著者
野村 祐子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.29-32, 2020

<p>電気ストーブや照明器具などの取扱いにおいては,火がなくても可燃物が発火して火災に至ることがある.これらの火災に対する予防指導を支援するため,裸火以外の着火源による固体可燃物の発火現象を理解させるためのWeb教材を作成した.木や紙などの燃えやすい固体にゆっくり熱が伝わって急に燃え出す,高温表面や赤外線を着火源とする発火の仕組みを説明するため,虫眼鏡で日光を集めて白と黒の画用紙を焦がす実験を活用し、画用紙が発煙して穴が開くまでの過程と,炭化が進行して橙色の火炎が拡大する過程を,映像と時系列写真で繰り返し観察できるようにした.また,「ししおどし」に水が溜まって動き出す様子を観察する教材を作成し,水と熱を比較することによって,発火の有無を左右する「熱のつり合い」に着目できるよう図った.これらの教材を用いて小学校理科「光の性質」の内容を発展させる学習過程の提案を試みた.</p>
著者
田中 維 黒川 直哉 江草 遼平 楠 房子 山口 悦司 稲垣 成哲 野上 智行
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 41 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.467-468, 2017 (Released:2018-08-16)
参考文献数
6

動物園は,観察を通じて科学教育が行える場所である.動物を観察するためには,観察対象物に関わる知識が必要である.特に子どもが動物を観察できるようになるために,保護者は重要な役割を果たす.本研究は,観察活動中の保護者による言葉がけの実態を明らかにするために,親子の会話を分析する.そのために,動物園における子どもの観察活動を促進する会話フォーム(Patrick & Tunnicliffe, 2013)を,分析フレームワークとして応用した.
著者
ラッシラ エルッキ・T 隅田 学
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.25-28, 2020-12-13 (Released:2020-12-09)
参考文献数
9

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)は、全国で行われる公教育の文脈において、高い興味関心や優れた能力を持つ生徒の個性や才能を伸長する理数系人材育成の一つの日本型教育モデルである。本研究では才能を個人と環境の組みわせとして定義する「行動環境場(actiotope)モデル」と「教育資本(educational capital)」のアイデアをベースとし、SSHの可能性を議論する。質的研究アプローチを採用し、SSH2校において計10名の教員にインタビューを行い、研究開発実施報告書等を資料として補完しながら分析を行った。その結果、これまであまり議論されていないSSHのインパクトとして、1)連携機関等とのネットワークと校内キーパーソンによる「社会的教育資本(social educational capital)」と2)公教育において意欲や能力の高い生徒に焦点を当てて教育支援をすることへの理解が広がる「文化資本(cultural capital)」へのインパクトが明らかとなった。予想に反し、「インフラ・経済資本(infrastructural and economic capital)」のインパクトが大きいようには見られず、「教育方法的教育資本(didactic educational capital)」のインパクトは曖昧で、才能についての共通認識はなく、課題研究の指導力が不十分と考える教員が多かった。
著者
生田目 美紀
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.125-126, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
1

科学教育では、視覚的な資料を提示することにより理解を促すことが多い。本稿では、視覚的な資料を提示できないサイエンスコミュニケーションの場において、視覚言語である手話を取り入れることについて、調査と事例紹介等を通じて考察し、その可能性について述べる。手話は、形状・様態・科学的理論を組み合わせながら「意味を適切に表現し、理解しやすい」ように工夫して創られた視覚言語であり、体を使って表現するため、視覚的な資料の提示が困難な場合でも、容易に組み入れることができる。また、これまでの経験により、形状と様態を組み合わせた手話単語は、かなりの確率で伝わること、伝わらない手話でも解説することで、驚きと納得を得られることがわかっている。このことから、手話を併用することによって、サイエンスコミュニケーションによる学びの広がりが期待でき、科学教育のユニバーサルデザインを推進できると考える。
著者
渡辺 勇三
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.17-22, 2006
参考文献数
1

先般の「お茶の間宇宙教室の提唱」、「街角宇宙教室の提唱」、「街角星空教室の提唱」に続き、「街外れ星座教室の提唱」を報告する。近頃、星を見なくなった。何故だろうか。多忙なのだろうか。星が見えないのだ。郊外や海外や高山で星を見て感動した投書など見ると今の都会では如何に星が見えないかがよく解かる。では、相模原市ではどうなのだろうか。アンケート調査を実施した。視界の広がる相模川の堤防、農道、街灯を避ける高い塔などでささやかな星ウォッチングが行なわれていた。夏の日のタ刻、南の空にさそり座の雄姿を眺めた時の感動は終生忘れられない。今でも心が安らぐ。精神的な豊かさを得るには星座観測が一番だが星空学習は危機的状況にある。大気汚染とネオン光害で都会の低い空には星が無い。夜は誘惑が多く事故や事件で危険が一杯だ。先人は百年計画で明治神宮の森を作り上げ世界に先駆けて京都議定書を作成した。遠い将来を見据えて緑化と省エネに励みつつ田園で星々を学習することを提案する。
著者
富田 晃彦 尾久土 正己
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.625-626, 2020

