著者
内田 若希
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

研究1の目的は,中途障害のパラアスリートを対象とし,①自尊感情の多面的階層モデルの検証および②身体的自己知覚とデモグラフィック要因との関連性の検証を行うことであった.この結果,多面的階層モデルは支持されなかったが,スポーツドラマチック体験によって身体的自己知覚が規定されることが明らかになった.研究2では,聴覚障害のアスリートを対象とし,①性および競技レベルによる自尊感情の差異の検証および②自尊感情と年齢,競技年数,およびスポーツドラマチック体験との関連性の検証を目的とした.この結果,スポーツドラマチック体験が有意に自尊感情を規定することが示された.
著者
三橋 晃
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度実験の目的は,試作されたペースト/ペーストタイプ光硬化型グラスアイオノマーセメント(GIC)の有用性を調べるために,接着界面の形態学的観察ならびにCa分布,Fの歯質拡散性を計測するとともに,接着強さの測定を行った.実験材料には,レギュラー(FR-100)とフロー(FF-101)の2種類の光硬化型GIC、コントロールとして,粉/液タイプ光硬化型GICのFuji II LC(GC)と従来型GICのFuji Type II (GC)を用いた.接着界面の観察およびCa, Fの測定のために、各セメントを充填したウシ歯冠象牙質試料を37℃精製水中に1日保管後,アルゴンイオンエッチングを施し,EPMA-8705(Shimadzu)にて,接着界面のCaとFの点面分析を行った.剪断接着試験ではウシ歯冠部象牙質を#600の耐水研磨紙にて研磨し,接着面積をφ4.6mmに規定し,各歯面処理後に37℃精製水中に1日,1週,1ヶ月保管後インストロン型万能試験機にて,C.H.S.1mm/minで,剪断接着強さを算出した.接着界面の観察では,Fuji II LCに約1μm弱の明瞭な樹脂含浸層様構造物が観察されたのに対し,ペースト/ペーストタイプGICでは,明瞭な構造物は観察されないもののそれぞれ良好な接合状態を示した.象牙質へのFの平均拡散距離は,1週水中保管後で接着界面からFR-100で8.98μm, FF-101で8.53μmと,Fuji II LCの5.09μmを超える値が示された.ペースト/ペーストタイプGICの剪断接着強さは,粉/液タイプGICに比較し有意に高い値が示され,本材料の操作性及びぬれの良さによる優れた窩壁密着性が接着強さを上昇させる要因になっていることが考えられた.以上の結果から,新規2種ペースト/ペーメトタイプ光硬化型GICは,優れた歯質接着性,フッ化物(F)徐放性,操作性を有する修復材料であることが示された.
著者
梶川 祥世
出版者
玉川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、乳幼児期の言語知覚認知が音声が主の処理から意味を伴う処理へと発達的に変化するなかで、周囲からの情報が言語獲得を促進するしくみについて、音声と意味をつなぐ学習方略という観点から検討することであった。特に音声獲得と意味学習の関係について、言語音声認知における助詞および擬音語の特性を明らかにし、言語以外の音声の影響も示した。また、子の発達に応じた母親の発話の変化と子の意味推測を促す効果を明らかにした。
著者
鳥山 祐介
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

18-19世紀初頭のロシア文学に現れた風景表象を、同時代の社会的文脈との関連の中で検討することで、風景表象とロシアのナショナル・アイデンティティとの関連など、新たな視点を近代ロシア文化研究に提供した。現時点で4本の論稿が発表された。学会、シンポジウム、研究会等における発表、海外の研究者や歴史学など他分野の研究者との交流などを通じて、狭い意味での専門分野にとらわれない研究の遂行と研究成果の積極的な公開に努めた。
著者
脇 隼人
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

悪条件な半正定値計画問題に対して高精度な解を求めるために, 悪条件性を取り除く前処理アルゴリズムの提案・開発を行った. 悪条件な半正定値計画問題とは, その問題とその双対問題が実行可能内点解を持たない半正定値計画問題である. 具体的な成果は, (1) 悪条件な半正定値計画問題に対して良条件な半正定値計画問題, つまり, 実行可能内点解を持つ等価な半正定値計画問題を半正定値計画問題を生成する前処理の提案, (2) いくつかの応用問題から派生する半正定値計画問題に対して, 悪条件になる原因の追及, (3) 特に多項式最適化問題に対して, 良条件な半正定値計画問題を生成する手法の提案をした.
著者
宮崎 修一
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

安定マッチング問題とは、各男性が女性を、同様に各女性が男性を順序付けした希望リストを提出し、それに基づき「安定性」と呼ばれる性質を持つマッチングを求める問題である。本問題は、研修医の病院配属をはじめ、様々な配属問題に利用されている。本研究では、応用を視野に入れた本問題の様々なバリエーションを提案し、それらに対するアルゴリズムの開発や計算困難性・近似困難性の証明を行なった。
著者
浦川 豪
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

