著者
小林 カオル
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

リファンピシンによる小腸P-糖タンパク(MDR1)の誘導には、核内受容体であるpregnane X receptor (PXR)が重要な役割を果たしており、小腸には他の臓器と比較してPXRが多く発現していることが知られている。しかし、小腸よりもPXRが高発現している肝臓ではMDR1の誘導は認められない。それに対し、MDR1と同様にPXRを介してリファンピシンにより誘導されるCYP3A4の場合、肝臓と小腸の両方で誘導が認められる。このようなMDR1のPXRを介した小腸特異的な誘導がどのようなメカニズムで起こっているのかは不明である。本研究では、リファンピシンによるMDR1の誘導がヒト大腸がん由来細胞のLS180で認められるのに対し、ヒト肝ガン由来細胞のHepG2細胞では認められないことを明らかにした。この二つの細胞株にはともにPXRが発現しておりリファンピシンによるCYP3A4の誘導は認められる。そこで、この二つの細胞株を比較することによりMDR1のPXRを介した小腸特異的な誘導メカニズムの解明について検討を行った。まず、MDR1遺伝子のレポータージーンアッセイを行うことにより、転写開始点より上流-7970/-7011の領域がLS180細胞におけるMDR1遺伝子のリファンピシンによる転写活性化に重要であることを明らかにした。さらに、cDNAサブトラクションによりLS180細胞には腸管に発現していて肝臓に発現していない転写因子epithelial-specific ets factor (ESE-3)が多く発現していることを明らかにした。また、HepG2細胞にESE-3を導入することにより、リファンピシンによるMDR1遺伝子の転写活性化が認められることが明らかとなった。ESE-3に対するsiRNAを用いてLS180細胞のESE-3をノックダウンしたところ、リファンピシンによるMDR1 mRNA誘導の低下が認められた。これらの結果より、LS180細胞において認められたリファンピシンによるMDR1の誘導には、PXRに加え、ESE-3が重要な役割を果たしていることが示唆された。さらに、ESE-3を発現しているLS180細胞を用いて、21種の化合物によるMDR1 mRNAの誘導とMDR1レポーター活性の上昇との関係を調べたところ、有意な正の相関が得られた。これらの結果より、LS180細胞はPXRとESE-3を共に発現しており、この細胞を用いたMDR1 mRNAの誘導とMDR1レポーター活性の上昇は、小腸特異的なP-糖タンパクの誘導を予測し得る可能性が強く示唆された。
著者
横田 明美
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、実世界とサイバー空間との相互連関が進み、データの利活用が現実世界を実際に動かしていく「データ駆動社会」が進展していくことを前提に、行政法学における情報の取扱いを横断的・総論的に捉え直す試みである。行政機関における情報加工過程(収集・形成・利用・ 公表)全体について、① 全ての参照領域・個別法領域を包含した総論的な視点における、行政における情報取扱いについてのルール(概念や法の一般原則に相当する原理)は何か、そして②データ駆動社会で生起するリスクに対応するために必要な視点は何かを考察する。
著者
仲川 涼子
出版者
千葉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は,動物の発声が進化的に獲得されてきた上で,情動による絞込みが言語発生に重要な役割を担っているのではないかという仮説のもとで,デグーの発声の中でも情動との関与が深い求愛歌や警戒声に注目し,齧歯類の発声の脳内メカニズムを明らかにするためにデグーの情動性発声の脳内機構およびを検討することであった。視覚刺激・聴覚刺激を用いて警戒声の誘発可能性を検討した結果,天敵を連想させる視覚刺激を提示したところ,デグーの警戒声が誘発されるが,その刺激への順化は急激に生じることが明らかになった。次に,これらの社会性および情動発声の脳機構を明らかにするために,海馬損傷手術を行ったデグーの行動と発声の解析を行った。これまでの研究において,社会性齧歯類であるデグーには豊富な音声レパートリーがあり,約20種類の音声を状況別に使い分けコミュニケーションをすることがわかっている。また,デグーの発声中枢PAGの電気刺激実験の結果から,状況依存的発声はより上位の領域において制御され,特定の文脈における適切な発声が可能になっていることがすでに明らかになっている。本研究では,社会性行動と発声行動における海馬の役割を明らかにするため,海馬損傷を施した個体について,馴染み個体に対する発声及び行動の変化を,術前と術後で比較した。その結果,行動解析においては海馬損傷群と馴染み個体との間で攻撃行動が増卸した。しかし発声解析においては,馴染み個体の拒絶発声は,海馬損傷群よりも偽損傷群に対して多く発せられることが明らかになった。
著者
嶋田 博