<p>国際連携での多地点日食中継インターネット番組において単に日食中継をするだけでなく,日本の視聴者に日食への理解,中継という方法への興味,そして国際連携への興味という3方向へのアピールをねらった.それが伝わったのか,アンケート調査から探った.特に肯定的な意見が多かったのが,中継という方法への興味として「リモート教材としてこのような番組は活用できそう」と,国際連携への興味として「Under One Skyとして,『われら地球人』を意識できると実感」であった.長期間の遠隔授業を余儀なくされ,国際連携や国際理解への興味が薄れかねないこの状況下,それを乗り越えるひとつの方法として提案できるものであるといえよう.</p>
著者
小椋 知子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.43-46, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
8

本稿の目的は,スペイン語文化圏の小学校乗法指導系統上における乗数・被乗数の順序の扱いにかかる営みを,コロンビアの事例において示すことにある.そのために,教育省基準および教科書の乗法指導系統における乗法式2表現(「乗数×被乗数」「被乗数×乗数」)の扱いを時系列で分析した.その結果,教育省基準の変遷に「2表現の文脈に応じた混在」→「乗数×被乗数」→「被乗数×乗数」の系統の出現が確認された.スペイン語由来の式表現(乗数×被乗数)では,導入時はよくとも上位学校における文字式で必要となる複合式は立式できず,乗数作用素(乗数×)を除数作用素(×除数)と揃えることで可能になる.教科書により異なる「被乗数×乗数」導入時期の検討が課題となる.日本の場合,指導系統の中で言語に準じた式表現を導入時から一貫して用いることができる.
著者
吉田 安規良 吉田 はるか 馬場 壮太郎
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.585-588, 2021

<p>生徒の科学的思考力等を育成し,それを測る問題を作成し,適切に評価できる理科教員を育成するため,中学校・高等学校の理科教員免許取得希望学生を対象として,「思考・判断・表現」の評価を目的とした火成岩の同定を問うペーパーテストの出題内容をどのように捉えているのかを調べた.出題内容に違和感を感じた学生もいたが,ほぼ全員が出題者の想定通りに「正答」した.27人中15人が岩石の判断理由を答えさせた点を,11人が火成岩に関するいくつかの知識を組み合わせて解答させた点を肯定的に評価していた.全体的な色の特徴から岩石を特定することの困難さを7人が,採点基準の曖昧さや採点の難しさを6人が,出題構成と配点に関する問題を4人が指摘していた.学習内容に関する専門性を高めるとともに,ある種の受験技術で容易に解答可能な問題を科学的な思考力等を問う問題として出題すべきでないことを学生が学ぶ必要性をこの結果は示している.</p>
著者
宮国 泰史 福本 晃造 杉尾 幸司 古川 雅英
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.505-506, 2021

<p>沖縄県内の5つの中学校と科学教育プログラムに参加した中学1年生に対して、理数・科学に対する情意面の考えや意識を尋ねる質問紙調査を実施した。男女の意識差については学校・組織間で明確な差がみられ、「科学の楽しさ」、「広範な科学的トピックへの興味関心」、「科学に関連する活動」などの項目で、学校・組織間の違いが見られた。また、男女の意識差の小さい学校・組織ほど、進学や就職「以外」の場面においても、理数への好的な感覚を持っており、男女ともに将来、理数に関する職業に就きたいと考える傾向があった。</p>
著者
黒田 友貴
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.281-284, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
11

本研究では,STEM人材の養成の特徴的な教育事例から,ポリシー策定やプログラムにより目指すべき方向性に関する考察を行なうことを目的としている.事例のクイーンズランド工科大学の教学マネジメントの特徴は,University-wide STEM strategyが,6項目にまとめられており,初中等教育を含むSTEM教育全体に積極的に関与すること,社会にどのような貢献をSTEM分野で行なうのかを明記していることが挙げられる.また,STIMulateプログラムが提供されており,専門分野の文脈を踏まえた移行支援プログラムの展開がされており,大規模大学であっても在学生を活用したピアエデュケーションが多用されていることが明らかになった.今後の課題として,学生に対するインタビュー調査やアンケート調査などを実施し,教学マネジメントによるプログラム運用による教育効果を検討することが挙げられる.
著者
佐藤 博
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.5-8, 2007

