著者
高野 賢一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.126, no.11, pp.1205-1210, 2023-11-20 (Released:2023-12-02)
参考文献数
22

難聴者の絶対数を鑑みれば, 聴覚リハビリテーション診療の需要は大きく, われわれ耳鼻咽喉科医が中心となり, その需要に応えていかなければならない. 成人に対する聴覚リハビリテーションは, 主に補聴器によるリハビリテーションが重要となる. ハーフゲイン法など補聴器導入時のリハビリテーション治療は各施設で工夫されている. 生活期においては, 地域活動を含めた社会活動の改善・維持が重要となってくる. 小児に対する聴覚(リ)ハビリテーションでは, 難聴を早期に発見し, 適切な補聴を行い, 早期療育を開始することで, コミュニケーションの基礎を形成して言語力を習得することが大きな目標となる. 新生児・乳児期では, 補聴器の装用環境整備や家庭での補聴器の装用練習を進め, 児にかかわる医療・療育・教育の各機関で情報共有していくことが重要である. 幼児期は言語表出が爆発的に伸びる時期であり, 語彙を伸ばし学習言語に繋げていく. 学童期になると, 障害を理解・受容しながら, 聞こえの状態や聞こえないときの対処法などを身に付けていくことになる. 本人や家族が相談できる環境を作ることも重要である. 近年, 聴覚リハビリテーションの新機軸として遠隔医療が注目されている. 装用者や家族の負担軽減, リハビリテーションの頻度確保のため, 遠隔人工内耳プログラミングや遠隔言語訓練の試みが進められている.
著者
鈴木 伸嘉 工 穣
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.126, no.6, pp.777-785, 2023-06-20 (Released:2023-07-01)
参考文献数
24

昨今, インフルエンザや COVID-19 などの感染症の流行予測に Social Networking Service (SNS) からのビッグデータを用いる手法が注目を集めている. 感染症の流行と同様に, 花粉の飛散はリアルタイムな気象条件や複雑な外的要因に左右され,それに伴う症状の出現も即時性が高い. そこで, SNS の一つである Twitter に投稿されている花粉症にまつわるツイートは花粉飛散数との関連があるのではないかと考えた. 2022年 2 月 3 日から 5 月22日の間に316,505ツイートを得ることができた. 東京都と松本市のスギ花粉およびヒノキ花粉の飛散数とツイート数との関連を検討したところ, 東京都のスギ花粉飛散数が増えるにつれ花粉症に関連したツイート数が増加し, 両者の相関関係は0.85と強い相関が認められた. 一方地方都市である松本市の花粉の飛散数とスギ花粉症に関連するツイート数との間にもかなりの相関があった. 次に, 花粉症に関連するツイートの内容について形態素解析を行った. 「くしゃみ」, 「鼻水」 といった単語が多く使われているのに対し 「鼻づまり」 の使用数が少ないことが特徴的であった. 一方, 「かゆみ」 や 「かゆい」 といった掻痒感を表す単語が多く使われていることが分かった. 代表的な SNS である Twitter を用いることで, 医学的な現象である花粉症のリアルタイムな動向を把握することができた.
著者
松瀬 厚人 河野 茂
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.3, pp.157-162, 2016-03-20 (Released:2016-04-19)

