著者
三上 欣希
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

金属系構造材料の変形・破壊挙動を明らかにするためには,結晶粒レベルの微視的な応力・ひずみ分布を把握することが重要である.本研究では,デジタル画像相関法による材料表面の変位・ひずみ分布の計測,結晶異方性を考慮した結晶塑性論による応力・ひずみ分布の有限要素解析を実施した.また,デジタル画像相関法によって測定した材料表面の見かけの変形を達成できるような結晶のすべり変形を,結晶の異方性変形挙動を考慮して決定する手法を提案した.本手法を用いて決定したすべり変形量に基づいて各結晶粒の応力を推定し,微視的応力分布を算出することができた.
著者
中川 知佳子
出版者
東京経済大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、言語情報から構築される概念の記憶の比較を通し、第一言語と第二言語の理解プロセスの相違点を明らかにしようとするものである。例えば I don’t like that animal because it bit me when I was a child. という文の場合、dogという表象が構築されると想定される。日本人EFL学習者を対象として、日本語と英語のマテリアルを使用した語彙性判断課題を実施した結果、英語読解では明示ターゲットと推論ターゲット間に有意差がなく、オンラインでの推論が起こっていたことを示す結果となっていたが、日本語読解は全てのターゲット間に有意差がないことが示された。
著者
岡本 雅子
出版者
帯広畜産大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日常生活における食品の味の記憶を促進する要因を検討することを目的に、処理水準モデルを枠組みとした味覚記憶実験および脳活動計測を行った。その結果、食品の写真がその食品の特性に沿った味の特徴の記憶を促進すること、また味の再認記憶成績の高い人ほど、左下前頭回前部の活動が高いことを明らかにした。これらの結果は、意味処理が記憶効率を高めるという処理水準モデルと一致し、味の記憶においても処理水準モデルが有効である可能性が示唆された。
著者
永浜 明子
出版者
大阪教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

【目的】本研究の目的は,大学で体育実技に参加する障がいのある学生の状況を把握することであった.また,学生本人及び体育実技担当教員からの聞き取りにより,大学及び義務教育課程における障がいのある児童生徒の体育のあり方を検討することも目的とした.【対象と方法】対象は、滋賀県内の大学で障がいのある学生が参加する体育実技の学生(1クラス),障がいのある学生本人,体育実技を担当する教員3人であった.対象者には,研究の目的を十分に説明し,同意が得られた者のみを対象とした.対面式インタビュー,自由記述及びグループディスカッションを行った.障がいのある学生本人には,これまでの体育への参加方法,大学での体育実技参加に対する思いや不安,参加した感想を聞き取り,障がいのない学生には,障がいのあるクラスメイトと共に体育実技を行った意見・感想を自由記述及びディスカッションで表現してもらった.体育実技担当教員には身体的あるいは知的な障がいのある学生を担当した経験,障がいのある学生を担当した時の気持ちや困った点,障がいのある学生と障がいのない学生がともに「体育実技」に参加することのメリット・デメリットなどを述べてもらった.分析は質的記述的分析手法を用い,障がいのある学生及びクラスメイトの体育実技に対する思い,参加への阻害要因などをまとめた.調査期間は,平成19年4月〜平成19年9月であった.【結果と考察】障がいのある学生は,これまで体育実技に参加したことはなく,ほとんどが別室学習を行っていた.自身が体育実技に参加できる(その能力や機会がある)ことへの驚きが多く語られた.反面,他者に対する心配や不安(迷惑をかける)も述べられた.一方,クラスメイトの多くからは戸惑いが語られた.力加減や怪我をさせるのではないかという心配が戸惑いの一番の原因であった.しかし,障がいのあるクラスメイトが楽しんでいる姿を見て,一緒にしたい,一緒にできることを探したいというように変化したとの意見も多く見られた.実技を担当する教員からもやはり怪我に対する戸惑いが語られた.また,障がいのある学生を障がいのない学生が共に実技させたいと思う反面,障がいのない学生の運動量が減ってしまうことに対するジレンマも語られた.これらの心配や不安は,障がいに関する情報や障がい児者と接した(特に体育)経験の少なから生じると考えられる.学生・教員共に障がいのある学生とない学生が共に体育実技を行うことの意義は十分に感じており,幼少期から全児童生徒が共に体育実技を行うことが児童生徒のみならず,教員の授業展開に役立つことが示唆された.
著者
小川 朝生
出版者
独立行政法人国立がん研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