北部九州の自動車産業で年間100万台の生産拠点を達成し、次に150万台、次世代車の開発拠点などの目標が福岡県で掲げられている。その中で学校教育の中で今の新しい時代に合わせた形での人材育成をやっていくことが求められている。特に、CADのカリキュラムをもっと増やし工業高等学校や高等技術専門校の教育内容を変えていくことが喫緊の課題になっている。本校に平成18年4月からCADが導入されたが、本校ではこれまで、2次元CADの学習を行っていた。しかし、社会からの3次元CADの技術技能を持った人材育成の要請に対応することと魅力ある電気科の目玉にすることを目的として、3次元CAD(Solid Works)を導入し、実習、課題研究などに取り入れ、教育内容を改善していった。ここでは、3次元CADの教育実践例を紹介し、今後の課題について言及する。
著者
花岡 愛子 松尾 七重
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.383-384, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
2

本研究の目的は、就学前幼児向けの図形教育プログラムの効果を明らかにすることである。そのために、 先行研究や各種テストを参考に、幼児のもつ資質、能力に鑑みた幼小接続の観点から、未就学児向けに図形能力 を測る図形認識力テストを作成し、その結果を改善するための、幼児の持つ資質・能力に適合した図形教育プロ グラムを開発した。5 歳、6 歳の 13 名の園児に対し、約 2 ヶ月間定期的に株式会社プレイシップが開発したさん かく積み木(HEMPS)を活用した図形教育プログラムを実施し、その事前、事後で図形認識力テストを通して、 園児の認識の変容を分析した。その結果、特に図形構成力の改善が見られた。
著者
常見 俊直 仲野 純章
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.593-596, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
16

教育の質保証や質的転換・向上を進める中で,高大連携事業は益々重要性を増している.高大連携事業は,大学訪問や出張講義や次世代科学者育成といった様々なものがあるが,高校生が習い,大学生・大学教員が講義や指導助言するものが多い.そのような中,本研究では,より高次の連携を目指した高大連携事業の一つとして,「高校生と大学生による課題研究の協働推進」という形態を企画し,検証的に実践を進めてきた.現在,高校生と大学生からなる2グループが,課題研究のテーマとして「煤の性質の条件による変化」及び「マンボウの粘液の抗菌作用の有無」を設定し,協働的に活動を進めている.こうした実践により,高校生側への教育効果は勿論のこと,大学1・2回生への探究的な実験体験の提供や大学3・4回生程度の論文購読・発表ゼミに相当する機会の提供など,大学生側への教育有効も確認されつつある.
著者
三宅 志穂
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.469-470, 2019

<p>著者は学生らとともに,動物園にいる動物を題材として生物多様性保全意識の向上を目指す教材開発に取り組んできている。本研究では来園者をいかに聴衆者として取り込むかという視点で,コウノトリを題材とするコミュニケーション型展示を開発し,展示手法の改善を試みた。そして,本展示の視聴者が時系列でどのように変化するのかを調査した。その結果,プレクイズ・シーンでは開始時に比べて3 割から4 割近く増加したことから,クイズの導入が聴衆を惹きつける動機付けになったと推察された。また,本編シーンの「コウノトリの野生絶滅と野生復帰(前半)」と「リコちゃんの貢献(後半)」のお話でも,聴衆者は継続的に増加した。物語内容が来園者の興味・関心を惹きつけたと理解できた。</p>
著者
正本 安心 西野 秀昭
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 32 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.199-200, 2008-08-08 (Released:2018-05-16)
参考文献数
1

現在、血液中のコレステロール濃度増加が健康管理上特に問題視され、多くのメディアでも「コレステロールは悪者である」という科学からは程遠い扱いがなされている。しかし、そもそもコレステロールとは何か?体内ではどのような働きがあるのか?などの点にはあまり触れられておらず、一般的にその存在意義はうやむやにされている。近年、コレステロールは、その濃度が高い食品によっても血中濃度は上がらないこと、脊椎動物の発生を正常に進行させ、生命維持を行うという重要な役割を担っていることも明らかになり、コレステロールの役割について再認識するための科学的な教育が必要とされてきている。そこで、本研究では、メディアの情報に左右されやすい年代として高校生を選び、コレステロールに関する意識調査を行い、高校理科までの学習過程にある生徒にどのような理解がなされているのか調査を行った。ついで最新の疫学調査や細胞におけるコレステロールの存在意義、生合成関連や利用遺伝子の機能不全が原因とされる遺伝病などについて講義を行い、その後、意識変化の調査を行った。その結果,期待される意識変化が見られた反面、科学的知識には混乱が生じていることが明らかになった。
著者
岩見 拓磨 御園 真史
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.133-138, 2015 (Released:2018-04-07)
参考文献数
10

