著者
石川 格
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.57-64, 1981-03-28

植木産地の形成要因を明らかにする目的で,鈴鹿市鞠鹿野地域の実態を調査し,その形成要因の分析を行なった.本地域は「三重さつき」を主品目にした寡品目専作型の新興産地で,農業地域として安定しており,少数の専業者指導の下に,植木栽培をとり入れた複合経営農家がふえ特産地化した.需要増大期に東名阪道路が開通し,流通網が拡大したことが急速な産地形成の主原因をなしているが,流通機構・出荷態勢などには改善の余地があり,零細兼業農家の経営を安定させる方策を構ずる必要がある.
著者
久保田 正人
出版者
千葉大学
雑誌
言語文化論叢
巻号頁・発行日
vol.13, pp.I-XII, 2004-03-31
著者
横井 政人 穂坂 八郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.71-76, 1963-12-31

切花の品質・収量と栽植密度,定植時の苗の大きさとの関係をカラソコエを用いて実験し品質,収量の変動を種々の表現方法で解析,考察した.前報と同じく切花品質を単独切花品質と調和(総合)切花品質(市場品質も含む)とに分けた.本報では調和品質を表わすのに相対生長式(y=bx^α)を用いた.収量決定因子としては被度,土地利用度などをあげた.結果はカランコエの反応が敏感で明らかな傾向を示し低密度区ほど生長,開花(品質)はすぐれたが栽植本数(収量)の点でマイナスになつた.結局切花品質,収量,栽培管理,経済性,植物の生理,生態的性質などよりみて本実験においては定植時に大苗を用い栽植距離を15×15cmとするのが適当と考えられる.
著者
大芦 治
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.13-19, 2004-02-28

Oashi (2003a) said that type A behavior pattern (type A) is psychologically composed of two components: One is a strong need for achievement the other is a need for maintaining self-esteem. The author tried to explain those two components from the view point of a dynamic psychological perspective. It is found that two components of type A behavior is well understood in terms of H.Kohut's theory of narcissistic personality and further studies from dynamic psychological perspective of type A is needed.
著者
馬場 雅行 山口 豊 岩崎 勇
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.293-303, 1984-10-01

受動喫煙と肺癌の因果関係を検討する目的でB_6C_3F_1系マウスを用い,微量タバコ煙長期暴露による気道上皮の変化を観察した。暴露したタバコ煙のCO濃度は80ppm〜30ppmで,人間の実際の受動喫煙環境に相当する濃度に設定した。実験1:6ケ月間の微量タバコ煙暴露の結果,末梢気管支上皮細胞の肥大,増生像がみとめられ,呼吸細気管支では上皮細胞の肺胞側への増生,侵入像がみとめられた。回復実験の結果,これらの所見は可逆性変化と考えられた。実験2:18ケ月間の微量タバコ煙長期暴露と,MNU投与を併用する実験を行なった。MNUは0.2mg/マウスを週1回,計26回腹腔内に投与した。投与終了後1週間で病理組織学的検索を行なったが,MNUの単独投与群では末梢気管支上皮細胞の増生が著明で,腺腫様増殖像も認められた。微量タバコ煙暴露を続けながらMNUを同時に投与した群では,より強い末梢気管支上皮細胞の増生所見がみとめられ,さらに1例(6%)に腺癌の発生がみられた。またタバコ煙暴露を中止したのちMNUを投与した群では,末梢気管支上皮細胞の変化がMNUの単独投与群と同程度であり,肺癌の発生も認められなかった。微量タバコ煙暴露は,同時に行なうことでMNU投与によるマウス肺癌の発生を増強したと考えられ,助癌原作用(cocarcinogenic action)をもつ可能性が示唆された。また,本実験のマウス肺癌の発生母地は末梢気管支上皮と考えられた。
著者
磯崎 育男
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. 第1部 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.163-196, 1994-02-28

