著者
松山 洋一 藤江 真也 齋藤 彰宏 XU Yushi 小林 哲則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.220, pp.7-12, 2010-10-01
参考文献数
7

通所介護施設において,人同士の会話に介在させ,コミュニケーションを活性化するロボットについて報告する.本研究では,具体的なタスクとして高齢者通所施設で行われている難読ゲームを取り上げる.難読ゲームは,司会者の存在する複数人対話の一形態だと考えることができる.ここでロボットは,複数人会話における制約を満たしながら,会話を活性化させるための行動選択を行う必要がある.本論文では,既に人同士で行われているコミュニケーションを妨害せずに活性化を実現するため,会話における参加者の役割や,参加者間が共有する話題を推定しながら,様々な場面において適した行動を取るフレームワークを提案する.
著者
平山 博史 沖田 善光
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.98, no.309, pp.63-70, 1998-09-29
参考文献数
2

細胞間の生化学的情報伝達過程における生体分子の標的細胞表面近傍での振る舞いを解析する理論物理的方法をO'Neil(1976)の研究に基づいて解説した.生体分子を剛体球とし、細胞表面を平面と仮定して、流速圧力の変化が大きい内部領域とそれらが小さい外部領域に分離し、生体分子が細胞表面に接触する極限状態を内部領域流れと外部領域ながれが重複するMatching条件とした。本研究では内部流れの各方向の流速成分を圧力とを球と平面との正規化距離εのべき級数展開で表わした(すなわち摂動).細胞表面および、球粒子上での流速の境界条件から漸近級数展開の各項を決定していった.またそれらよりレイノルズ方程式を求め、解析的に圧力解を求めた.この圧力解に対して漸近級数展開を適用して外部流れ場と内部流れ場との接合条件を決定した.得られた流速式から細胞表面に作用する力、モーメントと生体分子に作用するそれらを計算する解析解を得た.本研究は生体分子が細胞表面に接近した場合の物理的環境を推定するのに有益である.
著者
泉舘 辰太郎 二川 佳央 石原 豊彦 筧 正兄 窪田 宣夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1995, no.1, 1995-03-27

電波の人体に対する作用は熱作用が支配的であるとされおり、これを基に防護指針が決められている。これに対して、非熱作用については未知な部分が多く残されている。本研究では主としてマイクロ波パルスの影響について細胞レベルで調査するための準備及び基礎実験としてV,UHF帯における培養細胞の培養液の複素誘電率を測定し、また細胞へ適切に電波が照射されるための装置の開発を行った。
著者
奥山 康男 坂本 和義
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.511-518, 2005-04-01
被引用文献数
3

本論文では, 医療事故(エラー)要因とその対策項目を簡便に導出する方法を提案している.某病院放射線科で発生した1年間のエラーデータを用いて, 人間(医療技術者と患者)のエラーと機械(放射線機器)のエラーとに分類した結果, 99%が人間によって起因していた.医療におけるエラーは, 患者の生命に直接影響を及ぼすため責任の在り方を厳しく問われる.そのためエラー報告は当事者の心理面に大きく関与し虚偽報告されることが多く, いまだに確立された解析法が公表されていない.本研究は, AHP(階層分析法)を用いてエラー要因のウェイト並びに整合度を求めるとともに失敗因子の分析法について考察した.その結果, エラーは医療技術者の知識不足と錯誤による要因が高いウェイトを示し, 技術者の再教育を行うことが約50%のウェイトで必要であることを認めた.更に, エラー発生に伴う損益とエラー回避させるために必要となる費用との比率(損益対費用効果)を求めた結果, 技術者に対する再教育投資のウェイトがエラーを回避するために有効であり, 経済的見地からも本研究の分析法が有用であることを示した.
著者
持田 武明 原田 啓司 丸山 充
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.127, pp.25-28, 2005-06-16
被引用文献数
2

放送のデジタル化に伴う効率的なHDTVコンテンツ制作作業を支援するため, IPネットワーク技術を用いて非圧縮HDTV映像信号を低遅延で伝送可能な「i-Visto(アイビスト)ゲートウェイXG」を開発した.「i-VistoゲートウェイXG」は, 10Gbit/sのネットワークインタフェースを使い複数のHDTV映像信号を同時に送受信できる多重伝送機能, 1Gbit/sのGbEインタフェースを2本束ねてHDTV映像信号を送受可能なインバースマックス機能を有する.本稿では各機能の実現方法, フィールド実験を含む評価結果, およびi-Vistoの今後の展開について紹介する.
著者
小倉 史帆 豊田 規人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.249, pp.53-56, 2014-10-16

