著者
清水 優菜
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.298-307, 2021 (Released:2021-10-05)
参考文献数
42

The purpose of the present study was to examine the effects of environmental and affective factors on mathematical literacy by analyzing the PISA 2012 Japanese dataset. The data were analyzed by multilevel structural equation modeling at both school and student levels. It was found that: (a) At both levels, student-teacher relations were positively related to mathematical literacy, mediated by affective factors; (b) mathematical teacher support was positively related to mathematical literacy, mediated by self-efficacy only at the student level; (c) self-concept was positively related to mathematical literacy, mediated by self-efficacy and math anxiety only at the student level; (d) math anxiety was shown to have a negative effect on mathematical literacy at the student level; (e) self-efficacy was shown to have a large positive effect on mathematical literacy at both levels. These results suggest that improving student-teacher relations indirectly promotes better mathematical literacy via self-efficacy.
著者
山本 容子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.527-530, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
9

アメリカの初等・中等教育段階の科学教育と関連づけた環境教育におけるネイチャージャーナリングの活用の特徴として,以下の点が挙げられる.1点目は,学校内における花壇,菜園の設置等,ネイチャージャーナリングのための環境整備である.2点目は,定期的で継続的なネイチャージャーナリングの時間の確保である.3点目は自然観察記録のみならず,人間と自然との関わりについての議論で考えたことなども含めた多様な記録である.これらの特徴は,日本の理科教育における自然観察活動や記録方法とも共通点が多いが,日本でもアメリカの実践のように,理科を主とした,人間と自然との関わりに関する全ての学習活動における描画や記述を,個人の冊子に継続的に記録することで,より一層,自然体験活動への意欲が高まり,子供たちが自分と自然との関わりについて考える機会が増える可能性がある.
著者
亀山 晃和 原田 勇希 草場 実
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.69-80, 2022 (Released:2022-04-08)
参考文献数
38

The purpose of this study is to examine whether the effects of psychological safety for observation and experimental groups on critical discussion are moderated by self-efficacy and interest value. The results of the analysis suggest that psychological safety had a positive effect on critical discussion in high self-efficacy students. There was also a positive effect of psychological safety on critical discussion in the low interest value students. These findings suggest that students with high self-efficacy and psychological safety are fully capable of engaging in critical discussions. On the other hand, students who are low in either self-efficacy or psychological safety may not be able to engage in sufficient critical discussion. In addition, students with low interest value may be able to engage in critical discussions with a higher level of psychological safety.
著者
仙波 愛 小川 正賢
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.69-80, 2001-06-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
25
被引用文献数
2

The exhibitions of the Exploratorium, founded in 1969 by the physicist Frank Oppenheimer, are believed to be one of the origins of "hands-on exhibitions" in science museums. The mission statement of the Exploratorium, "the museum of science, art and human perception" indicates clearly that their goal is not to exhibit what science really is. The purpose of this research is to examine the relationship between Oppenheimer's thought development and the crystallization of his idea of a new type of museum, Exploratorium, through deciphering various kinds of documents on his life and thought. The findings are as follows : (1) his insistence on art and sensibility comes from the fact that his mother was a professional painter, his family loved arts, and he was strongly committed to music, (2) his view of science was formed through the experience of "playing with haywire things" and the influence of his brother in childhood, his experience as a physicist, the commitment of ESS and PSSC, and teaching experience in high schools and university, (3) his view of a museum was formed through the experiences of ESS and PSSC activities, and development of his "Library of Experiments" at Colorado University.
著者
漆畑 文哉
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.29, no.9, pp.1-6, 2014 (Released:2018-04-07)
参考文献数
5

本研究は,小学校第4学年の小単元「物の温まり方」において,学習指導要領および教科書の変遷を分析することで科学的概念の指導における課題を明らかにすることを目的とする.分析の結果,平成元年改訂学習指導要領において『熱』の概念が削除され,目標が「温まり方」という温度の変化そのものを学習することへ変化したことにより,教科書に掲載された教材や図・テキストも影響を受けていることが示唆された.指導上の課題を解決するためには,『熱』の概念を導入し,物質の構造や熱の伝わりやすさの違いと関連づける必要がある.さらに,これらを関連づけて学習者が考察し表現するための支援を検討する必要がある.
著者
中山 雅茂
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.17-20, 2017

<p>先に開発した「月の満ち欠け再現ボックス」は,ライトの光によって照らされた発泡球が,新月,三日月,上弦の月,満月,下弦の月に関して,明瞭にその形を確認することができている.しかし,太陽と月の位置関係を連続的に変化させ場合,ライトの光によって照らされた部分が不明瞭になる部分があった.その原因であるプラスチックコップの切断面の存在をなくすための改良を行った.その結果,太陽と月の位置関係を連続的に変化させながら確認することが可能になった.</p>
著者
渡邉 重義
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.117-122, 2012 (Released:2018-04-07)
参考文献数
6