前章でみたように,主要国の行動,ポジションは,ラウンドの経過とともに,歩み寄りの方向で若干の変化がみられるが,いくつかの点で大きな隔たりもみられる。具体的には,(1)農業の国境調整措置,(2)輸出補助金,(3)国内支持,(4)交渉方法,(5)ガット・ルール問題,(6)動・植物の検疫制度において,それらのリンケージをからめ,濃淡を含めた対立がみられるが,ここでは特に前三者に関し個別に対立点等を整理してみよう。第一に,農業の国境調整措置では,アメリカが関税化を,ECが関税化を認めつつも,国境調整を存続させるリバランシングを提案している。ケアンズ・グループは,カナダがガット11条2項Cの存続を主張し,戦線を離れたものの,アメリカ案に近い提案となっている。一方,日本は,輸入数量制限を行っている品目についてアクセスを考慮しつつも,食糧安全保障論に基づき,例外措置を認めさせようとしている。次いで,輸入補助金に関しては,アメリカが相当程度の削減(10年間で90%以上)を農業保護の廃止を条件に主張しているのに対し,EC,日本とも漸進的削減,ケアンズ・グループは最終的に撤廃を含め一定期間内の削減をうたっている。第三の国内支持については,アメリカが最も貿易歪曲的な政策については10年間で75%以上,その他の貿易歪曲的な政策は30%以上の削減であり,EC及び日本は,わずかな削減(ECは支持総体の削減を考慮),ケアンズ・グループは,カナダの異論はあるもののアメリカ案に近い。ところで,ラウンドの中途で出されたドゼウ案,ヘルストローム案,ドンケル案が,どの提案に近いかを考察すると,全体として,さまざまな案の妥協の産物であるが,アメリカ案に近いことがわかる。国際貿易テクノクラート達の自由主義志向の強さが反映しているといってよい。この他に,北欧米,スイス案,オーストリア案も出されたが,ヨーロッパ経済地域(EEA)で,1991年からEFTAとECとの結合が図られてきており,EC寄りヘスタンスを変えてきている。韓国案は,非常に日本案に近いものとなっている。以上,ウルグアイ・ラウンドの農業交渉の構図を概観したが,このゲームは「過剰農産物の負担を誰に,どのようにおしつけるかという"ババ抜き"ゲーム」(佐伯)であるとともに,世界的視野を失った国益中心の交渉であると概括できよう。
著者
久保 武一
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

中枢神経軸索は一度損傷すると再生しないが、その原因の一つとして中枢神経軸索の再生を阻害する因子repulsive guidance molecule(RGMa)が報告されている。RGMaは、中枢神経傷害時にニューロン、オリゴデンドロサイトのみならず、免疫細胞の一種であるミクログリア/マクロファージにおいても発現上昇する。この観測結果から、先行研究課題でRGMaの免疫系における役割を検討し、以下の結果を得た。1、抗原提示細胞(樹状細胞)の活性化にともないRGMaの発現上昇を認めた。2、CD4陽性T細胞ならびにマクロファージにRGMaが結合することをフローサイトメトリーにて確認した。3、RGMaはCD4陽性T細胞ならびにマクロファージにおいて、細胞内シグナル分子であるRap1の活性化を誘導した。4、Rap1が媒介する細胞機能として、細胞接着性の向上が報告されているが、CD4陽性T細胞ならびにマクロファージを含む脾臓細胞にRGMaを作用させたところ、細胞接着性の向上を認めた。5、過剰な免疫反応により誘導される実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)におけるRGMaの役割を、RGMaの作用を抑制する抗RGMa抗体投与により解析したところ、抗RGMa抗体が治療効果を示すことを観察した。本研究課題ではさらに詳細な解析を行い、RGMaの作用をブロックすることで、CD4陽性T細胞の免疫反応性ならびに脊髄における炎症反応が抑制され、EAE病態が抑えられることを観察した。以上の結果は、RGMaが生体内での免疫反応の活性化に関与することを示唆し、RGMaが過剰な免疫反応を原因とする多発性硬化症などの中枢神経での自己免疫疾患の治療標的となりうることを示唆する。
著者
藤澤 巌
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学法学論集 (ISSN:09127208)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.204-120, 2005-12-15
著者
榊原 隆次 福武 敏夫 平山 恵造
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.161-166, 1992-08-01
被引用文献数
1

