著者
高田 保之
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

超撥水面上で,過冷却下において安定的に存在する蒸気膜の性質を解明することを目的として,超撥水コーティングやテフロン(PTFE)コーティングを斑点状に施した出伝熱面を作成し,プール沸騰実験を行った.その結果,PTFE を斑点状にコーティングした伝熱面は,通常の銅面に比べて,低過熱度で沸騰を開始し,核沸騰熱伝達特性もすぐれていることが分かった.また,沸点以下で発泡を開始する現象を発見し,溶存空気が現象に深く関係していることを確認した.
著者
笹月 健彦 平山 兼二 木村 彰方
出版者
九州大学
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1986

家族性大腸ポリポ-シス患者由来のポリ-プ30例,大腸癌20例および非遺伝性大腸癌20例を対象として、正常粘膜,ポリ-プ,癌におけるがん遺伝子の発現および種々のプロ-ブを用いたヘテロザイゴシティ消失(LOH)の検索を行なった。調査し得た全例において、cーmyc遺伝子の発現は正常粘膜,ポリ-プ,癌の順に増加しており、その逆にcーfos遺伝子の発現は減少していた。このことよりcーmycは細胞増殖に、cーfosは細胞分化に密接に関与すると推定された。以上の傾向は遺伝性,非遺伝性いずれの大腸癌においてもみられた。家族性大腸ポリポ-シス由来の大腸癌においては、第5,6,12,15,17,22染色体に、20〜50%の症例でLOHが検出された。非遺伝性大腸癌を対象とした場合にも第5,6,15,17,22染色体に10〜30%の症例でLOHがみられた。また本症ポリ-プにおいても、低頻度ながら第12,17,22染色体のLOHが検出されたことより、LOHは遺伝性ー非遺伝性いずれの大腸癌においても特異的な事象ではないが、家族性大腸ポリポ-シスではやや高頻度であり、種々のがん化機構への感受性がより高まっていると推定された。本症多発家系(16家系)構成員を対象として、種々のプロ-ブを用いたRFLP解析を行ない、Mortonの遂次検定法による連鎖検定を進行中であるが、密な連鎖の報告があったCllpllを含めて、有意の連鎖を証明できたものはない。しかし,最大ロッド値が正の値をとるマ-カ-は、第1,5,11,22染色体に各1個、第12染色体に4個見出しており、更に検索を進めている。また本症との連鎖が示唆されていたHLAについては、患者群,り罹同胞対,家系構成員を対象とした解析により、連鎖を否定した。種々の単クロ-ン抗体を用いた組織染色結果より、がん関連抗原(sidlyl Le^など)の発現が、本症患者の正常粘膜では、正常人組織に比して多く認められるため、生化学的にはがん化過程が既に進んでいると思われた。
著者
高科 直
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

申請者は申請書内の研究目的・内容[3]にある,社会経済学的な視点を取り入れた海洋保護区(MPA)の効果的な導入方法を明らかにする研究をすすめてきた。この研究において,漁業資源管理をするにあたり,努力や海洋保護区配分の最小単位である管理単位スケールの選択が,経済的便益や資源量などの資源管理の帰結に重大な影響を与えることを明らかにし,資源の生物学的特性に関する情報の他に,管理者らの意思決定も管理の成否に大きく関わる可能性を示唆した。また,伝統的な資源管理モデルを空間明示的なモデルに拡張し,最も重要な漁業資源管理の指標の一つである最大持続生産量(MSY)がどのように影響を受けるかを明らかにする研究を行った。モデルを空間明示的に拡張した場合,得られるMSYの値は必ず伝統的に使われてきたMSYの値より低くなることがわかった。すなわち,現実の空間構造を無視している伝統的なモデルは,MSYを過大に見積もっている可能性があることを示唆する。さらに,申請者は空間構造・齢構造を取り込んだ資源動態モデルを発展させ,MPAの導入が漁獲量を増加させるための理論的条件を初めて導きだした。この条件は,漁獲対象種1個体当たりの再生産数が中庸な値になるとき達成され,同時に漁獲高を増加させるという観点からみると,MPAは必ずしも有効な管理手段では無い事を示唆する。以上の3研究は現在論文にまとめ,審査中である
著者
柴田 篤
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1,『天主実義』の諸版本を調査・検討することによって、本書の成立事情、諸版本の異同、文字の改竄などについて明らかにした。2,『天主実義』に見える西洋人と中国人との対話の背景について、引用文の典拠や前提となっている思想を具体的に明らかにした。3,『天主実義』の著者であるマテオ・リッチの中国思想に対する考え方を明らかにした4,マテオ・リッチが『天主実義』を著述した意図と目的を、本文に即して具体的に明らかにした。5,『天主実義』の重要概念である「天主」と「霊魂」に関して、原文(中国文)の使用方法を分析することによって、従来の誤読を修正した。6,『天主実義』全篇の現代語訳を完成させ、我が国ではじめて出版した。7,『天主実義』を正確に現代語訳することによって、本書の持つ思想史的意味が従来以上に明らかになった。8,『天主実義』本文に見える固有名詞(人名・書名・地名)の索引を作成した。9,明代末期から清代にかけて、『天主実義』がどのように読まれてきたかを具体的に明らかにした。10,朝鮮王朝において、『天主実義』がどのような影響を与えたかということを具体的に明らかにした。11,江戸時代において、『天主実義』がどのような影響を与えたかということを具体的に明らかにした。12,『天主実義』と関係深い『畸人十篇』の内容を検討することによって、今後の研究の方向性が明らかになった。
著者
永田 弾
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