平成16年6月14日に"武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律"(以下、国民保護法)が国会で可決され、地方公共団体は、国民保護計画を作成することが義務付けられた。本計画で想定されている危機事態は、「武力攻撃事態」と「緊急対処事態」であり、地方自治体の実務者にとっては未経験の事態想定となっている。本研究では、地方公共団体の実務者が、テロリズム攻撃等の有事の際に効果的な危機対応を実行するために情報システム構築を目指すものである。
著者
五十君 麻里子
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は、ローマ法における合意についての研究を行うため、とりわけ諾成契約と問答契約の関係に着目した。合意のみによって効力を発生する諾成契約はローマで「発明」されたと言われるが、この諾成契約に伴いあわせて問答契約も締結されるケースがまれではなかった。このことは、売主の担保責任が売買契約訴権で追求できるようになったのちにも、担保責任を問答契約で設定していると思われる事例が扱われていることからもわかる。またウァッローの『農書』にも家畜売買のマニュアルとして、重畳的に問答契約を締結することが勧められる。このような事例から、必ずしも合意の法的効力が当然と認識されていたのではないのではないか、との仮説に達し、2005年10月に熊本大学において開催された日本法制史学会研究大会にて「合意の法的効力-諾成契約債務と問答契約債務の関係をてがかりとして」と題し、報告を行った、さらにこの研究成果については、本経費から一部支出して招聘したエラスムス・ロッテルダム大学、タモ・ワリンガ博士とフローニンゲン大学、ヨハネス・ロキン教授をアドヴァイザーとして迎え、貴重なご意見をうかがった(両先生はこれ以外にも本務校にてそれぞれ2度の講演をおこなっていただいた)。この研究に際しては法学関係文献のみならず、ひろくローマ史文献の渉猟が必要であったため、これにつとめた。
著者
齋木 悠
出版者
名古屋工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

オンサイト発電用マイクロガスタービンで使用される小型燃焼器では,低レイノルズ数と高い出力変動に伴い,良好な燃焼特性の維持が極めて難しい.そこで本研究では,ガスタービン燃焼の典型的な熱流動であるメタン・空気同軸噴流火炎を対象として,同軸ノズル内壁に配備した微小噴流アクチュエータ群を用いた新たなアクティブ燃焼制御手法を構築した.火炎上流における渦運動およびメタン・空気の混合過程をアクチュエータにより柔軟に制御した結果,異なる出力条件において,保炎特性および燃焼排出ガス特性を著しく改善できることを明らかにした.
著者
加藤 絵理子
出版者
神奈川県立保健福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

神奈川県の地域包括支援センターにおいて、 一般高齢者が対象の介護予防教室を開催し、講義を行った後に参加者と講師が一緒に給食を食べてから解散する共食実施コースと、講義を行った後すぐに解散する共食未実施コースを設定し、参加者の健康意識の違いを評価した。実施コースは、未実施コースよりも「食事内容を見直すことができた」「体調を見直すことができた」「教室参加者同士の交流ができた」と回答した者の割合が多かった。
著者
植村 直子
出版者
滋賀医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

在日ブラジル人女性を対象に、継続的に妊産婦交流会を実施し、参加者同士の交流を促し、その有効性を分析した結果、参加前は、【夫・子どもと一緒に健診・交流会に来る】【交流会のイメージがなく気が進まない】【なんとかなるさと思っている】、参加時は【子どもが生まれる前に勉強するのは良いと思う】【妊娠中のことや、赤ちゃんの世話、制度について知りたい】、参加後は、【妊婦健診後は家族で出かけるので早く帰りたい】【産後困った時に相談したいと思う】とカテゴリー化された。
著者
荊 雷
出版者
会津大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、無拘束常時手指装着型装置の応用展開において、資源制約のある状況に適用可能な充電方式と即時認識手法の基礎研究を行った。充電方法について、太陽光、体温、運動や無線電波などを含め、複数の環境発電手法を指輪サイズ、極端に小型な装置に評価実験を行いた。ジェスチャー認識手法について、連続ジェスチャー入力手法と即時認識手法を研究提案した。本研究が、極端に資源制約された装着型装置に、共通した充電と認識などの課題を解決することにより、ウェアラブルコンピューティングを基礎研究から応用研究へ進むことを促進する。
著者
岡松 暁子
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