単純ヘルペス脳炎(HSE)自験30例を,臨床症候・画像検査により側頭葉型,側頭葉脳幹型,脳幹型に分けると,脳幹型(7例,23%)は他の2型に比し,発病早期には頭痛,発熱が少なく,GOT・GPT値の異常高値がみられず,初回腰椎穿刺時の髄液圧が平均85mmH_2Oと低く,病像完成期には意識障害が高度であったが,脳波上での周期性同期性放電がみられないなどの特色を示した。脳幹障害を示唆する症候として,corectopiaや対光反射消失などの瞳孔異常,眼頭反射の消失や緩徐・急速相のない自発眼振などの眼球運動異常,無呼吸や吃逆様呼吸などの呼吸異常を認めた。硬膜下水腫の合併が2例にみられたが非手術的に軽快し,死亡例・再発例がなく,自然軽快例もみられるなど予後良好であった。以上の脳幹型HSEの特徴はHSEの早期診断および治療にとって重要と考えられた。
著者
舟島 なをみ 定廣 和香子 亀岡 智美 鈴木 美和
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.9-14, 2002-03

本研究の目的は,現実適合性が高く信頼性・妥当性を確保した看護学教員ロールモデル行動自己評価尺度を開発することである.尺度の質問項目作成には,質的帰納的研究の成果である学生が知覚する看護学教員のロールモデル行動を示す35カテゴリを基盤として用いた.また,内容的妥当性の検討に向け,専門家会議とパイロットスタディを実施し,その結果に基づき,56質問項目の5段階リカート型尺度「看護学教員ロールモデル行動自己評価尺度(試作版)」を構成した.さらに,この試作版を用いて全国の看護学教員1457名を対象に本調査を実施した.本調査から得た有効回答815部に対する項目分析の結果に基づき35質問項目を選定し「看護学教員ロールモデル行動自己評価尺度」を構成した.自己評価尺度のクロンバックα係数は0.955であり,因子分析の結果は,尺度が質問項目の作成基盤とした35カテゴリを反映していることを示した.これらの結果は,開発した自己評価尺度が信頼性・妥当性を確保していることを示唆した.
著者
野沢 敏治
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学経済研究 (ISSN:09127216)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-44, 2005-06-29

Otsuka developed a theory of history in the term of productive power and religious ethos of industrial middle class, between the first and second World War. In the paper I aim to re-examine his theory from the point of our experience of high economic growth in Japan and the economic development of the third world after the War. Before that we shall re-estimate his method. He studied, not known well until now, the history of modern capitalism in West Europe to understand the rise of contemporary Japanese fascism. In addition to that, he employed the comparative history approach between West Europe and Japan. The results were, for example, that he got new ideas of economic structure and management, historical materialism put side by side. I will hall reconstitute his theory of natural course of economic development. He saw the history of mankind largely from communites to a commercial or civil society. In doing so, he watched that class societies were based on their respective communities or civil society. At the end we can make a table of Otsuka's theory of history.
著者
野村 昌史
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

各地の農業試験場等にアンケート調査を行ったところ、キャベツ等にキンウワバ類の被害が多いという回答を得られたが、イラクサギンウワバの発生が見られるという回答は少なく、本種の認識がなされていない可能性が示唆された。そこで特にキャベツほ場等を中心にキンウワバ類の幼虫採集を行った。その結果、多くの地域での本種の発生が確認された。主として6月および10月に行ったが発生するキンウワバ類には違いが見られた。すなわち6月の時期にはどの地域でもタマナギンウワバが優占種であり、イラクサギンウワバの発生は少ないものであった。ところが10月の時期に採集を行うと、西日本では優占種が交代し、ほとんどのほ場ではイラクサギンウワバしか発生がみられなかった。千葉県では優占種はタマナギンウワバで変わらなかったが、イラクサギンウワバの比率が増加していた。さらに12月に入った調査ではイラクサギンウワバの個体数は急激に減少し,タマナギンウワバより早く野外で見られなくなった。その要因のひとつとして,イラクサギンウワバは低温に弱く,冬の早い段階でほとんどが死滅するためと考えられたため室内実験を行い、各ステージの低温耐性を求めた。各ステージを5℃条件下に長時間さらしてその死亡率などを求めた。その結果、幼虫ではイラクサギンウワバの死亡率がタマナギンウワバよりも高く、イラクサギンウワバは低温耐性が低いことが判明した。冬の寒い時期でも発生が見られ,翌年春先から再び出現し始めるタマナギンウワバに比べ,冬にほとんどが死滅してしまうイラクサギンウワバは,翌年の発生が遅くなると考えられた.イラクサギンウワバの発生源調査は今回のデータだけでは明らかにできなかったが、室内実験ではキンウワバトビコバチというキンウワバに特異的な寄生蜂に日本産のイラクサギンウワバは寄生されなかった。北米個体群では寄生されることが分かっており、実験にも用いられるほどであるから、北米個体群が日本に入り込んでいる可能性は低いと考えられた。
著者
川村 健二
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.33-39, 1986

