著者
榊原 保志
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,都市表面形状が夜間ヒートアイランドに与える影響について検討したものである.まず,都市モデルと郊外モデルを用いたスケールモデル実験とヒートアイランドの調査資料を基に,長波放射収支量の都市内外の違いに関与する天空率が夜間ヒートアイランドとの関係を検討した.スケールモデル実験の結果,都市の天空率が大きいとこの効果は小さく,都市内外の気温差にあまり影響を与えないことが分かった.つぎに,都市表面パラメータによって高層住宅地と低層住宅地を比べると,天空率,緑被率,建蔽率では両住宅地の違いは小さいが,高層住宅地の容積率やラフネスパラメータは低層住宅地よりはるかに大きくなった.そこで,当地域に共存する高層住宅地と低層住宅地の夜間のヒートアイランド強度ΔTu-rと風速の関係を検討したところ,どちらの住宅地でも風速が大きくなるにつれてΔTu-rは少しずつ小さくなるのに対し,その上限値は単純に小さくなるのではなく,ある風速を頂点とする山型になった.さらにこの最大値が生じる風速は高層住宅地では風速1.4m/sであるのに対し,低層住宅地では0.8m/sと小さかった.これらのことから,都市表面の大きなラフネスによる機械的混合が夜間ヒートアイランド形成原因に有力であることが示唆された.小都市における建蔽率,容積率,天空率,ラフネスパラメータ等の地表面パラメータの分布について調べた.その結果によると,いずれの地表面パラメータも都市が高く都市を中心とする同心円状の等値線が得られた.そして地表面パラメータはいずれも0.8程度の気温偏差との相関が見られた.
著者
山下 恭弘 山岸 明浩
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究は,長野市に位置する一戸建て住宅について,築後年数の経た住宅(I分類)と新築住宅(II分類)において経時的な室内温熱環境と居住者意識およびエネルギー消費量に関する調査をおこなった。本研究により得られた成果の概要は,以下の通りである。1.住宅の室内環境の測定結果より,室内温熱環境では,外界条件の影響もあり,冬季のみ他の季節とは異なる結果となった。室内環境に対する居住者意識では温熱環境に関わる項目で季節による違いが認められた。2.環境条件の測定値と居住者の評点について検定を行うことにより差を明らかにし,各々の温熱環境条件と居住者意識の季節変化および移転による変化について考察を行った結果,I,II分類の住宅とも室内温熱環境測定値および居住者意識において季節による有為な差が認められた。3.判別分析を用い季節変化が居住者の意識に与える影響について考察を行った。その結果,季節変化は室内温熱環境に関わる居住者意識への寄与が高く,他の環境に対する寄与は低いことが明らかとなった。4.温熱環境の物理環境測定値と居住者意識の対応について検討した結果,季節による変化は明確に捉えられた。5.筆者らの冬季における既往データとの比較を行った結果,気温の絶対値のみならず,気温の空間における分布性状や放射熱が温冷感に影響を与えていることが推察された。6.住宅の暖房器具については,I分類の住宅では,ストーブ,ファンヒ-タ,およびこたつを使用しており,II分類の住宅では,エアコンを使用しこたつの使用が減少傾向にあることが推測された。7.電気とガスの消費量についてみると,電気の消費量は1月に最も大きくなり,消費量で500〜600kwh程度,料金で13,000円前後となった。5月や10月の中間期では約6,000円程度の電気料金であった。
著者
護山 真也
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、ダルマキールティの『プラマーナ・ヴァールッティカ』第三章後半ならびにラトナキールティの『多様不二照明論』の解読研究に基づき、外界対象、形象、自己認識という三要素を整合的に理解する方策、ならびに形象真実論と形象虚偽論との対立に絡む概念知の働きを解明した。また、W・セラーズによって提起された「所与の神話」とも重なる論点に関連して、解脱論と結びつく合理性を考える仏教認識論の体系では、形象は経験的知識の基礎づけの役割を担うわけではないことが明らかにされた。
著者
大久保 功子 百瀬 由美子 玉井 真理子 麻原 きよみ 湯本 敦子
出版者
信州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

