著者
井上 奈良彦 蓮見 二郎 山形 伸二 青木 滋之 金子 晃介 是澤 克哉 筧 一彦 上條 純恵 諏訪 昭宏 久保 健治 竹中 野歩 加藤 彰 ZOMPETTI Joseph CARLSON Shanna KIPP Peter
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ジェネリック・スキルやアカデミック・スキルとしての議論教育は、近年ますますその重要性を高めている。本研究は、これまでの研究の不備を埋めるべく、議論教育用eラーニング・コンテンツを作成するための基礎的研究を行った。具体的には、(1)議論教育関係の文献レビュー、(2)議論教育の効果測定テストを作成と検証、(3)議論モデルの開発検証、(4)議論教育支援サイトの作成と検証、(5)議論教育とディベートの教材作成、等を行った。
著者
針塚 進 古川 卓
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

軽度の痴呆化した高齢者が対人関係場面において、他者の情動理解をどのようにするのかを明らかにするため、対人関係投影法テストを作成した。この対人関係投影法テストは、痴呆化によって衰える「記名力」や「記憶力」を測定するためのテストではなく、対人関係場面における、人の情動理解力を測定するものである。そのために、対人関係場面を描いた図版を11枚作成した。このテストの標準化のため、20代の若者、在宅高齢者、介護老人保健施設入所者を対象にデータを収集し、被験者が投影するであろう情動の種類と内容の標準反応を特定化した。テストの標準化は継続研究となった。さらに、情動理解と情動表出を検討するため施設入所高齢者を対象とした対人交流場面を以下のように構成した。(1)「動作」法による(リラクセーションを中心とする)相互的関わりを行う場面。(2)「行為」による(回想法グループ活動において高齢者が回想した場面に基づいたロール・プレイング)相互的関わりを行う場面。(3)標準的なコミュニケーション場面(動作も行為も積極的には用いない、回想法グループ活動場面、動物や風景の写真を見ながらの会話場面)。(4)写真刺激による回想法的場面。以上の結果は、次の通りである。(1)で動作法によって高齢者のうつ状態が減少した。(2)では回想法にロール・プレイングなどの行為化を導入したことで情動理解や情動表出が増加した。(3)では実施前後において、高齢者のテスト反応に変化が見られなかった。(4)では軽度痴呆化状態の高齢者は、「ひまわり」「海」「赤ちゃん」等の写真に対してポジティブな情動反応を示したが、「犬」などのペットになるような動物等には余り示さなかった。
著者
松永 信博 千葉 賢
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

研究代表者は,有明海の環境研究を通して,梅雨期において諫早湾内では,諫早湾全体にわたる大規模な塩淡成層が形成し,ある時は湾奥部は通常海水の半分まで低塩分化し,ある時は通常海水に回復するという現象を見出した.本研究プロジェクトでは,この塩淡成層は有明海に流れ込む河川水によって作られ,成層構造の出現と消失プロセスは局地風に起因するという仮説の下,河川からの淡水供給と風応力を組み込んだ3次元流動モデルを開発し,再現計算を行った.その結果,成層構造は主に筑後川からの河川水に起因しており,諫早湾において卓越する北北東の風と南南西の風が成層構造の出現・消失プロセスに寄与することが明らかとなった.
著者
都甲 康至 田村 良一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、食の地域ブランドに関する定義と構成要素、消費者の脳内に形成されるブランド知識形成モデル等の基礎研究を基盤に、自治体主導の都市ブランド創生活動において食の地域ブランドづくりが果たす役割を、事例研究を通じて地域の利害関係者で構成される協議会の機能・組織、食の地域ブランドの認証制度等を考察し、結論として社会システムデザインの観点に基づく食の地域ブランド戦略デザインプロセスを提案したものである。
著者
松本 清 OGUNWANDE I.A.
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