咳嗽は呼吸器専門医に限らず, 臨床で遭遇する頻度が極めて高い疾患である. 近年胸部X線や聴診の異常を伴わずに, 慢性的に咳嗽が持続する症例が増加傾向にある. 日本呼吸器学会から, 咳嗽診療の補助として, 2005年と2012年に『咳嗽に関するガイドライン』の初版と第2版がそれぞれ出版された. ガイドラインでは, 咳嗽を持続期間により, 発症後3週間以内の急性咳嗽, 3~8週間の遷延性咳嗽, 8週間以上の慢性咳嗽に分類し, 代表的な原因疾患の診断や治療法が示されている. 喀痰の有無も治療法に関連するため確認することが重要である. わが国の慢性咳嗽の原因としては, 咳喘息の頻度が最も高く, アトピー咳嗽, 副鼻腔気管支症候群, 胃食道逆流症等がそれに次ぐ. 慢性咳嗽の初期診療で重要なことは, 明らかな誘因があればそれを除去することである. その上で, 診察と必要に応じて胸部X線検査を行う. これによって生命にかかわる肺癌と感染性のある肺結核などを除外する. 問診では, 咳嗽の好発時間, 喀痰や発熱などの随伴症状, 増悪因子など代表的な原因疾患に特異的な病歴を聞き出すことに努める. 原因疾患が想定されたら, その疾患に特異的な治療薬, 例えば咳喘息には吸入ステロイド・気管支拡張薬, アトピー咳嗽にはヒスタミン H1 受容体拮抗薬, 副鼻腔気管支症候群にはマクロライド系抗菌薬などを投与し, 鎮咳効果が得られれば治療を継続する. これらの特異的治療を行っても咳嗽が改善しない場合には, 原因疾患が複数存在する可能性も考慮する. 重症例, まれな原因疾患, 心因の関与などが考えられる場合には呼吸器専門病院への紹介を怠ってはならない. 逆に初期治療で鎮咳効果が得られたら, 漫然と同じ治療を続けるのではなく, 効果を評価して, 薬剤の減量, 中止も考慮すべきである.
著者
大崎 康宏 土井 勝美
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.126, no.1, pp.7-11, 2023-01-20 (Released:2023-02-01)
参考文献数
11

半埋め込み式人工中耳である Vibrant Soundbridge® (VSB) は電磁式の振動子を持ち, 高音域の増幅を得意とする. 補聴器と比較して歪みの少ない音の伝達が可能となり, 外耳道を閉塞して生じる諸問題がなく, 審美面でも優れている. またほかの人工聴覚器と比較して明瞭度がよいこと, ハウリングが少ないことも利点と考えられる. 本邦では Colletti らが2006年に発表した術式を元に伝音・混合性難聴を適応疾患として導入された. 人工内耳と同様に全身麻酔下で手術が行われるが, 振動子を中耳のどこに設置すると効果的かを判断する必要があり, 振動子を正円窓窩に設置する round window vibroplasty, 卵円窓に設置する oval window vibroplasty, また残存耳小骨に設置する vibrating ossicular prosthesis を適切に使い分ける. 音入れは通常術後8週目以降に行い, 近年は vibrogram の結果を活用して調整が行われる. 海外では感音難聴も適応疾患となっており, 高音域では 85dB と高度難聴の領域もカバーされている.
著者
平野 滋 杉山 庸一郎 椋代 茂之 金子 真美
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.8, pp.1113-1117, 2019-08-20 (Released:2019-09-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1

