著者
伊藤 博路
出版者
信州大学
雑誌
信州大学法学論集 (ISSN:13471198)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.231-246, 2006-12-22

最高裁平成16年8月25日第三小法廷決定,上告棄却,刑集58巻6号515頁,判時1873号167頁,判タ1163号166頁掲載
著者
武田 三男 谷 正彦
出版者
信州大学
雑誌
特定領域研究(B)
巻号頁・発行日
1998

バンドギャップ中に現れる不純物モードはそのQ値が極めて高く、これを利用すればレーザー光に匹敵する単色性が得られることが期待される。本研究では、共通ギャップが存在しかつ不純物の制御が比較的容易な積層型エアーロッド単純立方格子および積層型エアーロッド三角格子に着目した。このフォトニック格子中に光混合型発振器もしくは非線形光学結晶を組み込み、その発振周波数を不純物モードに一致させることにより、高効率の単色性の高い発振が可能である。具体的には、フォトニック結晶を共振器として用い、その中に電磁波発振源を埋め込んだテラヘルツ領域における高効率の単色光発振器を設計試作するものである。本研究は、フォトニック結晶中において電磁波の群速度異常により非線形光学効果や光伝導スイッチ素子における光-電磁波エネルギー変換効率が増強することに着目し、テラヘルツ帯の高効率発振機器を開発するものである。本研究は主に、(1)テラヘルツ時間領域分光法によるフォトニック結晶中の電磁波分散関係の決定、(2)フェムト秒レーザーパルス光によるテラヘルツパルス電磁波の発生、および、(3)CWレーザー光による差周波光混合テラヘルツCW電磁波の発生実験の研究で構成されている。得られた主な研究成果は、(1)テラヘルツ時間領域分光による電磁波分散関係の決定及び局在モードの確認、(2)非線形光学効果によるテラヘルツパルス電磁波発生による不純物モードの励起、(3)連続波差周波光混合によるフォトニック結晶共振器中の不純物モードの励起と増強効果の確認、(4)テラヘルツ領域ダイヤモンド格子フォトニック結晶の作製と評価、(5)二次元エアーロッド格子中の線欠陥モードの波数ベクトル依存性とその磁場強度空間の解析、(6)マイクロ波帯フォトニック結晶(周期性マイクロストリップライン)の作製と評価、(7)単純立方格子における不純物モードの理論解析(FDTD法)である。
著者
平野 吉直 小林 祥之 大日方 彩香
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、 中1ギャップ対策としての野外教育活動の成果を明らかにすることである。本研究では、野外教育プログラムを企画し、3中学校を対象にプログラムを実施した。また、中1ギャップを乗り越える力を測定する調査用紙を作成し、プログラムの実施前後の調査をとおしてプログラムの成果を分析した。さらに、プログラム直後に実施した生徒へのふりかえりシートの内容と、研究対象校の引率教諭へのインタビュー調査を通して、プログラムの成果を分析した。
著者
森迫 昭光 武井 重人 松本 光功
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、磁気異方性の大きな材料であり、化学的に安定な酸化物である六方晶フェライト薄膜を高密度垂直磁気記録媒体として、低雑音化・高記録分解能化のために磁性粒子の微細化を主な目的として行ったものである。具体的にはバリウムフェライトやストロンチウムフェライト薄膜に注目して、添加元素や下地層に関する検討を行ったものである。その結果、バリウムフェライト薄膜にビスマスを添加することにより、結晶化温度の低減化可能であり、しかも粒子の微細化が可能であることが明らかになった。保磁力は3.7kOe程度と比較的大きな値ではあるが、今後の高密度記録媒体としては不十分な値であった。従来は、バリウムフェライト薄膜の下地層としては基板界面における拡散層の影響をさけるため、非晶質層を用いていた。ここでは磁化容易軸である六方晶系のc軸配向を促進する目的で、ヘテロエピタキシ効果を期待できるc軸配向した窒化アルミ層を下地層として用いた。その結果、c軸配向性に優れ、粒子サイズも40〜60nmまで抑制された、バリウムフェラィト/窒化アルミ2層膜を形成できた。そして保磁力も4.5kOeと高保磁力化が可能となった。しかしながら下地層の窒素の拡散に問題点が見いだされた。そこで、下地層として非晶質の酸化アルミ薄膜を用いた場合、観察される粒子の大きさは20〜40nmにまで微細化が可能であった。これを磁気力顕微鏡で観察した結果40nm程度のクラスターとして観察された。粒子間の磁気的な結合は主に静磁結合であった。ビスマス添加のバリウムフェライト薄膜ハードディスクについては、記録分解能をD5Oで評価すると、210〜230frpiと高密度記録の可能性をが明らかになった。
著者
山田 由美子
出版者
信州大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