冠動脈炎モデルマウスにおいてマイクロアレイ解析からサイトカイン、ケモカイン関連遺伝子が高発現していることがわかり、抗IL-6受容体抗体と抗CCL2抗体を投与した。結果としてこの物質だけでは炎症を抑制できないことがわかり、いろいろな物質の関与があることが示唆された。また、モデルマウスにおいて心機能は炎症によって低下する傾向がみられたがエコー輝度と冠動脈炎の程度との相関を見出すことはできなかった。検討数を増やすとともに手法も含め更なる検討が必要と考えられた。
著者
宮城 靖 諸岡 健一 福田 孝一 岡本 剛
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本人脳の完全連続標本を用い、3次元的整合性と高精細組織画像を両立させた。患者脳MRI画像をもとに最適に形状変形できる次世代型の定位脳手術用ヒト脳座標デジタルアトラスにより、難治性神経疾患のテイラーメイド外科治療に対応できる日本人版の定位脳手術支援システムを構築し安心・安全・精確な定位脳手術を実現する、そしてこれをもとに脳科学統合データベースの基盤を形成する。日本人脳の外表面3D形状モデルが完成し大脳基底核などの微細構造を抽出中、また形状の普遍性を担保するため120例の健常者MRIから脳の平均化処理、有限要素解析と機会学習を用いて実時間で最適な3D変形ができるパラメータを調整している。
著者
小澤 永治
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

今年度は,前年度の研究経過によって得られた結果をもとに,継続して大学附属の相談機関,児童相談所,児童養護施設等と連携し,心理臨床的援助が必要な児童・生徒とした臨床実践・臨床研究を行った。臨床実践研究の一つとして,前年度に開発した"不快情動への態度尺度"を用い,児童・生徒のストレスマネジメント教育の効果との関連について検討した。ストレスマネジメント教育の手法としては,情動への態度と関連の深い身体感覚や情動体験を取り扱う臨床動作法を用いた。対象者を不快情動への態度尺度の2因子得点の結果によって4群に分類し,2因子とも得点が低く不快情動への態度が乏しい群では,動作法体験中に"弛緩感・爽快感","動作への気づき"などの自体感が低く,集団で実施する中ではリラクセイション体験を得ることが乏しかったと考えられた。また不快情動への"切りかえ可能性"が高く,"拒否感"が低い群では,動作法中の肯定的な体験や自体への気づきが多く記述され,特に有効であった可能性が示された。このように,"不快情動への態度"のあり方によって臨床動作法の導入にあたっての配慮を変えてゆく必要性が考えられた。また,児童養護施設に入所している小学校5年~中学校1年生の生徒5名を対象に,1年間週1回~月1回の頻度で個別的に臨床動作法と遊戯療法を併用した心理療法の実践を行った。個別での継続的な心理療法によって,行動や情動制御の改善を図ったものであるが,各対象者によって臨床動作法の受け入れや治療過程の差異が見られており,これらについて"不快情動への態度"という観点から考察を行った。以上の調査研究・実践研究より,思春期のストレスに関して情動発達の視点から新たな検討が行われ,今後の心理臨床実践に有意義な知見が得られたと考えられる。
著者
鹿野 雄一
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

