著者
澤渡 浩之
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

ダウン症者における先天性心疾患と睡眠時無呼吸症候群との関連についての報告、ダウン症者特有の睡眠体位と睡眠時無呼吸症候群との関連とについての報告と睡眠時無呼吸症候群の簡易検査装置のパルスオキシメトリーを用いて検討したダウン症者特有の睡眠体位と睡眠時無呼吸症候群との関連についての報告を国際誌へ投稿し全て受理されている。いずれの論文もダウン症者における睡眠時無呼吸症候群は、非常に高率であることと睡眠時無呼吸症候群の危険因子に関して報告している。また、ダウン症者の睡眠時無呼吸症候群に関する国際調査を行うべく、スコットランドのチームと研究基盤を作り、研究を行った。この国際研究を実施するに当たって、双方のチームの立案段階でのデーターベースの作成やデータの解析を行った。最終的に我々は、成人のダウン症者のデータをスコットランド人・日本人合わせて約800名収集できた。以上の研究の内容をスコットランドのチームと共同して論文化しており、近日中に国際誌に投稿する予定である。今後は、さらに精度の高い検査法で疫学調査を行いより確立したデーターベースの作成を行う予定である。睡眠時無呼吸症候群は、心血管病、注意欠陥多動性障害、学習障害との関連が示唆されている。このことから、本研究は、睡眠時無呼吸症候群の早期発見・早期治療へと繋げることが出来る内容となっているため、ダウン症者のQOLや予後の改善に大きく貢献出来るものだと考える。また、調査範囲を国際研究へ広げたことから日本だけでは無くヨーロッパの国々にも貢献出来る研究に発展したと考えている。
著者
江原 幸雄 糸井 龍一 藤光 康宏 今井 亮 西島 潤 UDI Harmoko AGUS Setyawan 蘭 幸太郎 永瀬 大祐 WAHYUDI
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

インドネシア・ジャワ島中央部にある、火山弧に直交する方向に直線的に並ぶ3つの火山、メラピ火山、メルバブ火山およびウンガラン火山において、地球物理学的、地球化学的、および地質学的調査を行い、活動年代、地下構造を解明するとともに、火山体内に発達する熱水系(熱と水の流れのシステム)をコンピュータを使って定量的に解明した。さらに、熱水系が十分発達しているウンガラン火山に関しては、地熱資源量評価を行い、地熱発電(電気出力 : 2~40MW)が可能な資源量が存在していることを明らかにした。
著者
藤崎 清孝 立居場 光生
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

次世代の高速衛星通信・放送の回線品質安定化を目標に、マルチビーム衛星に対して以下の結果を示した。(1)降雨が回線に与える影響を気象予測データから予測し、送信電力制御等を行う対策は有用である。(2)効果的補償には、より短時間の降雨予測と対応が必要である。(3)短時間に強い雨が降る場合には、送信電力の制御だけでなく、符号化率や伝送速度の変更などの対策も必要である。また、大気が回線品質に与える影響を評価し、アンテナサイズが大きくなると大気揺らぎの影響が無視できないことを示した。
著者
徳永 幹雄 橋本 公雄 高柳 茂美
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.65-73, 1994

