著者
齊藤 貴浩
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、大学等における教育改革は何を行い社会に何を与えたのか、一方で社会からは大学等に何を求めているのか、これらを明らかにすることで、教育改革成果のエビデンスを明らかにし、大学の教育改革が社会に受け入れられるようにすることを目的としている。政府から補助金を受けた教育改革事例の公開資料から取組の内容、成果、派生した組織等への影響を把握する。これらの情報をもとに訪問調査を行い、成功例に見られる共通要素を探索する。また大学関係者と大学と関係のない社会人に調査を行い、教育改革として高い評価を受ける要素を選択する。最終的に、教育改革の成功のエビデンスと社会の要請に即した教育改革の示し方を明らかにする。
著者
上野 修 米虫 正巳 近藤 和敬
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

1960年代後半から80年代にかけて、現代フランス哲学思想に到来したスピノザ・ルネッサンスの源流を、フランス・エピステモロジーの系譜上に位置づけた。カヴァイエスからカンギレムへと続くエピステモロジーの系譜上に、アルチュセールととラカンの強い影響下にあった60年代後半のエピステモロジー・サークルがある。彼らの『分析手帖』は構造主義を背景に科学・主体・生命に関する理論的問題の分析を展開したが、これを活気づけていたのがカヴァイエスの「概念の哲学」という理念であり、この理念がスピノザ主義の名のもとに当時のアルチュセール派やラカン派を様々な仕方で活気づけていたことが明らかとなった。
著者
根岸 一美
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1923年から1935年まで関西に在住したオーストリア人音楽家、ヨーゼフ・ラスカと、彼が宝塚少女歌劇の管弦楽団員たちとともに創設し、指揮者として定期演奏会活動を展開した宝塚交響楽団に関する研究において、当該研究期間に力点を置いたのは、とりわけ作曲家としてのラスカの活動と意義を解明することであった。この目的のために、毎年、オーストリア国立図書館音楽部門(ウィーン)、ウィーン市立州立図書館音楽部門、およびリンツ・ブルックナー音楽院を訪ね、自筆譜・筆写譜・出版譜を複写ならびに写真撮影し、そうして得られた資料をもとに、音楽家たちや、音楽学専攻で楽器の演奏力を有する大学院生等に演奏してもらい、CDを作成し、作品研究のための資料整備を進めた。主な作品は《万葉集歌曲》、《日本組曲》、《7つの俳句》である。また、すでに神戸女学院で入手していた《詩編第13篇》の筆写譜についても、演奏とCD作成を行った。これらのほか、ラスカの伝記作成にむけて資料の収集に力を注ぎ、王立ミュンヘン音楽院時代の学内演奏会の曲目内容や彼自身の演奏曲目などについても重要な情報を得ることができた。美学会での各種発表においては、ラスカの作品の歴史的意義と美的特性について論じた。研究代表者の仕事を通じてラスカの名前が比較的知られるようになり、2002年9月には宝塚歌劇団の管弦楽団によって《日本組曲》が部分的ながら演奏され、ラスカと宝塚交響楽団の活動の意義が改めて見直されるにいたった。
著者
梶原 智之
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2018-08-24

2020年の東京五輪に向けて、機械翻訳の精度向上が急務である。従来の機械翻訳は、翻訳文と正解文の単語単位の一致率を最大化する訓練を行ってきたが、この正解文は数ある正しい翻訳の表現の一例に過ぎない。本研究では、マルチモーダル品質推定によって正解文の表現に依存しない訓練を行い、機械翻訳を高度化する。本研究の背景には、対訳などの大規模なテキストとテキストの対応データが一部の言語でしか利用できない一方で、SNSの普及により画像とテキストの対応データが多くの言語で大規模に利用できるという利点がある。
著者
Borre Caroline
出版者
大阪大学
雑誌
日本語・日本文化 (ISSN:09135359)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.61-96, 2004-03-29
著者
北原 恵 香川 檀 小勝 禮子 金 惠信 平田 由美 ジェニスン レベッカ 児島 薫 坂上 香 水野 僚子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

このプロジェクトでは周縁化されてきた女性アーティストに焦点を絞り、ジェンダーの視点から、戦時中の女性画家の移動や、移民として国外に出た女性美術家について、包括的な調査研究を行った。研究は次の3本の柱から成る。①戦争・植民地体験と女性アーティストの実証的調査(長谷川春子、赤松俊子、谷口富美枝ら)、②東アジア圏の美術をめぐるネットワーク的移動の解明(朝鮮美術展・台湾美術展・満州国美術展など)、③現代美術における女性美術家の調査。これらの研究の成果は、「アジアをつなぐ 境界を生きる女たち 1984-2012」展や「官展に見る近代美術」展などにも生かされた。
著者
家島 明彦 玉田 圭作 金澤 宏明 柊 和佑 秦 美香子 池上 賢 西原 麻里 石川 優 岡部 拓哉 雑賀 忠宏 足立 加勇 想田 充 ALISON Brent YANAGIDA Takuya TOGNONI Nubia SARPA Bernard POON Man Wai Carol SOWON Kim BARAGLIA Jimmy
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

人文・社会科学の主要な学会誌等55誌4698冊分を調査し,従来の論文検索では見つけられなかったマンガに関する研究を399本「発掘」した。また,マンガに関する人文・社会科学研究の国際的・学際的データベースを構築した。結果,①各学問領域に散在するマンガに関する研究知見の集約と体系的整理,②国や学問領域を超えた人的交流や情報交換,③当該分野における日本の主導権確立,という成果が得られた。
著者
小畑 拓也
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2000

