する悪意説、③帰結にも意図にも還元できない「意味」があるという意味説を検討した。現在の議論では不利益説が主流である。不利益説は差別がもたらす害悪の大きさに関する直観にも適合しており一定の説得力がある。本研究では、しかしこの立場では十分に差別の悪質さを分析することはできないことを明らかにし、意味説に一定の利点があることを確認した。差別の悪質さを評価するための規範的な根拠の解明が今後の課題である。
著者
柴崎 貢志
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

これまで報告されてきたTRPV4の機能(皮膚における外界の温度受容体としての機能)とは全く異なり、海馬TRPV4は神経活動調節因子として機能している可能性が高いと考えられた。この可能性を検証するために、野生型とTRPV4欠損マウスの海馬より培養神経細胞を調整し、静止膜電位および発火特性を調べた。その結果、海馬神経細胞において、TRPV4は体温により活性化されており、その活性化を介して静止膜電位を脱分極させ、神経細胞が興奮しやすい土台環境を産み出していることが示唆された。さらに、個体レベルでのTRPV4の学習・記憶に果たす役割を調べ、TRPV4が脳内温度で恒常的に活性化されていることを証明した。
著者
太田 嗣人
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

肥満による炎症とインスリン抵抗性の誘導にMCP-1-CCR2非依存性の未知のケモカインシグナルが関与している可能性がある。肥満モデルの脂肪組織では野生型マウス(WT)に比し、CCR5とそのリガンドの発現が増加していた。高脂肪食を摂取したCCR5欠損マウスは、耐糖能異常と肝脂肪蓄積に抵抗性を示した。肥満モデルの脂肪組織におけるCCR5+マクロファージ(ATM)細胞数は著明に増加していた。一方、肥満のCCR5欠損マウスははWTに比しATMの総数は減少し、M1からM2優位へとATM表現型の転換を認めた。肥満により脂肪組織ではCCR5+ATMの浸潤・集積が増加する。また、CCR5欠損によるインスリン抵抗性の減弱にATMの量の低下のみならず質的変化、つまりM1からM2へとダイナミックなATMの表現型シフトが寄与しうる。
著者
赤澤 健太郎
出版者
京都府立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

脳温度をMagnetic resonance imagingで非侵襲的に測定する方法のひとつとして、拡散強調画像から得られる側脳室内の脳脊髄液の拡散係数を利用する方法が近年提案されている。本研究では、この手法の安定性や、撮像条件・体温の違いによる影響を明らかにするために計画されたものである。健常成人の検討によって、この手法は安定的に脳室温度を計測することが可能であった。また撮像条件のうち、スライス厚は算出される温度に影響を与え、より薄いスライス厚のほうが望ましいという知見が得られた。また脳室温度は体温の影響を受けることも明らかとなった。
著者
木村 元
出版者
芝浦工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は,一般確率論に基づく量子情報理論の一般化,並びに量子力学の原理的特徴づけを目指すものである.特に量子論を特徴づける物理原理(実験検証可能な法則)の完成は,量子基礎論の悲願の1つでもある.当年度は,特に量子力学の物理原理の追求として,主に一般確率論における情報対称性に着目して研究を進めた.情報対称性は2019年Banikらにより導入され,量子暗号などで重要となる最適な状態識別に関する量子論や古典論で成り立つ対称性に着目した原理である.本研究では,Banikらの定義に最適測定に関する非一意性に基づく曖昧性を指摘し,弱情報対称性と強情報対称性を導入し,多くの一般確率モデルが弱対称性によって排除されないこと,また,強情報対称性を量子論が満たすことを示し,情報対称性の物理原理としての整備を行った.加えて,状態識別問題の幾何学的なアプローチとして,以前に研究代表者らが考案したヘルムホルツ・アンサンブルの方法があるが,情報対称性の可否をヘルムホルツ・アンサンブルを用いて検証する方法を開発した.これらは現在投稿準備中である.また,以前に開発した誘導エントロピー法に基づく各種エントロピー間の関連性を調査しており,測定エントロピーと情報エントロピーが,正六角形モデルにおいて誘導法で結ばれる兆候を得ている(少なくとも数値的には一致).これは,既に得られている正四角形モデルにおける結果の一般化に相当し,現在厳密な証明を試みている.その他にも,引き続き一般確率論の情報理論の構築を,状態空間幾何との関連性から検討中である.特に,非自明な合成系上の相関(エンタングルメント)や測定の整備を行っている.
著者
成澤 直規 竹永 章生 鳥居 恭好 阿部 申 中村 知世 岩本 理 川崎 幸正
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

