著者
岡田 努 野ヶ山 康弘
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 40 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.251-252, 2016 (Released:2018-08-16)
参考文献数
2
被引用文献数
2

本研究は福島の原発事故後5年間に実施されてきた放射線教育の現状と課題に関する事例研究である。福島県内外の中学校での実践事例の調査と放射線に関するアンケート調査結果から,震災直後に「放射線に関する知識がないから恐れる」というイメージの固定化が顕著となったが,正しい知識を得ることで,原発や放射線の有効利用の是非等について多様な意見が見られ,調査した地域間に差異が見られた。さらに小中高校といかに接続すべきかという今後の放射線教育の課題も提示した。
著者
齊藤 智樹
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.17-20, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
1

本研究では,Next Generation Science Standards(NGSS, 2013)における,領域横断的な概念(Cross-cuing Concepts: CCs)と米国でのその歴史的な扱いに着目し,STEM教育の統合的・領域横断的な学習を支える分析的な枠組みの在り方について,基礎的な研究を行った.特に,NGSSにおけるこれら概念が,領域の核となる概念(DCIs)や科学とエンジニアリングの体験的・経験的活動(SEPs)と効果的に統合されることを目指す,3Dラーニングモデルにおいてどのように扱われているか,それぞれの概念と領域がどのようにつながれているか,またCCs同士がどのように連携するかといった点を明らかにし,領域横断的なカリキュラムの結節点として,期待される機能について考察した.
著者
長谷川 恭子 吉田 歩 森藤 義孝
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.25-30, 2015 (Released:2018-04-07)
参考文献数
7
被引用文献数
1

平成 20 年の小学校学習指導要領の改訂により,「月の満ち欠け」に関する内容が,小学校第 6 学年において再び取り扱われるようになった。吉田らは,天動説の立場から,小学校第 6 学年「月と太陽」で取り上げる「月の満ち欠け」について,月早見板の作成活動を取り入れた授業を構想し,実践を行った。本研究では,小学校第 6 学年の「月の満ち欠け」に関する効果的な学習指導法の検討を行うため,吉田らの授業を受けた子どもを対象に,月の満ち欠けに関わる理解がどのように維持され,あるいは崩壊しているのかを明らかにした。
著者
柴田 康 松本 茂樹 吉田 賢史
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 21 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.173-174, 1997 (Released:2018-05-16)
参考文献数
11

インターネットはこの1, 2年で急速に一般家庭に浸透しつつあり、教育的利用への期待が高まっている。英語教育では、電子メールを取り入れ国際交流などの多くの実践報告がある。また、マルチメディアを駆使し、遠隔地で英会話などの授業を受けられるシステムなども報告されている。ここでは、数学教育の立場からインターネットの教育的利用とその意義と可能性についてさぐってゆく。
著者
仁宮 章夫 村岡 賢
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.225-230, 2018 (Released:2018-10-27)
参考文献数
12

The reaction of two compounds, hypochlorous acid and a mixture of hydrogen peroxide and sulfuric acid, was investigated by applying them to the surface of copper plates, respectively. Hypochlorous acid was produced using two methods. The first hypochlorous acid was prepared by adding one drop of hydrochloric acid to a bleach solution containing sodium hypochlorite. The second hypochlorous acid was prepared through chlorine gas. Through X-ray analysis, the black substance produced by adding one drop to a bleach solution was identified as copper(II) oxide, whereas copper(I) chloride was also found on the copper. The black substance found on the copper plate from the mixture of hydrogen peroxide and sulfuric acid was assumed to be copper(II) oxide by chemical analysis.
著者
山本 輝太郎 久保田 善彦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.23-26, 2022-03-27 (Released:2022-03-24)
参考文献数
13

新型コロナウイルスの世界的な流行によるいわゆる「コロナ禍」において,科学的根拠に乏しいとみなしうるさまざまな説(疑似科学的言説)も登場し,問題となっている.なかには「新型コロナワクチンを接種すると不妊になる」といった,それが蔓延することでより深刻な問題を引き起こしかねない説もあり,そうした説に傾倒する背景要因の究明は社会的な喫緊の課題であるといえる.本研究では,こうした新型コロナに関連する疑似科学的言説への態度に関わる背景要因の分析を行った.具体的には,新型コロナに関して科学的根拠に乏しいと思われる個別の説を収集,質問項目を作成したうえで,「科学に対する認識」や「新型コロナ以外の疑似科学的言説への態度」「科学知識」などとの関連性を検討した.クラウドソーシングを用いた調査を行った結果,新型コロナに関する疑似科学的言説への態度に対して,従来の疑似科学への態度や科学に対する認識,科学知識との一定の関連性が示された.これらの結果に基づき,科学に対する認識の次元にまで踏み込んだ教材開発およびその教育実践の重要性について提案したい.
著者
寺田 文行
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.39-44, 1987-03-14 (Released:2017-11-17)