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学会雑誌 (ISSN:00093459)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.621-628, 1956-01

Part I. The left lung of matured rabbits are extirpated, and the residual right lung are histopathologically examined at the first to nineteenth week revealing the following results: In the early stage, physiological emphysema and engorgement appear predominant in the morphologic picture of the residual lungs, however, after the nineth week engorgement becomes gradually go away and develop into proliferation of elastic, argyrophile and collagen fibre in some of the alveolar septa. In the cases killed after the twelfth week new growth rather than dilatation of alveolum is markedly observed. The other group of the rabbits thus (left side, totally) pneumonektomized are also given intravenously by a saline solution suspended with one mg of tubercle bacilli (high virulent, human type) per one cc and one kg body weight in dose from immediately after this operation to the twelfth week. The animals are killed four weeks after this single injection. Histopathological examination reveals that there are rather few tuberculous lesions in the residual lung and spleen, but often plenty in liver. Part II. The rabbits are killed four to twenty weeks after splenectomy and autopsied. In this series liver cells often appear swollen and lucid like vegetable cells, and lymphocytic infiltration and duplication of bile ducts of mild grade is also proved in the Glisson's sheath. Beyond the auther's expection, however, the Kupffer's stellate cells never show hypertrophy or proliferation but even regressive degressive degeneration in some cases. The rabbits get a single, intravenous injection of a solution suspended with the same dose oftubercle bacilli three days to twelve weeks after splenectomy and then four weeks later they are killed. In this series the tuberculous lesions in liver show more marked than those in lungs, or on the contrary there are not so much the specific tuberculous lesions in liver although duplication of bile ducts and infiltration of lymphocytes is so prominent. Part III The rabbits are killed at the different stby only the remained part, and also develop the morphologic and functionologic changes in the other certain organs.
著者
江頭 祐嘉合