本研究ではラダー型ネットワークについて4×3種類のモデルを作り,ブライスのパラドックスが起きるかどうか考察した.今回のモデルでは,バイパスは双方向であると仮定している.コンピュータシミュレーションによってナッシュフローを求め,バイパスの流量がノントリビアルな場合において,ブライスのパラドックスが起きうることを示した.また,パラドックスが起き得る条件も求めた.
著者
宮川 道夫 川田 洋平 Mario Bertero
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1512-1521, 2001-07-01
参考文献数
17
被引用文献数
10

チャープパルスと信号処理技術を用いて生体の内部構造及び温度変化量の分布を計測するチャープパルスマイクロ波CT(CP-MCT)によって獲得されるCT画像を数値計算により求める手法を開発した. ガウスパルスを用いて送受信アンテナ間の余効関数をFD-TD法により計算し, これに時間軸で入カチャープパルス信号を畳み込み, 実測と同様の信号処理を行って1点の計測信号を生成する. この計算を並進走査軸の各点で繰り返し, 投影データを得てCT画像を生成する. 余効関数法と名づけたこの計算手法の妥当性を, 分解能や温度変化量計測の実測結果とそれを模擬した計算結果とを比較することによって示した. 余効関数法を用いれば, 実測が困難な撮像系の点広がり関数を求めることも可能である. また, ヒト頭部の解析モデルを作成して減衰量分布や温度変化量分布のシミュレーションを行い, CP-MCTによる生体撮像の可能性について検討した.
著者
舟谷 文男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CQ, コミュニケーションクオリティ
巻号頁・発行日
vol.98, no.618, pp.5-8, 1999-02-25

北九州市は、政令指定都市の中でも高齢化が進行しており、行政の立場や一般市民の立場から幅広く高齢社会対策が展開されてきている。そこでは、介護保険制度にも適合する小学校区を基本単位とし、それを区から全市へと積み上げて行く三層構造の地域区分がなされ、相手の顔が見えるFace to Faceの「ふれあいネットワーク」を基礎とするまちづくりが推進されてきており、そのシステム化の概要と要点を報告する。
著者
鈴木 賢一郎 坂野 鋭 大塚 作一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.742, pp.7-10, 2005-03-11
参考文献数
10

本報告において, 我々は日本語テロップの縁取りに着目した文字認識手法を提案する.日本語テロップには可読性の向上のために黒い縁取りがなされている.この縁取りと文字領域の輝度勾配は比較的安定していると考えられることから, このエッジをSobelフィルタで検出し, 加重方向ヒストグラム特徴と同様の方法でヒストグラム化する特徴抽出系を設計した.認識実験の結果, 位置, サイズが完全に正規化された人工データでは100%, また, 評価用映像データベースに現れるテロップでは約70%の認識率が得られ, 提案手法の有効性を確認した.
著者
出口 大輔 村瀬 洋 梅田 一彰 斎藤 正孝 藤 賢一朗 山下 真吾 末次 祐樹 高井 翔太 佐藤 竜太 丸山 拓馬
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.467, pp.347-358, 2011-03-03
参考文献数
4

電子情報通信学会情報・システムソサイエティパターン認識・メディア理解(PRMU)研究専門委員会が今年度実施したアルゴリズムコンテスト「ターゲットをロックオンせよ!〜移動物体の追跡〜」の実施内容について報告すると共に,受賞者によるアルゴリズム紹介を掲載する.今回の課題は「動画中の物体追跡」をテーマとし,高速かつ精度良い物体追跡の実現を課題とした.また,応募総数は歴代2位の73件であり,そのうち7件が入賞した. This paper reports a summary of the 14th algorithm contest entitled "Lock on targets! - object tracking -". This contest is supported by PRMU (Pattern Recognition and Media Understanding) technical group of IEICE-ISS. In this paper, brief overviews of prize-winning algorithms are presented by the winners. The contest in this year asks fast and accurate algorithms to track objects from videos. 73 algorithms were submitted to this contest (2nd largest submissions among the past contests), and 7 algorithms had won the prizes.
著者
横山 牧 蜂須 拓 佐藤 未知 福嶋 政期 梶本 裕之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.483, pp.93-98, 2013-03-13

タッチパネルを搭載した携帯端末が近年急激に普及しているが,このタッチパネルは触覚フィードバックが欠けているためにテキスト入力が難しいという問題を抱えている.この問題に対して,本研究ではキーの境界線に段差がついたシートと視触覚クロスモーダル現象を用いることで,タッチパネルに触覚フィードバックを簡便に付加する手法を提案する.本稿では提案手法により付加される触覚フィードバックがテキスト入力パフォーマンスに与える効果を検証した実験,そして視触覚クロスモーダル現象によってヒトの知覚量がどの程度変化するかを検証した実験について述べる.
著者
金 安植 有澤 準二 三澤 顕次 木村 主幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMCJ, 環境電磁工学
巻号頁・発行日
vol.96, no.441, pp.37-44, 1996-12-21
参考文献数
10
被引用文献数
4

