- 著者
-
松島 格也
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2004
本研究では,自己の行動をあらかじめ自己規制すること(コミットメント)を表明し,その表明に束縛されることを明確にすることにより,他人が効用を獲得できる場合のコミットメントの経済価値に関する理論的な分析枠組みを開発するとともに,CMV調査による支払い意思額の計測における便益の2重計算(過小計算)の問題を回避iしうる支払い意思額の計測方法を提案した.まず,森林コモンズの考え方の整理及び便益計測のためのCVM調査の調査票設計を行った.過疎地域研究会の参加メンバーから専門的知識の提供を受けながらコモンズとしての中山間地域における森林の役割をとりまとめ,また国内外における人文地理学や林業経済学の分野で行われている森林のとらえ方を探るため資料収集を行った.日野川源流を守る会を結成して先進的な取り組みを行っている鳥取県日野郡日南町の町有林を対象とし,それに対する都市住民としては鳥取県米子市民を取り上げてその意識を探った.その後,CVM調査を実施して森林の便益を計測すると共に当該地域における水源税の導入可能性を探った.設計した調査票を用いて鳥取県米子市に住む住民を対象としたCVM調査を郵送により行い,日野川上流の日南町町有林に対する支払意思額の計測方法について検討した.このCVM調査の結果は森林の資産価値評価の算出根拠となるものである.さらに調査結果に基づいた森林の資産価値を用いて水源税の導入可能性について検討を行った.水源税の理論的根拠として上流域の住民が森林開発を放棄する(森林を保全する)ことを宣言し,下流域の住民がそのコミットメントに対して支払い意思額を有するというコミットメント価値が取り上げた.このような水源税を通じた上下流の住民間の所得移転を分析するために,1)住民間の戦略的な意見の表明行動,2)個人間の効用の相互作用による便益の2重計算,過小計算の問題を克服しうる支払い意思額の計測方法を開発した.