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

神経毒キノリン酸の産生増加因子EPAやデヒドロイソアンドロステロンによるACMSDmRNAの低下は核内転写因子PPARαを介さないことを示した。糖尿病時の肝細胞内外におけるキノリン酸濃度を調べた結果、細胞内で生成したキノリン酸を細胞外へ積極的に排出する機構の存在が示唆された。脳神経マクロファージ細胞ミクログリアの培養液にLPSと食品成分を添加した時、ある種のポリフェノールはIDOの発現を有意に低下させることを示した。
著者
原 彩佳
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、膠芽腫の診断が得られた患者の末梢血および手術時に摘出された腫瘍組織を用いて、NKT細胞を中心とした各種免疫細胞の機能解析を行い、腫瘍局所における抗腫瘍効果発揮メカニズムを明らかにする。そして、膠芽腫に対するNKT細胞を用いた免疫療法有効性の検討のため、重症複合免疫不全マウスにCD1d陽性膠芽腫患者検体を同所移植した膠芽腫patient-derived xenograft(PDX)モデルを用いて、NKT細胞および樹状細胞を投与する免疫治療実験を行う。さらに、膠芽腫におけるCD1d発現制御メカニズムを解析し、NKT療法の有効性を評価するコンパニオン診断の開発を目指す。
著者
竹内 清己
出版者
千葉大学
雑誌
語文論叢 (ISSN:03857980)
巻号頁・発行日
no.4, pp.29-39, 1976-05-30
著者
傳 康晴 小磯 花絵 森本 郁代 高梨 克也 横森 大輔 遠藤 智子 名塩 征史 黒嶋 智美 石本 祐一 居關 友里子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、(1)新たに構築する特定場面(教授・接客・公的場面)と日常場面を統合した会話コーパスを構築し、(2)これらの多様な場面の会話コーパスの相互利用により、会話行動を多角的・総合的に分析することで、日本人の会話行動に関する言語・相互行為研究に新展開をもたらすことてである。本年度は以下のことを行なった。・国立国語研究所で開発中の『日本語日常会話コーパス』の指針に基づき、収録・公開に関わる倫理的なガイドラインをとりまとめた。・このガイドラインに基づき、以下のような場面の会話データ計106時間を収録した(うち30時間程度は公開可能):教授場面(武道指導・音楽練習・ゼミなど)・接客場面(理容室・コンビニなど)・公的場面(共同制作・宗教儀礼など)・これら新規収録データおよび既有データを用いて以下のような言語・相互行為分析を行ない、国際会議や論文集で発表するとともに、年度末に成果発表のシンポジウムを開催した:参与構造・社会的役割・身体配置・意見形成・認識的スタンス・メタファー表現・視覚の相互行為的基盤・環境認知・以上を支える研究基盤として、研究用付加情報(談話行為・発話連鎖アノテーション)やコーパス共有環境を試行した。
著者
オルトナスト ボルジギン
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学社会文化科学研究 (ISSN:13428403)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.61-80, 2005-09-30

モンゴルの遊牧民はそれぞれの地域において神聖視された山または小高い丘や湖のほとりに石・樹木等を円錐型に積み重ねたオボーという造営物を作って、毎年定期的に祭りを催す。それはオボー祭りと呼ばれ、遊牧共同体の繁栄、家畜の繁殖等を祈願する宗教的行事でもある。オボーは土地の神の依代として信じられ、遊牧民の自然観と世界観とが凝縮されている。現在でもモンゴル遊牧地域における遊牧共同体が各々のオボーを所有しており、オボー祭りは集団的アイデンティティの確認または強化の重要なメカニズムとして表象されている。オボーの形態と祭祀は地域によって多少異なるが、テンゲル(天神)やガジル(地神)を祭る宗教行事として、またより具体的にはノタグ(共同体の所有地)の神の祭祀として認知されている点で共通している。オボー祭りにはブフ(モンゴル相撲)、競馬などの伝統技が奉納され、伝統文化の伝承母体ともなっており、現代化が進む今日において注目に値する祭祀文化であろう。本稿はオボーの造営、つまり構造を現地調査に基づいて分析するものである。
著者
吉田 睦 中田 篤
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本邦における氷下漁撈は、かつては諏訪湖、八郎潟で展開してきた氷下曳網漁やその他の漁法による寒冷地特有の生業形態であるが、現在はほぼ北海道に限定されて実施されている。中でも網走湖ではこの氷下曳網漁が動力化して毎年恒常的に実施されており、地域経済にも一定の地位と役割をしていることが確認できた。他方で、ワカサギを主要漁獲目標とする網走湖の氷下漁撈の状況は、近年の温暖化傾向やそれに関連する可能性もある水産資源の資源状況や生態などとも関係して、資源、漁獲量とも厳しい状況にあることが判明した。調査期間の2014年から2017年にかけては、近年では最も漁獲量の少ない期間であり、今後の動向が注視される。