精索静脈瘤が男子不妊症の原因となり得るかどうか,および本症が造精機能障害をもたらすとすればそのメカニズムについて検討し,次の結果を得た。1.精索静脈瘤のある不妊症の精液所見では,特発性不妊症患者の精液所見と比較して精子運動率が低下する傾向がみられた。2.精索静脈瘤手術により精液所見の改善と妊娠率の向上がみられた。3.コルチゾール,セロトニン,プロスタグランディン(PG)E,PGFを内精静脈血と末梢血で比較した結果,コルチゾール,セロトニンは両者の間に差を認めなかったが,PGE,FGFはともに内精静脈血で有意に高値を示した。4.内精静脈造影所見では,腎への逆流のある群と逆流のみられない群に分けることができた。精液所見の改善および妊娠率は前者の方が良好であった。以上より精索静脈瘤は男子不妊症の原因の一つであり,その機序として内精静脈を通して腎静脈血が逆流し,これに含まれるPGが造精機能障害をおこしていると推測された。
著者
鈴木 高志
出版者
千葉大学
巻号頁・発行日
1988

学位:千大院薬博甲第42号
著者
袖岡 幹子
出版者
千葉大学
巻号頁・発行日
1989

学位:千大院薬博乙第69号
著者
上田 善弘
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.241-328, 1994-03-25

