著者
菅 聡子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、明治二十年代の女性作家の文章表現の分析・考察ならびに、女性作家の<国民化>の様相を、主に表現構造の中に探り、従来考察対象とされることの少なかった当該年代の女性作家における<国民化>の問題を前景化することをめざしたものである。その前提として、国民国家の根幹が形成された明治二十年代前後における女性の表象を分析した。具体的対象としては岸田俊子(中島湘烟)をとりあげ、<女丈夫>として表象された彼女が、どのような文脈によって制度の言説へと回収されるのか、それを彼女をとりまく言説の分析によって明らかにした。加えて、女性の政治からの排除の問題についても、明治23年の集会及政社法を一つの軸とできることを、湘烟の事例から具体的に検証した。次に、明治期の女性表現をめぐるジェンダー機制について、女子用文(女性用手紙の文例集)に見られる文章論を調査・分析した。また個別対象として、女性作家樋口一葉の日記の文章をとりあげ、一人の女性において、<国民>としての教化と表現の交錯が、<和歌>において見られることを前景化し、<和歌>の持つ共同の機制を指摘し得た。さらに女性にとってふさわしい文章が「和文」とされることの意味を考察し、女性性と<国家>がどのように関与するのか、その一端を明らかにし得た。
著者
久保田 紀久 小林 彰夫
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

甲殻類の代表としてエビ類を選び、試料として南極産及び太平洋産オキアミ、小エビ類を用いて煮熟および焙焼法により生成される香気特性を比較検討し、さらに加熱香気形成に影響を及ぼす生体成分として遊離アミノ酸組成について分析した。焙焼処理は煮熟と異なり加熱処理法により風味の異なるものが出来るためまず条件の検討を行った。エビ類は一般に漁獲後凍結保存してあるため焙焼に際し(1)凍結乾燥(2)解凍の前処理を行ったのち、適当な温度と時間を施し、各々において最も風味のよい焙焼物を得、官能評価を行った。その結果、凍結乾燥したものは多孔質となり砕けやすく解凍後焙焼した方が歯ざわり、風味ともよいことが判った。呈味性に関与する遊離アミノ酸組成についてHPLCで分析した結果、エビの甘味に関与するといわれているグリシンに差はなかったが、アミノ酸総量は解凍試料に多く官能評価を支持した。次に加熱香気特性を調べるため煮熟香気はSDE法で、焙焼香気は全ガラス製の特製装置により減圧下、140〜160℃で焙焼後、【cH_2】【cl_2】で浸漬抽出し、減圧炭酸ガス蒸留を行い分離し、GCおよびGC-MSで分析した。その結果、南極産オキアミ、サクラエビ、小エビ類の煮熟香気は、ピラジン類や含硫アミノ酸の分解により生成されることが知られるチアルジンやトリチオラン類、さらに今回あらたに同定された二環性チアルジン類縁物が主で共通していたが太平洋産オキアミは全く異なった香気成分組成を示した。一方焙焼香気ではチアルジン類が認められずピラジン類やピリドン,アミドが多くなることはエビ類に共通しているが、オキアミ類は【(CH-3)-2】SOが多く、小エビ類はイソバレルアミドが多いなど煮熟とは異なったエビの種類による差異を示し、もう少しデータを追加すれば多変量解析によりこれら傾向を数値的に出すことが可能であることが示唆された。生体成分についていくつか検討したが今年度は上記の傾向を示唆するデータは得られなかった。
著者
石口 彰
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究は、視覚系の様々なレベル(初期過程から高次過程まで)における視覚検出課題や視覚識別課題において、最適な決定を下す理想観察者と実際の観察者の知覚能力を比較し、効率という観点から視覚系の決定過程の特性を検討するものである。本研究の成果は次の通りである。(1)ランダムドットステレオグラム(RDS)を用いた、矢状平面に関する対称構造(3次元空間内での観察者中心座標系における対称構造)の検出効率を測定。組み込まれるガウスノイズは、両眼視差に関するノイズである。日本心理学会59会大会(平成7年10月)発表(2)ランダムドットステレオグラム(RDS)を用いた、奥行き方向に重なり合う2枚の平面の識別に関する効率の測定。この結果と、隣り合う2枚の平面の識別実験の結果とを比較した。組み込まれるガウスノイズは、両眼視差に関するノイズである。日本心理学会60回大会(平成8年9月)発表(3)ランダムドットシネマトグラム(RDC)を用いた、運動位相の識別に関する効率の測定。組み込まれるガウスノイズは、運動光点の位相に関するノイズである。日本心理学会60回大会(平成8年9月)(4)RDCを用いた、交差する運動刺激の位相差検出に関する効率の測定。組み込まれるガウスノイズは、運動光点の位相に関するノイズである。日本心理学会61回大会(平成9年9月)発表予定(5)運動光点から剛体構造の復元に関し、2種の剛体、および剛体ト非剛体の識別に関する効率の測定。組み込まれるガウスノイズは、運動光点の位置に関するノイズである。
著者
内嶋 善兵衛 大島 康行 浦部 達夫 吉川 友章 丸山 隆司 清野 豁 OHKITA Takeshi 大北 威
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