アメリカのミドルスクールで用いられている理科教科書の生物領域の内容を分析して,科学的な方法の取り扱いを調べた。その結果,次のことが明らかになった。①科学的な方法は,実験の結果やまとめ,学習の振り返りの批判的な思考において,スキルの種類がわかるように提示され,具体化されていた。②提示されていたスキルは,プロセス・スキルズと同様のカテゴリーを含んでいたが,概念の応用,コンセプトマップの作成等のスキルも提示されていた。
著者
山元 啓史 坂谷内 勝 吉岡 亮衛
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.105-106, 1996
参考文献数
1
被引用文献数
1

UNIXの通信ツールやシェルツールとCASTEL/Jのデータベース群を使い、日本語教材開発を進めるためのシステムを開発したので報告する。本システムは日本語教材を作成する際必要とされる語彙リストの自動生成機で、主処理をUNIXで行うシステムである。メールシステムを利用することにより、ユーザはUNIXを意識することなくこのシステムを利用し、自分が必要とする教材の前処理を手に入れることができる点が特徴である。
著者
前迫 孝憲 青柳 貴洋 丹羽 次郎 西端 律子 菅井 勝雄
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.233-234, 1999
被引用文献数
1

大阪大学人間学部では、平成10年9月に東館竣工記念講演会の映像配信をインターネット、ISDNビデオ会議ネットワーク、デジタル衛星テレビ(DVB)の3者を併用してリアルタイムに実施した。インターネットでは、大阪からRealSystem、東京からMPEG4で配信した。またDVBでは3基の衛星を用いた世界配信を行い、南米コルドバ大学からは質問を受けた他、タイの遠隔教育機関とは異種衛星を使ったメッセージ交換を行った。
著者
後藤 顕一 今井 泉 寺田 光宏
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.225-228, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
4

2022(令和4)年度から始まる新学習指導要領では,高校化学における熱化学に関する扱いが,これまでとは大きく変化する。熱化学は,化学領域にとどまらず,多くの学問領域での基盤となる概念であり,高校化学での位置づけは重要である。そこで,我が国の高校での熱化学を「変化―エネルギー」と概念と捉え,これにおける概念理解と獲得を目指したカリキュラム編成について考察する。考察に当たっては,日本学術会議に提出された「化学分野の参照基準」と新学習指導要領,ドイツのカリキュラム編成の考え方等を基に考察する。特に資質・能力の育成,国際標準,系統性の視点から,エンタルピー変化の扱い方,エントロピー変化についての動向の把握と具体的な方略について検討する。
著者
北澤 武 望月 俊男 山口 悦司
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.1-4, 2018-03-25 (Released:2018-07-01)
参考文献数
10

筆者らは,我が国における学習科学の専門家養成に向けた情報収集を行うために,諸外国における学習科学の教育プログラムについて調査を行ってきた(大浦ほか 2017;河﨑ほか 2017;河野ほか 2017)。この調査の一環として,本稿では,イスラエルのハイファ大学に着目した調査を行った。ハイファ大学の教師教育プログラムでは,学習科学が重視され,これに関する授業が複数開設されていることが明らかになった。
著者
中村 大輝 大澤 俊介 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.433-436, 2019

<p>本研究は,理科の授業において領域固有スキルが科学的推論能力の育成に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.小学校第6学年の児童215名を対象とした調査の結果,領域固有スキルのうち,知識を適用するスキルと科学的推論能力に正の影響が認められた.他方,認知欲求が低い学習者においては,領域固有スキルのうち,事物・現象を当該領域に特徴的な視点で捉えるスキルが,科学的推論能力育成の阻害要因となる可能性が示唆された.</p>
著者
水野 義之 菅井 勝雄 松原 伸一 三宅 正太郎
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, 1998

近年, 情報・環境などをテーマとする総合的学習への対応や, 自然科学分野を選択する生徒の減少などが問題となる一方, 欧米を中心に技術リテラシーの育成が話題になっています。そこで, 本シンポジウムでは, 最先端の物理を教育現場に届けるWebサイトの裏方を務めながら基礎科学の重要性を訴えておられる水野先生, Technology for All Americansの動きを調べながら科学に根ざした新しい技術教育を模索されている松原先生, 社会と科学や新しい技術との関係を社会的構成主義の立場から検討されている菅井先生, 新しいメディアの活用を受け手である学習者の立場から検討されている三宅先生に, これまでの取り組みや展望を話し合っていただきたいと思っております。
著者
岸本 忠之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.17-20, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
9