ナイジェリア産植物であるAcacia Tortilis葉中に含まれる精油成分をGC及びGC-MS分析により明らかにした。すなわち、本植物葉をジエチルエーテル(室温、1昼夜処理)にて抽出を行い、濃縮物を被険試料とした。GC条件として、DB-5及びDB-FFAP(ともに30m*0.32mm)カラム、60-240℃(3℃/min)、FID検出を採用した。また、GC-MS分析条件としては、DB-5カラムを用いて、イオン化電圧70eVで行った。ピークの同定は、GC法によるretention index値の一致並びにGC-MSライブラリーによる推定によって行った。その結果、本植物葉より収率0.12%のオイル状香気濃縮物を得ることができ、GC及びGC-MS分析の結果、本被険物のオイル組成はモノテルペン類20.4%、セスキテルペン類52.2%、脂肪族並びに芳香族化合物(17.2%)で構成されていることを明ちかにした。最終的に69種類の揮発性化合物を同定することができた。この中で、主要香気成分は、α-humulene(12.0%),α-cadinol(10.6%),nerolidol(9.9%),γ-cadinene(7.4%),α-phellandrene(4.7%),ρ-cymene(4.0%),(E)-carveol(3.1%),γ-terpinene, methyl eugenol(ca2.0%)及び2-(E)-octenal(6.0%)であると判断された。本植物葉はハーブ系素材としての展開が期待されるが、主要香気成分組成を考慮すると、すっきりとした清涼感のある素材としての活用性が期待される。
著者
矢原 徹一
出版者
九州大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

カエル類では、一般に世代が重複し、一メスが一年に複数回産卵し、雌雄間で成熟時の体サイズに差がある。このような条件を備えた生物では、親が季節的に性比を変化させる可能性が理論的に予測される。しかし、カエル類では幼生・幼体期には外見で性別がわからないため、これまで性比の研究は皆無であった。申請者は、共同研究者の向坂・三浦と協力して、ツチガエルの卵を使ってDNA性判定を行う技術を確立した。本研究の目的は、この技術を使って両生類ではじめての本格的な性比研究を行い、親が季節的に性比を変化させる可能性を検討することである。日本産ツチガエルには、性染色体の形態や性差に関して明瞭に異なる2つの系統が分化している。新潟県などの日本海側地域の系統では、性染色体に関してメスがヘテロ(ZW型)だが、静岡県などの太平洋側地域の系統では、性染色体に関してオスがヘテロ(XY型)である。2000年度には、ZW型集団に関して予測どおり親が季節的に性比を変化させていることを明らかにし、論文を公表した。本年度には、XY型集団で性比の季節的変化を調べた。XY型集団では、母親側が性比を調節することは困難であり、そのため性比の季節的変化はないものと予測していた。ところが、DNA性判定の結果、XY型集団においても性比が季節的に変化することが判明した。この結果は、オスがX精子とY精子の比率を調節しているか、あるいはメスがX精子とY精子の受精効率が変わるように卵膜を変化させているか、どちらかを示すものである。いずれにせよ、従来の常識を覆す発見であるため、さらに証拠を固めたうえで、論文を公表したい。
著者
木下 俊則
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本課題ではモデル植物シロイヌナズナを用いて青色光による気孔開口に変異の見られる変異体のスクリーニングを行い、その原因遺伝子の同定することを目的として研究を進めてきた。スクリーニングには様々なタイプの変異体を単離するため、T-DNA挿入株、アクチベーションタグ挿入株とEMS処理株を用いた。これまで、12,280個体のT-DNA挿入株、6,258個体のアクチベーションタグ挿入株と12,288個体のEMS処理株の1次スクリーニングを完了し、当初の目標数にほぼ到達することが出来た。さらに、2次スクリーニングを進め、T-DNA挿入株において5株とEMS処理株において24株の変異体を単離した。アクチベーションタグ挿入株においては、変異体を得ることができなかった。EMS処理株においては2次スクリーニングを継続中である。T-DNA挿入株より得られた変異体については、TAIL-PCRによる遺伝子の挿入箇所の同定を行い、5株中2株について、ゲノム中でのT-DNAの挿入箇所を同定した。現在、原因遺伝子の機能解析を行っている。EMS処理株の変異体については、現在、2次スクリーニングで得られた変異体(約30株)について順次コロンビア品種との戻し交配とランズバーグ品種との掛け合わせを進めている。また、同時にこれら変異体における実際の気孔開閉反応についても解析を進めている。特に、STE27と名付けた変異体において興味深い結果を得ている。STE27は、青色光による気孔開口はほとんど見られないが、青色光受容体フォトトロピンや細胞膜H^+-ATPaseは正常に発現し、機能していることを確認した。この結果は、STE27の原因遺伝子が受容体からH^+-ATPase活性化に至る情報伝達に関わる未知の因子である可能性を示しており、その原因遺伝子がどのような蛋白質をコードしたものであるか早急に明らかにしたい。
著者
片岡 啓
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