喉頭・咽頭逆流症 (LPR) は, 慢性的な咽喉頭炎から音声障害を来し得る. 胃酸による逆流性炎症が後部声門の肉芽腫や潰瘍の原因となることは広く知られているが, 近年, LPR では胸焼けや吃逆などの胃食道逆流症 (GERD) 症状は10~20%程度であるのに対し, 音声障害は約70%にまで起こるとされる. 音声障害の病因は, 慢性的な酸暴露による上皮, 粘膜固有層の損傷が主体で, 上皮の肥厚・角化, 潰瘍, 肉芽, 溝の形成, 粘膜固有層の炎症と乾燥などが指摘されている. 動物モデルにおいては, 喉頭に酸やペプシンを暴露すると, 肉芽腫の発生や粘膜上皮内の炎症, 扁平上皮の過形成や潰瘍, 線維化を来すことが確認され, また, LPR 患者の咽喉頭の生検組織において, 声帯上皮, 喉頭前庭, 後部声門の上皮内のペプシンの存在, 細胞間間隙の増大, 粘膜保護作用のある炭酸脱水素酵素やカドヘリンの減少などが報告されてきた. これらの炎症が音声障害を引き起こすと同時に, LPR 患者の発声はしばしば過緊張となり, 筋緊張発声障害を招くことが多い. 最長発声持続時間 (MPT), jitter, shimmer, 雑音成分などの異常を来す. 歌手は LPR の高リスク群とされている. 歌唱に腹圧のサポートが必須で, 高い腹圧によって胃酸の逆流が生じやすいこと, パフォーマンスの前は常に強いストレスにさらされること, 食事や飲酒に無頓着であることなどが原因で, 嗄声のほか音声疲労や歌唱中の声の途切れ, 痰の引っ掛かりなどを訴えることが多い. LPR による音声障害の治療は, 食事様式の適正化, ライフスタイルの改善, 胃酸逆流の抑制で, 胃酸分泌を強力に抑えるプロトンポンプ阻害薬 (PPI) は多くの場合奏効する. これらの治療により, jitter, shimmer, HNR, VHI, GRBAS, RSI, RFS などの改善が多数報告されている. 音声障害患者において, 酸逆流の関与の有無について的確に診断し治療することが重要である.
著者
愛場 庸雅 森 淳子 小島 道子 梶本 康幸
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.43-49, 2022-01-20 (Released:2022-02-01)
参考文献数
14

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) では, 嗅覚障害, 味覚障害がよく見られる. その現状と病態を探るために, 2020年3月~2021年2月末までに大阪市立十三市民病院に入院した COVID-19 の中等症・軽症患者を対象として, 嗅覚味覚障害の頻度と転帰, およびその性別, 年齢による差について診療録に基づいて調査した. 嗅覚味覚障害の有無の評価が可能であった患者750名のうち, 嗅覚障害は208名 (27.7%), 味覚障害は216名 (28.8%) に見られ, うち181名 (24.1%) は嗅覚味覚両方の障害が見られた. 有症率に男女差はなかったが, 若年者では高く, 加齢とともに低くなっていた. 嗅覚障害患者の83%, 味覚障害患者の86%は, 退院までに治癒または軽快していた. 治癒に至るまでの平均日数は嗅覚障害9.4日, 味覚障害9.2日であった. 女性の改善率は男性よりやや低かった. COVID-19 の嗅覚障害は, 感冒後嗅覚障害と比較して, 年齢性別の頻度や改善までの期間が明らかに異なっているので, 両者の病態には違いがあることが推測された.
著者
長井 慎成 東野 哲也 松田 圭二 外山 勝浩 河野 浩万 小玉 隆男
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.110, no.11, pp.707-712, 2007-11-20 (Released:2008-12-25)
参考文献数
15
被引用文献数
4 3

【はじめに】中耳真珠腫の画像診断にはCTが第一選択として用いられるが, 軟部陰影を質的に鑑別するためにはMRIが有用である. 当院では2002年よりMRI撮像に加え, 拡散強調法による撮像を用い真珠腫診断を行っている. これまでに当院にてMRI拡散強調画像で病態評価を行った中耳炎症例を用い, 本撮像法の有用性について検討したのでその結果を報告する.【対象と方法】2002年10月から2006年7月に, 当院で拡散強調画像を加えた側頭骨MRI検査を行った56例を対象とした. 男性35名, 女性21名, 年齢は3歳~76歳で, 平均42.8歳であった.【結果】真珠腫診断における拡散強調像の感度は85.4% (41/48), 特異度は100% (8/8), 陽性的中率は100% (41/41), 陰性的中率は53.3% (8/15) であった. 拡散強調像にて真珠腫を同定できた症例の画像におけるサイズは, 5mmから40mmであり, 4mmの先天性真珠腫は評価困難であった.【考察】今回の検討から, 本撮像法の中耳真珠腫診断における有用性が確認された. 今後本撮像法の分解能が向上することにより, 中耳真珠腫診断におけるMRI検査の位置づけがさらに高まるものと期待される.
著者
藤川 太郎 白倉 聡 畑中 章生 岡野 渉 得丸 貴夫 山田 雅人 齊藤 吉弘 別府 武
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.8, pp.1046-1052, 2015-08-20 (Released:2015-09-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