人為的な環境変化,とくに温室効果ガスによる気候温暖化と放射能汚染とに焦点をしぼって,気候変化と自然植生・作物生産および原爆・原子炉事故による放射能汚染の広がりを3年間わたって研究した。その結果は次のように要約できる。1.水田水温環境への気候温暖化の影響は顕著で,現在より2〜4℃高まり、安全移植期は2週間早まることが分かった。水温上昇により水面蒸発は気温上昇あたり3〜6%増加し,温暖化気候下(2100年頃)では10%以上蒸発が増大する可能性がある。2.作物収量へのCO_2直接効果と気候温暖化の影響を評価するため,作物モデルと気候シナリオを利用した。イネは現行農法下では減収となるが、早生品種導入を試みると増収が予想され,増収率は北日本で大きくなった。トウモロコシ・コムギは降水変動の影響が大で,灌がいを施すと増収する。3.植生分布へのCO_2気候温暖化のインパクトを評価し,低温地帯の植物種に好適な気候域の急減することが分かった。暖地系植物にとっての好適気候域は4〜6km/年の速度で北上すると予想された。この移動速度は花粉分析からの植物移動速度の5〜10倍で,温暖化による植生分布の混乱が予想される。4.原子爆弾・原子炉事故による放射能汚染域の推定に拡散研究用数値シミュレ-ションモデルを用いた。広島・長崎原爆による汚染評価に,熱対流雲モデルを用いて,1kmメッシュ上での微粒子落下,ショック麈,火災煙からの被曝量を個別に評価した。最大の被曝総量は12時間後に,13R/hrとなった。チェルヴィリ原子炉事故による放射能広域拡散の研究に,広域拡散モデルを用いて,その有効性を確認した。
著者
平岡 公一 山井 理恵 斉藤 弥生 大坂 純 志水 田鶴子 菊池 いづみ 秋元 美世 新保 幸男 岡部 耕典
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、日本における多元的福祉ガバナンスのもとでの福祉サービスの質の確保策の現状と課題、および将来展望について、国際比較的な視点をふまえ総合的に検討した。地方自治体における実施状況、あるいは民間組織の先進的な取り組みの事例の分析に基づいて検討した結果、サービス実施アプローチに適合的な適切な質の確保策を選択すること、さまざまな質の確保策の間の機能分担関係を明確化することなどの課題が明らかになった。
著者
井堀 宣子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

テレビゲームに関する研究のメタ分析を2種類実施した.メタ分析は文献のレビューとは異なり,領域すべての研究を量的に統合することが可能な手法である.まず,テレビゲームと認知能力との関係を検討した研究についてのメタ分析についてだが,ここでは,テレビゲームが,空間認知,情報処理能力,創造性,論理性,学校成績,、言語能力などの認知能力にどのような影響をもたらしたかについて検討した研究を収集し,知見を統合することを目的とした.オンラインデータベース「PsycINFO」,「Science Direct」,、「ERIC」等を利用し,テレビゲーム(コンピュータゲームを含む)と認知能力に関するキーワードで文献を検索し,テレビゲームの使用を独立変数とし,認知能力の測定を従属変数とした研究を抽出した.このうち,メタ分析に必要な統計値が報告されていなかったり,理論的にメタ分析に使用できない統計値しか報告されていない研究は除外した.その結果,本研究で対象とした研究は,空間認知に関するものが研究,情報処理能力に関するものが2研究,学校成績に関するものが7研究,言語能力に関するものが4研究,数学的能力に関するものが3研究であった.各研究で報告されていた統計値を,メタ分析で扱う数値に変換し,効果サイズZ_<FISHER>を求めた結果,重み付けを行わなかった場合は,いずれの認知能力の効果サイズも有意ではなかったが,重み付けを行った場合では,空間認知,情報処理能力,言語能力については,正の有意な効果サイズを示し,学校成績,数学的能力については負の有意な効果サイズを示した.これらの結果から,テレビゲームの使用は空間認知,情報処理能力,言語能力については,それらの能力を向上させるのに役立つ可能性が示され,逆に,学校成績や数学的能力については,それらの能力を低下させてしまう可能性が示された.次に,テレビゲームと攻撃性との関係を検討した研究についてのメタ分析についてだが,ここでは,テレビゲームが攻撃性などにどのような影響をもたらしたか検討した日本における研究のみを収集し,実施している.攻撃性の他に,攻撃行動,向社会的行動,社会不適応,共感性などの変数に関する従属変数を扱った研究についても同時に検討している.こちらのメタ分析については現在も進行中である.
著者
中村 真由美 三輪 哲 三輪 哲 朝岡 誠 麻生 奈央子 田中 規子 松田 松田
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