本研究では,教職課程を履修している大学生に対して,数学に対する価値観を尋ねる質問紙調査を行った。4 つの因子について下位尺度得点の多重比較を行った結果,意識の高さは,意味理解・練習≒道具的目的>学問としての数学>モデル化/活用の順であることが分かった。このことから,将来数学は必要であるという意識は高いのにも関わらず,それを日常的なレベルで数学的モデル化を行ったり,数学を活用するといった実践行動に移せていないことが分かった。
著者
近藤 勲
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.61-62, 2000
参考文献数
4

わが国は、途上国への教育協力・支援を他の分野のそれと同様に種々の外交ルートを利用して、人材と資金の両面で積極的に関与し実施してきた.本稿では、その一つで受入れ人数の規模並びに継続性の面から貢献度の高い教員研修留学生の受け入れについて、過去20年の実施業績の考察と今後の展望について述べる.現在、わが国では、行政改革に基づく規制緩和が高等教育の実施方法や内容に変革を迫り、改革が進められている.この趣旨を生かした教員研修留学生の受入体制の改善についても言及し、提言を試みる.
著者
山下 修一 伊藤 英樹 柴田 道世
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.408-409, 2015

<p>本研究では,月の満ち欠けを科学的に説明させるために.従来モデルを改善し,モデルの操作を月の満ち欠けの理解に結びつけるための読み物を開発して,小学校教員(N=57)と理系学生(N=33)を対象にして試行した.そして,新たに開発したモデルと読み物で,中学生(N=256)でも科学的な月の満ち欠けの説明ができるようになるのかを検証した.その結果,小学校教員と理系学生の比較からは,事前調査では,小学校教員の49 名(86.0%),理系学生の21 名(63.6%) がLevel 0 となり,小学校教員や理系学生にとっても,月の満ち欠けの説明は困難であった.事後調査では,小学校教員の55 名(96.5%),理系学生の全員がLevel 1 以上の説明ができるようになり,地球の影・自転での説明は見られなくなった.中学生の試行からは,授業で月の満ち欠けの学習を終えたばかりなので,事前調査の段階でも地球の影は関係しないことを理解していたが,30%以上の生徒にとっては,科学的に月の満ち欠けを説明することが難しく,地球の自転で説明している生徒も10%以上いた.事後調査では,Level 1 以上が目安の80%を上回り,中学生にも月の満ち欠けを科学的に説明させることができた.</p>
著者
菊森 忠嗣
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.65-68, 1987

三重県玉滝小学校では、昭和61年3月新校舎改築とからんでパソコン35台 (富士通16β) を視聴覚室に備えることになった。パソコンとワープロの区別もつかない職員12名は、それから今日までパソコンと悪戦苦闘を続けた。現在 (昭和62年・秋) 職員は、自分なりのCIAプログラムをまずいなリにもべージックを使って組み、授業に使うところまでこぎつけたが、思わぬところに問題が山積している。玉滝小学校における教職員のパソコンとの悪戦苦闘の足跡を紹介し、参加者の皆さんとともにより有効な運営法を探りだせればと思っています。そして、少なくとも三重県下の学校が、センターを中心に有効な組織と運営法を探りだし、全県下的に連絡をとりながら、相互扶助開発のシステムを作り出して欲しいと願うものである。
著者
高田 昌慶
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.31-34, 2016 (Released:2018-04-07)
参考文献数
7

小学校 4 年生の「人の体のつくりと運動」で,腕を曲げ伸ばししたときの筋肉の様子を実験器で説明してきた。しかし、従前の実験器の筋肉部分はゴム製である。そのため,腕を曲げると上腕二頭筋相当部分が縮むように見えるが,元の形に戻るだけで体感的には力が抜け,上腕三頭筋相当部分が伸びて,体感的には元に戻ろうとする力を感じる。つまり,このモデルで児童が体感するイメージは、実際とは相反するもので,指導者としてフラストレーションを感じていた。そこで、腕の筋肉の収縮と弛緩に伴って腕が曲がったり伸びたりする様子を模式的に説明できる実験器を考案し,ケニスで商品化された。まず,筋肉チューブとして付属している非ゴム素材で「力が入って縮む・力が抜けて緩む」ことを体感させる。その上で腕モデルを曲げ伸ばしすることで,感覚的に「縮む・伸びる」とインプットされたイメージを,実感を伴って「縮む・緩む」と正しく再認識させることに効果があったと推察される。