1.44種,20変種,5種間交雑種および76品種のバラを用い,花と葉の各器官について計測を行った.計測値から算出される二次変数も加え,クラスター分析および主成分分析を行った.2実験からなり,供試材料および測定形質を変更して行った.クラスター分析の結果,実験1,2ともにPimpinellifoliae節の種およびHSpn系統の品種がクラスターを形成した.Rosa節の種は両実験で広く分散した.実験2においてHT系統の品種のほとんどがクラスターを形成した.主成分分析の結果,両実験とも第1主成分は大きさに関する因子とみなされ,葉および花器器官の小さいものからPimpinellifoliae節の種,Rosa節の種,R. gallicaとその関連種の順に分けられた.実験2においてHT系統の品種は形態が大きく,本主成分の正の方向に広く分布した.実験1において,第3主成分に八重化に関する因子(がく筒開口部径,雄ずい数など)が抽出され,改良品種と野生種が明確に区分できた.2.12種,8変種,2種間交雑種および29品種のバラを用い,花芽分化を形態学的に観察した.また,34種,22変種,7種間交雑種および82品種のバラを用い開花枝の節数,長さを調査した.さらにこれらのバラにつき開花期を調査し,各形質間相互の関係を検討した.調査したすべてのバラで,花芽は開花当年の萌芽とともに分化を開始し,およそ40日から60日で発達を完了していた.開花枝の諸形質のうち節数は,他形質に比べて開花枝間の変異が小さく安定し,種および品種で固有であると思われた.種では,節数は開花開始日と有意な正の相関(r=0.712)があり,節数が多いほど開花が遅かった.現代の栽培バラ系統は,節数の増加とともに節間長が長くなり,シュートが強勢になるように育成されてきたものと考えられる.また,種および品種によっては四季咲き性と一季咲き性の中間的な開花習性を示すものがあり,これらのバラでは開花枝の長さの割に節数が多いのが特徴であった.1.バラ属95種(species),22変種(varieties),8品種(forms),155栽培品種(cultivars)および関連属(Rubus6種,1種間交雑種,Potentilla 3種,3栽培品種,Kerria 1種,Neviusia 1種,Rhodotypos 1種)の花粉表面を走査型電子顕微鏡により観察した.バラ属植物の花粉表面にはバラ科植物に一般的な彫紋構造がみられ,うね(ridge)と微散孔(perforation)により特徴づけられた.この彫紋構造は種および品種で幅広い変異がみられ,その特徴により花粉表面型をIからVIの6タイプに分けた.これらのタイプの種間の分布をみると,各々が属する分類群(亜属,節)ごとに特徴ある花粉表面型がみられた.各分類群特有の花粉表面型から逸脱する種については,その所属についての検討が必要と思われた.古い系統の品種では,祖先種の花粉表面型を受け継ぎ,系統ごとに特徴的な花粉表面形態を示した.しかし,現代品種の系統(HT,F)では幅広い変異を示した.関連属の花粉でバラ属の特定の花粉タイプに似るものとバラ属に全くみられない新しいものとがみられた.2.供試材料のなかから選定した種および品種につき,SEMにて観察し撮影した写真から花粉の大きさおよび花粉表面形態に関する形質を計測し,その計測値を基に多変量解析(クラスター分析,主成分分析,判別分析)を行った.種を中心としたものと品種を中心としたものの2実験からなり,それぞれにつき多少測定形質を変更して行った.実験1ではクラスター分析によりPimpinellifoliae節の種とHSpn系統の品種がクラスターを形成し,Rosa節の種は広く分散した.Synstylae節の種は大きく2つに分けられた.主成分分析の結果,第1主成分に花粉の大きさに関する因子が,第2主成分に微散孔に関する因子が抽出され,これらの2主成分により各々の分類群は分けられた.特にPimpinellifoliae節の種とHSpn系統の品種は第2主成分により他の分類群から分けられた.判別分析の結果,種全体で各分類群への判別率は平均57.4%であった.1種のみからなる分類群では確実に所属の分類群に判別された.Caninae節とRosa節の種は判別率が低く,30%台であった.また,微散孔の総面積が分析過程で最初に取り込まれ,本形質が各分類群を判別するのに最も有効な形質であることが分かった.実験2ではクラスター分析によりTとCh系統の品種,PolとHRg系統の品種が各々,祖先種とともにクラスターを形成した.その他多くのクラスターが形成されたが,系続ごとのまとまりはなかった.主成分分析の結果,第1主成分にうねに関する因子が,第2主成分に微散孔に関する因子が抽出された.このうち第1主成分により,主な系統はHRg・Pol群,B群,T・Ch群の3群に分けられた.一方,HSpn系統の品種は第2主成分により他の系統から分けられた.判別分析の結果,全体で26.7%の判別率であり,各系統間に判別率の幅広い変異がみられた.本分析では実験1で測定しなかったうね間の距離が判別に有効な形質として最初に取り込まれた.多くのバラの種および品種を用い,発芽法および染色法により花粉稔性の変異を調査した.併せて,花粉の稔性評価手法について最適な手法について検索を行った.まず,花粉発芽について,発芽培地へのほう酸の添加は花粉の発芽を促進し,その濃度は50ppmで充分であった.また,20℃以上の温度が発芽に好適であった.この発芽条件での花粉発芽率と各種染色剤による花粉染色率を比較したところ,どの染色剤との間にも有意な正の相関がみられた.しかし,酢酸カーミンでは,花粉発芽率に比べ染色率が高く,逆にMTTでは染色率がより低く,さらにヨードヨードカリでは相関が他の染色法に比べて低かった.それに対し,FDAを用いた蛍光染色法は最も花粉発芽率と相関が高かった.野生種が最も花粉稔性が高く,続いて種間雑種,栽培品種の順であった.種ではRosa節とBanksianae節の種において,品種ではHRgとPol系統の品種で比較的高い花粉稔性がみられた.HTやF系統の現代品種は他の系統に比べ花粉稔性が非常に低かった.これらの品種につき,育成年代順に花粉稔性をみると,品種分化が進むに従って花粉稔性が低下してきていた.黄色バラ4種,2変種,24品種を用い花弁に含まれるカロチノイド色素をTLCおよび機器を用いて分析した.TLCにより38の色素に分離され,そのうち25の色素について同定または推定した.これらの色素には多種のエポキシド型カロチノイドが含まれていた.供試材料におけるこれらの色素の分布から,バラの黄色の発色はβ-Caroteneと大量のエポキシド型カロチノイドからなることが分かった.特にR. foetidaからの黄色導入以後の品種において,そのことは著しく,エポキシド型カロチノイドを主要な構成色素とした. Noisette系統の'Marechal Niel'は他の種または品種にみられない色素構成を示し,カロチノイド色素生合成の初期段階の色素を多く含んでいた.