これまでほとんど知られることのなかった垂直断崖の動物生物多様性と、垂直断崖の持つ生態的・進化的機能を明らかにすることができた。前者においては大台ケ原にて調査を行い、断崖壁面における動物多様性は周囲森林として比較して有意な差は示されなかった(ただし代表者の別の研究で植物多様性は断崖と周囲森林とで差異があることが示されている)。 一方後者においては西表島にて調査を行い、 地形侵食により河川に断崖ができ滝が形成され、その結果回遊性淡水魚 (クロヨシノボリ) が陸封・隔離され、 別の種へと種分化 (キバラヨシノボリ)したことが明らかになった。くわえてこのような種分化は各滝上で独立に起きており、遺伝的にもそれぞれの個体群が独立であるのにもかかわらず、同じ形態を示しており「平行進化」の典型的な例と考えられる。各滝上の陸封個体群と回遊個体群の遺伝距離は、滝の高さと比例しており、上記の仮説をさらに強化するものであった。また、遺伝的距離から地形侵食の速度を計算すると、例えば西表島にある沖縄県最大の滝「ピナイサーラの滝」は約8 万年かけて形成されたことが推定される。
著者
西山 浩司
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では,玄海灘からの海風進入に伴って気温,水蒸気,風向風速の変化と局地雷雲発生との関係を明らかにすることを目的に3年間観測を行ってきた.即ち,水蒸気の観測網を充実させることで,局地雷雲の発生を捉えようという試みを行ってきた.しかし,水蒸気量の変化と雷雲の発生を関連づけることが一部可能であったが,多くが不明瞭であった.このことは,観測期間中に,夏型の典型的な雷雲発生が不活性な気象状態が多かったことにも起因する.よって,統計的に明瞭な結果を導くために,科研研究期間終了後も観測は継続する予定である.今後は,水蒸気観測ネットワークとその他の気象情報を組み合わせた情報に基づいて,雷雲発生との関連性を抽出する.以上不明瞭な観測結果であったが,次に述べる数値実験及び解析を通じて,この研究における課題を認識することができた.最初に,局地気象モデルを用いて地表面状態の違いを考慮した鉛直安定度の時空間推移を計算した.その結果,海風の鉛直循環が水蒸気と熱を再配分し,鉛直安定度に強く影響していた.また,夏季の気象場をパターン認識アルゴリズムを利用して分類した結果,夏季の雷雲発生パターンと関連性する気象場が大まかに認識できた.以上から,大規模な気象場から得られる特徴,局地循環の特徴,地形の影響,時々刻々変化する日射と斜面との関連性をパターン化して,水蒸気ネットワークから得られる情報(気温と水蒸気量によって推定される鉛直安定度の推移)を組み合わせることによって,局地雷雲の発生と捉えることが有効であると考えられる.
著者
安松 京三 永富 昭
出版者
九州大学
雑誌
九州大學農學部學藝雜誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.129-146, 1959-10

