著者
大澤 弘典 森川 幾太郎
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,数学の応用,モデリングといった視座からの実践的な研究であり,とりわけ中学校の数学の授業のあり方に焦点をしぼり研究を推進している。これまで授業で取り扱いが困難であるとされた題材の教材化を目指し,現実世界における問題を,数学の授業で積極的に取り扱おうと試行している。また,研究の方法としては,いわゆるアクションリサーチを採用している。実際の授業研究に対し,研究者として単に参与観察の立場に留まらず,指導者(授業者)として授業の構想や展開に直接的に深く関わる方法を採用している。本研究で開発した主な教材は,「生活の中の数学(学校図書)」にまとめ発信している。そこでは次のような20の教材を具体的に紹介している。第1話 鶏卵の重さを調べる 第2話 ひと裁ち折り紙:アルファベットの巻き第3話 最適なバトンパスを求める 第4話 三角グラフの利用第5話 群論を背景とした模様づくり 第6話 個人的な意志決定と社会的意思決定第7話 じゃんけんに必勝法がある!? 第8話 2時+3時=?第9話 ミカンの表面積を探る 第10話 日常的表現と数学的表現第11話 スライドパズルの探究 第12話 フラクタル模様からの刺激第13話 ISBNの秘密を探る 第14話 誤り訂正符号の教材化第15話 数学で生け花を捉える 第16話 Kielaというアフリカの遊び第17話 現代暗号に活きる数学 第18話 あみだくじのベクトル的な扱い第19話 高度測定板による測量 第20話 πの探究
著者
八木 浩司 佐藤 浩
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

低ヒマラヤ山地斜面に発達する地すべり地形の分布図作成を通して,地すべりの発生しやすい地形・地質条件を明らかにすることでハザードマップ作成のための危険度判定基準を明らかにした.
著者
大竹 まり子 田代 久男 齋藤 明子
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 医学 : 山形医学 (ISSN:0288030X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.57-69, 2004-02-16
被引用文献数
2

背景:在院日数の短縮化が図られている社会情勢から、山形大学医学部附属病院に地域医療連携センターを設置する運びとなった。そこで、センターにおける退院支援部門の役割を明確にするため、センター開設前の当院における退院困難事例に注目して調査を行なったので、その結果を報告する。対象:山形大学医学部附属病院の病棟看護師、看護師長より提出された退院困難事例。 方法:山形大学医学部附属病院看護部に質問紙を配布し、過去及び現在の退院困難事例に関する記載を依頼。提出された111事例を退院困難事例として分析対象とした。退院困難事例の年齢、性別、家族構成、居住地、診療科、現在もしくは退院時に行っている医療処置、退院後の療養生活に影響する障害の有無、障害者手帳など福祉制度の利用の有無、ADL、痴呆の有無、退院支援で困っていることについて記載を求め、退院困難事例の特徴を分析した。結果:事例の年齢層は0歳から89歳の広範囲にわたったが、65歳以上の高齢者が47.7%を占めた。在宅療養に影響する障害および疾患は、運動機能障害が最も多く31事例(35.1 %)であり、次いで悪性疾患、精神疾患、難病であった。111事例中94事例(84.7 %)が何らかの医療処置を行っていた。ADL評価では自立の事例に次いで重度の事例が多く、ADL が5項目とも自立している事例は23事例(20.7 %)であった。痴呆評価では正常な事例が40.5%であった。 ADL が自立し、痴呆のない14事例の退院困難理由の背景は、医療処置があること、精神疾患、悪性疾患、一人暮らしであった。医療依存の高い患者、介護力に問題のある患者の退院後の生活環境を整えることがセンターにおける退院支援部門の役割であることが示唆された。
著者
関口 武彦
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 社会科学 (ISSN:05134684)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.一-十九, 2009-02-15
著者
齋藤 学
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

名作椅子を用いた"体感型"鑑賞教育プログラムは、一般的な"見る"鑑賞に比べ、生活におけるデザインの働き(形状・素材・色・機能など造形の諸要素の関係性)について理解が得やすく、その学習効果の優れた特性が認められた。また、本プログラムをシステム化し効果的に運用(教材の管理とアウトリーチ)していくためには、地域における学校間の連携と、自治体、公共施設、非営利団体、企業等の支援体制の整備が不可欠となる。
著者
柳澤 文孝
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