本報では変動磁場による金魚の行動と体色に及ぼす誘導電流の影響について検討を行つた。具体的には、これまでに報告している150mT静磁場と62mT、10, 30, 50, 70Hz磁場の曝露影響を踏まえ、ここでは70Hz, 62mT磁場の金魚の遊泳行動に不統一な影響が周波数そのものの影響か、または磁場強度による誘導電流の大きさによるものかを確かめるため、磁場強度を26mTに低下させ、行動観察を行った。その結果、磁場曝露期間中の金魚の遊泳行動に抑制が観察された。その一方で、曝露後の金魚に体色の変化が見られ、この原因が誘導電流にあるのではないかと考えられたため、金魚の形に近い楕円回転体モデルから誘導電流を試算した。また、その誘導電流値と同値の交流電流を金魚に流し、その体色変化を観察した。さらに、150mT静磁場での金魚の行動が亢進された原因についても詳しく検討した。
著者
渡辺 大
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.314, pp.17-22, 2009-11-24
参考文献数
23

暗号学的ハッシュ関数は電子署名やメッセージ認証子をはじめとして多くの応用を持つ重要な暗号プリミティブである。しかし、近年になってハッシュ関数に対する攻撃手法が大きな進展を見せ、既存のハッシュ関数の多くが安全ではないことがわかってきた。そこで、米国標準技術研究所(NIST)は最新の設計および安全性評価技術を盛り込んだ新しいハッシュ関数を標準に定めるべく、ハッシュ関数アルゴリズムを広く一般に公募して選考を開始した1(SHA-3コンペティション)。本稿では、これまでのハッシュ関数の技術を概観すると共に、SHA-3コンペティションの途中経過を簡単に紹介する。
著者
東郷 俊太 香川 高弘 宇野 洋二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.480, pp.173-178, 2013-03-13

本研究では,人間が一次元の手先の目標軌道を追従する,一次元軌道追従タスクを行う動作を計測し,解析を行った.このタスクにおいて,追従方向と直交する方向はタスクの達成とは関係の無い方向である.計測結果として,終端姿勢において被験者の手先はタスク達成と関係の無い方向に大きくばらついた.また,接線速度の概形はベル型であり,小さなピークが多く含まれていた.UCM解析を用いて関節間協調を定量的に評価した結果,タスクの達成に影響を与えないばらつきが時間と共に増加した.これらの運動学的な特徴や関節間協調の特徴は,我々が提案したUCM参照フィードバック制御法によってよく再現された.UCM参照フィードバック制御法は,時々刻々と目標UCM空間を生成し,UCM空間上から最適な一点を選び続ける制御方策である.これらの結果は,人間はUCM空間を参照することによって,タスク達成に関係の無いばらつきを許容しながら,多関節を協調的に制御していることを示唆している.また,人間の視覚運動制御系においてUCM空間の神経表現が存在している可能性があることを示唆している.In this paper, we measured and analyzed a one-dimensional target tracking task in which human subjects tracked one-dimensional target trajectory of the hand. In this task, the direction orthogonal to the movement direction is task-irrelevant. As a result, the hand position at the movement end was more varied in the task-irrelevant direction. Moreover, the profile of tangential hand velocity was roughly bell-shaped but they also had small peaks. Results of UCM analysis which is used to quantify the joint coordination showed that the task-irrelevant variance increased with time. These characteristics of kinematics and joint coordination were well reproduced by our UCM reference feedback control. UCM reference feedback control generates a target UCM space each time step and selects one point in UCM space. These results suggest that the human refers to UCM space step by step to control a multi-joint arm allowing the task-irrelevant variability. Moreover, it is suggested that the human would represent UCM space in visuomotor control system.
著者
青山 秀紀 山岡 勝 坂田 毅 大嶋 光昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.248, pp.49-52, 2013-10-17

本稿では,スマートフォンとクラウドサーバを利用した新しい形式の家電システムである「スマート家電」を紹介する.スマート家電は,家電機能の外部化と利用ログの収集機能により,従来の家電の持っていた物理構造的制約,時間的制約,顧客接点の制約を解決する.我々は,スマート家電の実装方法として,スマートフォンの NFC と通信回線を利用して家電{スマートフォン{クラウドサーバを繋ぐ NFC 接続方式と,無線で家電とスマートフォンやクラウドサーバを接続する無線接続方式の二つの方式を開発・実用化し,スマート家電の特徴を活かした新しいユーザ価値を実現した.
著者
原 大介 前田 吉則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.67, pp.61-66, 2005-05-13
参考文献数
1
被引用文献数
1

