著者
藤原 秀行 飯沼 和樹 坂本 有希
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.57-62, 2012 (Released:2018-04-07)
参考文献数
2

中学 1 年の光の屈折の学習では,屈折が起こるしくみを扱わない。そのため,異なる媒質間の入射角と屈折角の関係を暗記する学習にとどまることが多い。そこで坂本は,屈折現象の理解を深めるために,光の速さが媒質によって異なること,それにより屈折が起こることを授業で扱った。これを受け,科学部員の藤原,飯沼は様々な屈折現象への関心が高まり,光の曲がり方をコントロールできないかと考えた。本研究は,藤原らが,砂糖とアガーという身近な素材を用いて平面レンズを作るという試みである。水と砂糖水を接触させて境界面に濃度勾配を作り,それを利用して光を曲げる。種々の濃度の砂糖水を用いて光の曲がり方,最適な凝固剤を明らかにし,レンズ中で光が曲がる砂糖水-アガーレンズの作成に成功した。
著者
森永 康子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.7-8, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
5

STEM分野における女性研究者や女性学生はなぜ少ないのかについて,ジェンダー・ステレオタイプ(GST)に関する社会心理学的研究を取り上げて,1) GSTが他者評価に影響を与え,女性が低く評価される可能性,2) ST脅威の現象に見られるように,GSTが自己成就予言として働く可能性,3) 潜在的STの影響,4) 表面的にポジティブに聞こえる場合でも,GSTがネガティブな結果をもたらしうること,の4点から説明を試みる.これらの研究をもとに科学教育にどのような示唆ができるかを考えてみたい.
著者
鈴木 誠
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 28 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.79-80, 2004-07-30 (Released:2018-05-16)
参考文献数
1

高等学校までの学びと大学での学びの間には、大きな乖離が存在する。最近、これを克服できない学生が増えてきている。それは、学習内容の縮減や学習指導の質の変容といった問題と合わせて、学生の学力低下や学ぶ意欲の欠如といった現象として現れている。また、それを補完する機能を持っていた日常生活の中での自然体験や社会体験は大きく減少した。この乖離を埋めるには、用意周到な授業デザインが大学初年次に必要となる。
著者
磯﨑 哲夫
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.246-257, 2017 (Released:2017-07-15)
参考文献数
63
被引用文献数
2

The school subject known as ‘chigaku’ (earth science) was established as one of the new scientific subjects in upper secondary schools in 1948. Since then, the numbers of students who took earth science has been lower than the other three scientific subjects, and that has been regarded as a serious issue for its value in science learning at every revision of the course of study. In this research, the author first investigates the arguments on the value of earth science education from the 1950s to the 1960s. Second, referring to the Osborne’s notion of the aims and objectives of science education, the author examines the aims and objectives of earth science education. Finally, the author argues to add ‘the pedagogical argument’ to the four arguments which Osborne proposed: utilitarian, cultural, economic, and democratic. The cultural, democratic, and pedagogical values of learning earth science should be emphasized for rethinking the aims and objective of earth science education.
著者
垣花 京子 渡辺 信 青木 孝子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.55-58, 2020-06-20 (Released:2020-06-17)
参考文献数
4

コロナウイルスの流行が社会変化をもたらしている.この流行によって数学教育にも大きな変化を求めていることと,今後の国民の教養の在り方を暗示したのではないかと考えられる.今まであまり重要視しなかったデータの扱い方について,数学の新しい分野「データの整理」が重要になる情報化社会の数学教育を考える.
著者
柿原 聖治
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 28 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.521-522, 2004-07-30 (Released:2018-05-16)
参考文献数
1

物が水に溶けると,その重さは一部なくなると考える小学生の考え方は,大学生になると修正されるが,体積増加までないと考えている。また,水以外の溶媒を挙げることができない学生が非常に多いので,ヨウ素を有機溶媒に溶かす実験を行わせて,理解を助けた。
著者
吉岡 有文
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.453-454, 2020

<p>科学の学習においては実物や現象にくり返しふれることが必要である。しかし,非常勤講師にはそのような学習環境をデザインすることが困難であることが多い。また,新型コロナウィルスによる活動自粛の影響などにより対面授業自体が困難になることもある。このようなときオンラインの授業やオンラインの画像や動画の活用が必要となる。そこで本研究では,自らの授業「看護物理学」の実践を通して,オンライン動画を利用した科学の授業の妥当性について検討した。また,オンライン動画の選択については,日本の教育映画における「動く掛図論争」を念頭において考察した。その結果,教師の役割は,授業で共に実物や現象を視聴し,それらを授業後にも再度視聴し吟味検討することができる学習環境をデザインすることである。教師は,ドラマ仕立てのオンライン動画ではなく,一つの事物,現象を熟視させるクリップ的なオンライン動画を用意しておく必要があるとした。</p>
著者
武村 政春 山野井 貴浩
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.292-307, 2012-09-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
46