北極海における船舶起因の海洋汚染問題については、沿岸国のうちカナダが、1970年に「北極海汚染防止法」を制定し、その適用範囲を200海里にまで拡大、通航の際の事前通告をvoluntaryからobligatoryに変更する等、自国法による規制強化を図る実行を重ねている。これに対して、アメリカは、当該水域を「国際海峡」であると主張し、国際海峡制度に関する規定を援用しながらカナダの一方的行為に抗議している。しかし、排他的経済水域内のうち他国により国際海峡との主張が行われていない水域においては、カナダ法は対抗力を獲得する状況に至っていると考えられる。
著者
岩本 宏之
出版者
成蹊大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,多重壁構造にモードの局在化現象を積極的に惹起させることによって,壁を透過しやすい低周波音を指定された中間層に局在化させ,結果として放射音を抑制する手法の提案を目的とする.まず,モーダルカップリングによるモデリングを基調として,多重壁構造の状態マトリクス方程式を導出する.次に,平板間のエネルギ伝達を担う連成項の存在を明らかにし,これを最小化することで局在化制御か可能となることを明らかにする.また,多重壁構造の精緻なモデリングについて,伝達マトリクス法を用いることで,平板の振動速度入力を陽に記述し,かつ,連成面の粒子速度がゼロにならない手法の提案も行う.
著者
杉崎 貴英
出版者
帝塚山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、奈良の地において古代に成立した宗教彫像が、その後、中世を通じて改めてどのように受容され、新たな意味づけを付与されたのかを探ることを目的とした。新薬師寺本尊薬師如来像、長谷寺本尊十一面観音像、興福寺南円堂本尊不空羂索観音像などを対象として調査研究をおこない、制作以後の履歴、信仰の様相、神仏習合との関係、言説の形成やその絵画化、模像の制作などについて、具体相の把握を進めた。
著者
鳥海 基樹
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は既に2002-2004年度の交付を受けた科研費研究の延長線上にあるが,我国で2004年6月に景観法が制定されたこと,また2005年度にいわゆる「まちづくり2法」の成立を見たことから,フランスに於ける景観街づくりと中心市街地(再)活性化の連関を,主に制度面から明らかに,それを如何にして我国の都市問題に応用してゆくかを考察した。成果として,フランスの学会で2度の発表できたことは,本研究が国内のみならず海外でも関心を引き通用するものであることを証明する。また,政策形成支援として国土交通省都市、地域整備局主催の景観評価委員会(委員長:浅見泰司東大教授)に於いて景観の費用便益分析に取り組んだ成果が報告書として刊行されただけではなく,新聞にもそのエッセンスを寄稿できた。これらの成果は,ふたつの発展を見せている。一方は,これまで保全に力点を置いてきた研究に再開発の景観街づくりを視点を導入しつつある点であり,他方は,屋外広告パネルを財源としたレンタサイクルの研究に拡がりを持たせている点である。
著者
巣山 貴仁
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

腎細胞癌における癌精巣抗原の一つであると考えられるCXCR3およびそのリガンドについて検討を行った。CXCR3およびそのリガンドが癌細胞で強く発現していることを示した。CXCR3/リガンドaxisが腎癌の転移に関し重要な役割の一つを果たしていることを、臨床検体を用いた検討、ならびに腎がん細胞株を用いた検討で示した。同時にCXCR3の発現が低酸素状態によって誘導されている可能性を示し、以上の内容を学術論文で発表した。さらには腎癌患者血清中でCXCR3のリガンドの測定が可能であり、現時点では有用な腫瘍マーカーがない腎癌において、腫瘍の状況や腫瘍の存在を示す有用なマーカーになる可能性も示された。
著者
齊木 功
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

鋼トラス橋の冗長性を確保することを目的として,対象橋梁の健全時と部材破断時を想定し,格点部に要求される性能について考察した.その結果,健全時の冗長性の向上のためには,斜材の軸力だけでなく,横桁がガセットプレートへ及ぼす面外方向への影響にも考慮する必要があることがわかった.また,斜材破断時の冗長性の向上にはガセットプレートの面内曲げ耐力の向上が有効であることがわかった.これらの検討に用いられる非線形有限要素解析の計算負荷軽減のために,格点部を詳細にモデル化した全体構造モデルの解析結果を用いたズーミング解析を提案し,その有効性を確認した.
著者
山本 芳久
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

現代の世界情勢において、キリスト教世界とイスラーム世界との文明間対話が焦眉の課題となっている。こうした課題に本格的に取り組むためには、政治や経済の動向の分析のみではなく、両文明の世界観の基礎を為している哲学・神学の次元での比較思想的考察が不可欠である。本研究においては、西洋中世とイスラーム世界の法概念を比較哲学的・比較宗教学的に分析することによって、両文明の知的営みの連続性と非連続性の双方を明らかにした。
著者
渡辺 明日香
出版者
共立女子短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

ストリートファッションの調査・分析を基軸とし、日本のファッションの特異性と海外発信性について検証を行った。定点観測の写真資料の集積、写真の整理およびデジタルデータ化、日本の第二次大戦後から現在に至るストリートファッションの史的研究を遂行することで、ファッションの概念変化とメカニズムの変容を究明した。これらの結果、ストリートファッションがクールジャパンの対象となった理由は、従来のファッション変容に関わる文脈やファッション・システムとの無関連性にあることが明らかとなった。