【目的】精神科領域の薬物を使用している授乳婦において、母乳の継続を判断する上で薬物の母乳移行性が問題となる場合がある。しかし、リスペリドン、セルトラリン、エピリプラゾールなど新薬においては特に母乳移行性に関するデータが少ない。本研究は、リスペリドン服用患者の母乳移行性について検討した。【患者背景及び分析方法】患者背景:患者は妊娠期間中、リスペリドン4mg/日を朝・夕食後2回に分けて服用、コントロールは良好であった。内服を継続していたが、出産後3日目より精神的に不安定となり6mg/日を毎食後3回に分けて服用することに変更となった。患者希望によりピーク濃度の1点のみの採血のため、出産後4日目、服薬1時間後の母乳と血液を患者から採取した。なお、本研究は信州大学医学部医倫理委員会の承認事項を遵守して行った。分析方法:分析カラム;SHISEIDO CAPCELL PAK ACR 3x150 5μm、温度;40℃、流速;0.5ml/min、検出器:クローケムII検出器(ECD検出器)、ガードセル;850mV、E1;400mV、E2;800mV、移動層:0.05Mリン酸緩衝液(pH3.0):メタノール:アセトニトリル(70:15:15)にて行った。前処理:血清0.5mlに20%炭酸ナトリウム溶液1mlを加え、内部標準(100ng/mlミアンセリン)20μl、ジエチルエーテル:イソアミルアルコール(99:1)6mlで抽出後、有機層を0.005M硫酸溶液0.2mlで逆抽出し、HPLCのサンプルとし、75μlをinjectionした。母乳は1mlに20%炭酸ナトリウム溶液2mlを加えた。以降は血清と同じ操作にて調製したが、母乳は100μlをinjectionした。母乳中のリスペリドン測定用の検量線は、母乳の代わりに粉ミルクを用いた。測定検出限界は0.5ng/ml。【結果】患者の血清及び母乳中のリスペリドンの濃度は各々18.6及び1.8ng/mlであり、母乳中への薬物移行の指標となる母乳中濃度/母親血中濃度比(M/P比)は0.096であった。【考察】リスペリドンのHenderson-Hasselbalchの式によるM/P比は0.5又は1.87、pH分配仮説による分配係数は約0.95-2.74である。また、蛋白結合率は90%、半減期3.9hであり、これらのデータから薬学的評価を行うと、リスペリドンの母乳移行はかなり少ないと予想できる。文献では、投与量の1~5%の移行、AUCO-24のM/P比は0.42との報告がある。これらと今回の実測値は、リスペリドンの母乳移行性は少ないことと一致しており、本薬物は計算上の薬学的評価から母乳への移行性を推測可能であることが裏付けられた。
著者
渡辺 隆一 大久保 明紀子 井田 秀行
出版者
信州大学
雑誌
信州大学教育学部附属志賀自然教育研究施設研究業績 (ISSN:03899128)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.13-16, 2006-03-25

The leaf phenology of Betula ermanii was observed in Shiga Heights, central Japan from 1985 to 2004. During this period, 5 birches were selected and their phenological traits analyzed using succes- sive automatic daily photography. The annual variation of mean temperature at this monitor station, specifically over the last 10 years, has become increasingly warm. According to observable facts, these birches have gradually tended to accelerate the time of leaf flushing and delay the time of leaf coloring. This process is indispensable in clarifying the effects of global warming on ecosystems while continuing similar monitoring in/for the future.
著者
上條 正義 西松 豊典 佐渡山 亜兵 清水 義雄 眞野 倖一
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