Most high school and university students are interested in fictitious organisms that have featured in novels, movies, on television, and other media. In several countries, teaching trials using various fictitious organisms have been introduced in biology educational courses. For example, self-study of fictitious organisms during undergraduate courses, and an "origami bird" teaching material for evolution education have been reported up to date. "Caminalcules", fictitious organisms for teaching taxonomy and evolution, and BioLogica^<TM> simulation software for learning genetics have also been thought to be effective educational materials. After discussing the effects of these trials using fictitious organisms for Japanese biology education, we assess the potential of trials using fictitious organisms for future Japanese biology education.
著者
山本 雄大
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.57-60, 2020

<p>「NUMBERS3」というくじは一般の宝くじとは違い当せん確率は一定なのに対して当せん口数が違うことから,人によって選ぶ数字に偏りがあり,数字に対する投票数の分布が一様でないことが予想される。また,一回の抽せんに対して,約500,000の投票が行われているため,当せん金額に数十万の投票が含まれており,それを数千回集めた当せん金額はビッグデータだと考えてよい。つまり,「NUMBERS3」は,「当せん金額が高くなるようにするにはどんな番号を選べば良いか」という課題から、ビッグデータを扱い、当せん番号を推測するという統計的に問題解決ができる教材だと考えた。本稿では,生徒がビッグデータを扱うことに教材として扱うための大きな課題があったため,生徒がICTを用いて、自由な発想で検証することで今回の課題を解決できるようなツールを同時並行で開発した。その上で3000回の当せん金額を分析した結果、誕生日に関わるような番号を除くなど,高い当せん金額を得られる当せん番号の傾向を多面的に分析することができた。</p>
著者
木幡 大河 佐藤 真里 菅原 布美 佐々木 聡也 八木 一正 菊池 新司
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.61-62, 2010 (Released:2018-04-07)
参考文献数
1
被引用文献数
1

本研究では、独自の粉塵爆発装置を作成して、生徒が視覚的に捉えやすい「粉塵爆発」の教室規模での教材化を試みる。粉塵爆発が起こりやすい条件を研究するとともに日常で爆発が起こり得る可能性も示し、生徒の防災の意識を高めることも目指したい。
著者
湯澤 敦子 日野 圭子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.19-24, 2018 (Released:2018-04-07)
参考文献数
8

本研究の目的は,児童の加法・減法の方略の実態を捉え,そこにはたらきかけることを通して,児童の方略の進展を促す指導,特に教具を用いた学習活動,を提案することである。児童の実態に応じた指導についての情報を得るために,高学年になっても素朴な方略を用いている児童に対し対象児の実態を把握し,それに応じた教具の活用の工夫をした個別指導を試みた。その結果,教具の特徴を生かした使用の場面を考え,具体的な操作活動を行うことで,既知の理解として身についている内容と不十分な理解の内容とがつながることがわかった。
著者
齊藤 有里加 下田 彰子 梶並 純一郎 小川 義和
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.493-496, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
3

理系学芸員課程の授業教材として,モバイル端末アプリケーションiNaturalistを使った体験を実施した.演習は国立科学博物館付属自然教育園で行われ,動植物の管理,保存,活用についてレクチャーと,植生管理のための生物モニタリングの試みとしてiNaturalistのシステムを紹介し,「バイオブリッツ」を体験し,ディスカッションとアンケートを行った.本発表では,大学生がiNaturalistを操作し,博物館資料として野外生物情報を習得し,公開するまでの過程を紹介し,野外博物館の資料特性理解の効果について考察する。
著者
日高 俊一郎
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.73-78, 2005-11-26 (Released:2017-11-17)
参考文献数
12

質問紙調査を行った結果, 虫嫌いの子どもの親は虫嫌いである割合が高く, 虫好きの子どもの親は虫好きである割合が高いことがわかった。また, 虫好きと虫嫌いでイメージする虫の種類に違いがあることがわかった。さらに, 男女を問わず, 小さい時は虫が好きであり, ある年齢を境に虫嫌いになる傾向があり, その年齢が男女で異なることがわかった。この結果をもとに, 虫嫌いになる過程を仮説として設定することができた。
著者
水島 未記 堀 繁久
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 40 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.31-34, 2016 (Released:2018-08-16)
参考文献数
4

筆者らは、2015 年春にオープンした北海道博物館の総合展示のうち、北海道の生態系および生物多様性を扱ったテーマである「生き物たちの北海道」を担当した。そこでは、元々博物館に興味関心がある層に対してより深い学習効果をもたらすだけでなく、博物館好き層ではない層、興味レベルが高くない層も含めた「その他大勢」にリーチするための展示手法および表現手段について模索した。本研究では、企画意図を紹介するとともに、そのアプローチおよび考案した具体的な展示手法等について報告する。
著者
北澤 武 望月 俊男
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.117-134, 2014 (Released:2014-09-11)
参考文献数
26
被引用文献数
1

