著者
三輪 直也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 38 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.379-380, 2014-09-13 (Released:2018-05-16)

本稿では,2次方程式の解と係数の関係の簡潔さに対する美しさや2次方程式の奥深さを感得するたため,創造的な活動に焦点を当てた授業の開発・実践を行い,その授業の効果を示すことを目的としている.その結果,開発した授業が有効であることが,生徒の記述した学習感想から示唆された.
著者
森田 裕介
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.71-72, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
4
被引用文献数
1

本稿では,STEM/STEAM教育のカリキュラムを構築するためのひとつの考え方として,探究活動と創造活動を往還するモデルを踏まえ,持続可能な実践のデザインを検討した.探究活動と創造活動の特性を併せ持つモデルとして,大谷(2021)はLearning by Designを挙げている.適切な「問い」と合わせて,初等教育,中等教育,高等教育へと発展的かつ継続的に,探究活動と創造活動をデザインしたカリキュラムの構築に向けて,議論をする必要があろう.
著者
山本 容子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.17-22, 2016 (Released:2018-04-07)
参考文献数
25

バイオフィリアの概念を導入した環境教育,特に初等教育の展開についての文献調査を行った結果,アメリカでは,小学校の学習環境の設定に,バイオフィリックデザインを取り込み,それを使った体験学習のアプローチが検討,実践されていること,子どものバイオフィリアの育成時期として,幼児教育,初等教育段階が適切であるという議論がなされていること,子どものバイオフィリアを引き出す活動を導入したアプローチにより,認知と言語の発達などの教育実践目標の達成を図るような教育プログラムが行われていることが明らかになった。
著者
村津 啓太
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.93-96, 2018 (Released:2018-04-07)
参考文献数
5

近年の幼児教育では,科学教育の充実が課題として取り上げられている.その基礎的な資料を得るために,本研究では,アメリカの次世代科学スタンダードにおける幼稚園の教育内容を検討した.検討の結果,幼稚園における教育内容は,物理科学における「運動と静止:力と相互作用」と「エネルギー」,生命科学における「粒子から有機体へ:構造とプロセス」,地球・宇宙科学における「地球のシステム」と「地球と人類の活動」であることが分かった.また,それぞれの教育内容は,学習者によるスタンダードの到達を意味する「期待されるパフォーマンス」と,それを構成する 3つの要素,すなわち,(1)学習者が深化・洗練させていくべき最小限のアイデアとしての「領域のコア概念」,(2)科学者が自然界に関わる理論を構築する際に行う実践としての「科学の実践」,(3)科学の領域すべてにおいて適用可能な概念としての「領域横断概念」から構成されていることが明らかになった.
著者
石原 大地
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.203-208, 2021-12-19 (Released:2022-01-20)
参考文献数
15

本稿では,ラカトシュの可謬主義の見地から,数学の発展を弁証法的に解釈することの意義と課題について考察した.また,算数・数学教育において弁証法的発展を志向した授業を構想することが如何なる教育的意義を持ちうるか,前述の議論を踏まえながら検討した.そこでは,今日の算数・数学教育で重視される「数学的な考え方」の一側面や,教育課題についても触れながら,教育的意義として,先行研究で指摘されているものに加えて,⑴ 子どもの統合的な考察を促す,⑵ 教師の数学観の変容の二点を指摘した.また,具体的な学習場面についての検討から,弁証法的発展を志向した授業の構想が可能であることを示した一方で,弁証法的解釈の限界として弁証法的トリアーデでは捉えられない授業の局所的な側面があることについて指摘した.
著者
猿田 祐嗣
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 28 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.537-538, 2004-07-30 (Released:2018-05-16)
参考文献数
3

TIMSSにおける理科の論述課題に対する我が国の中学生の正答率が相対的に低いことを説明する要因について,生徒の科学的論述力と教師の指導法との関連をTIMSSの参加国と比較することで明らかにしようとした。TIMSSの教師質問紙において科学的論述力に関連がある質問項目を分析した結果,我が国の教師の特徴として,「解答のための理由を述べること」を理科の重要な目標ととらえる教師が少ないこと,理科(科学)を実世界の「表現方法」であると認識している教師が少ないことが明らかとなった。
著者
山本 容子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.61-66, 2019-06-22 (Released:2019-06-19)
参考文献数
11