大気中に存在する物質は乾性沈着あるいは湿性沈着によって除去されて地上に沈着する。降雨が落下する間に大気中にある物質を取り込むウオッシュアウトを野外で実測する試みが国内外で様々なされてきたが、実測された例はなかった。そこで、中国四川省峨眉山に降雨採取容器を設置して降雨の試料を採取し、化学分析を行うと共に分析結果の解析を行った。降雨に含まれる成分は高度が下がるに伴って増加する。両者の関係を数式化した。
著者
中里見 敬
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 人文科學 (ISSN:05134641)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.233-249, 1994-01

法國語言學者 Émile Benveniste 指出的一對著名概念,即叙述文 discours 與歴史文 histoire 闡明了語言的普遍性的一個側面。漢語沒有形態變化,所以不可能像印歐語那樣根據時制和入称等形態來區別。但漢語的時間指示詞的用法却明確地反映出述文/歴史文的不同。漢語文本中也有敍述文/歴史文這雙重性質,它把敍述者的敍述時間/作中人物的故事時間表現得十分清楚、不會發生混乱,從而使敍述故事或故事被敍述得以成立。 本文將探討辨別敍述文/歴史文時用來作爲指標的時間指示詞。在現代漢語中,''如今"現在" "昨天~今天~明天" 這一系列是屬於敍述文的,而"此時" "前日~此日~次日" "這時候""前一天~這一天~第二天" 這一系列是屬於歴史文的。同様的現象也存在於古代漢語的白話文和文言文當中,但作爲指標的個別指示詞由於詞語的歴時性變化有些感變動。 Benveniste 的理論後來發展成熱奈特 Gérard Genette 的敍事 récit/ 敍述 narration/ 故事 Histoire 之分,從而也可以看出以語言學爲基礎的文學研究能不斷開拓新的領域的可能性。只有正確地把握語言的基本性質,纔能進行踏踏實實的文學文本分析。巴爾特 Roland Barthes 曾説 : "研究文學的人有時要求還沒有出現的語言學也是很有必要的。" 這句話對文學研究者是極富有啓發意義的。
著者
新宮 学
出版者
山形大学
雑誌
山形大学歴史・地理・人類学論集 (ISSN:13455435)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.65-77, 2005-03-20

キーワード:出版, 禁書, 野史, 皇明通紀, 陳建
著者
渡邊 洋
出版者
山形大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究の実績概要を以下に示す。研究初年度でもあり、雪氷物性の計測や使用機器の特性把握を目的とした雪密度計測を行った。・雪密度の制御に係る実験計測技術の獲得を目的として、雪に見立てた人工雪(大型製氷装置で製作したフレークアイスをアイススライサーで粉砕したもの)の雪氷物性値を1ヶ月に亘って連続観測した。その結果、この雪密度は概ね0.35〜04を推移し、比較的含水性の高い人工雪の生成が可能であることが判った。・加えて、室内実験に用いる低密度の人工雪は、冷凍庫で製作するブロックアイスをアイススライサーで粉砕することにより、雪密度0.25〜0.3程度の人工雪を生成できることが判った。・サンヨー製の大型製氷器に貯蔵されるフレークアイスは、生成直後の氷密度と時間経過を経た後の氷密度に相違があり、気温変化の過程にも依るが増加する傾向にあることが判明した。よって、実験用の人工雪の生成には注意(特に温度と密度の管理)が必要であることが判った。・力学的な加圧(約3kg/cm^2)による雪密度変化では、繰り返し載荷(8回程度)により、0.3程度の雪密度は0.8(氷板に相当)近くまで上昇することが判った。(ホイールトラッキング試験器による室内実験観測)・雪山で保存した雪の雪密度は、3ヶ月経過後の6月には0.6程度にまで自然上昇することが判った。本研究による雪密度制御では、0.7〜0.8程度の密度増加を目指す必要がある。
著者
新宮 学
出版者
山形大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