第44回全日本大学準硬式野球大会の予選を兼ねたの九州選手権大会に参加した25チーム, 511名を対象にして, 特性としての心理的競技能力と状態としての心理的競技能力を調査した。その結果を要約すると次のとおりである。1.特性としての心理的競技能力は, 学年, 年令, 経験年数, 県や全国レベルの大会への参加回数, 競技成績, ポジションなどによって異なった。2.試合中の心理状態を大戦チームと比較すると, 勝ちチームほど高得点を示す場合が多かった。しかし, 負けチームが高得点を示す場合もみられた。また, 1回戦から決勝戦までの全選手の平均得点は, 1・2回戦では低く, 決勝戦になるほど高得点を示した。さらに, チームごとの平均値をみると, 1・2回戦での負けチームの得点は低く, 上位チームの得点は次第に高得点になることが示された。3.特性と状態の相関は, 1〜3回戦までは有意であった。しかし, 5〜8位決定戦と決勝戦での相関は低くなった。3回戦での試合中の心理状態に関与する特性としての心理的競技能力をみたが, 有意性のある尺度はみられなかった。
著者
元兼 正浩 波多江 俊介 梶原 健二 梁 鎬錫 畑中 大路 金子 研太 藤原 直子 佐藤 晋平
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では教育行政における費用効果分析の可能性を試論的に追究した。特に大韓民国で40年に亘って実施されている校長資格研修に注目し、その費用と効果の関係を検証した。現職の教頭(教監)に対し、360時間、一人あたり約30万円のコストをかけて実施されている校長資格研修に実際に2ヵ月半、参与観察し、受講者や関係者にインタビューを研修後まで追跡し実施した。校長公募人事の導入や、時間数半減などの政策変更によってこの3年間でもその位置づけは大きく変質し、受講者の意識にも変化がみられるが、制度的基盤によりその外部効果性は高く、そのことが費用対効果の高さを維持できているものと結論づけられる。
著者
有馬 隆文 (2011) 出口 敦 (2009-2010) SWAI Ombeni
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は、アフリカのヴァナキュラー建築の特性理解と今後の発展・改善を目標として、2009年9月より開始したものであり、建築スタイルの一つであるバイオ建築の設計原理に基づいて、近隣との共生するバイオ建築の在り方を明らかにするものである。本年度は、それまでの調査の内容を改良し、社会的・物理的環境変化による建築・近隣地区の変化を把握するために実施した。この調査では約90世帯を対象にインタビュー、アンケート、物的調査を実施した。結果として、(1)家族形態の変化が建物の拡張を誘導し、「建築物の不規則な密集化」を引き起こす要因であること。(2)建物規模の拡大要求は、家族形態の変化に対応することのみならず、近隣との社会的・経済的活動にも起因すること。(3)建物規模の拡張は、換気の障害といった影響を環境パラメーターに直接与えるとともに、中庭での社会的機能等にも影響を及ぼしていることなどを明らかとした。また、環境パラメーターの分析においては、気温、湿度、雲行き、風速と方向、太陽放射、雨降りといった環境データを分析し、この研究地域は、湿っぽい上、年間60%の高い太陽放射量があるので、住まいには相応しくない環境であること明確化した。ここで得られた知見は、バイオ建築設計上で解決すべき、最も重要な設計要素の手がかりである。このような湿度の高い気候では、中庭や建物の路地といった機能スペースを遮断する傾向が増したことで、より高度な設計が要求される。なぜなら、建物面積の拡張は、横断的な換気を必要とする気候の性質に反するからである。このような考察をもとに、最終的には「共生都市コミュニティ設計へのアプローチ」の戦略と方法論を提案した。以上の内容を取りまとめ、学術論文に投稿した。
著者
橋本 典明 山城 賢 横田 雅紀 河合 弘泰 川口 浩二
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

大気・海洋間の運動量輸送を支配する海面抵抗係数の暴風時における特性を定量的に解析可能な方法として,数値モデルを介して複雑なシステムの内部構造を推定する立場から,データ同化技術(4次元変分法)を利用した新しい解析法を開発した。また,種々の条件で本方法の精度や適用性を検討した。その結果,本方法は,観測が極めて困難な暴風時の海面抵抗係数を,暴風域外で観測された波浪観測データから逆推定可能であることを示した。
著者
長谷 千代子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

現在中国では、宗教的な活動や慣習の意味が問い直されている。本研究では、主に中国における宗教についてのとらえ方の現代的変化を、聖性の在り方そのものと聖性が現れる「場所」や「もの」の在り方の具体的な変化をとおして明らかにしようとした。その結果分かったのは、政治的には宗教活動場所を特定の場所に限定しようとする力が働く一方で、そうした場所での活動に飽き足らなくなった人々が新たな活動場所を作ったり、世俗的な生活そのものを宗教的な修業の場として読み替えたりして、伝統的なものとは異なる聖なる場所を創造していることだった。
著者
矢野 友紀 中尾 実樹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