[目的と内容]本研究では、衣服の着心地の快適性の一要因である服地の肌触りを評価するための肌触り計測装置を構築し、着衣時における衣服と人体との接触に伴う着心地が評価できるシステムの開発を目的として、圧力分布センサと3軸加速度センサを指先に装着したグローブ型センサを作成して指先の触診動作の特定と3次元力覚センサアレーによる接触子の試作を行った。布の風合い評価時における指先の圧力と加速度を計測し、弁別能力に優れた人間の接触動作から材料特性を検知評価するための特有の触診動作を特定した。力覚センサを2次元に配列し、紙やすりやRTVゴムを試料として摩擦特性、圧縮特性、やわらかさについて測定可能であるか調査した。[成果]触診動作の特定について、下記の知見が得られた。加速度センサを触診動作特徴検出に利用した場合の出力特性を捉え、触診動作を細かく分類し、規定した基本動作と加速度、荷重の変化パターンを対応づけることができた。風合いの評価項目及び被験者ごとの触診動作の違いが指先の総荷重、荷重中心総移動距離を定量的指標として比較することによって明らかになった。接触子の試作実験において、摩擦試験では、試料に3種類の粗さのヤスリを用いて行い、平均摩擦係数、摩擦係数の平均偏差を算出することができた。圧縮試験では、RTVゴムを試料として用い、加圧時と除圧時の荷重値を測定した。相対的な指標として、圧縮エネルギ、圧縮特性による線形性、圧縮のレジリエンスを導出した。やわらかさ試験では、圧縮試験と同様にRTVゴムを試料として用い、センサに加わる摩擦力と圧縮反力の合力をやわらかさの指標として、市販の硬度計で測定したやわらかさの数値と比較した。結果、高い相関関係が得られ、この指標は材料のやわらかさを評価する上で有効であることが分かった。こうした一連の動作をセンサ、もしくは試料にさせることによって、1つのセンサによって、風合いに関する複数の情報を測定できる性能を得た。
著者
赤川 学
出版者
信州大学
雑誌
人文科学論集. 人間情報学科編 (ISSN:13422782)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.79-93, 2005-03-15
著者
海尻 賢二
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

最初は検査プロジェクトに対していくつかの基準で似ているプロジェクトを選択し、プロジェクト間のデータ調整を行う事で最適な再利用ができるのではないかと考えた。そこで再利用の検討を行ったが、プロジェクトの特性の相違や、予測アルゴリズムの選択等に大きく影響する事がわかった。次に新たにデータマイニング手法を適用して、最適な予測器を見出すという手法を考えた。ソフトウェア欠陥予測ツールは訓練プロジェクト、利用するメトリクス、予測のアルゴリズムを決める事で予測器を作る。与えられた検査プロジェクトに対して適切な予測器を選ぶマイニング手法を提案し、その適切性を実証した。
著者
佐古井 智紀 岡田 和徳 石井 亮太 メリコフ アーセン
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

温度分布のある環境下での温熱生理状態を推定するため、実サーマルマネキンを用いて必要な環境データを得る理論を示し、実サーマルマネキンを用い実証した。黒と銀の円筒型サーマルマネキンを開発し、近赤外熱源がある場合とない場合で比較計測を行った。近赤外熱源がない条件での放射率と近赤外熱源が有る場合の近赤外に対する吸収率は大きく異なることを確認した。CAD上と3Dプロッタでサーマルマネキンの基礎形状を出力し、左手と左前腕のサーマルマネキンを具体化した。
著者
永松 裕希 上村 惠津子 小島 哲也 田巻 義孝 三枝 夏季 松川 南海子
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は, 学習障害を中心とした発達障害児の読み能力に焦点を当て, その改善を図るための評価ツールおよび援助プログラムを開発することを目的として実施された。研究内容は3つから構成され, 第一が, 読みにおける眼球運動を測定する簡易型の眼球運動評価ツールの標準化, 第二が, 簡易型眼球運動評価ツール(DEM)の妥当性の検証, 第三が読み能力の学年推移と影響因の検討, および読み障害児に対してのプログラムの開発と, その有効性の検証であった。
著者
森川 英明 高寺 政行 鮑 力民 後藤 康夫 佐古井 智紀
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

日本で多発する刃物による傷害(事件)に対応するため,軽量で快適な防刃被服について検討を行った.研究は,防刃性能の工学的評価法の確立,高性能ナノ材料および複合層構造による貫通遮断機構の開発,防刃被服の温熱環境評価と改善法の検討,被服構成学に基づく防刃被服の評価・構造設計,の4つの側面から行った.その結果,防刃材料の開発に必要な物理量による評価手法を構築すると共に,防刃用繊維材料,防刃衣服の冷却機構などの提案が可能となった.
著者
天谷 健一
出版者
信州大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