化学療法の発展に伴い長期的な予後が期待できるようになった一方、化学療法後に慢性的に中枢神経系有害事象(認知機能障害)が生じる可能性が指摘されるようになった。この認知機能障害はchemo-brainと総称される。しかし、認知機能障害と化学療法との関連性、その機序に関する検討は未だ途上である。そこでわれわれは、化学療法前後を通して、脳構造画像の変化を非侵襲的に評価する測定系を構築し、抗腫瘍薬と脳機能との関連性、療養生活の質(QOL)との関連の検討を開始した。症例の集積は予定通り進み、追跡調査が終了次第、解析を行う予定である。
著者
森 英樹
出版者
福井県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、意味変化を分析する際に語彙的視点と構文的視点という2つの視点を想定することによって、同一構文の意味変化であっても、視点の違いによって文法化と見なせたり語彙化と見なせたりすることを示した。日本語と英語等の他言語における命令形表現を中心に、共時的・通時的データを収集・分析し、ケーススタディとして国内外での学会発表や論文を通して本分析の妥当性を検証した。本研究の成果は、今後、構文の概念を重視する認知言語学、構文化を扱う最新の意味変化理論といった関連分野における研究として発展させることができる。
著者
有安 真也
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

血中循環癌細胞 (CTC) の回収は癌の超早期診断や癌の個別医療化につながる。しかし、現状では CTC の検出に留まり、無傷での回収は実現されていない。そこで本計画では、癌細胞の大きさを利用したサイズ選択マイクロ流路と光切断反応を利用した光応答性抗体修飾シリコン基板を作製した。本計画で作成した光応答性抗体修飾シリコン基板は、基板上の抗体により、細胞混合液からモデル細胞を選択的に捕捉可能であり、その後、光照射によって、細胞を生きたまま回収できることを明らかとした。
著者
松村 知岳
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

インフレーション仮説を検証する宇宙マイクロ波背景放射の偏光測定では広帯域観測が必須となる。望遠鏡に用いる光学素子は、表面反射を抑えるために反射防止膜を施す必要があるが、従来のコーティングによる極低温で広帯域を実現するのは難しい。本研究ではモスアイ加工を光学素子表面に施すことで広帯域反射防止膜を作成した。光学素子材料としてRexolite、アルミナに対して、ダイシングソーやレーザーを用いた加工にてプロトタイプを作成、またその評価測定システムの構築を行い、プロトタイプ素子の評価を行った。加工方法やレーザーの選定など今後、大型光学素子への広帯域反射防止膜を実現するための基礎検討としての成果を上げた。
著者
鈴木 祐麻
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、大腸菌と大腸菌群を対象汚染物質として選定し、微量の鉄粉およびレモン汁を処理原水に添加することで太陽光殺菌(Solar Disinfection, 通称SODISと呼ばれる)の効果を高めることができることを提案・実証することである。種々のバッチ実験および実証実験の結果、鉄粉、レモン汁、そして太陽光を組み合わせることにより、フェントン反応と類似した反応プロセスがペットボトル内で連続的に進行し、その結果、OHラジカルなどの活性酸素種やフェリルイオンなどの効率的な生成を通してSODIS効果を促進することができた。
著者
玉木 直文
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