哺乳類においては、補体成分C3の活性化断片C3dが、B細胞上の特異的レセプター(CR2)に結合し、正常な抗体産生応答を支持していることが明かとなっている。本研究では、硬骨魚類においても、哺乳類のC3dと相同な活性化断片が生成するのか、CR2と相同なC3dレセプターが存在するのか、およびC3dが獲得免疫に及ぼす影響するのかについて精査した。まず、コイ血清をザイモサンで処理し、補体第2経路を活性化すると、ヒトC3dに似たサイズ(35kDa)の断片が精製することを確認した。この断片のN末端アミノ酸配列を決定し、これがコイのC3dであることを確認した。2種の主要なコイC3アイソフォーム(C3-H1とC3-S)の両者からC3dが生じることも確認した。ただし、C3dへの分解効率は、C3-H1の方が高かった。両アイソフォーム由来のC3dをグルタチオン(GST)-S-トランスフェラーゼとの融合タンパク質として発現させることに成功した。これら組み換えタンパク質(GST-C3d-H1とGST-C3d-S)は、コイ末梢血リンパ球に対してMgイオン非依存的に結合性を示した。抗コイC3ウサギIgGはこの結合を濃度依存的に阻害した。一方、対照として用いたGSTは全く結合しなかった。C3d-H1とC3d-Sでは、前者の方が高い結合能を示した。以上の結果から、コイにおいても、哺乳類と同様にC3d断片が生じ、これを認識するCR2様のレセプターがリンパ球上に存在することが示唆されるとともに、コイにおけるC3遺伝子多重化によるC3の機能分化のさらなる証拠が得られた。
著者
加藤 雄一
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

DNAで可溶化した単層カーボンナノチューブ(ナノチューブ)をコール酸ナトリウム水溶液に分散させた。この溶液に、レーザー光を照射し、カイラリティ選択的な可溶化剤の交換を試みた。当目的のためにナノチューブ可溶化剤の交換挙動について調査した。DNAは長さの異なるオリゴー本鎖DNAを用い、可溶化剤の被覆率を吸収スペクトルから求めた。そして反応の平衡定数、熱力学パラメータを、カイラリティの異なるナノチューブそれぞれについて実験的に決定した。これはナノチューブと可溶化剤の相互作用の解明への道を拓いたことを意味する重要な成果である。まず、DNAの長さの影響について興味深いことが分かった。長さによって、加熱によりコール酸ナトリウムからDNAへの交換が進行するか、逆のDNAからコール酸ナトリウムへの交換が進行するかが異なることが分かった。この成果の意義および重要性は、レーザー光照射による交換についての、濃度条件や温度条件などの基本的な実験条件を求めたことにある。この成果は論文としてScientific Reports誌において発表した。またInternational Association of Colloidand Interface Scientists,Conferenceなど国際学会および国内学会で発表を行った。コール酸ナトリウムの濃度が交換挙動に与える影響を調査し、ある濃度においてコール酸ナトリウムとナノチューブの相互作用が変化することを明らかにした。この成果は論文としてChemPhysChem誌において採択された。またこの成果に関する発表は九州コロイドコロキウムにおいてposterawardを受賞した。さらに上記可溶化剤分子のサイズと濃度とが相互作用に与える影響についての体系的な調査結果と、可溶化剤交換についてのノウハウを踏まえた結果、低分子化合物であるフラビン誘導体を可溶化剤に用いたカイラリティ分離と、その後の可溶化剤を除去し、別の可溶化剤に交換することによるナノチューブの再分散に成功した。この成果は、現在論文投稿準備中である。
著者
清水 麻記
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