スピン三重項超伝導体Sr2RuO4において,磁場を[001]軸に垂直に印加した場合に1K以下の温度領域で上部臨界磁場直下の磁場で生じる新たな「低温高磁場超伝導相」の起源を調べるために,[001]軸に垂直に磁場を印加して精密比熱測定や一軸応力下での比熱測定を行い,比熱のとびの大きさ,潜熱の有無などを詳細に調べ,この転移の次数を確定させる予定であったが,精密な磁気トルク測定から,転移の詳細を調べることができることがわかったので,現在実験方針を変更し,磁気トルク測定を中心に調べた.得られた磁気トルク曲線を磁場で割ることにより,超伝導磁化の磁場に垂直な成分が得られる.この垂直磁化の磁場依存性を解析することにより,低温高磁場相への転移の詳細を調べた.0.5K以下の温度領域での,1.1 Tから1.3 Tにわたる超伝導混合状態から「低温高磁場超伝導相」への転移が起こる磁場近傍に,垂直磁化が磁場の上げ下げによって異なる値をとる「ヒステリシス」が見られ,さらに,増磁過程での転移磁場と減磁過程での転移磁場が異なることが明らかとなったことから,超伝導混合状態から「低温高磁場超伝導相」への転移は1次相転移の可能性が強いことがわかった.一方,上部臨界磁場での「低温高磁場超伝導相」から常伝導状態への転移については,増磁過程での転移磁場と減磁過程での転移磁場には測定の精度内で差は見られず,次数を明確にすることはできなかった.
著者
安江 恒 藤原 健 大山 幹成 桃井 尊央 武津 英太郎 古賀 信也 田村 明 織部 雄一朗 内海 泰弘 米延 仁志 中田 了五 中塚 武
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

将来予想される気候変動下での国産主要4樹種の肥大成長量や密度変化の予測を目的とし,年輪年代学的手法による気候応答解析を行った。スギ,ヒノキ,カラマツ,ブナのクロノロジーネットワークを構築し,気候データとの相関解析を行った。スギとヒノキについては,ほとんどの生育地において冬~春の気温が年輪幅変動に対して促進的に影響していた。ブナにおいては,比較的寒冷な生育地では,夏季の気温が年輪幅に促進的に影響しており,一方温暖な生育地では気温が制限要因となっていないことが示唆された。カラマツについては,生育地によって年輪幅や密度と相関を示す気候要素が大きく異なっていた。
著者
赤川 学
出版者
信州大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、近代日本におけるセクシュアリティ(性、性欲)に関する言説が、いかに形成され変容したかを、一般向け性啓蒙書を中心とする豊富な一次史料をもとに、言説分析・歴史社会学の手法を用いて分析している。本研究の主要な知見は、以下の通りである。第一に、19世紀に西洋社会で沸騰した、「オナニー有害論」の言説が、近代日本社会に輸入・定着・消滅する過程を分析した。オナニーに関する医学的言説は、「強い」有害論/「弱い」有害論/必要論の三つからなっており、「強い」有害論全盛期(1870-1950)、「弱い」有害論全盛期(1950-60)、必要論全盛期(1970-)という経過をたどることが示された。そして、(1)「強い」有害論から「弱い」有害論への変化の背景に、「買売春するよりはオナニーの方がまし」とする「性欲のエコノミー問題」が存在したこと、(2)「弱い」有害論から必要論への変化の背景に、「性欲=本能論から性=人格論へ」という性欲の意味論的転換が存在したことを明らかにした。第二に、近代日本における「性欲の意味論」が、「性欲=本能論」と「性=人格論」の二つからなることを示した。前者は「抑えきれない性欲をいかに満足させるか」という「性欲のエコノミー問題」を社会問題として提起し、この問題に人々がどう解決を与えるかに応じて、個別性行動に対する社会的規制の緩和/強化が定まることを論じた。また性=人格論には、フロイト式のそれとカント式のそれが存在し、この二つはときに合流したり(純潔教育)、ときに拮抗・対立したりする(オナニー中心主義とセックス中心主義)ことを示した。最後に1970年代以降、あらゆる性の領域において、愛や親密性を称揚する親密性のパラダイムが、行為の価値を定める至高の原理となりつつあることを確認した。
著者
山浦 逸雄 矢嶋 征雄
出版者
信州大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