歯周病に対して,機械的刺激を重視した術者ブラッシングと細菌の徹底的な除去を目的とした初診時感染源除去法の2種の処置を行い,歯肉縁下歯垢の細菌叢の経時的な変化を,分子遺伝学手法を用いて解析することを目的とした。岡山大学病院・予防歯科に来院した患者のうち,20本以上の歯があり,プロービング・デプスが5mm以上の歯を4本以上有する者12名を対象とした。治療期間は28日で,7日目までは毎日処置を行い,その後は14,21,28日目に治療を行なった。処置内容は,つまようじ法による術者ブラッシングと初診時盛染源除去法とし,対象者をランダムに分けた。細菌叢の分析のための歯垢は,0,7,14,28日目に歯肉縁下から採取した。細菌叢は分子遺伝学的手法(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法,real-timePCR法)を用いて解析した。牽性剤濃度勾配ゲル電気泳動法の結果,両群とも治療寧過とともにP.gingivaJis等の嫌気性菌の検出頻度が減少し,Neisseria等の好気性菌の割倉が増えた。さらに,rea1-time PCR法の結果,全菌数は両群とも7日目以降に初夢時よりも有意に減少していだ(P<0.01,Wilcoxon test)。さらに,P.gingivalisにおいては初診時と比べて術者みぶき群では14日目,28日目に,初診時感染源除去碧では28日目に有意差に減少していた(P<0.05)。A.actinomycetemcomitanceは両群とも有意差は無かった。P.intermediaは,術者みがき群において7日目,14日目において有意に減少していた。T.dentiCOlaとT.forsythiaは,両群とも7日目以降に有意に減少していた。
著者
森山 園子
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

線形計画問題(LP)を解くアプローチの1つに,単体法[Dantzig(1947)]に始まるピボットアルゴリズムがある。多項式時間ピボットアルゴリズムの存在の解明はLPにおける重要な未解決問題である。本研究では,多項式時間達成の可能性があるピボット規則として近年注目を集めている最小訪問規則[Zadeh(1980)]に着目し,以下目標を通じてこの未解決問題の解決に挑んだ。(1) ピボットアルゴリズムの振る舞いを記述するLPグラフの列挙法を構築;(2) 最小訪問規則から着想した履歴依存型ピボット規則の振る舞いをLPグラフ上で解析;(3) ピボット規則の適用回数に関する予想の成立・不成立を検証
著者
竹澤 みどり
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究はインターネット調査を用いて,情報通信技術(ICT)を用いた交際相手への暴力(IPV)の日本における実態および対面でのIPVとの関連を検討することが目的であった。結果,ICTを用いたIPV行為のうち言動監視が最も行われやすいこと,その影響や対処の仕方は人によって大きく異なることが明らかとなった。また,ICTを用いたIPV,対面でのIPVともに被害経験のある人が交際相手との関係においてより被統制感を感じていること,自己愛が関係不安や被害的な思い込みが高まることによってICTを用いたIPV加害行為の一部を高めることが明らかとなった。
著者
山本 寄人
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