これまでに市販納豆の可溶性抽出液にう蝕原性Streptococcus mutansのバイオフィルム形成抑制効果を明らかにしている。36種市販納豆を対象として評価した結果、バイオフィルム抑制効果はプロテアーゼ活性と相関性が認められた。抑制因子を精製した結果、セリン型プロテアーゼであるナットウキナーゼの特徴と良く類似した。これはS. mutansのバイオフィルム形成に必須である非水溶性グルカン合成阻害が原因であることが明らかとなった。ナットウキナーゼは歯の脱灰の臨界pHである5.0付近においても比較的活性を維持しており、応用的にも利用可能であるものと期待された。
著者
奥平 准之
出版者
明海大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ヒトゲノム解読以降、ジャンク配列とされてきたtransposable遺伝子(転移遺伝子)の機能解明に様々な分野から注目が集まっている。中でも、1細胞中に約52万コピー(全ゲノムの約17 %)存在するLong Interspersed Element-1(LINE-1以下L1)は特徴的で、80-100コピーは正常細胞中でも転移機能を有している(retrotransposition以下RTP)。L1-RTP誘導のメカニズムは不明な点が多く、疾患発症との繋がりも指摘されている。本研究では、社会問題化している乱用薬物の依存形成にL1が関与している可能性を考え、薬物とL1-RTP誘導能を解析した。
著者
増田 久美子
出版者
駿河台大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、ドメスティシティという概念がいかに広範に19世紀米国社会の文化形成にかかわっていたかを検討するため、「白人女性文化」という支配的枠組みに抗して、黒人男性作家の家庭小説にみられるドメスティシティ分析を主眼とした。その結果、ドメスティック・イデオロギーが人種・ジエンダー・階級を横断して多様な人びとに共有あるいは流用されていたこと、また。このイデオロギーが個別の場において特殊な文化的政治性を持ちうることが論証された。
著者
長嶋 雅子
出版者
自治医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

注意欠如・多動障害(ADHD)治療薬の塩酸メチルフェニデート徐放剤(MPH)内服歴のないADHD児に関して、自閉症スペクトラム(ASD)の併存の有無別に、MPHの効果を近赤外線光トポグラフィー(fNIRS)を用いた無作為二重盲検試験を抑制機能課題で行った。右前頭前野で、ASD併存なし群では、MPH内服前には活動がなかったが、内服後に見られた。ASD併存あり群では、内服前に有意傾向の活動があったが、内服後にはなかった。行動評価では、MPH内服前、内服1ヵ月後の比較で両群とも有意に改善があった。MPH有効例でASD併存の有無により病態が異なることが示唆された。今後はMPH無効例において検証を行う。
著者
平井 義和
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アルカリ金属ガスをシリコンとガラスで作製したセルに封入した「MEMS型ガスセル」は、小型原子時計や高感度磁気センサの心臓部として使用される。そのため、高性能な小型原子デバイスを作製するには、微細加工技術によるガスセル作製法が重要である。本研究では、多孔質アルミナやシリコンの三次元構造にアルカリ金属アジ化物の結晶を析出したアルカリ金属生成源を開発し、この生成源とプラズマ陽極接合を融合したウェハレベルのガスセル作製法を確立した。提案手法ではMEMS型ガスセルが高効率かつ低温で作製できることを実証したとともに、小型原子デバイスの高性能化につながる作製法であることも明らかにした。
著者
太田 伸幸
出版者
中部大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

対人関係の4つの型(協同,競争,個人,ライバル)に分類し,この基準に基づいた尺度を作成した.次に,実際にライバルが存在する者を対象とした面接調査を実施し,ライバル認知の成立には社会的比較の対象になることと,双方向のライバル関係の成立には一定以上の親密性が必要であることを示した.そして,ライバルの概念に関して,日本の学生およびアメリカの学生を対象にしたWeb調査を実施した.因子分析を用いた検討の結果,日本人とアメリカ人とでは,競争に対する価値観が異なることが示唆された.
著者
渡邊 広祐
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

近年がんにおいて3’UTRが短縮し(Alternative polyadenylation, APA)、miRNA結合部位が失われることで、miRNAを介した転写後制御が破たんするとの報告がなされた。肺がんにおけるAPAの全貌を明らかにするために、公開されているマイクロアレイデータベースを利用し、肺がんにおいて最もAPAを生じている遺伝子を同定した。肺がん手術検体を用いて解析すると、APAは肺がんの独立した予後不良因子となっており、さらにはPABPN1低発現と増殖マーカー高発現がAPAと相関していた。本研究により肺がんにおけるAPAの全体像が明らかとなった。
著者
小椋 麗子
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-02-07

インプラント及びその対合歯に対して,咬合面上の各部位での咬合力,咬合感覚の測定を行い,インプラントへの咬合接触の付与様式を模索した.被験歯である下顎第一大臼歯部インプラントの咬合力には各測定点間で有意差は認められず,対合歯である上顎第一大臼歯では中央が頬側と比較して有意に高い結果となった.また,咬合感覚は上下顎共に各測定点間で有意な差は認められず,咬合力との相関も認められなかった.以上から,インプラントは咬合面のどの部位でも比較的安定した咬合力と咬みやすさを得られる一方,咬合感覚を得にくくなるため,天然歯よりも歯周組織やインプラント対合歯に対する影響を自覚しづらくなる可能性が示唆された.
著者
馬渕 春菜
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