癌治療において低ナトリウム血症はしばしば遭遇する電解質異常である. 今回われわれは, 中咽頭癌進行症例に対してシスプラチン (CDDP) 同時併用放射線治療を行い, 計3回の grade 4 の低ナトリウム血症を経験したので報告する. 初回および2回目の低ナトリウム血症は CDDP 投与後に出現し, 脱水と多尿を伴い, 輸液と塩分の補充により1週間程度で改善した. ナトリウムの排泄過剰の所見から塩類喪失性腎症が原因であると考えられた. 3回目の低ナトリウム血症の原因であった抗利尿ホルモン不適合分泌との比較から, 細胞外液量とナトリウムバランスの評価が低ナトリウム血症の鑑別と適切な治療において極めて重要であると考えられた.
著者
藤田 岳 上原 奈津美 山下 俊彦 西川 敦 河合 俊和 鈴木 寿 横井 純 柿木 章伸 丹生 健一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.126, no.3, pp.181-184, 2023-03-20 (Released:2023-04-01)
参考文献数
12

頭頸部外科領域にロボット手術が保険適応となり, 耳鼻咽喉科医にとってもロボット手術は身近な存在となってきた. しかし泌尿器・消化器領域で発展してきた手術ロボットを, そのまま耳や鼻の手術に応用することはまだ難しい. 私達は経外耳道的内視鏡下耳科手術 (Trans-canal Endoscopic Ear Surgery : TEES) を支援するロボットの研究・開発を複数の大学の工学部と共同で行っている. 手術ロボットの研究を通して, 自分たちの手術の特徴や問題点を改めて見直す機会が得られている. 本稿では, これまでの耳科手術用ロボットや内視鏡保持ロボットについて概略を述べ, 現在研究中の TEES 支援ロボットのコンセプトと試作機について述べる. また, 将来ロボット自身が自律的に手術を行うことを目標とした, ロボットの自律レベル向上に向けた研究についても紹介する.
著者
森 安仁 上羽 瑠美 橘 澄 佐藤 拓 後藤 多嘉緒 藤巻 葉子 二藤 隆春 山岨 達也
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.7, pp.932-938, 2017-07-20 (Released:2017-08-18)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

歯ブラシによる口腔・咽頭外傷は小児に多く, 外力の加わる方向により深頸部や頭蓋内を損傷する可能性がある. 当院で入院加療を行った4症例を報告する. 症例1は咽頭後壁の受傷翌日に発熱と呼吸障害を来し, 深頸部・縦隔の気腫と周囲への感染を認め人工呼吸管理を要した. 3症例は口腔内の創傷が軽微だったが, CT で全例に気腫を認めた. 症例2は左副咽頭間隙を中心とした気腫, 症例3は咽後間隙上方に気腫と腫脹, 症例4は右顎下部から副咽頭間隙に気腫と腫脹を認めた. 全例が抗菌薬による保存的治療で治癒したが, 歯ブラシ外傷では局所所見が軽微な場合でも異物遺残や気腫, 深部感染の可能性に留意し, CT などの画像評価を行うべきである.
著者
後藤 穣
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.124, no.7, pp.943-947, 2021-07-20 (Released:2021-08-04)
参考文献数
6

鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版 (改訂第9版) が2020年7月に改訂された. 今回の改訂では2019年に実施されたアレルギー性鼻炎有病率調査結果が掲載されたこと, 病態メカニズムに自然Ⅱ型リンパ球の関与が明記されたこと, 重症・最重症スギ花粉症に対して抗 IgE 抗体療法が推奨されたことなどが新しい改訂ポイントである. アレルギー性鼻炎・花粉症の治療の原則は, 抗原除去・回避, 薬物療法, アレルゲン免疫療法, 手術療法の4つがある. 近年, 薬物療法薬では複数の非鎮静性第2世代抗ヒスタミン薬が新しく上市された. 鎮静作用がほとんどなく, 安全性が高い薬剤が選択できるようになった. 舌下免疫療法ではスギ舌下錠が市販され舌下液よりも高い有効性を示し, スギ舌下錠とダニ舌下錠の併用も安全性の高い治療法であることが臨床研究で確かめられた. 低年齢のスギ花粉症有病率が増加しているが, 根治的治療であるアレルゲン免疫療法を小児期から積極的に開始することも考慮すべきである. また, 2019年12月にはアレルギー性鼻炎領域では, 世界初の生物学的製剤が重症以上のスギ花粉症に対して適応追加された. 抗ヒスタミン薬などの薬物療法や舌下免疫療法は軽症から最重症までの患者に推奨されているが, 抗 IgE 抗体療法は重症以上のスギ花粉症に対してのみ使用できる. 患者の病型や重症度に応じて適切に治療方法を選択すべきである.
著者
野村 俊之 山本 昌彦 鈴木 光也 吉田 友英 大和田 聡子 重田 芙由子 池宮城 慶寛 田村 裕也
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.11, pp.869-874, 2011 (Released:2011-12-02)
参考文献数
10
被引用文献数
1

2007年8月より2009年7月までの2年間に, 東邦大学医療センター佐倉病院耳鼻咽喉科において良性発作性頭位めまい症と診断した1,145名を対象とし, われわれが考案した運動療法で治療を行った. われわれの方法は患側が特定できなくても整形外科疾患など頸椎・脊椎に問題のある症例でも, 患者が自宅で自分のペースで治療を行えるという特徴を有している. その結果1カ月以内に80.7%, そして3カ月以内では91.7%のめまい消失をみた. その中でも発症より1週間以内に受診した症例では2週間以内に80%の症例がめまいの消失をみている. めまい発症より受診時期が遅くなるにしたがって治癒期間も長くなる傾向があった.
著者
橋口 一弘 若林 健一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.1, pp.24-29, 2020-01-20 (Released:2020-02-05)
参考文献数
16

アレルギー性鼻炎の治療選択肢は近年増加してきたが, 薬物治療の中心となるのは第2世代抗ヒスタミン薬である. 抗ヒスタミン薬は第1世代と第2世代に分類されるが, 基本的な構造は共通である. 第1世代抗ヒスタミン薬の特徴として, 脂溶性が高く組織移行性が良好である. このため中枢移行しやすくなり, 眠気などの副作用を起こす. また H1 受容体に対する選択性が低いため, ムスカリン受容体, セロトニン受容体などアミン受容体に共通構造を持つほかのアミン受容体にも結合をする. 口渇, 食欲増進などの副反応はこのためである. こういった不要な反応を軽減することを目的として第2世代抗ヒスタミン薬が開発された. 第2世代抗ヒスタミン薬の特徴として, 脂溶性が低下し血中タンパク結合が多くなった. このため組織移行性が悪くなったが, 中枢移行が少なくなり眠気などの副作用が減った. H1 受容体に対する選択性が高くなったことから, ほかのアミン受容体への結合が少なくなり, 第1世代抗ヒスタミン薬で見られた副反応が減ってきた. 一方で組織移行性の低下なども見られることから, その効果には個人差があることも理解しておく必要がある. 近年経口剤ではなく, 投与経路を変更した貼付剤の抗ヒスタミン薬が開発されてきた. さまざまな投与法の選択肢が増えてきたことで, 第2世代抗ヒスタミン薬の特徴を理解し, 患者満足度を上げるように使用することが大事である.