著者
井手上 賢
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ヒト染色体セントロメア領域を構成するSatellite I領域から産出されるノンコーディングRNAであるSatellite I RNAについて、その機能を解析した。Satellite I RNAをノックダウンした細胞では染色体分離の異常を示す。このRNAには染色体分離のキー因子であるAurora Bが結合し、そのリン酸化活性とセントロメアへの局在を制御されることを見出した。Satellite RNAに結合する因子を探索するため、Satellite RNPをプルダウンし、ともに沈降してきた因子を質量分析で同定した。そのうちRBMXのノックダウンは染色体分離の異常の表現型を示した。
著者
佐佐木 智絵
出版者
近大姫路大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

慢性心不全患者が活動と休息のバランスを自らアセスメントするために必要なアセスメント項目を抽出する事を目的に、8名の慢性心不全患者を対象に質的探索的研究を行った。その結果、活動の仕方に関する4つの意味と11のアセスメント項目が抽出された。本研究からは、休息は活動の一つの仕方であり、活動と休息のバランスとは患者が活動の仕方を選択した結果得られるものであること、患者は活動の意味を達成するために活動をマネジメントしていると考えられるため、患者が持っている活動の意味に沿った指導の必要性が示唆された。しかし限られた対象者数からの結果であり、アセスメントツール作成のためにはさらに例数増やした検討が必要である。
著者
芝 真人 鈴木 秀謙 藤本 昌志 川北 文博
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ラット及びマウスの血管内穿通モデルを作成し、くも膜下出血後早期脳損傷の病態におけるマトリセルラー蛋白テネイシンCの役割について調べた。まずくも膜下出血後の脳においてテネイシンCの発現に伴い神経細胞のアポトーシスが誘導されていることを示した。続いてイマチニブがテネイシンCの発現を抑制することによりアポトーシスを軽減していることを確認するため精製テネイシンCの髄腔内投与を行い、アポトーシスが誘導されることを示した。最後に各種阻害薬を用いて、テネイシンCの発現抑制がMAPキナーゼを介したMMP-9の誘導を抑制することによって、早期脳損傷を軽減させることを示した。
著者
上北 朋子
出版者
同志社大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

豊かな社会性をもつ齧歯類デグーを対象とし、そのコミュニケーション能力を支える脳機構の解明を目的とした。動作を正しい順序で行い、他者の行動の順序性を理解することは、円滑なコミュニケーションに不可欠な能力である。本研究は、脳の特定領域の損傷実験により、コミュニケーションの第1段階である他者認知の神経基盤を明らかにした。これまで社会行動への関与については注目されなかった海馬が他者認知に関与することが明らかになった。
著者
西田 円
出版者
天理大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は,競技者が競技成績の停滞・低下によって無力感状態に陥る現象に焦点を当て,無力感状態が生起する要因を明らかにし,競技者に対する有効な介入方法を検討することであった。まず,競泳選手の練習場面におけるセルフ・エフィカシー尺度を作成しセルフ・エフィカシーと関連のある帰属スタイルを明らかにした。次に,無力感状態から回復した経験のある選手へのインタビューから,パフォーマンスの向上を実感した直後に無力感に陥りやすいことが示唆された。また,パフォーマンスが停滞している状況にあっても,指導者や周囲から期待され認められているという実感は,練習の継続や試合への出場に繋がる重要な要因となっていた。
著者
東本 崇仁
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,自らの知識の構造を理解するためには自己の知識構造の可視化が重要であることを背景に,学習者に自己の知識構造の可視化をするための手法であるコンセプトマップを構築させ,個別診断・誤りの可視化シミュレーション学習支援システムを実際に開発した.本来コンセプトマップは知識の可視化において有効であるが,個別診断やモチベーションの低さから修正を行うことは難しく,その点を解決したことが主に本研究の意義である.本システムは,実際に中学の授業の中で利用され,知識の構造化が促進されることが確認された.
著者
濱崎 裕介
出版者
九州共立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