今年度の研究課題である「インターフェイスとしての身体」,すなわち生命体の環境への適応の結果として獲得される固有の身体的特徴に焦点を当て,人の多様な可能性が,いかに奪われ,いかに拡大されてきたかを異星人,サイボーグ等の形態の描写を中心に追う試みについては,Osaka Literary Review第41号掲載の論文Alien Protocolにまとめた.この論文ではR.A. Heinleinの他者間交流を描いた作品中の,意思疎通を支える知性の獲得に必須とされるハードウェアとしての身体の条件と,交渉を可能とするためのソフトウェアとしての共通言語,すなわちプロトコルの分析を通じて,意思疎通と交渉が不可避的に抱え込む力学的関係それ自体が,常に逆説的なものとしていずれかの優位を保証し得なくなる過程について論じた.さらに2000年度から今年度に渡る研究を総合するものとして,人工知能との対比によって前景化する「知性」,そしてロボット,アンドロイド,異星人,サイボーグなどが浮き彫りにする「顔」と「身体」の問題が交錯するところに,いかなる人間像が生み出され,SFの中に描かれてきたのかを検証した結果の一部は,2002年度大阪大学英文学会大会において「陽電子洗脳-CampbellからAsimovへのロボット工学三原則バグフィックスとアップデート」の題目で口頭発表を行った.これは,SFのみならず,広く人口に膾炙した「ロボット三原則」(ロボット隷属の正当性の主張)が,後にその制定者の一人であるIsaac Asimov自身によって「四原則」へと書き換えられることにより,「他者」を隷属させる「掟」から「他者」同士の共存の可能性を拓く「自律」へと変容した事実について,人造人間という「他者」をいかに制御するかというテーマを含んだ他の作品と通時的に比較しつつ,その意味づけを試みたものである.
著者
室田 浩之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では真皮線維芽細胞から神経栄養因子arteminがサブスタンスPによって誘導されることに着目し、その機能を検証した。Arteminはアトピー性皮膚炎病変部真皮に蓄積しており、皮膚末梢神経伸長に関与するとともに末梢神経のTRPV1発現増加に貢献することを確認した。TRPV1はヒスタミン誘導性の痒みに関与するとされるが、実際arteminの受容体(GFRα3)のノックアウトマウスではcompound48/80による掻破行動が生じなかった。Arteminはアレルギー炎症と温度知覚過敏性そう痒に関与する分子と考えられ、新しい痒み治療戦略の標的分子としても期待がよせられる。
著者
Vaage Goran
出版者
大阪大学
巻号頁・発行日
2010

14401甲第14590号
著者
八重樫 徹
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究の最終年度にあたる本年度は、エトムント・フッサールの後期備理思想における愛と便命に関する考察を手がかりに、人間的行為者に固有の自由がもつ感情的基盤に注目し、これを明らかにすることを主な目的として研究を進めた。前期フッサールによれば、われわれの自由とは、合理的な熟慮にもとついて、価値があるとみなした事態を行為によって実現することにある。この発想自体は後期においても変わらないが、自由な自己決定の外側にある事実性への着目が、後期倫理思想に固有の論点として付け加わる。われわれは合理的意志決定によらない仕方で、特定の人を愛したり、特定の活動を自分にとって重要なものとみなしてそれに身を捧げたりする。そのようにして何かを大事に思うことは、いわばわれわれの生き方の中核をなすものである。「私はそれをせずにはいられない。なぜならこれが私にとって大事なものだからだ」。このように語るときの「せずにはいられない」という義務感は、外側から押し付けられたものではなく、その人自身の生の中心から湧いてくるものである。こうした現象は行為者の自由とは対極の不自由さを構成しているように思われるかもしれないが、それはむしろ人間に固有の自由を可能にしているものである。なぜなら、合理的な熟慮に実質を与え、そのつどの意志決定を根底で支えているものこそ, 何かを大事に思うことから生じる義務感あるいは使命感にほかならないからである。後期フッサールの倫理思想に見られるこうした発想には、B・ウィリアムズやCh・コースガードといった現代の倫理学者による「人生のプロジェクト」や「実践的アイデンティティ」と呼ばれるものを重視する立場に通じるものがある。われわれの生き方の中核にある不合理性を積極的に認めることは、道徳的義務のみに着目する狭い意味での倫理学を超えて、「愛」や「ケア」といった概念を重視し、「人生の意味」や「生きがい」といった価値を明らかにしようとする、より開かれた倫理学的探究を可能にする。自由意志の現象学的解明を目的とした本研究の主な成果は、人間的自由の感情的基盤を探ることを通じて、価値の現象学的探究が愛や人生の意味に関する重要な洞察を与えるという可能性を示したことにある。
著者
内田 雅之 吉田 朋広 増田 弘毅 深澤 正彰
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

拡散型確率過程のサンプリング問題を研究した.高頻度データを用いて確率微分方程式のパラメトリック推測を行う際に,疑似最尤推定量の導出が重要であるが,その推定量を効率よく算出するために,ベイズ型推測と最尤型推測の利点を活用したハイブリッド型推測法を開発し,その数学的正当化を行った.大規模数値実験によって提案手法の有効性の実証を試み,エルゴード的拡散過程や微小拡散過程に対して,ハイブリッド型推定量の漸近挙動が安定していることを確認した.提案手法は上記のモデルだけでなく,一般のモデルに対して適応可能である.また,レヴィ駆動型確率微分方程式の統計推測および高頻度データ解析への応用について研究した.
著者
坂田 泰彦 中谷 大作 砂 真一郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

今回、これまでの我々の知見を発展させ、動脈硬化関連因子 LTA に関連してマクロフマージ泡沫化に関わるマイクロ RNA の同定を試みたが、LTA はマクロファージ泡沫化しないことが明らかとなった。そのため途中より研究計画を変更し、動脈硬化の最終段階として生じる心筋梗塞後の心臓死亡に関連するマイクロ RNA を同定した。