本稿の目的は,小数の乗法の文章題における演算決定に関する様相モデルを明らかにすることである.演算決定に関する様相モデルとして,「様相1.比例関係の理解」「様相2.演算決定の根拠」「様相3.乗法の知識の組織化」の3つの様相を設定し,その段階における観点も示した.この様相に対して,児童が90×0.6となる文章題に関して行った演算決定の記述を例示した.その結果,除法を選んだ児童と乗法を選んだ児童において学習課題が異なること,また除法を選んだ児童は演算が誤りであることが意識されるため,演算決定の根拠や乗法の意味について理解が図られることが挙げられる.
著者
川崎 弘作 中山 貴司
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.279-289, 2018 (Released:2019-02-02)
参考文献数
18

In this study, we aimed to clarify how particle concepts are acquired and changed through a teaching method based on the building process of theory. We analyzed the concepts and processes learned by elementary school students by examining and analyzing lesson content (totaling 6 units from the third grade level “material and weight” to the fourth grade level “the destination of water”) over a period of 53 hours. As a result, the students acquired the following concepts (a to e) and the process of change in these concepts was clarified: a) Materials are composed of invisible small particles. b) Particles do not disappear. c) The size of the particles does not change. d) Particles move in all directions when heated. e) The difference in state occurs due to the difference in the size of the gap between the particles and the movement of the particles.
著者
瀬戸崎 典夫 森田 裕介 全 炳徳
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.561-562, 2020

<p>本研究は,没入型タンジブル平和学習用VR教材の開発に向けた予備調査を実施することによって,教材に対する興味・関心等の評価を得るとともに,改善点や追加コンテンツを明らかにすることを目的とした.その結果,本教材を使用することで,参加者の興味・関心や,活動そのものに対する集中力を高めることが示された.また,平和教育の実践を想定したコンテンツ開発と授業デザインの考案に加えて,原爆投下前の人々の暮らしをバーチャル環境に提示することで,より実感を高める教材となり得ることが示された.</p>
著者
芙蓉 良明
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.19-22, 1998
参考文献数
3

本校は、平成8・9年度、埼玉県知事より科学技術推進モデル校に指定され、科学技術を推進するために、どのような活動が可能かを実践してきた。その実践として、科学技術講演会、科学館・博物館の見学会、わくわく科学教室、啓発的活動、教科での取り組みを行った。ここでは、これらの活動の可能性や問題点を考察した。
著者
江草 遼平 和田 久美子 生田目 美紀 楠 房子 溝口 博 稲垣 成哲
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.456-457, 2011
参考文献数
1
被引用文献数
2

本研究では,生田目・楠(2010)が開発したユニバーサル・パペット・シアターに学習者が物語の展開を選択できる分岐場面を実装し,その効果を予備的に検証した.対象は健常者の大学生14名であり,上演後に,分岐について自由記述による評価を求めた.その結果,分岐場面の設定が動植付けを高めること,物語への没入が促進されること等の肯定的な回答を得ることができた.改善点としては,分岐画面のデザイン等が指摘された.
著者
真喜志 昇
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.5-8, 1992

環境や環境教育に関心を持ち、よりよい環境の想像活動に主体的に参加し、環境への責任ある行動がとれる態度を育成するために、小学校の5年理科「魚の育ち方」における地域の川の生き物を調べようという環境教育を取り入れた教材を開発し、その実践を試みた。私たちの学校には、すく横を饒波川が通っている。そこでパソコンと体験学習を取り入れ、川の水性生物を採取し、パソコンで名前を調べたり、指標生物と水の汚れとの関係などを調べることにより、環境に関心を持たせようと考え、教材化し授業を試みた。その結果、川に降りて水性生物の調査をする事をとても楽しかったと答えた子が多かったし、パソコンを使うことにより、川の生物調べも事典を使うよりも興味を持ち意欲的に調べていた。また、その原因が自分達の生活排水であり、自分達の子孫にはきれいな川にして受け継ぎたいといった意見も多くでてきて環境に興味関心を示めさせるのにある程度の効果があったと考える。
著者
佐久間 直也 中村 大輝
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.27-30, 2021-12-19 (Released:2022-01-20)
参考文献数
11

科学的探究において仮説は重要な役割を持つにもかかわらず,これまで理科の授業では仮説の立て方の指導がほとんど行われてこなかった.そこで筆者らは、複数事象の比較を通した仮説設定の段階的指導法を開発し効果検証を行ってきた(佐久間・中村,2021).本発表では,これまでの実践における課題の改善と新たな学級や単元における実践に取り組み,提案する指導法が一貫した効果を持つかを検討した.具体的には,中学校第2学年「電流とその利用」において継続的な実践を行い,授業時の仮説設定の質を評価した.その結果,提案する指導法は従来の指導法と比べて仮説設定の質の向上に相対的に高い効果があることが示された.その一方で,授業後のアンケートでは仮説設定が難しいと感じていた生徒も依然として多く見られたことから,今後は仮説設定の題材の工夫と継続的な指導によって苦手意識を軽減できるよう取り組む必要がある.