ろう者, Coda, 聴者(通訳者および手話学習者)の各グループに対して, 日本ろうあ連盟発行の「新しい手話I」に掲載されている手話単語を提示し, 1から5までの5段階で容認度判定を実施した.ろう者と聴者(通訳者), ろう者と聴者(手話学習者)による容認度判定の結果には, 統計的に有意な差が認められた.ここでは, ろう者と通訳者の2者間の容認度判定結果に論点を絞りその詳細およびx2乗検定結果を詳しく論じる.
著者
萩原 直洋 塚田 稔 合原 一幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング
巻号頁・発行日
vol.96, no.584, pp.183-188, 1997-03-18

実際の生理実験結果によれば、海馬神経回路の可塑性は時空間パターンに依存しニューロン間結合荷重が変化する事が知られている。海馬は外界の時間的・空間的情報を一つの文脈として一時的に保持する短期記憶の場所と言われている。ニューロン間の結合の重み(荷重)を変える事(学習則)によって、その情報は神経回路の荷重空間に一時的に貯えられる。本研究では、海馬の短期記憶のモデルとして単純な一層全結合のニューラルネットを用いた。入力は順序の組合わせの異なる時空間系列パターンとし、学習則に関しては、海馬CA1回路の長期増強(LTP)のデータに基づき、事象の生起の一致性と時間的履歴現象を考慮して提案された塚田らの時空間学習則とHebb則およびHebb則の時間への拡張則とする。これらの学習則による出力パターン分離機能をハミング距離を比較する事によって評価した。この結果、塚田らの時空間学習則は最も優れている事が明らかとなった。
著者
片山 滋友
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.536, pp.11-16, 2003-12-12
参考文献数
10

図表とその内容を説明した230字程度の文章を左右に配置してCRTディスプレイ上に2分間提示し、その内容をどの程度記憶しているか特性を測定した。その結果、20歳前後の右利きの男子学生において、図表を左に横書き文章を右に配置したとき、その逆の配置に対して有意差が認められ、平均13%ほど記憶成績が良くなることが明らかになった,しかし、被験者が女性の場合や左利きの男性では、左右配置に有意差が認められなかった。また、左右配置の因子と文章の左右揃え、配置間隔、視距離の各因子に対してそれぞれ交互作用が認められた。これらの実験結果より左右差発生の原因として人間の視線動作の習慣性と認知機能のラテラリティの二つが考えられることを指摘した。
著者
三浦 健一郎 坂戸 勇介 河野 憲二 小川 正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.96, pp.61-66, 2011-06-16
参考文献数
11

日常の視覚環境において、興味を惹く対象物が視野の中で動いている場合には、その対象物を見るために2種類の眼球運動が起こる。一つは対象物に視線を向ける高速で一過性の眼球運動であり、サッケードと呼ばれる。この眼球運動は対象物の像を網膜中心窩に捉えるように働く。もう一つは、対象物の像を網膜中心窩に保持し続けるように働く、ゆっくりとした滑らかな眼球運動であり、追跡眼球運動と呼ばれる。これら二つの眼球運動は、通常一つの対象物に向かって起こるが、その協調動作を実現する神経機構はまだ良くわかっていない。本研究では、この二つの眼球運動の基盤となる視標選択が、同一の神経機構に支配されているか否かを調べるために、動く6つの刺激を用いた、視標選択の難易度が異なる二つの視標探索課題(ボトムアップ的手掛かりが利用できるか否か)を行っている時のヒトの眼球運動を調べた。その結果、追跡眼球運動系にはサッケードの実行とは無関係に働く視標選択の機構があること、サッケード系の視標選択と追跡眼球運動系の視標選択におけるボトムアップ的手掛かりの重要性が異なること、サッケード系と追跡眼球運動系で異なる視標を選択する可能性があることを示唆する所見を得た。これらの結果は、サッケードと追跡眼球運動の視標選択が完全に同一の神経機構に支配されているのではないことを示唆する。
著者
長澤 竜馬 清水 久恵 三澤 顕次 山下 政司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.279, pp.13-17, 2009-11-05
参考文献数
8

一般に,心拍数の増減が感性の興奮状態を表すとされているが,これまでの研究や専門文献から日常生活程度で起こる弱い興奮状態においては,その概念が常に成り立つとは言い難いのが現状である.そこで,弱い興奮時にも応答するセンシティブな興奮指標を考案することにした.多角的なアプローチの中で,感性喚起刺激時の呼吸波と心拍変動のRSA(呼吸性洞性不整脈)成分などの相互相関係数を互いの遅れ時間を考慮して求めたところ,主観評価の興奮スコアとの関連が見出された.これは心肺系の休息レベルとの関係が示唆されるRSA機能によるものと考えられ,感性の興奮時にはこの機能が減弱すると推測される.