看護への示唆を得るためCohenらの解釈学的現象学を用い、当事者の視点から遺伝子診断による選択的中絶の意味を記述した。浮かび上がった主テーマである「つながりの破壊と障害者の存在に対する相反する価値との直面」をもとに物語を再構成した。I.知るということ、「1.夫婦の心のすれちがい、2.不幸の上にもっと不幸:障害の差異化、3.家族の中での犯人探し、4.自己疎外」II.選ぶということ、「1.身ごもった子どもの存在を宙吊りにしておく辛さ、2.障害者の存在の肯定と否定に引き裂かれて、3.中絶した子どもを忘れてしまうことの罪悪感と、亡くしたことを悲しむことへの嫌悪感というジレンマ、4.内なる優生思想との遭遇」III.つながりへの希求、「1.夫婦と家族の絆、2.必要なうそ、3.子どもに受け継がれ再現される苦悩への懸念」出生前遺伝子診断では、遺伝病という衝撃が生んだ夫婦の心のすれ違いと、障害の差異化によって人とのつながりが破壊され、家族の中での犯人探し、自己疎外、障害者の存在の肯定と否定とに直面化を招いた。選択的中絶によって自分の中での合い入れない価値観に自らが引き裂かれ、内なる優生思想が自分や家族の中に露呈するのを目の当たりにしていた。どのように生きるかを選ぶことは当時者の実存的問題であり、医療が決めることではない。しかし未来の中に苦悩が再現される可能性が出生前遺伝診断の特徴であり、その人の生き方ならびに人とのつながりを診断が破壊、支配もしくは介入しかねない危険性をはらんでいる。生きていくのを支えていたのもまた、人とのつながりでありであった。医療者自身が障害と選択的中絶に対する価値観を問われずにはおかないが、同時に中立的立場と判断の止揚を求められている。世代を超えた継続的なケアと、人と人とのつながりへの細心の配慮と、看護者自身がその人とのあらたなつながりとなることが必要とされていることが示唆された。
著者
徳武 千足 坂口 けさみ 芳賀 亜紀子 近藤 里栄
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

乳児を持つ母親の添い寝及び添え乳のヒヤリハット経験は 1 割以上があり、約 7 割が出産後入院中より開始していたことより、母親に関わる専門職が正しい知識と方法を持って方法を指導していくことの必要性が示唆された。また、新生児期における呼吸循環機能は、 動脈血酸素飽和度が 95%未満を示す時間があり、 自律神経機能は、明らかなパターンはなく不安定、個別差が大きいことが明らかとなった。
著者
宮崎 樹夫 伊藤 武廣 岩永 恭雄 両角 達男 小口 祐一 茅野 公穂
出版者
信州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

I 教師・子供用ホームページの作成教師用ホームページで,教師がディジタルコンテンツを,3次元動的幾何ソフトを利用したカリキュラムに基づく授業用として閲覧できるとともに,単元「空間図形」の授業に応じダウンロードできる。また,子供用ページでは,3次元動的幾何ソフトのファイルと,ソフトの利用の仕方が示された動画が教師用のページとは別の構成で位置づけられている。これは,子供が授業や家庭などで空間図形を自ら学習することを支援するとともに,学校の授業では扱いきれない発展的な内容にふれる機会を提供し,空間図形に関する興味・関心を一層高めるためでもある。なお,ディジタルコンテンツは次の4種類である:単元『空間図形』(全14時間)の展開(HTMLファイル),3次元動的幾何ソフトを利用する授業(計6時間)の指導展開(HTMLファイル),授業で利用される3次元動的幾何ソフトのファイル,3次元動的幾何ソフトの利用の仕方が示されたフラッシュムービーホームページのアドレス:www.schoolmath3d.org/index.htmII 小・中学校・高等学校における"授業レシピ"の作成3次元動的幾何ソフトは,空間図形が関わる学習内容に広く利用できるものである。そこで,小・中学校及び高等学校において,このソフトをいかすことができる学習内容を特定し,その内容に関して,授業をどのように展開すればよいのか,また,その授業のなかで3次元動的幾何ソフトをどのようにいかしていけばよいのかを"授業レシピ"のホームページとして提供している。このページでは,授業のアイデアや具体的な進め方とともに,教師が利用するとよい3次元動的幾何ソフトのファイルや,そのファイルの使い方を示した動画なども配置されている。
著者
板野 直樹
出版者
信州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