これまでの国内での文献調査に加えて、北京の国家図書館や台湾の国家図書館で行った文献調査により得られた新たな知見をもとに、研究成果の一部を論文「陳建の『皇明資治通紀』の禁書とその続編出版(一)」としてを公表した。論文では、第1に、皇明通紀の成り立ちと原刻本、および陳建の経歴と執筆意図について明らかにした。第2に、明朝における禁書指定の経緯について考察した。第3に、これまでの文献調査をもとに皇明通紀に関係する続編の全体像についてその概要を紹介するとともに、皇明通紀とその続編が盛んに出版される明末の社会背景やその読者層についても考察を加えた。皇明通紀は、元末至正十一年(1351)以来、王朝創設期の洪武40年間のことを記した「皇明啓運録」と、永楽から正徳年間にいたる8代124年間のことを記した続編とを併せて「通紀」の名を冠して合刻したものである。嘉靖三十四年(1555)に家刻本として刊行された。代々、科挙の郷試合格者(挙人)を輩出する家に育ったとはいえ、地方官の官歴しかない広東の陳建が本書を著したのは、祖宗の如き「盛世」に引き戻すべく社会秩序の再建を目指そうとする経世の志に基づくものであった。本書が禁書に指定されたのは、隆慶五年(1571)のことであり、この時期木版印刷による出版が空前の規模で拡大傾向を示す中で、王朝側が自らのプライオリティとしての「国史」編纂と出版に対して危機感を抱いたからであると考えられる。これまで嘉靖原刻本の存在は十分に知られていなかったが、台湾の国家図書館に収蔵する42巻本、12冊が、嘉靖原刻本の完本であることを現地での文献調査により確認した。ただ目録『国家図書館善本書志初編』では、『新刊校正皇明資治通紀』と著録されているが、本書のどこにも「新刊校正」と題する記載は見えず、かえって「皇明歴朝資治通紀」の題簽5件の存在を確認しえたので、『皇明歴朝資治通紀』前編八巻後編三十四巻と著録すべきである。またその残欠本(存13巻、5冊)が、東京大学東洋文化研究所の大木文庫に所蔵されていることを新たに発見した。
著者
新井 宏朋 中村 洋一 生地 新
出版者
山形大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

従来の成人病検診における眼底検査は働き盛りの脳卒中予知を主たる目的としていたが、高齢化社会においてはこれに加えて脳卒中による寝たきりや動脈硬化によるぼけ老人の予知が重要な課題となる。本研究では、まず最初に山形県F町における70〜75歳の在宅高齢者の眼底所見の有病率を検討した。Keith,Wagener分類O群は男39.3%、女39.8%、I群は男39.3%、女42.0%、IIa群は男18.9%、女12.7%、さらにK、WIIb群に相当する典型的な動脈硬化性網膜症が男2.5%、女5.5%に見られた。同時に実施したBenton視覚記銘検査との関連性を検討した結果、Keith,Wagener分類とBenton検査の正確数の間には統計的に有意の関連性は認められなかった。次に眼底所見を中心に血圧、心電図の循環器検査所見及びBenton検査の正確数、誤謬数等との関連について林の数量化III類を用いて検討した。第1軸は循環器所見の有無と解釈できたが、第2軸については解釈できなかった。また眼底所見はBenton検査の正確数、誤謬数と近接した関係は見られなかった。次いで、Y町で65〜74歳の在宅高齢者を対象に循環器検診5年後の日常生活動作、ぼけに関する症状等19項目の質問調査を実施した。Keith,Wagener分類と日常生活動作との関連では、全体的な傾向としてKeith、Wagener分類O,I群がIIa以上群に比較して良好な比率が高く複数の項目で有意差が認められた。ぼけに関する症状等については、各項目とも有意差は認められなかった。次に、この調査から精神科医のスクリーニングで痴呆の可能性が疑われた者(症例群と略)と対照群に柄沢式及び長谷川式簡易知能評価スケールを実施した。柄沢式では「ぼけあり)が症例群4.8%対照群0.01%であったが、長谷川式では症例群(平均26.3点、標準偏差6.4点)と対照群(28.0点、4.1点)に有意差は認めなかった。また両群の眼底K、WIIa以上出現率にも有意差を認めなかった。
著者
岩田 浩太郎
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