研究を通して以下の点が明らかとなった。・器械運動を苦手とする学生の多くが、技ができないのは生理学的な体力要因のためだと思い込んでいる。また、できない動き方と目標とする動き方との外形的な違いのみを探ろうとする。つまり、客体として身体を捉える傾向にある。・指導の際には学習者はどう動こうとしているのかという動感を分析し、動きのコツをつかませるための感覚的なアドバイスが必要となる。・体育の学習を通しては生理学的な体力の向上も重要であるが、自己の身体で動きのコツをつかむという経験はさらに重要となり、身体知の形成こそが教科体育固有の学習目標となる。
著者
小山 良太
出版者
福島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

農地の汚染マップは、避難指示や解除、除染、農業対策などに関して、分野横断的に活用できる政策立案の基礎資料となる。生活圏における放射線量が可視化されたマップは、地域住民が、今の暮らしの中で少しでも外部被ばくを減らす方法を考える判断材料として用いることができる。実態調査を行うにあたっては、①復興庁が総合的な管理を行う、②被害レベルが高い地域から順次作成、③被害レベルに応じて更新頻度を設定、④経費を抑えた簡易な手法を採用し予算確保、⑤実測は行政・研究機関・民間企業・地域住民の持てる力を最大限活用することが重要である。
著者
佐瀬 卓也 阪間 稔 黒崎 裕 木下 悠亮 荒川 大輔 桑原 義典 入倉 奈美子
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

医療施設や研究施設で用いられる放射性ヨウ素等の放射性廃液を、放射性物質回収材(シクロデキストリン重合体(CDP)、食品用活性炭等)を用いて簡便に捕獲する方法を開発した。β-CDP、活性炭、2者混合、を試験しそれぞれ99. 2%、86. 6%、85. 5%の捕集効率を得た。回収した放射性物質は放射線計測により数値または画像にて定量可能であった。本法は放射性ヨウ素の簡便な捕集に有効であり、臨床の場における放射性廃液の一次処理及び原子力災害時に汚染された飲料水の簡易浄化にも応用が可能であると思われる。
著者
大和 晴行
出版者
兵庫教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,3歳未満児からの運動発達の向上のための方策について検討することを目的とし,3歳未満児の運動発達に関連する要因について検討を行った。その結果,(1)親の遊びに対する養育態度が子どもの活動意欲と関連していること,(2)活発な身体活動を伴う遊びの多さが,姿勢制御や移動運動、微細運動の発達と関連していることが示された。結果を踏まえ,保育環境及び子育て支援における親子活動のあり方について述べた。
著者
清水 徹英
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、硬質/軟質相が面内方向に規則配列された「面内ヘテロ構造」を有するテクスチャード表面を実現することで,連続摺動に伴う摩耗をパッシブに利用し,軟質相の選択的摩耗を促進させることでテクスチャ構造の自己形成化を図るものである.特に提案する面内ヘテロ構造の創製手法の確立およびその基礎摩擦・摩耗特性を解明することを研究目的とした.本研究を通して,イオン化蒸着法,酸素プラズマエッチング,プラズマCVD法を同一チャンバー内で行うことにより,面内ヘテロ構造を有するDLC膜の形成に成功した.創製した面内ヘテロ構造DLC膜における軟質相の選択的な優先摩耗挙動を明らかにし本提案手法の有効性を示した.
著者
向 正樹
出版者
同志社大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究課題は、中国沿海部と東南アジア島嶼部のイスラーム史蹟における現地調査を行い、そこに残されたイスラーム碑文(おもにアラビア語墓碑)の相互の比較研究を行い、それによって、歴史的に海上交易によって結びつけられた当該海域におけるアラブ・ペルシャ系移民の通婚と文化接触の結果形成されたイスラーム系集団間の連環を探るものであった。当該地域出土のイスラーム石刻のテキストから得られる年代的・地理的情報の収集、および、関連する漢語・アラビア語・ペルシャ語文献資料の網羅的分析を行った結果、12~16世紀前後において、南シナ海域・東南アジア海域に広く分散するイスラーム系集団の連動性や関係性に迫ることができた。
著者
堀河 俊英
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、創・蓄・省エネルギー化が求められ、化学プロセスから排出される低位レベルの熱エネルギー回収システムのひとつとして水蒸気吸着式ヒートポンプ(WAHP)が注目されている。そこで本研究ではWAHP運転圧力範囲で急激かつ大きな水蒸気吸着を示す高性能炭素系水蒸気吸着剤の開発に取り組んだ。炭素系吸着剤に対する水蒸気吸着等温線の立ち上がり位置を低相対圧部へシフトさせるために細孔特性を制御した多孔質炭素材料を調製し、また、それらに窒素原子を導入することで、WAHP運転圧力範囲において水蒸気吸着量差は、窒素ドープを行っていない炭素材料に比べて5倍となる高性能炭素系水蒸気吸着剤の開発に成功した。
著者
金子 知適
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究課題では,コンピュータの人工知能の判断力が,高度に訓練された人間の判断力に匹敵しうる分野を対象に,コンピュータプログラムを用いて人間の判断を支援する手法を研究を行なった.具体的には,囲碁や将棋において,コンピュータプログラムがMinMax探索を行なって得た評価値やモンテカルロ木探索をもちいて得た勝率として提示した判断と,人間の熟達者の判断との差について研究を行なった.
著者
小早川 誠
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