著者
高田 峰雄 斉藤 嘉昭
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. 第2部 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.103-109, 1980-12-20

1.中学校技術科の栽培学習に利用できるような養液栽培装置を試作し,それを使用して実際に何種類かの作物を種々の培地条件のもとで栽培した。2.装置はおおむね満足できる状態ではたらき,各作物も一応の生育をとげた。3.使用した培地ではバーミキュライトと赤玉土がよく,れき・グラスウール,くん炭では生育が劣った。4.試作した装置は,(i)生徒一人一人に別々の一区画の培地を与えることができる。(ii)培地条件に変化を持たせることができる。(iii)調査に際して手軽に教室に持ち込むことができる。などの長所を有している。5.しかし,(i)教材として最適作物の検討が必要である。(ii)培養液の濃度,循環回数,循環時間,などについて検討する必要がある。(iii)の培地条件についてもさらに検討を要する。等々,これから検討すべき課題も多く残った。
著者
北条 雅章
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.123-153, 2001-03-31
被引用文献数
2

実験1ではトマト"桃太郎"をNH_4-N添加比について3水準で,養液栽培NFTにより栽培した.生育は,NO_3-N濃度が最も高い区で最も劣った.NH_4-N濃度が高い区では,トマト果実の尻腐れ果が激発し,その結果収量は最低となった.しかし,NH_4-N濃度が高くなると果実の糖度は高くなる傾向にあった.培養液中にNH_4-Nが添加されると,CaとMgの吸収抑制が認められた.植物体中のN含有率は,NH_4-N濃度が高い区ほど高くなる傾向があった.一方,Ca,Mg含有率はNH_4-N濃度が高い区ほど低くなる傾向があった.実験2では培養液中のNO_3-N:NH_4-N比を3段階とし,それぞれに2段階の培養液濃度を組みあわせて栽培試験を行なった.NH_4-N比の上昇により茎葉,根の生体重が増加し,栄養生長が促進された.高濃度処理区では,NH_4-Nの添加によりCaとMgの吸収量が低下した.また高濃度処理のNH_4-N添加区で尻腐れ果の発生が多く,上物収量の低下が顕著であった.トマトの養液栽培における培養液へのNH_4-Nの添加比率としては,8:2程度が限界であると考察した.Ca濃度と窒素形態がトマトの生育,収量,品質に及ぼす影響を検討するためNFTで半促成のトマト栽培を行なった.Ca濃度を3処理(2,4,6me・liter^<-1>),NO_3-N:NH_4-N濃度比を2段階(10:0, 8:2)として半促成NFT栽培を行なった.トマトの収量に及ぼす影響では,Ca濃度が濃くなるに従い,増収となった.尻腐れ果は各処理区とも発生したが,Ca処理6me・liter^<-1>の10:0区で2.8%と低く,逆にCa処理2me・liter^<-1>の8:2区で34.7%と高くなった.Brixについては,Ca濃度の影響がNO_3-N:NH_4-Nの比率との関係で逆転し,NH_4-N無添加の10:0処理ではCa濃度が上がるに従い低下し,NH_4-Nの8:2処理では上昇する傾向が認められた.トマトの葉身中の無機成分含有率については,Ca濃度の上昇は葉身中のCa濃度を上昇させたが,MgについてはCaと逆にCa濃度が高くなると低下する傾向にあった.Ca吸収量は,培養液中のCa濃度が高くなるに従いが増加したが,NH_4-Nを添加した8:0区での増加の程度は低かった.またNH_4-Nを添加するとMg吸収が抑制される傾向があった.果実の肥大は,水ストレスが強くなるに従って抑制されたが,糖度と糖濃度は高くなった.果汁のECと各種イオン濃度は,水ストレスが強くなるに従い高くなる傾向があり,カリウムイオンの占める割合が最も高かった.果実中のイシベルターゼ活性は,果実の生育ステージが進むにつれて高くなった.また水ストレスが強くなるに従い活性が高くなった.インベルターゼ活性と還元糖濃度との間には,完熟期の果実で有意な正の相関が認められた.さらに1果実あたりの還元糖含量に占める,1果実当たりのインベルターゼ活性の割合は,水ストレスが強くなるに従って高くなった.培養液の浸透圧が高くなるに従い果実の肥大は抑制されるが,糖度,糖濃度,果汁のEC及びイオン濃度は上昇する傾向にあった.果実中のインベルターゼ活性は,浸透圧が高くなると上昇した.果実の糖度と糖濃度は培養液の濃度が上がると,上昇する傾向にあった.果汁のECとカリウムイオン濃度は,培養液濃度が高くなると,上昇する傾向が認められた.半促成NFTトマトにおいて,生育段階に応じた培養液濃度変化が生育,収量,品質および生理的特性に及ぼす影響について調査した.処理は,培養液濃度と,濃度を変化させる時期を組み合わせて行なった.濃度はEC値1.2 (Low), 1.8 (Mid.), 3.0dS・m^<-1>(High)の3水準とし,これらの濃度を変化させる時期を(1):第1段果房果実肥大期,(2):第1段果房収穫期(摘心時)とした.