以下の3つの柱を立てて研究調査活動をおこなった。主な内容の概略をまとめる。I 豪農経営間の相互関係に着目した地域社会構造に関する実証研究まず、(1)大規模豪農-中小豪農の経営間の階層的関係に関する研究、を実施した。大規模豪農の金融を受けながら中小豪農が商業金融や地主経営の回転資金や村役人としての活動資金を得て自己の豪農経営を存立させる形で、豪農間にヒエラリッシュな関係構造が存在することを実態的に研究した。つぎに、(2)山形城下町商人の経営構造に関する研究、おこなった。山形城下町巨大商人の経営実態を新史料を発掘して考察し、幕末期に村山郡はもちろん南奥羽をおおう経済活動を展開し大規模豪農とも金融関係を強化していく彼ら巨大商人の蓄積様式について考察を進めた。II 幕末期地域社会の政治的経済的文化的ヘゲモニーの関係構造に関する研究まず、(1)大規模豪農-中小豪農の間の諸ヘゲモニー関係に関する研究、を実施した。大規模豪農の金融力を基礎とした経済的なヘゲモニーの傘下に、村役人や組合村惣代の各管轄地域における政治的ヘゲモニーが位置付いていることを検証した。中小豪農による政治的活動は普段は独自なものだが、緊急危機時や大規模豪農の経営発展に関わる局面などにおいては大規模豪農のヘゲモニーに編成される傾向にあることを指摘した。また、(2)大規模豪農と地域社会の宗教民俗文化動向との関係に関する研究、をおこない、大規模豪農が契約講や伊勢講の整備に尽力し居村や地域の宗教文化的な諸活動を支援し、自己の地域基盤を強化し農兵組織化などの基盤を培っていった動向を考察した。III 近世近代移行期における地域社会のヘゲモニー構造の変動過程に関する総括的研究まず、(1)幕末〜明治前期における地域社会のヘゲモニーと政治情報に関する研究、を実施した。激動する政治情報の入手ルートを、豪農間の思想文化的ネットワークや本家-分家関係に基づく神職の江戸派遣などの新史料により検討した。また、(2)大規模豪農-中小豪農・村役人の間の諸ヘゲモニー関係に関する研究、を総括的におこない、小作争議に直面した中小豪農が大規模豪農に連携し地主講が支配領域を越えて組織されるとともに、大規模豪農の強力なヘゲモニーのもとで農兵組織がつくられた過程を考察した。この過程で培われた豪農間の関係性は維新後の養蚕振興を中核とする地域の殖産勧業の推進主体に確実に帰結し、同時に県会議員ネットワークの基礎ともなることを展望した。
著者
野々村 美宗
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

皮膚の構造と機能を模倣した表面を持つマイクロカプセルおよび皮膚モデルを開発し、皮膚が外部刺激や乾燥から体内の臓器を保護する機構を物理化学的視点から解明することを日的として研究を行った。その結果、羊毛を粉砕して得たケラチンパウダーによって被覆されたエマルション及びマイクロカプセルの調製に成功した。このマイクロカプセルは皮膚のモデルとして有用なだけでなく、生体への安全性や皮膚親和性の高い化粧品1医薬品用製剤に有用であることが予想される。また、固体粒子とモデル細胞間脂質混合膜で寒天ゲルを被覆した皮膚モデルを調製し、寒天ゲルからの水分蒸散量を測定した。その結果、コレステロールと脂肪酸を適量添加することにより、寒天ゲルからの水分の蒸散が効果的に防止されることを見出した。この成果は角質層内における脂質の存在の重要性を示すものであり、化粧品などの開発に有川な知見である。
著者
山本 隆儀
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ACOASからの出力結果を用いた葉層表面積/葉層体積比および薬滴付着量分布の2種類のシミュレーションモデルを作成するとともに, 用いるパラメータ類の検証実験を行った.4樹種それぞれ154個の樹形について20年間にわたリシミュレーションを実施したところ, 10a当たり散布量の20年間平均値の序列とともに10a当たり散布量や薬滴付着量などに関連する多くの要因が明らかになり, 減農薬樹形開発のための基礎的資料が得られた,
著者
西岡 昭博 香田 智則
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の結果、(1)従来にない斬新な米デンプンの変性法、(2)(1)の手法で得た改質デンプンと汎用プラスチック材料とのコンポジット技術の開発に成功した。具体的には、(1)において加熱とせん断を同時に印可することにより無加水で瞬時に米デンプンを非晶化できる技術を開発した。また、この技術を基盤に加熱・せん断型粉砕装置の開発に成功した。(2)では、(1)の研究結果から得られた非晶性デンプンと(a)エチレンメタクリル酸共重合体をNaイオンで中和したアイオノマー、(b)ポリブチレンサクシネート(以下、PBS)、(c)ポリ乳酸(以下PLA)の3種類の材料とのコンポジットを行い、分散性、熱安定性、機械特性、溶融物性を評価した。比較として米粉には、市販の米粉(結晶性デンプン)、市販の非晶性デンプンも使用した。本研究で得られた新規変性デンプンコンポジット材料の特徴は以下の通りである。(1) 結晶性デンプン、市販の非晶性デンプンと比較して、著しく分散性が優れる。(2) 重量分率10%までの添加では添加前のバージン材料と比較し、物性(機械的)が劣らない。このことは結晶性デンプンや市販の非晶性デンプンには見られない効果であった。(3) 重量分率50%までの添加が可能であり、本研究で用いた新規変性デンプンを添加した系は最も物性低下が少ない。(4) 新規変性デンプンは、優れた結晶核剤として作用することが分かった。本研究の結果、従来の手法と全く異なる手法でデンプン変性が可能であり、得られた変性デンプンが生分解性樹脂等の優れた添加剤となり得ることが明らかになった。
著者
藤田 稔
出版者
山形大学
雑誌
山形大学法政論叢
巻号頁・発行日
vol.18, pp.51-97, 2000-05-25