研究計画最終年度は前年度に引き続き、樹木の接地インピーダンス測定法の改良を行い、4電極法による測定法を導出するに至った。これにより初めて、樹木の接地インピーダンス測定が実用化の域に達したので特許出願を行った。次に、本学附属大室農場の天蚕用クヌギ林において、研究計画初年度(平成8年度)より準備した、組織と結合が十分安定している電極を用いて、幹電位の連続測定を1998年6月より開始した。幹電位変化には1日周期の変動がみられたため、その発現原因についてまず調査した。気温との相互相関関数を計算し検討した結果、24時間周期で変化する幹電位は、電極と植物組織との界面に生じる分極電圧の温度依存性が主原因であると推測された。浅間山火山活動と電位変化の比較については、電位観測期間中浅間山には特に目立った活動はなく比較に至らなかった。一方、地震については1998年8月から9月にかけて上高地地震が発生した。上田地方で震度1以上の有感地震(最高2まで)に対し、幹電位との比較を行ったが、地震発生前後においてとくに変わった電位変動は見られなかった。ただし、地震発生時には枝の揺れによるノイズと考えられる電位変動が記録されたこともあった。1999年1月23日には上田地方で本年度最大の揺れを感じた大町の地震(震度3、M4.7)においても、何らの異常電位も見出されなかった。一方、98年7月1日には長野県北部地震(震度2、M4.7)があり、上述のノイズによるものとみられる電位変化が記録された他、約20時間前に通常の電位波形の中に大きな単相性のhumped waveがみられた。しかし,1回だけの現象でこれが何に由来したかは不明であった。樹木の大地センサとしての可能性については、以上の研究を通じ根の接地インピーダンスや幹電位測定手法が本研究によって確立されたので、これらを手がかりにさらに研究を進めることが必要とされる。
著者
武田 三男 本田 勝也 天児 寧 宮本 欽生 桐原 聡秀 迫田 和彰
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

自己相似性を有する三次元フラクタル構造体であるメンジャースポンジを誘電体及び金属を用いて作製し、テラヘルツ時間領域分光法により、透過率、反射率及び直角散乱スペクトルを測定した。外形サイズ9mmで、ステージ2のサンプルにおいて、局在モードに対応すると考えられる透過率の極小及び直角散乱スペクトルの極大をそれぞれ見出した。金属サンプルにおけるその特性波長は二番目の正方形エアロッドの遮断周波数に一致し、マジックテイー効果で直角方向に伝播してゆくものと考えられる。現在、反射率測定のより高制度の測定システムを改良中である。フラクタル構造体中の局在モードの電磁場の空間振動パターンを確認するために、カントールバー型一次元フタクタル構造を持つマイクロストリップラインを作製した。ステージ数は1〜4である。また、比較のために周期構造を有するフォトニック結晶に欠陥構造を挿入したラインと、カントールバーと欠陥フォトニック結晶との中間構造のラインも作製した。ネットワークアナライザーにより透過及び反射の振幅と位相スペクトルを測定した。ステージ数3及び4においてフォトニックギャップ領域に局在モードに対応する鋭い透過ピークが見いだされた。モーメント法による数値解析を用いて、これらのピーク振動数のモードの電流空間分布を求めた。カントールバー中の局在モードは中央の幅の広いラインに整数の節を持つモードであるが、フォトニック結晶の欠陥モードのように欠陥領域に強く局在しているのではなくむしろカントールバー全体に少し広がったフォトニック結晶のバンド端モードに近い振動パターンを持つことが分かった。ラインの両翼もしくは中央のセグメントの長さを変えることによって、ライン全体を自己相似パターンから少し変化させ、局在モードの様子を調べた。局在モードのQ値はほぼ自己相似性を保っている構造において一番高いことが判明した。一方、数値解析としてはカントールバー構造中の電磁波の伝播特性について、マックスウェルの波動方程式を用いて、透過振幅及び透位相シフトスペクトルのステージ数依存性を計算し、ステージ数が4までのスペクトルではフォトニックギャップ領域に局在モードに対応した鋭い透過率ピークを確認した。局在モードの位相シフトの傾きがほとんどゼロになることを見いだした。また、テラヘルツパラメトリック発信分光システムを購入しフラクタル構造体によるテラヘルツ波の非線形光学効果の制御のためのシステムを構築した。
著者
田巻 義孝 小松 伸一 永松 裕希 原田 謙 今田 里佳 高橋 知音
出版者
信州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