The citrus fruit fly, Dacus tsuneonis Miyake, is a native pest of citrus trees in Japan, found only in the mainland of Kyushu and the Amami-Oshima Islands, and extensive outbreaks have occurred in some commercial citrus areas since 1947 when up to 60 % or more of the fruits were infested. Although the bionomics and morphology of the fly have been well investigated by T. Miyake (1919) and K. Fukai (1949-1953), several most important basic studies which are essential for its control have remained untouched. It was the purpose of the present investigations to fill the gap between the fundamental knowledge on the fly and establishment of satisfactory methods of its control. During the years 1949-1950, adult flies were collected at about weekly intervals from some citrus groves at Tsukumi District, Oita Prefecture, for the purpose of examining the sex-ratio and the rate of development of the eggs in their ovaries. These flies were dissected at given intervals, and the number of mature eggs counted under four categories : Stage I - the ovary is small, the eggs being hardly visible, Stage II - the ovary as a whole is larger, but the eggs being small not fully developed, Stage III - the ovary is very large and some proportions of the eggs are fully developed, Stage IV - almost all the eggs near the oviduct are fully developed. The results were given in Tables 1-7 and Figures 1-6. The ratio of males to females has remained about 1 from the time of emergence to the middle of August. The authors' observations suggest that copulation is of frequent necessity with female flies that are freely ovipositing and probably takes place after depositing each batch of eggs as observed in Rhagoletis completa (A. M. Boyce, 1934). These findings suggest the possibility of the fly control by a male annihilation method ? a trap baited with attractants ? before the male became sexually matured to prevent the female becoming fertile. The emergence dates vary from place to place, but the detailed studies of some authors and the present authors show that the emergence period covers about fifty days from the beginning of June to the middle of July. The length of the preoviposition period of the flies reared under field laboratory conditions was between 17-25 days. The dissection of the female flies revealed that at the end of July the development of the eggs of more than half of the fly population was in the stage IV and the ovaries were fully developed until at the beginning of August. On the basis of these studies the authors could determine the proper timing of chemical applications for the control of the fly, namely, the first application at the beginning of July and the second one at the middle of the same month. Fukai's recommendation on the time of chemical applications (from the end of July to the first decade of August) seems too late to get effective control. Very little has been known about the feeding habits of the flies in nature. In the earlier portion of the biological studies ordinary cane sugar and honey were used as food for the flies. However, the result was not entirely satisfactory, particularly with respect to longevity and fecundity of females. It was the authors' opinion that honeydew dropped by some Aphids, Coccids or Psyllids might be served as natural food for the flies because almost no fruit was available. during the fly season. Nutritional studies of the flies were made in 1950 under natural indoor conditions. Seven different diets were tested, and suggestive data regarding their natural food were obtained (Tables 8-17, Figure 7). The longevity of the flies decreased in the following order : honeydew of Ceroplastes rubens + water > honeydew of Aphis citricidus and C. rubens + water > 100 % honey + red star yeast + water > water alone > 100 % honey + red star yeast > 15 % honey alone > 100 % honey alone > without food. The fact that the flies fed with honeydew lived extremely longer and could produce eggs suggests that honeydew as the diet of adult flies is necessary for health, longevity and egg production. So far as the authors' observations went, Amphorophora lespedezae (on Lespedeza sp.), Aphis citricidus (on Citrus spp.), Ceraphis quercus (on Quercus acutissima), Greenidea kuwanai (on Quercus gilva), Lachnus tropicalis (on Quercus gilva), Toxoptera aurantii (on Eurya japonica) and Ceroplastes rubens (on Citrus spp. and many other plants) were seen in the citrus groves and nearby bushes as sources of honeydew for the flies at Tsukumi District. Certainly there is a good possibility that control of the flies can be successfully achieved by the eradication of such insects which are supplying honeydew in the fruit fly ecosystem. It is well known that in the late forenoon and early afternoon hours in sunny hot summer days the flies are found not within the citrus grove, but outside and along the border of the grove among wild vegetation and the invasion of the flies into the grove occurs in the late aftern000n hours (from about 3:00 p.m.). Comparison of temperatures between a citrus grove and a nearby bush in a ravine at Tsukumi District (Table 18) reveals the striking difference in temperature between the two environments. This phenomenon of the fly movements seems to be aroused by the temperature gradient, and the facts indicates that the oviposition of the flies takes place in the early forenoon and late afternoon hours in hot sunny days. Evidence of the movements of the flies suggests that the insecticidal applications should be made at the time just before the invasion of the flies into the grove and the insecticides are most effective when applied on border wild plants and further on citrus trees of the border area of the grove itself because the damage of the flies are very severe on citrus trees adjacent to the border wild vegetation.本報に於ては, ミカンバエ防除に必要な生態的生物的基礎研究の中で, 従来欠けていた重要問題のみを取扱つた. 1. ミカンバエ発生期間中の雌雄比について研究した結果, 雌雄は共に比較的長命であることが判明した. すなわち, 雌雄はその生存期間中に何回も交尾する必要があることを示すもので, この事実はミカンバエの誘引剤で, 雄のみを誘引するものの発見でも, ミカンバエの駆除には有効であることを示唆する. 2. ミカンバエ雌の卵巣が, 羽化後どの位の日数を経て成熟するかを研究した. その為には卵巣内での卵の成熟程度によつて4つの段階を設けてこれを研究した. それによつて, ミカンバエの卵巣成熟率は7月中旬で既に50%に達することが判明した. なお, ミカンバエの産卵前期間は17日乃至26日であることを確めた. ミカンバエの防除は産卵開始前に行わねばならないので, 薬剤撒布は7月上旬から中旬の終りにかけて実施することが賢明であることが推定された. 3. 従来ミカンバエの食性に就いては未知の分野ばかりであつた. 諸種の食餌について実験を行つた成績と野外に於ける調査から, 柑橘園及びその隣接の山林に棲息するカイガラムシやアブラムシ等の分泌する甘露が, 恐らく唯一の食物資源であることが断定された. すなわち,ミカンバエを誘引して殺すか又はなめさせて殺す毒餌の研究を行う価値のあることとそれら甘露を分泌する昆虫類の防除とが大切であることが明らかにされた. 4. ミカンバエの行動は日中の気温と密接な関係にある. すなわち,盛夏の候の日中の高い気温の時刻にはミカンバエは柑橘園には棲息できず附近の涼しい山林や谷間の茂み等に移動するので, それらのミカンバエの退避所を考慮に入れた防除方針の一つの樹立もできることが推定された.
著者
石村 真一 林原 泰子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