処理区はI:Low-Mid.-(High), II:Low-Mid.-Mid., III:Mid.-Mid.-Mid., IV:High-Mid.-Mid., V:High-High-(High)の5区とした.地上部生体重は,LowまたはMid.で処理を開始した区では差がなく,HighからMid.に下げた区で低くなった.摘心時の光合成,蒸散速度は,Highで処理を開始した区で低下した.吸水速度および無機成分吸収速度は,Highから濃度を下げた区で低くなり,特にCa吸収速度の低下が顕著であった.Highで処理を開始した区と収穫期に濃度を上げた区で尻腐れ果発生率が高かった.特にHighかMid.に濃度を低下させた区で高かった.果実の糖度,酸度は,Highで処理を開始した区と,収穫期にHighにした区で増加する傾向にあった.培養液のECを急激に変化させた場合には,収量,品質,生理的特性に大きな影響が現れることが判明した.NFTトマト(品種:ハウス桃太郎)栽培において生育段階を変えて培養液にNaClを添加した場合の生育,収量,品質に及ぼす影響を検討したまず,園試処方均衡培養液をEC電気伝導度で2段階(EC=1.8, 3.0dS・m^<-1>)に設定した.ついで,低濃度処理区に対してNaCl無添加,EC値で0.6, 1.2dS・m^<-1>相当のNaCl添加を行いそれぞれ定植7日,30日,60日後から処理を開始した.NaCl添加区と高濃度区では,第1段果房の収穫期の草丈が高く葉色が濃くなった.一方,総収量はこれら生育の早まった処理で減少した.収量の低下は,生育期間を通じたNaCl添加により抑制された.尻腐れ果の発生は高濃度処理区で生育の後半にNaClを添加した区で多くなった.果実のBrix値は,培養液にNaClを添加することによりかなり上昇し,培養液を高濃度にした場合と同様の傾向を示した.水分の吸収は,高濃度およびNaCl添加により抑制された.NaCl添加により,陽イオンのうちK,Mg, Caの吸収が抑制された.
著者
相見 則郎 PONGLUX D. OBITZ P. STOCKIGT J. 北島 満里子 高山 廣光 坂井 進一郎 STOCKIGT Joachim PONGLUX Dhavadee DHAVADEE Pon CARL M Ruyte JOACHIM Stoe
出版者
千葉大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

多くの生物種が医薬品資源としての潜在的価値を持ったまま環境破壊などのため姿を消して行く現在、「遺伝子資源の持続可能な利用」は極めて緊急度の高い研究課題である。本課題研究に於いては、ドイツ、タイとの緊密な協力態勢のもと、主として熱帯産のアルカロイド含有医薬資源植物について細胞培養による物質生産を目的とする国際共同研究を行った。1.キョウチクトウ科植物に関する研究-(1)Rauwolfia serpentinaとRhazya strictaのプロトプラスト融合細胞の生産アルカロイド-標記懸濁培養細胞について生産アルカロイドの精密分離を行った結果モノテルペノイドインドールアルカロイド2種(16(R)-18,19-E-Isositosirikineと5(S)-5-Carbomethoxystrictosidine)、β-カルボリン系化合物3種、(β-Carboline,1-Acetyl-β-carboline,1-carbomethoxy-β-carboline)、を得た。この結果種間融合細胞に於いてもアルカロイド生産機能が保持されていることを明確にすることが出来た。(2).タイ産キョウチクトウ科植物Hunteria zeylanicaの含有アルカロイド-本植物の葉部配糖体画分から、新規アルカロイドHunteriosideを得た。本物質は、Strictosidinic acidの糖部6'位に更にもう一分子のD-グルコースがα-型に結合しているものであることを明らかにした。Strictosidineはモノテルペンインドールアルカロイドの共通生合成中間体で古くから注目されているところであり、現在ではその生合成酵素の精製を経てc-DNAのクローニングまで行われている。Strictosidine関連の天然アルカロイドは現在まで30種以上知られているが、その糖部分に二糖結合を有するものは全く知られていず、今回のHunteriosideの天然界からの単離は極めて興味ある事実である。Hunteria zeylanicaにはHunterioside以外にも同系列の配糖体アルカロイド数種の存在が認められており、それらの追求、或いはHunteriosideの化学合成、更に植物からのカルス誘導などが今後の研究課題となる。2.アカネ科Ophiorrhiza属植物のアルカロイド-(1)アカネ科Ophiorrhiza属植物含有アルカロイド-チャボイナモリ(Ophiorrhiza pumila)はわが国鹿児島県島嶼部から沖縄県琉球列島にかけて分布する小型草本であるが、我々は先にこの植物にカンプトテシンが含有されることを明らかにした。沖縄県石垣島の一部に自生するクロタキカズラ科の木本植物、クサミズキと並んで、我国の貴重なカンプトテシン含有植物である。