この報告書は、約50名のメンパーによる高校数学カリキュラムの研究に基づいて、これからの高校数学の展開の方向を述べたものである。今日の教育の間題点は、一つには多様化への対応をいかにするかであり、二つ目にはコンピューター対応である。これらは高校数学の場合に特に顕著であり、これらへの対応が次期のカリキュラム改定の中心的な課題である。我々研究グループは、多様化対応の戦略の中心を次の二点におく。高校生一般に対する "数学的知性のかん養" 将来も数学を必要とする生徒に対する "数学的処理能力と思考力の強化" 高校の数学には、出来る限り多くの生徒に学習させたいコアとなる部分がある反面、大学進学後のためにもこの年齢で鍛えておくべき部分がある。学習における平等指向の強い教育環境であることも考え合わせ、いかにしてこの解決を計るかに応えて、我々はコア・オプション・モデュールと命名した高校数学カリキュラムを設計したのである。コンピューターへの対応もそのなかにおりこまれている。
著者
加茂川 恵司 菊地 洋一
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.7, pp.9-14, 2020-05-16 (Released:2020-05-13)
参考文献数
9
被引用文献数
3

小学校理科4年で学ぶ水の温まり方単元では,熱せられた水の動きをめぐり様々に異なるアプローチや理解・議論が混在している.本研究はこれまで構築してきた注入観察実験法で得られた知見を俯瞰的に眺めることにより,水の温まり方と水の動きについて学校実験器具に準拠しつつ知見を整理することを意図した.それにより,ビーカーや試験管実験では“水は熱せられて全体的に速やかに循環する”という共通の基軸が見出された.一方熱水が循環する時の回転や滞留の動きは概念的な正誤でなく,熱源の大きさなど加熱の設定で変わる形態差であることが示された.また熱せられた水は周りの水に混じり合い速やかに冷却されることがいくつかの観察結果から見出された.多様な観察やWEB情報はこの基軸と多様性を通して統合的に捉えることができる.
著者
藤澤 修平 吉田 秀典 林 敏浩
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.1-4, 2021-05-22 (Released:2021-05-19)
参考文献数
9

香川大学では,大学低年次における数理・データサイエンス教育を実現するため,基礎科目となる「情報リテラシーB」の開講,ならびに応用科目となる新たな科目提供というつの方策を実施する.本稿では,2020年度に開講した「情報リテラシーB」を踏まえ,今年度(2021年度)に開講する数理・データサイエンス教育の応用科目「データサイエンス×危機管理科目群」の展開について述べる.本学の四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構の協力のもと,「データサイエンスを活用した防災・危機管理」,「レジリエントな社会の構築とコンピューターシミュレーション」,「災害とデータサイエンス」からなる応用科目群を提供することにより,実社会に即した,データサイエンスの学びを深める数理・データサイエンス教育を拡充する.
著者
河合 信之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.21-24, 2019-06-01 (Released:2019-05-29)
参考文献数
8

光合成によって葉でつくられたデンプンの検出方法について小学校理科の教科書では,(1)葉を煮てヨウ素液をつける方法,(2)葉をろ紙で挟んで木槌でたたき出し,ろ紙にヨウ素液をかける方法が紹介されている.これらの方法の問題点として,(1)の方法では,緑色の葉に直接ヨウ素液をつけるため,ヨウ素反応が青紫ではなく黒ずむことが多い.(2)の方法では,葉がろ紙に残ったり,木槌で叩いてろ紙が破れたりする.またろ紙にヨウ素液を直接かけるため,反応がきれいに出ないという問題が挙げられる.そこで本研究では,たたき出す道具や手順を工夫することによって,葉だけでなく,茎や根に含まれるデンプンをヨウ素液で青紫色に美しく検出することができた.また,この方法を使った発展的な指導法として,時刻別の葉を採取してヨウ素反応を調べると,その色の濃度差から,昼間に,光合成によって葉のデンプンが増加し,夜間にデンプンが葉から出ていくことが経時的に確認できることを紹介する.
著者
副島 大陸 牧下 英世
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 42 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.485-486, 2018 (Released:2019-06-14)
参考文献数
3

本研究では ICT 機器の 3D プリンタを数学に活用し,積分による体積導出における教材を開発した。また,開発教材を用いた研究授業を行い,その有用性を考察した。その結果,学生の単元への意欲, 関心を向上させるといった効果を得ることができた。
著者
植田 和利 伊東 和彦 上原 誠一郎 佐藤 博樹
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.39-45, 2016

We produced a pure Si substance directly from a SiO<sub>2</sub>-Mg system using the solar furnace in the air. After the reagent of SiO<sub>2</sub>-Mg system was melting for 2–3 minutes under the solar furnace, Si grains (~1–3 mm) surrounded by forsterite (Mg<sub>2</sub>SiO<sub>4</sub>) were produced as the reaction product. From the phase diagram of MgO-SiO<sub>2</sub> system, it is considered that the reaction, 2 SiO<sub>2</sub> + 2 Mg → Si + Mg<sub>2</sub>SiO<sub>4</sub>, occurred. In this reaction, the existence of Mg<sub>2</sub>SiO<sub>4</sub> melt might have protected Si reduced from SiO<sub>2</sub> against O<sub>2</sub> in the air, and might have made Si grain grow larger in the melt. In the reduction of SiO<sub>2</sub> by Mg, we could have obtained Si grains visible to the naked eye within a few minutes under the solar furnace. Being a simple and short experiment this experiment is suitable for science students.
著者
河野 純大
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 40 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.25-26, 2016 (Released:2018-08-16)
参考文献数
2