インド仏教論理学における語の意味の理論については,近年,資料状況が変わりつつあり,それに伴い従来の研究を見直すべき時期に来ている.報告者は,仏教の伝統の外側から仏教の意味論を見直すために,報告者自身がサンスクリット語写本に基づき批判校訂した『論理の花房』(紀元後9世紀後半頃)というバラモン教文献に基づきながら,そこにおける仏教説批判を詳細に検討することを研究課題とした.研究成果の中心となるのは,『論理の花房』における語意論,特に,仏教説批判の箇所である.三篇の訳注研究を発表するとともに,関連する研究論文五篇,および,批判校訂一篇を学会誌・紀要に掲載した.
著者
鈴木 昌和 内田 誠一 岡本 正行 玉利 文和 藤本 光史 金堀 利洋 山口 雄仁 藤芳 明生
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

科学技術文書のスキャン画像を検索や音声や点字などのアクセシブルなデータに変換可能な電子データに変換するシステム構築に不可欠な数式認識と、数式を含んだ文書のレイアウト解析の高精度化に関する研究を行った。特に大量の頁の文書の電子化に有効な適合型認識システムのアルゴリズムを文字認識、数式構造解析、レイアウト解析の各レベルで開発し実装を行った。また、類似記号が多い数式の文字認識精度向上のため、サポートベクターマシンを用いた類似数学記号識別の評価テストも行った。
著者
TAKAHASHI Tsutomu 安井 元昭
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1988

研究の目的は雲の組織化過程をメソ擾乱の場で考え、その組織化した雲での降水過程について考察することである。研究ははじめ3次元数値モデルを用い、雲の組織化過程について考察、その結果をハワイのレインバンドの観測デ-タと比較した。次いで3次元モデルで孤立雲に限定、微物理過程を導入、Warm CloudとCool Cloudについての鉛直風と降水効果についての研究を行った。更に海洋性雲で氷晶の降水への役割について研究を行った。この結果の検証のため熱帯でビデオカメラによる観測を行った。主な結果は次の通りである。1.3次元モデル内での浅い雲群で、強力なバンド雲は下層の温度ステップにそって発達、下層でネジれた放物線が加わり、バンド雲内に大きなセルが成長した。降水効率はバンド雲内に大きなセルが出現するほど増大した。2.キングエア機によるハワイレインバンドの研究では強力なレインバンドの形成のモデル計算の結果を確かめることが出来た。レインバンドの発達に伴い、下層での湿った空気の輸送を補うよう風上側で下降があり、このように形成された安定層は風上側に新しいバンド雲を形成する。3.微物理過程を導入した3次元孤立モデル雲での降水は、氷晶成長を通して、早く、強く、長く継続した。背の高い海洋性雲では水滴の凍結の降水への重要性が示された。4.熱帯積乱雲内の降水粒子観測を新しく試作したビデオカメラゾンデてミクロネシア・ポナペ島とパプアニュ-ギニア・マヌス島で行った。熱帯積乱雲には多くの雪・雹がはじめて観測され雨滴凍結を通して0℃少し上方の狭い層内で水の大きな集積が観測され、降水機構が水の凍結で効率よく行われていることが判明した。
著者
星野 友
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、分子量・分子量分布・分子構造が限りなく均一なペプチド結合性の多官能性高分子(モノクローナルプラスチック抗体)を調製する方法を確立する事を目的とした。始めにリビングラジカル重合法により多官能性の高分子ライブラリーを調製し、標的ペプチドであるメリチンと相互作用する為に最低限必要な官能基の数および種類を特定した。次にアフィニテイー精製法によりメリチンと強く結合する構造を有する高分子のみを分離できる事を明らかにした。最後に、ブロック共重合体ライブラリーを調製し、メリチンと強く結合する配列を有する高分子を同定した。
著者
古川 雅人 原 和雄
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究課題では,旋回失速の初生時における旋回擾乱波の発生形態および伝播挙動に及ぼす翼端漏れ渦の崩壊の効果を調べることにより,擾乱波の発生メカニズムを明らかにして,旋回失速の予知モデルを新たに構築することを目的として,軸流圧縮機動翼列の失速点近傍に対し,動翼列の上・下流の三次元速度ベクトル場の非定常測定を行うとともに,動翼列全周にわたる大規模なRANS非定常流れ解析を実施した.以上の解析から,比較的大きな翼端すき間をもつ場合には,翼端漏れ渦の崩壊に起因した旋回失速の初生が発生するが,翼端すき間の小さい場合には,前縁はく離が支配的な旋回失速の初生形態が発現することが明らかにされた.大きな翼端すき間を有する場合,失速点近傍において,前縁はく離よりも先に翼端漏れ渦のスパイラル形崩壊が動翼列全ピッチで発生し,流量の低下とともに,漏れ渦は崩壊による自励振動を強め,隣接翼圧力面だけでなく,負圧面とも干渉を始め,負圧面境界層のはく離が引き起こされることを示し,そのはく離を伴う漏れ渦と負圧面の干渉は動翼列の回転方向とは逆方向へ伝播し,旋回不安定擾乱を形成すること,それらの干渉の結果,翼負圧面と隣接翼圧力面とに足を持つ大規模なはく離渦構造が形成され,部分スパン形の旋回失速形態へと至る.一方,翼端すき間の小さい場合,失速点近傍においても,翼端漏れ渦は弱く,渦崩壊を示さず,流量の低下とともに,前縁はく離が発生して旋回失速へと至ることを示し,その旋回失速セルは翼負圧面とケーシング面に足を持つ竜巻状のはく離渦に支配されること,そのはく離渦構造は非常に大きなブロッケージ効果を持つため,隣接翼に接近するとともに,隣接翼の迎え角を増大させて前縁はく離を誘起し,隣接翼に新たな竜巻状のはく離渦を発生させる結果,失速セルが周方向に伝播する.
著者
松村 香織
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