戦後の映画930本を対象とし、家庭用電化製品である電気炊飯器、電気洗濯機、電気冷蔵庫、テレビ、食卓を事例に生活の変化について考察した。その結果、家電製品の普及する1950年代は、食卓も含め、伝統的な床坐による生活が未だ定着している。 1960年代になると椅子坐の生活様式が増加する傾向を示す。しかしながら、1980年代後半から、洋室床坐という新たな生活様式が出現し、若い世代に普及する。
著者
横田 雅紀
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

現地での測定が極めて困難な超強風条件における海面抵抗係数について,暴風域外で観測された波浪観測データから逆推定可能なデータ同化システムに現地データを適用し,海面抵抗係数を風速の関数として推定した結果,風速30m/s以下の風速範囲については,複数の擾乱事例について,任意に設定した複数の初期値からほぼ同様の推定結果を得ることができ,従来,利用されているMitsuyasu・Hondaの式が概ね妥当であることが確認できた.さらに,強風が発生していない観測地点であっても,強風域で発生し伝播してきたうねりが観測されていれば,データ同化により強風速範囲の海面抵抗係数が推定可能であることを明らかにした.
著者
二階堂 太郎
出版者
九州大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

骨伝導性と骨置換性を併せ持つ β 型リン酸三カルシウム (βTCP) 人工骨置換材の骨置換速度の飛躍的増進を目的として、完全連通構造を有する海綿骨形態の βTCP フォームを創製した。本研究では、β相を安定化させる酸化マグネシウム (MgO) による 1500°C での焼結、及び、βTCP フォームの α-β 相転移温度以下での熱処理による α→β 相転移、によって βTCP フォーム骨補填材を創製した。得られたそれぞれの βTCP フォームを家兎大腿骨欠損部に埋入したところ、骨伝導性と骨置換性を示し、当該 βTCP フォームは新生骨に置換される骨置換材として有望であると示唆された。
著者
佐道 泰造
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

