著者
廣嶋 清志
出版者
島根大学
雑誌
山陰研究 (ISSN:1883468X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-36, 2010-12-31

幕末における出生率上昇,人口増加は,低階層ほど多い(就業に伴う)移動が減少することによりその出生率と家の再生産率が上昇することによってもたらされたとの予想のもとに,幕末石見銀山領における階層別の移動率を観察し,その高さが,10石以上層を別として,階層の高さに反比例することを示すことができた。同時に,家族を残した就業に関わる移動と考えられる出職という記載が宗門改帳にわずかに発見されたが,この記載は,幕末の緊迫した情勢によって一部の村で例外的に行われたものと考えられ,出職の多くは,一度,転出(出人)と記載されたあと,村内の宗門改帳から除外されたと考えられる。この宗門改帳上不在の家成員は,1年に何度か帰宅することがあったとしても,出職が結婚している者の結婚生活にとってさまたげになり,あるいは未婚者の結婚年齢を遅くし,その結果,家の再生産率を低下させ,その階層差を生み出す重要な原因と考えられる。同時に,宗門改帳による在村人口のみによって計算した結婚率や出生率は出職者を多く含む階層では見かけ上やや高くなるものといえる。このことから,1石未満層に比べ無高層の家再生産率は低いにもかかわらず,結婚率と出生率は高くなったものと考えられる。13;
著者
岩崎 健史 田中 智美 飯塚 祐輔
出版者
島根大学
雑誌
Laguna : 汽水域研究 (ISSN:13403834)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.13-18, 2009-06

Pacific oyster Crassostrea gigas and Portuguese oyster C. angulata are morphologically13;related species that are sympatrically distributed at nearshore blackish areas in13;the subtropical zone of East Asia. Although these two species have thus far been known as inter-fertilizable under controlled conditions, molecular-based studies on mitochondrial DNA analysis verified obvious genetic differences between them. Huvet et al. (2004) reported a novel microsatellite DNA marker enabling to discriminate allelic sequence variants for C. gigas and C. angulata. In this study, we developed a rapid, reliable, and secure PCR-RFLP analysis of the biallelic microsatellite marker to diagnose hybrid oysters between C. gigas and C. angulata in wild stocks. An array of wild oyster specimens of C. gigas haplotypes and C. angulata haplotypes collected from Japan, Taiwan, and Korea were subjected to PCR amplification of the microsatellite marker and subsequent RFLP assay using FastDigest® Bsp1407I13;restriction enzyme, followed by microchip electrophoretic diagnosis of both PCR and RFLP products. It took about 2 hours for the whole process of our analysis, and the frequencies of biallelic variants observed in C. gigas and C. angulata haplotype stocks were at the equivalent level of those of the previous report. In addition, a high frequency of the allelic variants for C. angulata in C. gigas haplotype stock in Tokyo Bay suggests the occurrence of natural hybrid oysters between C. gigas and C. angulata.
著者
秋廣 高志
出版者
島根大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、ナス科植物の果実にグルタミン酸が高蓄積するメカニズムを明らかにすることである。トマトの緑熟果実にはGABAが高蓄積し、赤熟期に入ると急速に代謝される。その一方で、グルタミン酸は赤熟期に高蓄積することが知られている。本研究ではGABAからグルタミン酸を合成する酵素(GABAアミノ基転移酵素;GABA-TK)がこの現象に深く関与していと考え、GABA-TKタンパク質をゲノム情報が整備されたイネから単離することとした。まず一年中利用可能な材料である杯盤由来のイネカルスを、実験材料として用いることが可能であるかについて調査を行った。その結果、トマトの約1/100程度ではあるが酵素活性が存在することが分かった。続いて、GABA-TK活性が最も高い培養条件を明らかにする目的で、カルス中のGABA含有量の変化を継時的に調査した。その結果、継代後5日目にGABAが急速に代謝されることが分かった。この結果から、経代後5日目のカルスを初発材料にし、GABA-TKタンパク質を精製することが最適であると判断した。GABA-TKの酵素活性を指標として、硫安沈殿、陰イオン交換クロマトグラフィー、脱塩、バッファー交換、限外濾過の条件検討を行った。この条件検討と並行して、GABA-TK酵素活性の測定方法の高感度化についても検討を行った。これまでは、GABA-TKの反応産物であるグルタミン酸をグルタミン酸脱水素酵素で分解し生成するNADH量を蛍光分光光度計で測定していた。この方法は感度は高いがバックグラウンドが高く、特異性も低い。そこで、グルタミン酸を蛍光標識物質NDFで標識した後、超高速液体クロマトグラフィーを使って分離し、蛍光分光高度計で検出する方法の構築を行った。その結果、100fmol程度のグルタミン酸を測定することができる実験系の構築に成功した。
著者
斎藤 重徳
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学 (ISSN:02872501)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-6, 1981-12-25