チャボイナモリについて特に注目されるもう一つの点は、カンプトテシン生合成の仮想中間体として存在が予想されながら天然から見出されないできた鍵分子を特異的に含有することである。1992年に本植物から得られた新規物質Chabosideについて全合成を達成した。(2)チャボイナモリの組織培養、懸濁細胞培養と器官再分化の研究-ドイツ側分担者Stoeckigt博士との共同研究の結果、本植物のカルス化、組織培養、つづいて懸濁細胞培養の条件確立に成功した。更に最近カルスの器官再分化により幼植物体を得る試みに成功した。この結果はチャボイナモリの大量増殖に道を開くものであり、更にウイルスフリー株の取得などを通して関連研究への展開が期待される。(3)チャボイナモリ培養細胞のアルカロイド生産機能の発現に関する研究-マインツ大学に於いて取得された培養細胞について千葉大学で二次代謝産物の究明研究を行ったところ期待されたカンプトテシン関連含窒素化合物の検知には成功せず、代わりにアントラキノン系色素3種を得た。これらアントラキノンは野生種には全く含有されない物質であった。類似の事実が同じくアカネ科の資源植物Chinchona属植物の培養細胞についても報告されていて両者の類似性に興味が持たれる。現在この培養細胞系について、アルカロイド生成機能の発現に関する研究を継続して行っている。
著者
中道 圭人 中澤 潤
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.173-179, 2003-02-28
被引用文献数
2

This research examined the relationships between paternal/maternal authoritative, authoritarian, and permissive childrearing styles (based on the responsibility and control childrearing dimensions of Baumrind), and reactive and proactive aggressive behavior of their young children (N=59, aged 4-6 years). For reactive aggression, there were no differences among paternal/maternal childrearing types. For proactive aggression, authoritarian fathers have more aggressive young children than both authoritative and permissive fathers. If one or both of the parents were authoritarian, they tend to have more proactive aggressive children than both parents were authoritative. These results suggested that parents' authoritarian childrearing style promote proactive aggressive behavior in their young children.
著者
有馬 雅史 坂本 明美 幡野 雅彦 徳久 剛史 岡田 誠治
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

転写抑制因子であるBCL6はTh2サイトカインの産生に対して負の制御を行っている可能性が示唆されている。我々は、Th2型気道炎症を呈する気管支喘息の病態の解明や新たな治療の開発のための基盤研究として、BCL6のTh2サイトカイン産生および喘息性気道炎症における作用メカニズムについて解析した。本研究では、以下の点について明らかにすることができた。1.BCL6はT細胞によるTh2サイトカインの産生を抑制し、少なくともIL-5遺伝子はBCL6の標的遺伝子であり、その機序としてIL-5遺伝子の第4エクソンの3'末端の非翻訳領域にBCL6が直接結合して転写活性を抑制することを示した。2.BCL6はTh1細胞や休止期のTh2細胞に対してIL-5遺伝子のstabilityに関与する。3.マウスの喘息モデルでBCL6の強発現によってのTh2サイトカイン産生を抑制し、好酸球を中心とする気管支喘息の気道炎症を減弱することによって気道過敏性の亢進を抑制した。3.BCL6は樹状細胞(DC)の分化や機能を介してTh2細胞の分化を制御する。したがって、BCL6はリンパ球以外に抗原提示細胞の機能も制御してTh2型反応を総合的に制御すると考えられた。以上よりBCL6はリンパ球とDCの両方に対してTh2細胞の分化や機能を制御してTh2喘息性気道炎症の病態に関与する可能性があることを示した.このような研究成果は単に気管支喘息の治療法の開発につたがるばかりか、アレルギー性疾患の発症メカニズムの解明にもつながることが期待できる点において大変重要である.