集積回路(LSI)の省電力化に向け、高性能なトンネル型トランジスタが要求されている。しかし、従来のSiを用いたトンネル型トランジスタでは、オフ電流が低減できるものの、オン電流が小さいとの課題がある。本研究では、トンネル型トランジスタの高性能化を目指し、絶縁膜上のGe結晶薄膜のバンド構造を直接遷移型化するための歪み導入プロセスを創出するとともに、Ge結晶薄膜への高濃度ドーピング技術を開発した。これにより、LSIプロセスとの整合性が良好で、高いオン電流を有する高性能なトンネル型トランジスタの基盤技術を開発した。
著者
伊東 正一 稲本 志良 加古 敏之 山路 永司 石川 行弘 丸山 幸夫 加賀爪 優 茅原 紘
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究はアジアのコメ需要が減退しつつあり、このままでは生産縮小に追い込まれるという、アジア農業にとっては危機的状況が予想されることから、アジア各国及び世界のコメ需要、さらに、今後の見通しについて解析した。結論は下記の通りである。1.世界の一人当たりコメ消費量は2000年代は年平均0.6%の減少率で推移している2.この減少率が続くと世界の一人当たりコメ消費量は2050年には58.9kgに減少する(シナリオ1)3.この減少率が2倍(シナリオ2)及び3倍(シナリオ3)になると、2050年にはそれぞれ52.7kg、及び46.2kgにまで減少する4.世界のコメの総消費量は2050年においてシナリオ1,2,3ではそれぞれ5億3,500万t、4億7,900万t、4億1,800万tとなり、シナリオ3では現在の消費量から増加しない、ということになる5.シナリオ1の見通しは現在の減少率の維持という最も控え目な予測であるが、IRRI(国際稲作研究所)が2003年に見通したものはこれより7%多い(2025年の時点)ものとなっている。国際研究機関の過剰な予測が懸念される6.アジア各国におけるコメ消費動向に関する研究は日本を除いて非常に少なく、コメ消費減退の実情が理解されていない7.1960年代から現在までの間に、台湾の一人当たり消費量は160kgから50kgに激減し、日本も120kgから60kg余に半減した。中国では2000年代に入り、100kgのレベルから減少の速度を加速し、年2kgの減少を呈しているこうした減退しつつある世界のコメ需要に対し、コメの加工向け、飼料向けの利用開発が求められる。こうした動きはアジア全地域で取り組む必要があり、効果的な方法の一つとして、日本が発展途上国に提供しているODA予算に対しても、アジア向けのODAにはコメ消費拡大に向けたプログラムに援助するということもアジア地域の食料安全保障対策や国際食糧需給政策として重要である。
著者
藤光 康宏 西島 潤 江原 幸雄
出版者
九州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