三段跳は,走幅跳と同じように水平方向の跳躍距離を競う種目であり,基本となる力学的諸原理も同じである。これらは,助走によって得られた水平方向の力(運動量)を最大限に利用し,より多くの水平方向への距離を跳ぶ競技で,基礎体力や運動能力のほかに踏み切りでの動きが重要なポイントである。三段跳が走幅跳と大きく異なるところは、走幅跳が1回の踏み切り(跳躍)から成り立っているのに対し,三段跳にはホップ,ステップ、ジャンプの3つの局面の踏み切り(跳躍)があることである。13; 三段跳は,跳躍種目の中でも自然発生的な源をもっている種目(走幅跳,走高跳,棒高跳)とは異なり,発生に特異な性格をもっている。記録によれば,古くからケルト人らによってお祭りなどで行われていたが,近代競技としての三段跳は,アイルランドやスコットランドの競技に源を発し,ホップを2度つづけるホップ−ホップ−ジャンプという片足跳びであった。一方別の跳躍方法としては,ステップ−ステップ−ジャンプの方法を用いるドイツ式三段跳もあったようである。その後,今世紀にはいる直前に現行の跳躍方法に統一がなされたようである。13; このように,三段跳の跳躍方法は歴史的にも変遷を繰り返し,ホップ−ステップ−ジャンプといった跳躍方法は,他人のまねや教えられることで初めて経験するといった特異なものである。13; それでは,三段跳はどのような性格をもっているのだろうか。一般的に,三段跳は筋力が,走幅跳にはスピードがポイントである,といわれている。三段跳では3回の踏み切り(跳躍)が行われ,その中でもホップとステップの跳躍のあとは片足で着地し,それぞれの着地からステップとジャンプの踏み切りが行われる。このため三段跳は,この着地の局面において自分の体重を十分支えられるパワーを必要とすると考えられる。13; そこで本研究では,三段跳の未経験者に学習を行い,その学習の結果と三段跳の体力の機能的な指標として考えられる各種のパーフォーマンス・テストの結果をもとに,三段跳に必要な運動機能的な要素を究明しようとした。
著者
瀬戸 武司
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 自然科学 (ISSN:05869943)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1-29, 1995-12

Amphibian animals belonging to order Anura were listed 23 families, 302 genera and 3512 species (Frost 1985). In the whole amphibian species about 87% are anurans which distribute all over the world except the arctic and antarctic regions. Karyological studies have been accelerated in a couple of decades by the development of sophisticated techniques in anuran cytogenetics.13; The present paper prepared for overviewing the modern karyological studies for considering the karyoevolution in frogs and toads, as well as the systematic relations among families and genera.13; Duellman and Trueb (1986) described on hypothesized phylogenetic relationsips of 22 families of anurans including Palaeobatrachidae. They grouped these families into 7 branches on the cladgram based on analyzing 16 characters according to osteological, anatomical and behavioral evidences. These are as follows: 1) Leiopelmatidae and Discoglossidae, 2) Rhinophrynidae and Papidae, 3) Pelobatidae and Pelodytidae, 4) Myobatrachidae, Heleophrynidae, and Sooglossidae, 5) Leptodactylidae, Bufonidae, Brachycephalidae, Rhinodermatidae, Pseudidae , Hylidae, and Centrolenidae, 6) Dendrobatidae, Ranidae, Hyperoliidae and Rhacophoridae, and 7) Microhylidae. Although ambiguous premise remains on the cladgram as they mentioned, I am describing the article following their grouping of 21 families of living frogs and toads.13; The present paper concerns the karyological evidence of 11 families placed in the groups 1, 2, 3, 4 and two families of the group 5, as the first half part of the article on anuran karyoevolution.
著者
人見 裕江 中村 陽子 小河 孝則 畝 博 井上 仁 仁科 祐子
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