法曹と医師のワーク・ライフ・バランスとキャリア形成のジェンダー問格差の状況を明らかにするために複数の調査を実施した。法曹に対しては、日本女性法律家協会と日本弁護士連合会からのご協力をいただき、男女法曹を対象とした郵送質問紙調査を実施し(回収率30%、回収数1874票)、計量的分析を行った。医師に対しては、複数の大学関係者にご協力をいただき、インタビュー調査(および、パイロット的な位置づけの小規模な質問紙調査)を実施し、質的分析を中心に行った。分析結果は、冊子体の成果報告書(『医療・法曹職女性の研究』)として出版されている。本報告書には、7つの論文が収められているが、そのうち6つの論文で、法曹に対する調査結果の計量的分析を行い、男女法曹のキャリア形成と家庭役割におけるジェンダー間格差について様々な角度から検証した。また、1つの論文では、医師に対するインタビュー調査の結果に某づき、女性医師のキャリア形成と家庭役割の状況について質的分析を行っている。法曹(主に弁護士)に関しては、キャリア移動パターン、入職経路と地位達成、専門分野選択、育児休業やその他支援策と出産経験、辞めたくなった経験と性差別体験、家事時間の規定要因などの多くの側面から、法曹がおかれている状況やジェンダー問格差の現況を明らかにした。法曹(弁護士)のジェンダー間格差については、以下のことが明らかになった。(1) 入職経路と地位達成の関係では、学校関係のネットワークによる入職が男性には有利に働くのに女性には有利に働かないこと、しかし、親や配偶者等の血縁を通じて入職した女性は例外的に有利な状況にあること(2) 専門分野では、女性は個人を対象とした、所得の比較的低い領域(親族問題など)に集まる傾向が、男性は企業を対象とした、所得の比較的高い領域(会社法など)に集まる傾向があるが、渉外や工業所有権という一部の企業関連領域では女性が多いこと、(3) 辞めたくなった経験では、女性弁護士の方が男性弁護士よりはるかに多く、それは業務内容や仕事の配分における性差別が関係していること、(4) 家事・育児については、男性弁護士より、女性弁護士の負担がはるかに大きく、男性弁護士の家事時間は、年齢や収入といった要因の影響をほとんど受けていないのに対し、女性弁護士の場合は、未既婚の別、子供の有無や人数など、ライフスタイルや家庭環境によって、家事時間の割合が変化することなどがわかった。また、事務所に育児支援策があることが、女性弁護士の出産にプラスに働く可能性があることや、女性の法曹三者のキャリア移動パターンは、弁護と検事・判事で大きく異なること等も明らかになった。医師に関しては、女性医師の専門分野や働き方を偏らせるのは、女性医師本人の性役割観による選好や、卜司・患者の偏見からの差別からというよりは、誘因の差異あるいは構造的・制度的要因が幸な原因となっている可能性が高く、適切な制度設計で問題は改善可能であることがわかった。なお、法曹と医師の計量比較分析に関しては、21年度以降に医師についての質問紙調査を実施予定であり、その結果とあわせて、比較計量分析を行っていく予定である。
著者
伊藤 亜矢子 青木 紀久代
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究ではスクールカウンセラーの学校全体への支援を可能にするツールづくりを国際比較によって行うことを目的とした.米国,スコットランド,香港などの研究者・実践者との協議や現地調査,共同研究を行った結果,(1)学級を切り口に学校全体への支援を行うための学級風土質問紙小学校版の公開と,中学校版も含めた自動分析システムの構築,(2)子どもの肯定的資質をアセスメントする質問紙の作成試行,(3)SCと教師の協働を促進する教師向けパンフレット,テキスト作成,(4)支援サイト試行などを行えた(一部継続中).
著者
竹尾 富貴子 渡辺 ヒサ子 笠原 勇二 金子 晃 浅本 紀子 吉田 裕亮
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、これまで研究していた線形作用素の理論が、非線形作用素にどこまで発展させることができるかを検討し、更に非線形特有の理論であるカオス・フラクタルの特徴を、作用素論、確率論、ポテンシャル論、微分方程式論など様々な角度から研究することを目的で始めた。その成果として、作用素論の立場からは、セルオーマトンの極限集合をある種の遷移規則について、定常的になるもの、周期的なもの、カオス的なものなどのクラス分けを行い、さらにセルオートマトンの極限集合の存在について作用素に対する不変集合の立場から研究した。その際、線形作用素の場合の規則的な性質が非線形にどのように保存され、また非線形になるとどのように変わるかを注目して極限集合の存在などの研究をした。また、weighted function space L^P_PやC_<0,P>上の半群作用素は、発展方程式の解と関係あるが、その半群のカオス性などはスペクトルの性質から特徴づけられている。本研究ではadmissible weight functionの性質からsupercyclic,hypercyclic又はchaoticになる必要かつ十分条件を求めた。これにより、解がカオス性を持つ発展方程式の性質も求めることができる。この半群は、線形な半群作用素でも、カオス的な振る舞いをすることが分かり、興味深いものである。さらに、確率論、ポテンシャル論、微分方程式論などの立場から線形性と非線形性に着目しながら、発表論文に示しているように種々の結果がでている。これまで得られた結果を更に発展させて、線形理論をどこまで非線形な場合に拡張して美しい理論が得られるか、また半群理論の力学系からカオス・フラクタルについてどのような結果が得られるか、非線形解析学の立場から更に研究していく予定である。
著者
Morimoto Setsu Ito Atsuko
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
お茶の水女子大學自然科學報告 (ISSN:00298190)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.29-36, 1979-07