口蓋裂の疾患感受性遺伝子を同定するために、本研究では癒合課程の口蓋組織を用いてマウスの口蓋組織形成時における遺伝子発現の変化に着目した。口蓋形成時期前後の硬口蓋および軟口蓋組織を取り出し、遺伝子発現をDNAマイクロアレイを用いて解析した。口蓋形成には多くの遺伝子が関与し ており、さらに硬口蓋と軟口蓋では遺伝子発現パターンが異なっていた。このことから、裂型によりそれぞれ異なるメカニズムで発症していることが改めて考えられた。
著者
京谷 啓徳
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、ローマの教皇宮廷において執り行われたスペクタクル、とりわけ新たに就任した教皇がおこなう、ヴァチカンからラテラノ聖堂へのポッセッソの行列において、どのように美術要素が機能したのかについて解明することを目指した。教皇庁の公式記録、同時代人の日記、書簡ほかの各種記録を収集整理することにより、ポッセッソの際の沿道の装飾、凱旋門をはじめとする各種アッパラート(仮設建造物)やタブロー・ヴィヴァン(活人画)の実態を明らかにした。
著者
緒方 一夫 粕谷 英一 紙谷 聡志 津田 みどり
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

アリ類を生物多様性のバイオインディケーターとして利用することを上位の目的に,分類学的情報の整備とフィールドデータの解析を行った.分類学的研究から新種の記載やシノニムを整理し一部タクサについては検索表を提示し,ウェッブ上に公開した.群集生態学的研究から西南日本,ベトナム,タイの農林生態系で定量・定性的なサンプリングを実施し,群集の特性を比較し,対応分析による序列化を行い,そのパターンについて考察を加え,インディケーター種を抽出した.
著者
丸野 俊一 松尾 剛 野村 亮太 小田部 貴子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

本研究では、対話型授業に焦点を定め、(1)教師の対話方略の運用の仕方・変化、(2)創造的対話が生起するために不可欠な心的要因に対する子どもの気づき、(3)教師の認識論の違いと授業形態との関連、(4)批判的思考や共感性の育成の変化の様相を解明した。その結果、(1)教師の対話方略の運用は子どもたちの対話力の水準に依存する,(2)対話の生起には、異なる考えを認め合う、他者の視点を共有し、自分の考えを省察することの重要性に気づく、(3)授業スタイルは、教師が抱く認識論に大きく依存する、(4)対話型授業の中では、創造的・批判的思考のみでなく、情動的な共感性も育まれることが分かった。