本研究では,中学生のバイオフィリア仮説に対する認識の実態を調査・分析し,その特徴を探った.その結果,調査対象にした中学生の認識の実態の特徴として,以下の3点が明らかになった.(1)生徒間でバイオフィリア仮説に対する賛否の偏りはみられず,生徒各人が賛否の判断を行う際には,他の生物に対する自身と家族との好みの相違・類似点,自身の生き物との関わりの経験を基準としている.(2)賛否の判断基準には,ペット,もしくはペットとして飼われる哺乳類と生徒との関わりが影響している,(3)生徒各人のバイオフィリア仮説に対する賛否に関わらず,ディープ・エコロジー・ワーク「身近な校庭の自然との一体化体験」により生徒のバイオフィリアが活性化される可能性がある.
著者
佐久間 直也 中村 大輝
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 46 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.499-502, 2022 (Released:2023-03-07)
参考文献数
7

地球規模の環境問題はグローバル社会における重要な課題の1つとなっており,問題の解決に向けて国家の枠を超えた連携が求められるようになってきている.しかしながら,環境教育においては環境問題を個人の道徳問題として扱う傾向があり,社会の構造的な問題に目を向けていない.このような状況の改善に向けて欧米では,環境問題を個人の問題としてだけではなく,社会的・政治的問題として扱い,社会に参画して責任ある環境保護行動を行う市民を育成することを目指す環境シティズンシップ教育が普及しつつある.本研究では,環境シティズンシップの考え方に基づき,中学生が環境問題について学習した後で,それらの問題のステークホルダーを特定し,問題の改善に向けた提案・交渉を行う活動を実践した.その結果,一連の学習を通して生徒の環境問題への興味だけでなく,問題の現実的な解決に向けて行動を起こそうとする態度が育成されることが示唆された.
著者
高橋 泰道 藤原 奈月
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.32, no.9, pp.37-42, 2018-06-02 (Released:2018-07-22)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究では,小学校教員が理科の授業で教科書をどのように活用しているのかについて,広島市内の小学校教員に実態調査を行い,その結果をまとめ,小学校理科授業における教科書活用の実態と実践上の課題を明らかにすることを目的とした。調査の結果から,理科の教科書は,教員が「毎回活用している」割合が46.2%で,国語,算数に比べて低いこと,児童の授業中の使用についても「毎回使っている」割合が22.7%で低いことが分かった。その理由として,「理科の教科書には答えが載っているから,児童に読ませたくない」という理由が過半数以上であることが明らかになった。また,小学校の理科教科書は,児童のためでなく,教員自身が授業を展開していくために活用されていることが明らかになった。
著者
足立 将太 御園 真史
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.111-116, 2018 (Released:2018-04-07)
参考文献数
6

本研究は,大学生を対象に数学の調査問題を行い,一週間後に数学の課題において誤概念のリバウンドが起こるかを調査した.少数ではあるが,一週間で 35 名中 2 名が誤概念のリバウンドを起こした.誤概念のリバウンド発生プロセスを調査するために,誤概念のリバウンドを起こした調査協力者にインタビューを行ったところ,誤概念の修正を図っても,誤概念は正しい情報と統合されない場合があり,統合されないと誤概念のリバウンドがおこる可能性があること,及び,誤概念は修正されたのではなく,正しい解法を単に記憶した場合に誤概念のリバウンドが起こる可能性があることの 2 つの可能性が示唆された.
著者
小川 正賢
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.19-27, 1995-03-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
28
被引用文献数
8

Recent progress in philosophy, history, and sociology of science has made us aware that the image of Western Modern Science we have believed so far is far from what it really is. Western Modern Science is now believed to be not the knowledge, but a kind of knowledge. This inevitably leads us science educators to realize that Western Modern Science can be set in a relativistic perspective. Another research trend has been appearing in science education enterprise. That is the trend in which Western Modern Science could be treated as a type of 'Culture' in the science education context. Integrating these trends together, the author aims in this article to propose a new perspective of science education, "Science as the Culture of Scientific Community". Then, the value or worth of learning science is examined from that perspective through the processes of criticizing the classical view of the value or worth of learning science, that is, the practical value, and the literate worth of science. The new contents of science classes are also proposed.
著者
渡辺 信
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 36 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.57-60, 2012-08-27 (Released:2018-05-16)

情報機器の発達は数学を新しく見ることを可能にした.「可視化」の可能性は,抽象化が進んだ数学の美しさを再び知ることを可能にした.数学の美しさを簡素化に見るとともに,規則的な美しさを見ることができる.グラフ電卓によって見えなかった数学,計算不可能な数学から我々は解放されて,広い数学の世界を見ることができる.
著者
石橋 一昴
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.572-575, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
12