The unknown stress in KFeF_3 crystal which was glued to an acrylic plastic plate and cooled below the Neel temperature T_N was calibrated by applying known pressure. The pressure partly cancelled the stress causing the increase of T_N. It was observed that the pressure of 1.7±0.2kbar decreased T_N by 3.7±1.0K. From this result it was estimated that in the stressed crystal, labeled "S-(111)-fixed", previously examined, the stress of about 2.5kbar perpendicular to the glued plane caused the increase of T_N by 5K. Pressure dependences of hyperfine field H_<hf> and e^2qQ/2 at 77K were also obtained.
著者
松崎 毅
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究によって得られた知見は以下の通りである。1.ブロードサイド等の安価な出版物として大衆向けに書かれた歌、俗謡、連祷、哀歌等のジャンルにおいては、隠蔽の意図そのものが希薄であるのに対し、読者層が階級的に限定される牧歌、恋愛詩、瞑想詩、宗教詩等のジャンルについては、偽装および隠蔽的含意の生成の両面において、ジャンルの果たした役割が大きかった。2.恋愛詩、瞑想詩等のジャンルが主に偽装として機能するのに対し、牧歌はジャンル自体のコードを通じてより能動的に意味の生成に関わっていた。また、読者はそのコードについての理解を共有することにより、王党派としての階級的文化的な結束を強めたと考えられる。3.王党派文学の隠蔽性は、実体論的権威を神秘化し、かつその神秘化された知の占有を誇示することにより、内乱による敗北後も王と王政主義者達がその権威を維持し続けるための重要な機能を果たしたと考えられる。4.恋愛詩、瞑想詩、宗教等のジャンルにおける偽装の機能について、いくつかの具体例を明らかにした。特に、いわゆるキャバリエ詩人から宗教詩人へと「転向」したヘンリー・ヴォーンの宗教詩に、ピューリタン批判の極めて辛辣な政治的言説が隠蔽されており、それが「私的な祈り」としての宗教詩が前提とする「語り手=詩人」という解釈の枠組みを逆手に取った極めてジャンル・カンシャスな企てであったことを明らかにした。5.ジャンル理論に関する最新の知見、個々のジャンルの歴史的成り立ちやそこに含まれる従属的な諸コードに関する知見、また同時期の散文ジャンルについての知見を得ることができた。今後は個々のジャンルの問題に加え、理論面での研究をより強化したいと考えている。
著者
小保方 晶子 無藤 隆
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.2, pp.75-84, 2004