平成18年度は、前年度に引き続き福岡県中部の警固断層及び福岡県南部の水縄断層を対象とした重力測定を行った。重力測定には既存の2台の相対重力計を用い、また測定点の座標(緯度・経度・標高)の決定は、本研究で導入したGNSS受信機、及び福岡市発行の1/2500都市計画図と久留米市発行の1/2500都市計画図を用いた。警固断層の調査では、福岡市中央区輝国・谷・小笹・平尾地区、及び南区大橋・清水・大楠地区を中心に、高密度に測定点を配置した(測定点間隔50〜200m)重力探査を実施し、平成18年度までの結果と合わせて福岡市重力異常図の詳細部分の範囲をさらに拡大した。また、警固断層を横切る6本の測線を抽出し、基盤岩深度及び堆積層の層厚を推定するために、これらの測線に沿って基盤岩(花崗岩類)・第三紀層・第四紀層の3層構造による鉛直2次元解析を行った。既存ボーリングデータのある地点において鉛直2次元解析で推定された基盤岩深度や第三紀層・第四紀層の層厚と比較したところ、非常に整合性の高い結果が得られた。水縄断層の調査では、平成18年度に実施した水縄断層西端部(久留米市中心部)の重力測定の結果を受け、久留米市市街地で見られる水縄断層の延長線南側の低重力異常がどの程度の規模のものであるかを把握するために、測定点間隔500m程度で久留米市街地西方及び南方の重力探査を行った。その結果、この低重力異常を示す地域は、耳納山地の北側を山地に沿って東西方向に延びる水縄断層とは逆に南側が落ちており、かなりの広がりがあることから久留米市南西部は非常に厚い堆積層に覆われていることが推定された。以上のことより、高密度に測定点を配置して行う重力探査は、基盤構造及び堆積層の層厚の推定に有効であることが判明した。ボーリング調査より短時間で低価格な探査手法であるため、広範囲の基盤構造・堆積層分布調査に適した探査手法であると言える。
著者
水谷 明子
出版者
九州大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究ではハンミョウ(Cicindela chinensis)の幼虫を材料として運動検出と距離測定の視覚神経機構を調べた。ハンミョウの幼虫は地面の巣穴でエサとなる昆虫等を待伏せる。適当な大きさの昆虫等が近づくと跳び出しこれを捕獲するが、大きな物体を近づけると巣穴の奥に逃避する。この捕獲行動と逃避行動の切換えを調べることで、視覚機構を調べた。幼虫は6対の単眼をもつが、そのうち大きな2対の単眼で頭上を見ている。ダミ-標的に対する行動から、幼虫は自身が跳び上がれる高さ以下の標的にのみ捕獲行動をし、視角が同じでもそれより高い標的には逃避行動を示した。このことは、幼虫の行動が標的の高さで切換わることを示した。2対(4個)の単眼の視野測定から、複数の単眼の刺激の時間パターンがこの切替に関わることが示唆された。隣接単眼の視野は頭の近くでは重複せず、高いところでは大きく重複していた。このことから、隣接単眼が僅かな遅延でほぼ同時に刺激されれば逃避行動、順番に刺激されれば捕獲行動を引起こすとするモデルを提唱した。現在このモデルの鍵となる高さに応じて応答特性を変化させるニューロンを脳内で生理学的に検索している。視覚刺激要因のうち標的の運動速度は行動の切替には直接関与しないが、静止した標的は何れの行動も引起こさない。従って、視覚行動には標的の動きが必須である。電気生理学的に標的の動きに特異的に応答するニューロンを検索し、視葉内に数種の運動感受性ニューロンを同定し、その形態を明らかにした。現在、運動特異的ニューロンの形成回路を検索中である。
著者
原口 恵
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究は,情動刺激の処理と注意機能の関連を明らかにすることを目的とする。まず,情動刺激によるボトムアップ的な操作がその後の情動的注意の時間的側面に及ぼす影響について検討した研究に関しては,情動誘発盲という現象に着目している。この現象は情動的な刺激に注意を向けた直後に出現する標的を見落とす現象であり,刺激に注意を向ける前の情動的な処理が関わっていることが原因として考えられていた。本研究ではこの現象が情動刺激を繰り返し観察させるというボトムアップ的な情動操作によって消失したという結果が報告者の一昨年度の実験から得られている。この結果から,情動的注意の時間的側面には,刺激の情動性について前注意的に評価する段階が関与していることが示唆された。この成果に関しては現在,国際誌に投稿中である。また,情動刺激によるボトムアップ的操作が情動的注意の空間的側面に及ぼす影響について検討した研究に関しては,情動刺激と同じ位置に出現する標的への反応が遅れる現象(情動的復帰抑制)が,事前の情動刺激の反復曝露によって消失したという結果が得られた。この結果から,情動的注意の空間的側面に関しても,情動性の前注意的な評価段階が関与することが示唆された。この成果に関しては本年度の国内学会にて発表された。さらに本年度は,感情刺激の反復曝露による効果が,刺激の入力から反応の出力までに関わる感情処理のどの段階に影響しているのかを,刺激の感情情報の自動的処理が関与していると考えられている情動ストループ効果を用いて検討した。結果として,閾下感情馴化によって不快刺激による情動ストループ効果が消失したことが示された。この結果から,情動刺激の反復曝露が前注意段階の感情処理の機能を損なうことが示唆された。この成果に関しては国内学会で発表された。
著者
舘 卓司 中村 達
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

1)DNAデータと比較形態による双翅類の高次系統解析をおこない,DNAデータでは,ヤドリバエの単系統性およびクロバエとの姉妹群関係を示した.形態研究では,ハエ類成虫の後胸部の比較形態学をおこない,その側板の相同性を再定義した.環縫群とアタマアブ科では腹部との関節構造を持ち,それが共有派生形質であることを示した.2)ブランコヤドリバエ属の寄主利用の変遷は,これまでに記録された寄主情報を分子系統樹上で最適化することによって解明された.3)アワヨトウを使ってヤドリバエ2種の累代飼育実験のベースを構築された.これは将来的にヤドリバエの一齢幼虫の寄主適応能力を調べるためである.
著者
古瀬 充宏 友永 省三 安尾 しのぶ 安尾 しのぶ
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

L-トリプトファンの代謝産物であるキヌレン酸にストレス軽減効果が認められ、その効果はα7nACh受容体とNMDA受容体を介することが明らかになった。L-アスパラギン酸はNMDA受容体を、D-アスパラギン酸はNMDA受容体と他の受容体を介してストレス軽減に機能することが判明した。不安様行動に対し、L-セリンの単回ならびに長期投与が異なる反応を示すことを認めた。多動性を示す動物の脳では、L-チロシンがD-チロシンに変換されやすく、L-セリンが減少していることが判明し、アミノ酸栄養による改善の可能性が示唆された。