本研究は,高等学校数学Aの確率における根元事象についての問題の答えが,学問数学による答えとは異なることから,数学教育の確率単元における根元事象には暗黙的な仮定が存在すると考え,それを明らかにすることを目的とした.また,先行研究の知見から,暗黙的な仮定が存在すればそこから指導上の課題が明らかになるとの示唆を得たことから,確率教育の課題の指摘にも取り組んだ.その結果,確率教育の根元事象は,各根元事象が同様に確からしいことを暗黙的な仮定としていることが明らかになった.次に,事象の確率の定義に「根元事象が全て同様に確からしい」という記述があることと,各根元事象が同様に確からしくない問題が扱われていることを,確率教育における自己矛盾として指摘した.さらに,これらの矛盾から,確率教育における根元事象の意味が一貫していないことを指摘し,それを乗り越えるための対応方策を提案した.
著者
澤内 大樹 坂本 有希 高橋 治 佐藤 真里 八木 一正
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.11-14, 2007 (Released:2018-04-07)
参考文献数
15

近年、温室効果ガス増加による地球温暖化防止のため、カーボンニュートラルの観点からバイオマスを用いたエネルギーが注目されている。また、今年度から前倒し施行された学習指導要領では環境教育の一層の充実とともに学習内容が自分たちの生活と結びつく実感を伴った理解が強調されている。このような背景の下、本研究では岩手県の特産であるリンゴを用いた効率的なエタノール合成および教材への応用を視野に入れた研究を行っている。品種や酵母ごとでの検討の結果、糖度の高いリンゴほどエタノールの生成量が多く、酸度の高いリンゴほどエタノールの生成量が抑制される傾向が見られた。今後はサンフジについて、時間ごとでの生成量の変化や精製条件のさらなる検討を行う予定である。また、12 月上旬に授業実践を行い、生徒たちの環境・エネルギーへの意識の変化を調査する予定である。
著者
中村 大輝 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.539-542, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
7

本研究では,教育分野における授業実践の効果量分布がどのような分布に従うのかを検討した.過去のメタ分析における効果量を対象に,正規分布,指数正規分布,混合正規分布のフィッティングを試みた結果,正規分布の予測力が相対的に低いことが示された.また,指数正規分布によるモデリングを事例的に示した.本研究の結果は,効果量分布に正規分布以外の分布を仮定したモデリングを行うことで,将来の授業実践の効果量分布に関する予測力を高められる可能性を示唆している.
著者
高阪 将人 松原 憲治
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.323-326, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
17

本稿では資質・能力の育成を見据えた教科等横断的な学びとしてのSTEM/STEAM教育について,各教科等の「見方・考え方」に着目し考察した.まず,STEM教育における教科・領域数及び統合の度合いに関するこれまでの研究から,2つ以上の教科・領域を扱うものを教科等横断的な学びと定めるとともに,教科等横断的な学びを連続的に捉えることにした.次に,STEM統合における3つのアプローチ,特に育成される資質・能力,各教科等の「見方・考え方」を働かせる文脈及び対象との対応関係を示した.その後,STEM/STEAM分野における教科等横断的な学びを概括し,資質・能力の育成を重視する教科等横断的な学びとしての位置づけを示した.
著者
野口 大介
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 = apan Society for Science Education Research Report (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.59-64, 2022-06-04

大学における分析化学実験では,配位数6のカルシウムイオンCa2+にエチレンジアミン四酢酸イオン(EDTAアニオン)が六座配位子としてキレートした錯体の化学構造が示されることが多い.しかし,そうした構造であることの根拠となる学術論文は引用されておらず,文献によっては異なる構造が示されている.そこで,本研究ではアルカリ土類金属イオンをキレート配位したEDTA錯体の結晶構造を報告した研究論文を文献調査によって体系化した.その結果,12種類の結晶構造のいずれもが配位数6の中心金属イオンにEDTAアニオンが六座配位子として配位した錯体ではなく,配位数が6より大きいものや,六配位座数未満のEDTAアニオン配位錯体が多いと判明した.また,溶存状態におけるCa-EDTA錯体であっても,必ずしも配位数6のCa2+にEDTAアニオンが六座配位子として配位しているとは限らないことを示す分光学的研究も見受けられた.従って,アルカリ土類金属-EDTAキレートの配位構造として誤解を招きかねない説明をすることは,なるべく避けるべきだろう.
著者
田村 篤史
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.560-563, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
3

Math for Excellenceの教材開発のためには,数学的能力・才能の高い生徒のより多くの抽出,およびその特徴の分析が不可欠である.そのため,(田村,2018)において数学的才能のチェックリスト(質問紙)を開発した.質問紙は,数学オリンピック予選合格者と一般的な高校生のグループから,予選合格者を正判別率93%以上で判別することができるが,マハラノビスの距離による2次の判別分析を用いたため,判別関数が非常に煩雑である(48変数の2次式).任意の集団から予選合格者の予測が容易に行えることが望ましく,本研究では,変数増加法によるロジスティック回帰分析を用いて,任意の集団に適用可能な汎用的でシンプルな回帰式を導出した.