骨髄や腫瘍におけるストローマはニッチとして造血幹細胞の支持や動員に働く"場"を提供しているとされる。そこで、本研究では、Hasヒアルロン酸合成酵素の遺伝子改変マウスを駆使して、ストローマの形成するヒアルロン酸細胞外マトリックスが、ケモカインと連携して造血幹細胞の動員に働く分子機序について検討し、以下の結果を得た。1) ヒアルロン酸産生腫瘍における造血幹細胞の動員増加ヒアルロン酸合成酵素2(Has2)のコンディショナルトランスジェニックマウス(Has2 cTg)の解析から、乳がんにおけるヒアルロン酸の増加が、造血幹細胞と考えられるKSL(c-Kit^+Sca-1^+Lin^-)の乳がん組織への動員を増加することを明らかにした。2) ストローマヒアルロン酸の欠損による造血幹細胞動員の抑制Has2のコンディショナルノックアウトマウス(Has2 cKO)からヒアルロン酸欠損線維芽細胞を樹立して、乳がん細胞との共移植実験を施行し、ストローマヒアルロン酸の欠損により、KSL細胞のポピュレーションが移植がんにおいて有意に減少することを明らかにした。3) ヒアルロン酸欠損によるケモカイン産生の抑制線維芽細胞におけるヒアルロン酸合成の欠損がケモカイン産生に与える影響を抗体アレイにより検討し、ピアルロン酸合成の欠損により線維芽細胞のCXCL12産生が減少することを明らかにした。以上の結果は、間質ヒアルロン酸がケモカインの産生を増加して、腫瘍内への造血幹細胞の動員にニッチとして働くことを示唆している。
著者
小野 文子
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

地域美術館と教育現場との連携によっで行う鑑賞教育プログラムの開発を目指しで,今年度は以下のような研究を行なった。(1)長野県内の小・中学校を象として行なった,鑑賞教育に関するアンケート調査の結果の分析,及びアンケート回答者への結果報告。(2)長野県に所在する美術館・博物館を対象として行なった教育普及活動に関するアンケート調査の結果の分析。(3)学校教育の現場において,より充実した鑑賞学習を実現するために,信州大学教育学部附属長野中学校において,写生会の事前授業として鑑賞の時間を設け,第1学年(240名)全員に風景画を鑑賞する授業を行った。この授業では,風景画の歴史と鑑賞のポイントについで講義した後,長野県信濃美術館の協力を得て,東山魁夷の作品を美術室に持参してもらい,作品鑑賞を行なった。この写生会のための事前授業は附属学校の美術を担当する教諭との共同研究の一環のでもあり,来年度には,教育実習生のための鑑賞教育の教材開発へと発展させる方向で研究を進めることを合意した。(4)大学の講義である「美術史・美術理論研究」において,学習指導要領で定められている鑑賞学習について吟味すると共に,教育現場においてより有効,かつユニークな鑑賞教育を行うことを目指した教材開発を試みた。また,学生が考案した教材を用いて,須坂市内の小学校の協力を得て実習を行なった。尚,鑑賞対象として,信州大学教育学部で所蔵している彫刻作品を用いた。
著者
村松 浩幸 杵淵 信 渡壁 誠 水谷 好成 山本 利一 川崎 直哉 紅林 秀治 松岡 守 関根 文太郎 田口 浩継 川原田 康文 松永 泰弘 吉田 昌春 大橋 和正
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

3年間の研究により,現実の技術開発を疑似体験させるロボット学習の教育システム(カリキュラム,関連教材)を開発した。技術観,職業観についても信頼性,妥当性のある尺度を開発できた。そして全国各地の中学校で複数の実践を行い,必修の授業での簡単なロボット学習であっても,現実の技術や技術開発と関連付けることで,生徒の技術観,職業観を向上させうる可能性を確認できた。
著者
渡邉 匡一
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

中世後期内陸地域における真言宗寺院の学問状況は、下野国を中心に展開したことが、より明らかとなった。端緒となったのは、醍醐寺乗琳院の俊海の活動である。また、大量の次第からは、さらに広い交流関係が窺い知れる可能性が見いだされた。
著者
杉本 公一
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

超高圧コモンレール用の材料として,3000気圧の使用に耐える焼入れ性を高めた0.2-0.4%C-1.5%Si-1.5%Mn-0.05%Nb-Cr-Mo-Ni-B系低合金TRIP型ベイニテイックフェライト鋼(TBF鋼)とTRIP型マルテンサイト鋼(TM鋼)を開発した.また,それらTRIP鋼の強靭性と切欠き疲労強度に対して,(1)最適な合金組成,(2)熱間鍛造熱処理による超微細粒化技術,(3)ベイニテイックフェライト/マルテンサイト(BF/M)組織率の同定法と残留オーステナイト(γ_R)への炭素の濃化機構,を提案した.
著者
石塚 修 今村 哲也
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