腹水細胞中で、腹腔macrophage(pMφ)やnatural killer(NK)細胞は、内膜症細胞処理に重要な細胞と考えられ、その機能解析は子宮内膜症の発症・進展機序の解明に極めて重要である。特にpMφは貪食・抗原提示・cytokine産生といった腹腔内の異物処理に重要な役割を担い、内膜症細胞の処理に深く関わっていると推測される。pMφからT細胞への抗原提示の際には細胞膜の脂質二重層の盛り上がり(lipid raft:ラフト)上にHLA分子とICAM-1、CD40、CD58などの接着因子群(補助シグナル分子)が集積し「免疫シナプス」が形成されることが明らかとなった。ラフト形成により細胞間接着が強固となり、T細胞との間に免疫シナプスが形成され、その中心に位置するHLAの抗原情報が効率よく伝達される。内膜症婦人におけるpMφのICAM-1とHLA-DRの発現低下は免疫シナプス形成の低下を示唆している。今後pMφのラフト形成能を解析することは、内膜症のpMφの機能、特に異物処理に関わる抗原提示能が評価可能となり、その病態解明に重要と考えられる。本研究では、1)flow cytometryで内膜症婦人のpMφ上の抗原提示に関わるHLA分子の発現を非内膜症婦人と比較検討した。2)共焦点レーザー法でpMφの細胞膜上のラフトと、HLA-ABC/DRの局在を検討した。3)ELISA法で、HLA発現を調節しているサイトカインであるIFN-γを測定した。4)摘出標本を免疫染色し内膜症抗原の同定を試みた。その結果は、1)内膜症婦人では HLA-ABC と HLA-DR に有意な発現低下を認めた。2)ラフト形成は、両群間に差を認めなかった。両群とも HLA-ABC は細胞膜に均一に、DR はラフト領域に局在していた。3)腹腔内の IFN-γ濃度は内膜症婦人で有意に低下していた。これは、内膜症婦人では、HLA 発現が低下しており、特にラフト領域に局在する HLA-DR の発現低下は,内膜症pMφの抗原提示能が低下し、HLA 発現低下にIFN-γが関与していると考えられた。4)月経期の正常子宮内膜に HLA-G の発現を認め内膜症抗原の可能性が示唆された。今後は、免疫療法の開発へ展開する予定である。
著者
中嶋 有加里
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成13年度のシミュレータ実験により眼精疲労や車酔いなどシミュレータの影響と推察される問題点が判明し妊婦を対象に実験を行うことができなかった。そこで本年度は「妊婦の自動車運転の安全性に関する研究」の一環として実施した前方視的質問紙調査のデータを統計学的に分析し、自動車運転により切迫早産・早産および臍帯巻絡のリスクが増大することはないとの結論を得た。【研究方法】2001年1〜12月に大阪府泉佐野市T病院で妊婦健診に来院した妊娠28週の初産婦493名に質問紙を配布し、外来・入院カルテ、出産記録から出産情報を照合し、単胎妊婦442名の有効回答を得た。切迫早産・早産の検討では、早産の関連因子(有職者、喫煙者、運動習慣のある者、妊娠中毒症などの合併症)のある者を除いた238名、臍帯巻絡の検討では、巻絡の発生頻度に関連する因子(有職者、運動習慣のある者)のある者を除いた312名を分析対象とした。【結果】(1)運転の有無と切迫早産・早産率および臍帯巻絡率との関連は認められなかった。切迫早産率 早産率 臍帯巻絡率ドライバー 11.7% 3.1% 39.4%ノンドライバー 16.0% 4.0% 35.6%(2)運転・乗車時間の長短を1週間総利用時間のほぼ中央値である60分で分け比較したところ、運転・乗車時間の長短と切迫早産・早産率および臍帯巻絡率との関連は認められなかった。(3)車種と切迫早産・早産率および臍帯巻絡率との関連は認められず、振動による影響は少ないものと推察された。(4)子宮収縮の自覚では、運転中・同乗中の方が歩行時に比べて収縮を自覚する者が有意に少なく、「歩くよりも楽」という妊婦の感想を裏付ける結果となった。また、運転中と同乗中の収縮自覚の比較では有意差が認められなかった。(5)運転の有無と平均臍帯長・過長臍帯率は有意差が認められず、運転が臍帯長に影響を及ぼす可能性は低いと考えられた。
著者
中野 張
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

確率制御問題の数値解法の研究を行い、数学的に厳密に収束が保証され、かつ広範囲の問題に適用でき実装も容易な新しい近似手法の開発に成功した。この手法は計算時間の短縮についてまだ研究の余地があるが、既存手法には欠けていた厳密性・汎用性を兼ね備えている。さらに、より単純で使いやすい近似法の研究を行い、確率制御問題に対応するハミルトン・ヤコビ・ベルマン方程式の2次近似により解を生成する手法の近似誤差を評価した。その結果、問題の目的関数が2次的で、状態のダイナミクスが線形に近い場合は、単純な2次近似法でも精度が高いことが分かった。
著者
渡邉 久美
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