現在、日本には7000館近くの博物館・科学館が存在する。こうした既存のインフラは、施設の維持費が増大こそすれ、これまであまり地域の人々に活用されてこなかった。博物館の教育的役割の重要性がますます高まり、人々のニーズを読み取り、これまでにない教育プログラムの開発・実施や自己収入獲得の有効な方法を見出すことを迫られている博物館にとって、館の自己収入につながり教育プログラムを提供できるバースデー・プログラム(以下BDP)は有効である。このBDPに着目し、事例収集を行った上で、日本の現状に即した日本型のバースデー。プログラムを考案・実施した。得られた結果を以下に要約する。 ・欧米においては、BDPは館の自己収入に有効であり、得られた利益でコミュニティ・アウトリーチ事業を始めるなど、有効な結果も生み出している(家庭へのアウトリーチBDP、館からの招待状などでブランド化)。 ・日本では、個人の来館者のためのお誕生日企画は数例散見されるが、恒常的なプログラム提供にはいたっていない。その理由は、人材不足、館の運営・サービス内容がいまだ多くの通常の来館者へのサービスの充実で精一杯であるという事実に関連している。 ・日本では、公の性質をもつ館が多く、個人的なパーティーを博物館等でもつことが考えにくい傾向があるが、バースデー・コーディネーターの導入が可能になれば新規事業としてのお誕生日企画も可能である。 ・沖縄こどもの国ワンダーミュージアムにおけるプログラム開発・実施より、公共性の高い施設においても、大多数の来館者向けにBDPが可能であることを実証できた。また、お誕生日から連想される「いのち」の大切さをテーマとし、BDPをミュージアムで行う意義があることを核にした教育プログラムを開発し、動物園・水族館には汎用性の高い先行事例をつくることができた。今後も、日本のミュージアムでのお誕生日プログラムの開発に向けて、大人も子どもも含めた来館者がどのようなことを期待しているのか、館側は何ができるのかについて調査・研究していくことが重要である。これにより、博物館が人々の生活に意義のある存在であり続ける方策のひとつが見出せるのではないだろうか。平成4月より、沖縄こどもの国ワンダーミュージアムにおいてお誕生日ワークショップがズタートする。共同研究して頂いた館に、現場で研究成果が引き継がれさらに発展したお誕生日プログラムが開発されていくことは、本研究において最も嬉しい成果である。
著者
荒殿 誠 瀧上 隆智 松原 弘樹
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

1.全反射XAFS法による1-decyl-3-methylimidazolium bromide(DeMIMB)の表面吸着膜とミセル表面における対イオンの溶媒和構造単量体領域から臨界ミセル濃度以上の領域までの種々の濃度におけるスペクトルは等吸収点をもち、DeMIMカチオンとは相関のないfreeな状態と相関のあるboundである状態を表すスペクトルの和として表すことができることが示された。詳細な解析により、freeは6水和状態にあり、boundは4水和に水和数が減少し、第2配位圏でDeMIMカチオンの炭素あるいは窒素に配位した状態であることが示された。このことから臭化物イオンは、通常のカチオン界面活性剤系のように、イミダゾリウムカチオンから水溶液内部へ向かう電気2重層に分布していることが明らかとなった。BF4イオンの場合にはDeMIMカチオンとは同じ平面状にあると示唆されていることから、表面でのアニオンの位置したがって表面構造は、アニオンにより大きく異なることが示された。2.HMIMBF4と1-ブタノール混合系の水溶液表面吸着のシナジズム吸着の相図と吸着の剰余ギブズエネルギーから、HMIMBF4と1-ブタノールの分子間には有効なイオンー双極子相互作用が働かないことが明らかになった。この結果は次の対イオンの配置を支持している:イミダゾリウム陽イオンは対アニオンとほぼ同一平面上にあってイオンペアーを形成し、ブタノールヒドロキシル基の双極子との相互作用が有効に働かない。またの値は表面張力の低下に伴い正からゼロに近づくことから、吸着量が増加するとブタノールとイミダゾリウム陽イオンが有効になってくる。すなわちイミダゾリウム陽イオンは対アニオンとほぼ同一平面上にあってイオンペアーを形成し、通常のイオン性界面活性剤の電気2重層と異なる構造をもつという描像を支持している。
著者
山口 輝臣
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