はじめに 日本における拘束条件付取引に対する独占禁止法の通用の検討は、製造業者と販売業者との売買契約の関係を中心に進められてきた。しかしながら、製造業者と販売業者との間で結ばれる代理店契約には、販売委託契約や代理商契約も利用されている。本稿は、委託販売における委託者による受託販売業者に対する価格拘束の問題を中心に、独占禁止法の不公正な取引方法の規定を適用する際の違法性判断基準の分析枠組みについて論じるものである。これらの問題については、従来、公取委の行った審決や独占禁止法研究会報告、流通・取引慣行指針をめぐって検討が行われてきたが、必ずしも十分ではないように思われる。現在、著作物の再販売価格維持の適用除外規定の改廃に関する検討が公取委によって行われているが、適用除外規定が廃止された場合には、価格維持が委託販売や締約代理商の取引形態によって試みられる可能性もあり、委託販売や締約代理商への独禁法適用をどのように進めるかが問題となるのではないかと思われる。筆者は、既に委託販売における価格拘束の違法性判断基準に関して論考を公表しているが、十分に論じられなかったので、改めて論じるものであり、善管注意義務や問屋の指値遵守義務との関係、独禁法の排除措置との関係についても論じていく。その上で、書籍と新聞の流通に関する独禁法適用の問題も論じる。なお本稿では、再販売価格維持等の拘束条件付取引の公正競争阻害性については、立ち入った検討は行わず、基本的に通説的立場を前提にして論じており、契約形態の差異に由来する独禁法適用の問題を主題としている。
著者
阿部 宏之 横尾 正樹
出版者
山形大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では、電気化学的呼吸計測技術を応用した非侵襲的細胞間ネットワーク解析システム構築のための基盤技術開発を目的とした。酸素の還元電位を検出するマイクロ電極をプローブとする走査型電気化学顕微鏡(SECM)をベースに高精度の細胞呼吸計測システムを構築し、哺乳動物卵子を単一細胞のモデル系に活性が極めて低い単一細胞呼吸解析システムの開発を目指し、以下の研究成果が得られた。1. 高精度単一細胞呼吸計測システムの開発と性能評価 : 単一卵子の酸素消費量(呼吸)を安定して計測できるマイクロ電極を開発した。単一細胞呼吸計測のための専用計測液を作製し、高精度マイクロ電極を装備したSECMと測定液等の要素技術を統合した「高精度細胞呼吸計測システム」の開発に成功した。2. 呼吸計測の有効性検証 : 「高精度細胞呼吸計測システム」を用いて、マウス、ウシ、ブタ等の単一未成熟卵子の呼吸量計測に成功するとともに、卵子成熟過程における呼吸量変化の解析が可能となった。生物学的解析により、呼吸計測システムの有効性が示された。3. 細胞間ネットワーク解析システムの構築 : 卵子成熟過程において、卵丘膨化に伴う卵丘細胞-卵子間相互作用と呼吸活性との関係を解析した結果、卵丘膨化に伴い卵丘細胞と卵子の呼吸能が変化することが明らかになった。