本稿では2016 年4 月に施行された「障害者差別解消法」の概要を述べ,国や地方公共団体等にとっては法的義務となった「差別的取扱いの禁止」「合理的配慮の提供」について例とともに解説し,今後の科学系博物館における合理的配慮のあり方について述べる。
著者
笹川 由紀 小野 道之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.216-229, 2008-09-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
30
被引用文献数
5

In 2002, the guidelines concerning recombinant DNA experiments was renewed and now allows this experiment within a safety range at schools. It is said that the hands-on lab activity using the recombinant DNA experiment in high schools is very effective for understanding the basics of molecular biology, while making students interested in biotechnology and gene literacy education. Although it would be better for all students to experience, it, only a small number of student have a chance. We administered a questionnaire survey to teachers of biology and studied some cases carried out to popularize the recombinant DNA experiment. From these results, we investigated what is needed to make this experiment more popular in gene literacy education. The results of questionnaire survey showed that effective lessons mutually motivate teachers and students. Educational material kits make it easy for teachers to try and are useful for them. We know that is some good cooperation between school, university and administration, and therefore teacher motivation is very important. We conclude with 10 needs to popularize the recombinant DNA experiment; they are related in complex ways. It is important to carry out action continuously and see these things in the long-term.
著者
貝沼 喜兵 斎藤 淳一 原田 和雄 小林 興
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.212-222, 2003-09-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
18
被引用文献数
13

In an attempt to promote the understanding of life science, in particular DNA function, in junior and senior high school students, we have conducted a 2-day laboratory course on DNA and recombinant DNA technology in the Kanto area twice, in 2001 and 2002. We used the Biotechnology Explorer kit, available from Bio-Rad Laboratories as follows: 1) E. coli cells susceptible to ampicillin are converted to a resistant form by transformation with a DNA plasmid, pGLO, and 2) the transformed cells produce a fluorescent protein, GFP, which can be visualized by UV irradiation of colonies of cells. We also supervised an experiment where DNA is extracted from chicken liver. We analyzed the ability of the students to understand the experiments using the following three materials: 1) a written test before (pre-test) and after (post-test) the experimental course, 2) reports concerning the experiments, 3) a questionnaire. Based on these data we conclude that the majority of the students comprehended the experiments. We also discussed the significance of conducting laboratory experiments in recombinant DNA for junior and senior high school students
著者
野添 生 磯﨑 哲夫 藤浪 圭悟
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 39 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.71-74, 2015 (Released:2018-08-03)
参考文献数
11

本研究は、近年のイギリス科学教育の動向に焦点を当て分析・検討を行い、「新しい知の創造」のための科学教育を可能にするイノベーティブ人材育成を意図した理科教育課程について討究した。その結果、理科カリキュラムには現状の専門分化の視点だけでなく、系統的な科学的知識を積み上げながら、知識がより融合化(統合化)されていく視点も重要な要素となること、また、HSW やSSI という考え方を取り入れた中等理科教育には、イノベーティブ人材育成の解決策となる可能性を確認できることが明らかとなった。
著者
中村 好則 黒木 伸明
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 28 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.281-284, 2004-07-30 (Released:2018-05-16)
参考文献数
3

本研究では,聾学校における数学的モデル化を取り入れた指導の可能性について,高等部生徒に対する「お湯の冷め方」の授業実践を通して考察した。その結果,現実の事象を日常的経験や既習の数学的事項と関連づけながら学習できること,数学の有用性や現実事象と数学との関わりを感得できることの効果が示唆され,聾学校生徒の数学学習を質的に改善する手だてとして有効であるという知見が得られた。今後は,さらに実践を重ねることと,数学的モデル化を取り入れた指導を行う時期や内容を検討することが課題である。
著者
井上 敦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.9-12, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本稿の目的は, 親の数学のジェンダーステレオタイプと娘の自然科学専攻の関係を定量的に明らかにすることである. 2018年3月に実施したアンケート結果を用いて分析したところ, 「女性は男性に比べて数学的能力が低い」という質問に肯定的な回答をした母親の娘に比べて, 否定的な回答をした母親の娘は自然科学専攻の確率が高く, 統計的に意味のある差が確認された. さらに, 自然科学のなかでも特に高度な数学の専門性が要求される理工系専攻において, その傾向が強いことも確認された. 一方で, 父親の数学のジェンダーステレオタイプと娘の自然科学専攻の間には, 統計的に意味のある関係はみられなかった. これらの結果を踏まえて, 数学のジェンダーステレオタイプに関する母親のロールモデル効果の存在を指摘し, 求められる支援策を議論した.