これまでに引き続いて関連史料・文献の収集につとめるとともに、主としてこれまでの成果のうち、昨年度の研究実績の概要の分類で言えば、「3)国籍法制の形成過程についての分析」について、個別研究を論文という形で文章化する作業を行った。その内容は概ね以下の通り。拙稿「国籍法以前-研究の整理による予備的考察」(浅野豊美・松田利彦編『植民地帝国日本の法的構造』信山社所収)で指摘したように、明治32年に国籍法が施行される以前から、条約改正との関係で、国籍法制の必要性は広く認識されており、そのために法制化の試みもたびたびなされていた。そのうち制定まであと少しというところで漕ぎ着けながら、条約改正の失敗とともに潰えさった明治22年の国籍法案について、すぐれた先行研究である小嶋和司による整理の誤りをただしつつ、あわせて国籍法制そのものの理解についても再考を求めた。結果として、歴史の研究において史料が増えるとはいかなることかについて、思索をめぐらす結果ともなった。この論文は2007年10月刊行予定の九州史学研究会編になる論文集『境界とアイデンティティ』(仮題・岩田書店)にて公開される。
著者
光田 靖 高田 佳夏 溝上 展也
出版者
九州大学
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.1-11, 2000-03
被引用文献数
1

パソコン上で作動するGISソフト(アメリカmicroimages社製 TNTmips)を用いて,3種類の作成方法でデジタルオルソフォトを作成し,その精度を比較した.2枚1組のステレオペア写真から発生させた数値地形図(Digital Elevation Model: DEM)を用いてオルソフォトを作成する方法1,既存している等高線をデジタイズしたベクターデータから作成したDEMを用いて作成する方法2,市販の数値地図50mメッシュ(標高)を用いて作成する方法3について,それぞれオルソフォトを作成した.作成したオルソフォトの精度を測定した結果,方法1の精度が最も良く,ついで方法2,3の順であった.また作成に関する手順や作業量について比較すると,方法2および3に比べ方法1が格段に手順も多く作業量も大きかった.これらの労力と作成されたデジタルオルソフォトの精度を考慮すると,方法3の作成法を用いてデジタルオルソフォトを作成することが最も効率的であると考えられた.次にGCP点数を7,68,96,237,327および365点と変えて作成したオルソフォトについては,GCP点数が多いほど精度が良くなるといった正の相関関係は見いだされなかったが,GCPがオルソフォトの精度に大きな影響を及ぼしていると考えられた.また作成したオルソフォトの精度を正確に評価することが難しいことが考察された.
著者
内田 若希
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

研究1の目的は,中途障害のパラアスリートを対象とし,①自尊感情の多面的階層モデルの検証および②身体的自己知覚とデモグラフィック要因との関連性の検証を行うことであった.この結果,多面的階層モデルは支持されなかったが,スポーツドラマチック体験によって身体的自己知覚が規定されることが明らかになった.研究2では,聴覚障害のアスリートを対象とし,①性および競技レベルによる自尊感情の差異の検証および②自尊感情と年齢,競技年数,およびスポーツドラマチック体験との関連性の検証を目的とした.この結果,スポーツドラマチック体験が有意に自尊感情を規定することが示された.
著者
脇 隼人
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

悪条件な半正定値計画問題に対して高精度な解を求めるために, 悪条件性を取り除く前処理アルゴリズムの提案・開発を行った. 悪条件な半正定値計画問題とは, その問題とその双対問題が実行可能内点解を持たない半正定値計画問題である. 具体的な成果は, (1) 悪条件な半正定値計画問題に対して良条件な半正定値計画問題, つまり, 実行可能内点解を持つ等価な半正定値計画問題を半正定値計画問題を生成する前処理の提案, (2) いくつかの応用問題から派生する半正定値計画問題に対して, 悪条件になる原因の追及, (3) 特に多項式最適化問題に対して, 良条件な半正定値計画問題を生成する手法の提案をした.
著者
鈴木 隆子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