外来化学療法中のがん患者の精神症状評価システム開発をめざし、看護師によるつらさと支障の寒暖計と精神科医による症状評価システムの実施可能性について検討した。外来化学療法中のがん患者130名に調査を行い、強い精神的つらさを示した38名のうち、6名が精神科医による面接を希望した。残り32名のうち、半数はその後の寒暖計調査で閾値を下回った。対象者において精神的支援の潜在的ニーズはあり、一部の対象者には介入効果があったと考えられる。
著者
大田 えりか
出版者
独立行政法人国立成育医療研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本における人口レベルでの人口動態調査出生票・死亡票を用いた単胎・双胎症例を対象としたpopulation-basedの在胎週数別出生時体重基準値の推定を行い、スプライン関数によって平滑化した基準曲線を作成した。双胎の早期新生児死亡のハイリスクとなるのは、26週未満の早産児、母親の年齢が24歳以下、ペア間の体重差が大きいSGA児であった。高齢出産の低出生体重児出生のリスクは、近年減少しており、差はなかった。早産に限ると、高齢出産は1.5倍リスクは高いが、減少傾向であった。これは、20代での早産および低出生体重児出生が増加している影響と考えられる。地方と都市部での差はみられなかった。
著者
大貫 隆史
出版者
釧路公立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は,第二次大戦後英国に登場した,いわゆる「ニューウェイフ(New Wave)」と呼ばれる劇作家の中でも,社会改良を掲げて大きな反響を呼んだアーノルド・ウェスカーを,その主たる対象とするものである。その際,階層問題などの社会的背景との関連性を明らかにすることで,また,ウェスカーに関係する作家達にも目を向けることで,分析の充実を図り,再評価を行うことを目指した。二年目にあたる本年度では,ポピュラー・カルチャーの問題性を厳しく指摘し,否定的な立場を取るウェスカーが,聖別化もされていなければ,その一方で,大衆性の「烙印」を押されることのないような形の演劇を,どのように求めることになったのか,という問題を検討すべく,米国内アーカイヴでの調査資料を含む,ウェスカー関連資料の読解を行った。また,社会的背景と演劇作品の関わりを考察する上で,作品の「形式性」を慎重に検討するため,ウェスカーに限らず広く戦後英国の「社会的」劇作家一般という観点をとり,ウェスカー作品との関連性が強く指摘されるD.Edgar,Maydaysの分析を,本年度の研究目的に含まれる関連作家研究の一環として実施し,英国の「社会的」劇作家がその問題系を提示する際に共通して抱えると考えられる形式的問題点,つまり,悲劇的要素の抑圧とアイロニー形式の浮上という点について考察を深めた。この成果は,アメリカ演劇に対して応用されている文化の社会学的手法を,イギリス演劇に適用する際の妥当性を検討する際にも,示唆するものが大きいものと思われる。この観点を充分に生かしつつ,ウェスカー作品上演に関する文化の社会学的分析について,論文化の可能性を本研究は今後も継続して模索してゆく。
著者
白井 清昭
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究課題では、ユーザの質問が暖昧であったときに、ユーザに対して問い合わせを行うことによって適切な解答を選択する対話型質問応答システムを構築することを目的とする。前年度までは知識源となるコーパスとして新聞記事を用いていたが、獲得できる知識に偏りがあるという問題点があった。本年度は、より多様な知識の獲得が期待できるウェブを知識源とし、そのために必要なシステムの改変に取り組んだ。ユーザの質問の暖昧性を検出するために、ウェブページ上の表を抽出する手法とテキスト解析に基づく手法の2つを考案した。ウェブページ上の表を抽出する手法では、ユーザの暖昧な質問に対し、それに対応する複数の解答を一覧表示している表をウェブから発見し、ユーザに提示する。質問文中の主要なキーワードが表の1行目または1列目にあるか、残りのキーワードが表の近傍にあるか、表の一行または一列上にあるテキストが質問に対する解答タイプと一致しているか、などの条件をチェックし、条件を満たす表を抽出する。一方、テキスト解析に基づく手法では、まずキーワード検索でウェブページを獲得し、解答候補を抽出する。次にキーワードの周辺にある限定表現をパタンマッチによって抽出する。最後に共通の属性を持つ限定表現をまとめて解答群を作成し、ユーザに提示する。さらに、まずウェブページ上の表を抽出を試み、ユーザに提示するのに適切な表を発見できなかった場合にはテキスト解析に基づく手法で動的に解答群を作成するという形式で、提案する2つの手法を併用するシステムを作成した。評価実験の結果、2つの手法を併用することにより、より多くの質問に対して適切に暖昧性を検出できることを確認した。
著者
金山 直樹
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ユーザのID情報を公開鍵とする暗号系で用いられるペアリング関数についての研究を行った.ペアリング関数は楕円曲線と呼ばれる曲線の2つの点を入力とし,例えばRSA暗号などの処理の数倍のコストがかかるが,本研究では,数学的アプローチ・実装手法の最適化などを総動員しいくつかの高速ペアリング計算法を得た.また,ペアリング暗号の安全性の根拠の1つであるペアリング逆問題についての考察も行った.
著者
服部 雅之
出版者
東京歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