臨床において看護師が家族との関わりで遭遇する困難を軽減し、ケアの質の向上を目的としたため、家族と関わりの深い看護師にグループインタビューを数領域で行い、その領域毎の共通性や専門性について検討した。インタビューデータを逐語録として、修正版グラウンデッドセオリーアプローチ法によりカテゴリーを生成した結果、例として、がん看護領域では、コアカテゴリーとして『死にゆく患者よりの揺れによる壁』があり、これは【家族への役割期待から生じる思い】【専門職としての思い直し】【患者を中心するための家族への寄り添いの限界】【看護師として介入する限界】【見えない本来の家族像】【家族の意向に従うための割り切り】の6カテゴリーで構成され、がん看護領域における家族看護に困難を生じさせる以下のプロセスが明らかになった。看護師は「患者のための家族」との価値観から、家族の態度や意向に反応して生じる感情をもつが、役割意識から、残される家族の立場に立って心情を理解しようと努めていた。しかし、日常的に患者ケアを行う立場にあるため、患者の存在を払拭しきれず、家族に全面的な共感ができないという限界もあり、さらに、看護師の義務と責任の範囲では、家族の意向に従わざるを得ない状況もあった。この状況には、病院で関わる家族の本当の姿はわからないという看護師の弁えも影響しており、看護師の意に反する家族の選択に、やむを得ず合わせていくための認知的対処を行っていた。このような現状の改善には、【患者中心志向による寄り添いの限界】を看護師自身が是として認識し、他者から支持されることで、感情が受け止められ、家族に対する見方を変化することが期待される。「家族像の形成」はどの領域においても共通課題であり、領域によって、家族との会話を苦手とする看護師も存在したため、CAFM/CFIM理論の15分インタビューなどの活用も、今後検討したい。傾向としては、個々の素質よりも組織づくりによって家族に関する情報を共有することで、実際には家族看護が行われ易かったため、家族看護の導入にむけた看護師の意識改革、組織づくりなども課題として残された。
著者
當銘 一文
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では漢方処方等の天然素材について,腫瘍選択的アポトーシス誘導作用を指標としたスクリーニングを行い,それらから腫瘍細胞に選択的なアポトーシスを誘導することのできる低分子化合物の探索を行った.その結果,数種の活性化合物を得ることに成功し,その構造決定を行った.また,一部の化合物については,その作用機序に関する解析を行った.
著者
古家 弘幸
出版者
徳島文理大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

スミスを中心に道徳哲学と経済学について取り上げ、スコットランド啓蒙思想は当時の大学の道徳哲学のカリキュラムに組み込まれていた自然法学の枠組みを基本としつつ、共和主義的な商業批判からも示唆を受けながら、新しい時代の道徳哲学や経済学、さらには歴史学に貢献を果たしたことを明らかにすることができた。またスコットランド啓蒙思想全体に共通する特徴の一つは、人間の持つ自然な社交性についてのストア的分析であった点も、明確にすることができた。
著者
清水 洋平 舟橋 智哉
出版者
大谷大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

従前の科研プロジェクト「タイ国中部地域の王室寺院が所蔵する東南アジア撰述仏教説話写本の研究」を承け、その研究課題の中で作成した同地域の寺院が所蔵する貝葉写本の文献タイトルのみを記した所在目録を改善した。個々の文献の写本資料としての資質が整理され、文献ごとに様々な既出の所在目録との横断的な整理がなされた一次資料の所在目録及びデータベースを構築した。これらを活用し、仏教説話文献をより深く探究する手段として、その鍵となる「アーニサンサ(anisamsa)」と呼ばれる、一群の積徳行に関わる未開拓の釈義文献の文献学的研究をスタートさせることができた。
著者
杉浦 香織
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は日本人英語学習者が効果的に語強勢を習得する有効な方法として, 聴覚性プライミング効果の原理を利用した発音学習(音声刺激語の復唱)が可能かどうか,また,その効果に影響する要因を検討した.その結果, ①復唱が5回以上で効果あり,②刺激語の親密度に関係なく効果あり(BNC頻度上位3000語),③音節への注意は効果的,④刺激語を数回復唱した後の文字情報が効果的,⑤復唱のみでは効果は1週間持続しない,ことがわかった.発音向上(音韻表象の変化)に必要な音韻情報への注意,文字情報を得る時期の重要性,更に学習効果を持続させるため,音韻情報の内在化を促進させる手だての必要性が示唆された.