New teachers who are shocked by real-world classroom situations—such as rules of the local school, human relationships in a shielded environment, and the reality of teaching children—tend to leave the workforce within a few years, and it has become necessary to educate student teachers in the universities with a focus on adaptive professional socialization of teachers (Zeichner & Gore, 1990) to overcome this problem. We have provided a SNS (Social Networking Service) where pre-service teachers can have a dialogue based on their report of experiences during their practice teaching. However, in order to promote the professional socialization of teachers, we designed a new SNS where experienced teachers can participate in a lesson. We then compared by year the effects of studying the changed lesson. We revised the design of the pre-teaching from the year 2010, and altered the lesson design of the pre-teaching for the year 2012, so that an experienced teacher can join face-to-face lessons and a university teacher and an experienced teacher waited to submit their comments to SNS until almost all students had submitted. As we aimed to increase submission of diaries and comments about professional socialization, we changed the classroom design in the year 2013, introducing storytelling about the image of their practice teaching, and the way of intervention in SNS by an experienced teacher. The results show an increase of diaries and comments which were submitted to SNS about “social behavior as professionals,” “commitment towards work,” “value and standpoint as teachers,” “expectation and actuality of schools” and “efficacy”.
著者
遠西 昭寿 加藤 圭司
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.7-10, 1992-07-18 (Released:2017-11-17)

本報告は、近年理科教育等の分野で注目されている構成主義理論について、特に子ども達の興味・関心に関わる側面に対して、具体的な実態調査の結果をもとに、その理論の適応範囲を模索しようとするものである。本報告では、特にウィットロックの生成的学習モデル^<1)>における動機づけの理論との整合性を中心に検討したが、小学校6年はこの理論によく適合するが、3・4年では理論への適合というよりも、即物的に興味を示すことがわかった。このような結果は、構成主義で説明されるような認知的行動の発達によって解釈することの困難さを示している。
著者
小林 俊行 森口 洋佑
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.30, no.9, pp.5-8, 2015 (Released:2018-04-07)
参考文献数
5

大学生の物理分野における素朴概念の実態を解き明かすために,各種調査問題が作られ,その実態が報告されてきた。今回は,長洲・武田らが用いた小・中学校で学習する力の概念に関する調査問題を利用して,中学・高校の理科の教師を目指す大学生 1 年生と 3 年生の認知状況を調査,分析するとともに,当時の中学生の認知状況と比較してみた。その結果,調査内容のほとんどで大学生となっても素朴概念が修正されずにいることがわかった。
著者
岡本 紗知
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.67-72, 2016 (Released:2018-04-07)
参考文献数
11

科学リテラシーの向上には、『科学の本質:Nature of Science(NOS)』を適切に理解する必要がある。本研究は、国内の大学生が NOS をどの程度適切に理解しているかを把握するために実施した。具体的には、入学直後の国立大学 1 年生、理系・文系の各 2 学部に所属する学生を対象にアンケート調査を実施し、NOS(6 テーマ)の理解度を調べた。さらに、学生の所属学部や高校で学んだ理科科目の違いが NOS 理解に影響を与えるかどうかを調べた。その結果、理系と文系の学生間で、NOS の平均的な理解度に有意差は見られないことがわかった。一方、NOS 各テーマに注目した場合、学部や選択理科科目により、理解度の異なる NOS テーマがあることが明らかとなった。特に、科学に対する社会的および文化的影響や、科学研究における想像力・創造力の役割では、学部間で有意差が見られた。また高校で「化学・物理」を選択した場合、「地学」を選択した場合と比べて、科学の暫定的性質をより正しく理解する傾向があることも明らかとなった。本研究から、理科科目の総学習時間ではなく、選択した科目が、NOS の理解に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
山田 貴之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.361-372, 2017 (Released:2017-10-18)
参考文献数
23
被引用文献数
1

The purpose of this research is to clarify a causal model of factors constituting students’ proactive learning in science classes in lower secondary schools as well as to gain hints about the establishment of a new method for establishing proactive learning among them. A questionnaire survey comprising 65 items was administered to 503 lower secondary school students (165 first-year students, 160 second-year students, and 178 third-year students) in a public lower secondary school in Gifu Prefecture. Seven factors were extracted from the analysis: logical thinking necessary for problem solving, interactive learning for the refinement of thinking, relationships and classification of learning contents, summary of learning contents, recording and organizing learning contents, motivated research activities, and proactive learning attitude. A path diagram was then constructed on these seven variables, and a path analysis was conducted. As a result, it was shown that in lower secondary science classes, students’ acquisition of proper learning strategies contributes to stimulate their motivated research activities and proactive learning attitude as well as to improve logical thinking and interactive learning.