チタン-銅(10%含有)合金が、チタンの融点低下ならびに研削性向上の観点から有用なことは既に報告している。しかしながら歯科鋳造用として臨床応用するには機械的性質、特に延性の改善が必須である。研究代表者らは現在までに数種類の添加元素に着目し、三元合金化による改善を試みてきた。なかでもチタン-銅(10%含有)合金にクロムやパラジウムを数%添加した試作合金鋳造体の機械的性質を評価したところ、延性の向上が認められたが何れも3〜4%程度であった。本年度においては、延性のさらなる改善のために、パラジウム添加量を増加させた試作合金の特性評価を行った。これは、前年度までの研究成果からパラジウムの添加量が増すにつれ伸びの増加が著明であることに着目したことによる。パラジウム添加量を7.5mass%、10.0mass%とし、Ti-Cu-Pd三元合金を溶製し、歯科鋳造法により試料を作製した。引張試験の結果から、パラジウム添加量7.5%(Ti-10.0Cu-7.5Pd合金)および10.0%(Ti-10.0Cu-10.0Pd合金)鋳造体の引張強さはそれぞれ885MPa,893MPaであった。また、0.2%耐力はそれぞれ736MPa,735MPaであった。昨年度までの結果(1.0,3.0,5.0%添加試料およびTi-Cu二元合金)と比較すると、それぞれの強さに変化は認められなかった。伸びは、7.5%添加試料で4.5%、10.0%添加試料で3.5%を示し、Ti-Cu二元合金の値と比較し、有意に大きな値を示した。以上の結果よりTi-10.0Cu合金の延性の低下は、パラジウムの添加により強度が低下することなく、改善されることが明らかとなった。チタンへのパラジウムの添加により耐食性も向上するとの報告がある。現在、歯科鋳造用合金として市場で入手可能なのは、Ti-6Al-7Nb合金のみであるが、今回の結果は、新たな歯科鋳造用合金を開発していく上で有益なものであると考えられる。臨床応用への課題としては、いくつかの問題もあるが、今後の検討課題として取り組んでいく予定である。