Manly, Robertson, Anderson, & Nimmo-Smith(1999)が開発したTest of Everyday Attention for Children(以下,TEA-Chと略す)を参考とし,(1)注意が単一ではなく複数の機能から構成されているとみなす理論的枠組みに立脚し,(2)児童・生徒に親しみやすい刺激材料や課題を使用し,検査の生態学的妥当性に配慮している集団式注意機能検査バッテリーを作成した。検査バッテリーは,4種の下位検査(地図探し,音数え,指示動作,二重課題)から成っており,それぞれ異なる注意機能(つまり,選択的注意,持続的注意,反応抑制,注意分割)の査定を意図している。この検査バッテリーを小集団トレーニングプログラムに参加を希望したADHD児童に実施したところ、どの児童にも共通して平均より劣っているのは持続的注意の指標であった。このことから,小集団トレーニングプログラムでは,持続的な注意の改善を基本の目標に据え、行動管理の原則を用いるとととした。バークレー(2002)では、AD/HDを有する子どもの行動管理の原則として、即時的で頻繁なフィードバックと目立つ結果、否定の前の肯定、一貫性の保持を挙げている。このプログラムでも、これらの行動管理の原則を守り,子どもが学習や遊びの場面でつまずいた時に担当者がすぐに対応し、できないことを叱るのではなくできたことを誉めるようにし、がんばってシールをためると誉めてもらってご褒美がもらえるよう設定した。小集団トレーニング開始時と終了時の行動観察(生起頻度の評定)から,児童の立ち歩く回数が減り衝動的に発話することが減っていったことが確認された。また開始時と終了時および終了後2ヶ月の保護者の行動評定から,話し合いの態度や協調性,望まない状況での対処や決めたことへの取り組みが以前よりできるようになり効果が維持されたことが明らかになった。
著者
潮村 公弘
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成15年度の成果を踏まえた上で、新たに、少数派側条件に割り当てられる人物にはサクラ(実験協力者)を用いる。サクラは、ディスカッション場面において予め定められた行動(2条件:性役割分業を肯定する発言、性役割分業を否定する発言)をとる、という実験操作を加えた実験研究を遂行した。性別混成状況下での自己意識・自己ステレオタイプ化については、複数の競合仮説が存在し、依然として解決をみていないテーマである。本研究では、ディスカッションが公的な状況としてなされる条件と私的な状況としてなされる条件も設定された。従属変数としては、意識的で顕在的な測度(評定尺度)と、非意識的で潜在的な測度の両者を用いた。非意識的な測度としては、IAT (Implicit Association Test)技法群に属する新しい測度であるGNAT (GO/No-go Association Task)を採用した。この手法は、複数の概念に対する潜在的な選好を各々の概念ごとに独立に測定できる新しい手法である。主たる知見としては、自己に対する顕在的なステレオタイプ化測度については、ディスカッションが公的な状況としてなされる条件においては、男性実験参加者も女性実験参加者も自己の女性性を反ステレオタイプ的に自己評定していたことが見出され、創られた性差として捉えうるような回答パターンが男女いずれにおいて示されていた。その一方、潜在的な測度の結果は高度に複雑なパターンを示した。このことは、ディスカッション場面という伝統的な区分での男性的特性が発揮されやすい傾向にある場面において、性別分業を肯定する/あるいは否定するという明確な主張を向けられることが、少なくとも大学生実験参加者にとっては複雑性の高い課題であったことが関係していよう。
著者
白井 汪芳 宮田 清蔵 東原 秀和 八森 章 鳥海 浩一郎 梶原 莞爾 清水 義雄 白井 汪芳 中沢 賢
出版者
信州大学
雑誌
特別推進研究(COE)
巻号頁・発行日
1998

平成10年度から5年間の先進繊維技術科学に関する研究拠点形成について、研究業績、拠点形成、国際ネットワーク形成等についてまとめ、21世紀COE先進ファイバー工学研究教育拠点への移行を進めた。研究業績面では、8班による研究により、多くの研究論文、特許、事業化を行い、このような基礎研究がナノファイバーテクノロジーの開発、ハイパフォーマンス繊維の開発、新バイオファイバーの開発、オプトエレクトロニクス繊維およびデバイス化技術、環境・ヘルスケア機能繊維開発、特殊機能系、不織布およびそれらの生産システム開発、繊維生産ロボティクス、感性産業要素技術開発など新しい繊維総合科学技術に向けての実績を得た。本COE研究では、萌芽・基礎研究、応用研究から事業化・起業化へ向けての産学連携プロジェクト研究までを行ってきたが、開発研究を行う産学連携拠点としては研究交流促進法の全国で2例目になる、アサマ・リサーチエクステンションセンター(AREC)をキャンパス内に設置し、平成13年2月より稼動させ、5テーマの開発研究に着手した。さらに、国際ネットワークの形成としては、平成14年度は11月に第2回先端繊維上田会議、第2回アジア若手繊維科学技術会議、第1回日米欧3極会議を上田市内のホテルおよび信州大学繊維学部内で開催した。8月にはアジア繊維学会発会式を韓国大邱市嶺南大学で開催し、本拠点が事務局となることを決定した。