臨床的な観点から考えると、膀胱の再生においては、膀胱頚部、つまり尿道括約筋部の再生が、尿失禁の予防には重要である。まず、われわれは、ラビットの大腿骨骨髄より注射針で骨髄由来幹細胞を採取し培養し増殖することを可能とした。その培養細胞を、障害を与えた尿道括約筋に移植し、尿道括約筋部の再生を免疫染色およびRT-PCR法にて組織学的に、また、機能的検査にても確認することができた。
著者
大政 正武 鈴木 和夫 福田 正樹 柴田 久夫
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1. ヌメリイグチ、ハナイグチ、アミハナイグチの3種のイグチ類の菌根性きのこの培養菌糸体からプロトプラストの調製方法を開発した。2. ヌメリイグチ、ハナイグチ、アミハナイグチのプロトプラストの培養方法を開発した.この際通常プロトプラストの培養に使われる寒天が良くないことを明らかにし、その代わりにゲランガムが良いことを示した。3. ヌメリイグチ、ハナイグチ、アミハナイグチの培養に対する培地成分、培養温度など各種条件の影響を合成培地を用いて明らかにした。4. ハナイグチを中心にイグチ類の遺伝資源を26株収集した。5. ハナイグチの11系統のミトコンドリアDNAのRFLP分析によりこれらが3つのグループに分けられることを明らかにした。これはミトコンドリアDNAの大きさの違いによる分類とも一致した。6. ヌメリイグチのプロトプラスト再生株に形態変異や酸化酵素活性の変異が表われ、これらの間に関連性があることを明らかにした。7. ヌメリイグチの細胞学的な性質を明らかにした。8. 以上の知見から、プロトプラストや交配を用いることによりヌメリイグチの育種が可能なことが明らかになった。9. アカマツの無菌的に育成した実生に、ヌメリイグチ、ハナイグチの菌根を合成することに成功した。10. イグチ類のキアミアシイグチから、新しいマクロライドフェノール性物質を抽出し構造決定した.又、菌根菌のケロウジからはこれまでにない新しいタイプの抗細菌性物質を抽出し、構造を決定した。
著者
伊藤 武廣 宮崎 樹夫
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の成果は,直観幾何の学習と論証幾何の学習の間にある不整合の特定と,直観幾何の学習と論証幾何の学習を接続するためのカリキュラムの開発である。前者については,命題の全称性の認識における不整合と,中学校数学の論証幾何カリキュラムにおける「証明」の定義における不整合を特定した。後者については,内容知での接続のために,中学第1学年図形領域「空間図形」カリキュラムを開発するとともに,方法知「証明・説明」での接続のために,証明の学習の諸相を整理するための枠組みを開発した。
著者
樽田 誠一 齋藤 直人
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

カーボンナノチューブ(CNT)を1.5SBF(無機イオン濃度が体液のそれよりも1.5倍高い溶液)へ浸漬させ、アパタイトの析出を検討した。CNTにアパタイトを短時間で均一に析出させるには、リン酸あるいはCaCl_2水溶液などで前処理した少量のCNTを1.5SBFへ均一に分散させることあると結論付けられた。また、CNTとアパタイト粉末を用い焼結法で複合化を行った。CNTが均一に分散した緻密な複合体が得られ、一般的なアパタイト焼結体と比べ、複合体の破壊靭性は向上したが、焼成中に発生したクラックにより曲げ強度は低下した。
著者
保地 眞一
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

凍結乾燥(FD)ウシ精子を長期間冷蔵保存した後、受精シグナルを発する各種能力がどの程度正常に維持されているのかを調べた。排卵マウス卵子を用いた異種顕微授精系において、FD区では対照区よりも精子由来卵活性化因子の活性が劣る傾向があったが、致命的とまでは言えなかった。同種顕微授精系で作製した前核期卵の解析では、FD行程が精子に加わることは雄ゲノムに能動的脱メチル化が誘起される時期や脱メチル化のレベルに問題を引き起こさなかった。精子中心体の微小管形成中心機能についてもFD行程による問題は認められず、FD精子のDNA断片化もコメットアッセイでは観察されなかった。
著者
太田 浩一 菊池 孝信
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