網膜色素変性症では進行性に重度の視力障害をきたしうるが、有効な治療法は確立されていない。本疾患では、光に暴露すると増悪しやすいことが知られているが、光による網膜障害のメカニズムには未だ不明の点が多い。そこで今回、光障害による視細胞死のメカニズムに関し、酸化ストレスの観点から研究した。そのために抗酸化剤であるルテインを投与した際の、光暴露による網膜障害の予防効果を解析した。
著者
神長 伸幸
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,小学校児童の読み理解の発達過程を眼球運動パターンの変化という視点で検討した。研究1では小学校3年生と5年生および成人に教科書の副読本より選出した文章を自然に理解しながら読むときの眼球運動を測定した。その結果,発達に伴って単語に停留する時間は短くなった。ただし,漢字表記語はひらがな表記語と比較して,発達による停留時間の短縮の度合いが低かった。研究2では小学校2年と4年生と成人を対象に,文章の分かち書きが読み理解に及ぼす影響を検討し,文を文節に分かち書きすることが読み理解の促進につながることが小学校児童でのみ示された。
著者
星 貴江
出版者
人間環境大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、硬膜外麻酔による無痛分娩を選択した女性のself-esteemおよび育児に関する調査を行い、心理的ケアモデルの開発と試作を行うことを目的とした。今回の調査からは、硬膜外麻酔による無痛分娩を選択した女性は、自尊感情の低下がなく、産後うつ傾向が低いことが示された。無痛分娩を希望した理由は様々であったが、出産に対する満足度が高く、それぞれ無痛分娩での出産を肯定的に評価し、価値あるものとし認識し、自己概念を再形成し育児を行っていたと考えられる。妊娠中からの無痛分娩希望者へのケア体制、サポート体制の把握、また出産における対象の個々の体験を大切にし、支援していく必要性が示唆された。
著者
津川 卓也 齋藤 昭則 大塚 雄一 西岡 未知 中田 裕之 齋藤 享
出版者
独立行政法人情報通信研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

国内外のGPS受信機網データから、電離圏全電子数や電離圏擾乱指数、GPSロック損失率等の2次元マップを作成し、データベース化した。これらのデータを用い、伝搬性電離圏擾乱やプラズマバブル等の電離圏擾乱の統計的性質を明らかにすると共に、衛星測位への影響について調べた。日本上空については、全電子数リアルタイム2次元観測を開始し、東北地方太平洋沖地震後に津波波源から波紋状に拡がる電離圏変動の詳細を世界で始めて捉えた。
著者
田中 裕之
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

小麦粉中に約10%含まれる種子貯蔵タンパク質、特にグルテニンの構造と発現量は、生地強度に大きく影響する。本研究では、野生植物の染色体をもつ小麦から、パン用に求められる強い生地に関係する新たなグルテニンを探索した。その結果、リン酸化の影響を受けない複数の新規グルテニンを見いだした。さらに、1種類のタンパク質がもつ生地強度への効果を評価するため、人工的にタンパク質を作製する系を確立した
著者
清澤 研吉 川真田 樹人 半田 宏
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

アセトアミノフェンは副作用の少ない解熱鎮痛薬として使用されている薬剤である.しかしその作用機序は未だに不明である。そこでアセトアミノフェンの薬剤標的タンパクを網羅的に探索し作用機序解明を目指した.アセトアミノフェン合成物とHela細胞破砕液を結合反応させ,磁性分離によりタンパクを抽出しアセトアミノフェンと結合するタンパクを同定した.得られた標的タンパクは体温の恒常性に関与するGSK-3βであった.そこで発熱モデルを用いてアセトアミノフェンの解熱効果を確認した結果,アセトアミノフェンはGSK-3βを抑制することで解熱作用を発揮する可能性が示唆された.
著者
渡邉 知佳子
出版者
防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

Celiac病は麦蛋白グルテンに対する異常な免疫応答により、絨毛が萎縮し吸収不良をきたす疾患で、欧米では罹患率約1%とされる。昨今、炎症性腸疾患(IBD)の我が国で急激な増加を鑑みて、同様の炎症性の腸疾患であるceliac病も、生活習慣の欧米化を背景に、潜在的に増加の可能性が示唆される。特に腹部症状が似ているIBD患者に潜在する可能性を考え調査した。特異的抗体の陽性例がみられたが、HLA・病理検査でceliac病確診例はなかった。血清抗体のみで、アルゴリズムに沿った診断を行わないとnon-celiac diseaseをceliac病と過剰診断する恐れもある。