今回の事例において、エスクエラヌエバのアメリカ事務所は閉鎖し、ニューヨークを基点とする国際的な出版会社の投資によるソーシャルビジネス化の動きは8か月の協議の末とん挫した。つまり、4年の間にアメリカとの関係の中で様々な動きはあったものの、ビジネス化はなかなかうまくいかなかった。そのため当初目的としていたこれをモデルとした教育開発モデルにはつながらなかった。しかし今後も教育支援するための投資を募り、質の高い農村教育を広めていくことは重要である。今回の経験から、賛同投資家の増加に貢献するため、新たな研究課題「途上国農村における初等教育の教育成果に関する調査―コロンビアでの追跡調査」が生まれた。
著者
五十君 麻里子
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は、ローマ法における合意についての研究を行うため、とりわけ諾成契約と問答契約の関係に着目した。合意のみによって効力を発生する諾成契約はローマで「発明」されたと言われるが、この諾成契約に伴いあわせて問答契約も締結されるケースがまれではなかった。このことは、売主の担保責任が売買契約訴権で追求できるようになったのちにも、担保責任を問答契約で設定していると思われる事例が扱われていることからもわかる。またウァッローの『農書』にも家畜売買のマニュアルとして、重畳的に問答契約を締結することが勧められる。このような事例から、必ずしも合意の法的効力が当然と認識されていたのではないのではないか、との仮説に達し、2005年10月に熊本大学において開催された日本法制史学会研究大会にて「合意の法的効力-諾成契約債務と問答契約債務の関係をてがかりとして」と題し、報告を行った、さらにこの研究成果については、本経費から一部支出して招聘したエラスムス・ロッテルダム大学、タモ・ワリンガ博士とフローニンゲン大学、ヨハネス・ロキン教授をアドヴァイザーとして迎え、貴重なご意見をうかがった(両先生はこれ以外にも本務校にてそれぞれ2度の講演をおこなっていただいた)。この研究に際しては法学関係文献のみならず、ひろくローマ史文献の渉猟が必要であったため、これにつとめた。
著者
井上 奈良彦
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

「アカデミック・ディベート」と呼ばれる日米の教育・競技を目的とするディベートの談話構造の分析方法を再検討し暫定的モデルを提唱した。録音・録画したディベートを文字化しデータベース化した。暫定モデルを用いて実際のディベートを分析した。日本人参加者による日本語のディベートと日本人参加者による英語のディベートについては、ほぼ計画どおりの数の録音・録画をすることができた。アメリカ人による英語のディベートについては、収録対象としたディベートの試合での参加者の変動などにより予定より少ないデータ数となった。議論の論理構造(特にトゥールミンのモデル)を分析の枠組みの一つとして検討を加えた。コード化を行う場合、あるコード化単位(命題)がモデル内のどの要素に該当するかの認定はディベートが行われているスピーチ・コミュニティーの成員(研究代表者を含む)が発話者の意図性を推測して行った。このモデルを利用して時系列に沿って生成される談話構造の記述として利用し、日米のディベートの談話構造の暫定的な比較分析を行った。さらに詳細な談話構造の分析を行うため、スピーチアクトを利用した「言語学的アプローチ」による談話構造の分析の方法を援用して実際のディベートの分析に当てはめた。ここでは特にディベート参加者の間でほぼ共有されているディベートに特化した「手(move)」や「行為(act)」のレベルでの要素を設定しコード化のための基礎的な分析を行った。各スピーチや反対尋問における談話要素の時系列に沿った発話位置と要素間の階層関係を規定するとともに、それらの相互作用(議論の提示、証明、質問、応答、反論など)に注目した。分析の成果は今後学会発表、雑誌論文の投稿を行う予定である。