中学生2397名を対象に質問紙調査を行い、非行傾向行為の経験がある子どもの特徴について、逸脱した友人の存在があるかどうか分類し、家族関係、友人関係、セルフコントロール、抑うつ傾向について検討を行った。まず、非行傾向行為の経験のある子どもは、セルフコントロールが低く、親子関係が親密でなく、抑うつ傾向が高いことが示された。非行傾向行為について、逸脱した友人の存在の有無によって検討した結果、行動上は同じ非行傾向行為という様相を見せていても、特に友人との関係や友人関係の持ち方や、抑うつ傾向に関して特徴が異なることが示された。親しい友人も自分も非行傾向行為の経験のある子どもの特徴として、親子関係は親密でないが、友人との関係は成立しており、その付き合い方は同調行動が示された。親しい友人に非行傾向行為をしている子どもはいないが単独で非行傾向行為の経験のある子どもの特徴として、特に男子では、親との関係が親密でないだけでなく、友人との関係も親密ではないことが示された。そして、抑うつ傾向が最も高いことが示された。中学生の非行傾向行為に関して、逸脱した友人の存在を考慮して検討することの重要性が示された。
著者
小保方 晶子 無藤 隆
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.3, pp.65-73, 2006

本研究は、中学生2743名に質問紙調査を行い、中学生の非行傾向行為と抑うつとの関連について、ストレッサーとコーピングから検討を行なった。日常生活のストレッサーは、非行と抑うつの両方と関連していたが、非行があり抑うつが高い子どもは、非行があり抑うつが低い子どもより、「先生ストレッサー」「親ストレッサー」が高かった。「学業ストレッサー」は差がみられなかった。コーピングは、「積極的対処」「サポート希求」が低く、「逃避・回避的対処」が高いことが明らかになった。次に、ストレッサーが非行と抑うつの各々に対して、どの程度影響を与えているのか、共分散構造分析を用いて、直接比較を行った。その結果、日常生活のストレッサーは、「非行傾向行為」より「抑うつ」に対しての方が影響力が強いことが明らかになった。また、「ストレッサー」から「抑うつ」に対する影響力は、男子と比較し女子の方が強かった。さらに「ストレッサー」から「非行傾向行為」の影響力は、1年生男子と3年生女子が、他の集団と比較し弱いことが明らかになった。
著者
金 美伶
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.4, pp.95-104, 2007

抑うつは,「心のカゼである」と言われるほど現代人に蔓延している.その身体的症状は,交感神経の緊張状態であるいわゆる「不安」とは異なる.不安と抑うつの差異は,不安の中核症状は,恐怖感,予期懸念,自律症状にあることに対して抑うつの中核は悲しみ,絶望感,喜びや興味の減退にある.抑うつ症状は,一般的に,激しい無価値感,不全感など,低い自己評価を含んだ感情を伴う.不安と抑うつともにネガティブな自己関連情報のアクセシビリティの亢進を示すのに対して,ポジティブな自己関連情報のアクセシビリティの低下は抑うつ者に限られる.本論文では,現代人の抑うつ発生と抑うつの評価に関する諸理論を考察する.抑うつ発生の諸理論を考察することにより抑うつの予防及び,日常生活からくるストレスへの対処に役に立つことを望んでいる.
著者
倉田 芳弥
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
人間文化論叢 (ISSN:13448013)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.277-288, 2005

In this research, it aims to clarify discourse management of contact situations in chat conversations by focusing on Japanese native and non-native speakers' backchannels. It first observes whether Japanese native situation and contact situation differs. And then, compares backchannels used by native and non-native in contact situation. First, backchannels in two situations were analyzed using four viewpoints, 1) frequency, 2) function, 3) appearing position, 4) message composition. As a result, difference was seen. Second, contrast of backchannel usage between native and non-native was examined. Native show discourse management transmitting backchannels and substantial remarks together for a certain turn-taking, avoiding complicated conversation. Meanwhile, non-native use more backchannels than native to distinct speaker and listener clearly. Third, as for the common characteristics of native and non-native backchannel usage, both show participants' consideration and avoid inconsistent message by time lag in the point of turn-taking. Moreover, using many backchannels of "content understanding" and "feeling expression", participants incline to indicate strong understanding and positive reaction. In conclusion, native and non-native in chat conversation present various types of discourse management in contact situations. Both not only show attitude of understanding but also control clear conversation development, handling back channels effectively.
著者
Iwata Giiti
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
お茶の水女子大學自然科學報告 (ISSN:00298190)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.17-28, 1979-07

A simple cubic lattice Green function and its associate functions are grouped into avector. A differential equation for the vector is derived and studied. The same process is repeated on anisotropic lattice Green functions.