マイクロアレイ法による炎症関連遺伝子の検索1)ラットの足底にリポポリサッカリド(LPS)を投与し、投与後2,6,12,24時間めに、虹彩・毛様体組織(各時間8匹16眼)を切り出し、total RNAを抽出した。2)total RNA中のpoly(A)+mRNAより、2本鎖cDNAを合成し、gel matrix上のDNAオリゴヌクレオチドプローブ(UniSet Rat I Expression Bioarray chip ; Motorola Life Sciences)をハイブリダイズさせ、洗浄、streptavidin-Cy5による染色を行う。Axon GenePix Scannerでスキャン後、発現量を解析(CodeLink ; Motorola社)解析した。3)9,911遺伝子中、1,930遺伝子(約20%)の発現 がいずれかの時間において2倍以上に増加、または0.5倍以下に減少した。4)いずれかの時間において3、5、10倍以上の増減した遺伝子数はそれぞれ、(991,748),(402,327),(140,95)であった。5)増減遺伝子数は6時間、24時間後に多く、経時的な発現変化のクラスター解析中である。6)既報同様、その遺伝子発現が確認されている炎症性サイトカイン(interleukin(IL)-1beta, IL-6)ケモカイン(RANTES)、iNOS等に関しては、別個体のmRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCRを行い、マイクロアレイの結果と同様、2ないし6時間後の発現の著増(正常眼に比し、20から500倍)が確認された。新たにimmediate early genes(Jun B,c-Fos,and c-Jun)の発現が明らかとなり、特にJunBの発現は免疫組織化学染色にて確認された。
著者
山本 省
出版者
信州大学
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.79-90, 1998-03

『世界の歌』は晩秋から冬を経て初春にいたるあいだに失踪した息子を父親が探し出し家に連れ帰るという物語であるが,重要な場面の多くは夜の闇のなかで展開する。その闇のなかでは当然のことながら松明やランプなどの光が揺れ動く。また,登場人物においても人間の闇を象徴する身体的欠陥を持った人物が幾人かあらわれるが,彼らは単なる弱者ではなく普通の人間たちが感じとることのできないことを知覚する能力に恵まれていたりする。勿論のことながら若さや力にみち溢れた人間の内部にもさまざまな闇の部分(欠点)が潜んでいる。 この物語においては動植物や自然界のさまざまな現象も人間たちが繰り広げるドラマと密接な関わりを持ったものとして描写される。人間のドラマも自然界のなかのひとつの現象でしかない。上流の村と下流の村を結び付けている河もまた大きな意味を担っている。その河の周辺の自然界と人間界の闇と光の交錯から立ちのぼってくるのが「世界の歌」なのである。
著者
大谷 元
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

筆者はまず,牛乳αs1-カゼインのトリプシン消化物を対象にリンパ球の増殖調節ペプチドの探索を行い、59〜79域に相当するホスホセリン集中域を念むペプチドがリンパ球の増殖を促進することや免疫グロブリンの生産を促進することを明らかにした。ホスホセリン集中域を有するカゼイン由来のペプチドは一般にカゼインホスホペプチド(CPP)と呼ばれており,CPPは牛乳β-カゼインからも調製できる。そこで筆者は,牛乳β-カゼインのトリプシン消化物からβ-カゼインの1〜25域に相当するCPPを調製し,そのペプチドにも牛乳αs1-カゼインの59〜79域と同様の免疫促進活性があることを確認した。CPPはカルシウムの吸収促進を目的として市販されている。そこで筆者は,市販のCPP標品を購入し,その標品にも細胞培養系において牛乳αs1-カゼインの59〜79域やβ-カゼインの1〜25域のCPPと同様の免疫促進活性があることを示した。また,市販CPP標品をマウスや仔豚の飼料に添加して与えると,それら動物の腸管の抗原特異的および総IgAレベルが有意に高くなり、妊娠豚に与えると分娩後の初乳中のIgAレベルとIgGレベルがCPP無添加の場合よりも高くなることを見出した。一方、各種合成ペプチドを用いることにより,CPPがマイトージェン活性,リンパ球増殖促進活性およびIgA生産促進活性を発現するためには,SerP-X-SerPという構造が必要であり,遊離のホスホセリンやSerP-SerPにはそれら免疫促進活性はないことを明らかにした。さらに、CPPはTh2細胞に作用して,インターロイキン-5やインターロイキン-6の生産を有意に高めることを観察した。
著者
平岡 直樹 小池 政嗣 高木 由久
出版者
信州大学
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.25-35, 1998-09
被引用文献数
1

本研究は松本旧城下町を対象とし,歴史的住宅地の持つ空間構成の特徴を明らかにすることを目的とする。旧軽輩武家町の中から西町と堂町を事例地として選び,町並みの特徴を最も表出する道路から見える空間の構成を調査した。 その結果,伝統的な構成要素である門冠り,門柱,囲障,これらのセットバック,むくり破風等が特に強い相互関連をもって出現していることが明らかになった。そして,それらの代表的な素材や形状は,アカマツの門冠り,一間以上の高い石柱や木柱,高さ一間あまりの板塀,道路線から半間程度のセットバック,玄関上のむくり破風である。これらはそれぞれが歴史的な構成要素としてあらわれるだけでなく,組み合わされ,一つの格式を持った門構えとして出現することで,より一層旧武家町としての町並みの特徴をあらわしている。