グループホームやデイサービスにおける痴呆症高齢者ケアの実態と美容を取り入れたケアの効果について、事例分析、免疫機能、動脈硬化指数、家族に及ぼす美容の効果、およびスタッフをはじめとするケア提供者へ及ぼす影響について検討した。免疫機能、動脈硬化指数では変化が明らかではなかったが、認知症高齢者の表情が豊かになり、言語も増す傾向が示され、スタッフや家族への相互作用があることが示唆された。化粧が及ぼす生理・心理的反応に関する基礎的研究(北川・人見、2006)を行い、手軽にできる口紅について、心理的変化および脳活動・自律神経機能に与える影響について検討した。口紅をつけた結果、これまでの報告にもみられるように、化粧による気分の高揚や積極性の向上などの心理的変化が認められた。しかし、このような心理的変化では、脳活動。自律神経機能には有意な影響を与えないことが示唆された。京都、イスタンブール、ベルリンにおける第20-22回アルツハイマー病協会国際会議に参加し、世界の認知症ケアに関する情報を得た。A老年性痴呆疾患治療病棟における攻撃的行動のある認知症高齢者に対するスタッフの態度とバーンアウト症候群との関係をパイロットスタデイとして調査した。攻撃的行動を否定的に捕らえるスタッフはバーンアウト傾向にあることが示唆され、認知症ケアにおける看護介入の方策、およびスタッフ教育について、検討する必要性が急務であることが示めされた(人見・中平・中村・他、2006)。そこで、大阪および山陰地方の介護施設のスタッフ約1、500人を対象に、調査研究を行った。また、代替療法を用いた介入研究を地域の病院における療養型治療病棟や特養において実施し、本人だけでなくスタッフおよび家族への波及効果がある傾向が示された。今後、全国の痴呆症ケアに関わる病院や施設および事業所等に勤務するスタッフの態度とバーンアウト症候群との関係を明らかにし、介護提供者の教育システムを構築に関する示唆を得ると共に、提言をする予定である。
著者
山口 清次 長谷川 有紀 小林 弘典 虫本 雄一 PUREVSUREN Jamiyan
出版者
島根大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

成人には無害でも小児に対して健康被害を起こす薬剤が知られている。そこで、培養細胞とタンデムマス質量分析計を用いるin vitro probe acylcarnitine(IVP) assayという方法を応用して、小児に対する薬物等の脂肪酸β酸化に対する毒性を評価するシステムを確立した。アスピリン、バルプロ酸などは、脂肪酸代謝の脆弱な細胞でβ酸化障害が増強された。ベザフィブレートはβ酸化異常症の代謝を改善した。
著者
淡野 将太
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

関係性の観点を取り入れたやつ当たり的攻撃モデルを提案した。やつ当たり的攻撃の生起に攻撃者および攻撃対象者の関係性がどのように影響するのかを分析した結果,攻撃対象者によってやつ当たり的攻撃の表出の程度が異なること,また,攻撃対象者が攻撃者の行動傾向に理解を示し攻撃行動を受容することを考慮してやつ当たり的攻撃を行うことが明らかになった。やつ当たり的攻撃に及ぼす認知的要因の影響を検討するに留まり,関係性という社会的要因の影響については検討していなかった先行研究の知見に対し,攻撃者と攻撃対象者の関係性が影響を及ぼすことを示した。
著者
玉木 宏樹
出版者
島根大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

【研究目的】去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の標準治療としてドセタキセル(DTX)が使用されるが、徐々に耐性を示し予後不良となる。当院では、DTX耐性CRPCに対し、DTXにサリドマイド(Tha)を併用することで再び前立腺特異抗原の低下を認めた症例を経験している。既に我々はヒト前立腺癌PC3細胞(PC3)を用いた曝露実験において、Tha単剤では抗腫瘍効果がほとんど認められないにも関らず、Tha/DTX併用においてはDTX単剤と比較して抗腫瘍効果が増強することを報告している。また、併用による抗腫瘍効果の増強と抗癌剤の細胞外排出機構ならびに耐性化に関与するとされている多剤耐性遺伝子1(MDR1)との関連性は低いことを報告している。本研究では、抗癌剤による癌細胞の細胞死に関連している内因性アポトーシスに及ぼすサリドマイドの影響を検討する目的にて、PC3ならびにDTX耐性PC3(DR-PC3)を用いた研究を行った。【研究方法】DR-PC3はPC3をDTX50nMで4ヶ月以上培養することで確立した。Cell viabilityの測定はWST-8を用いて行った。アポトーシスの解析はAnnexin V-FITC/PI染色後、FACS Calibur flowcytometerにより行った。目的とするタンパク質の発現はイムノブロットで確認した。アポトーシス抑制タンパク質であるBcl-2、Bcl-xLとの関連性は、これらに対するsiRNAのトランスフェクションによりタンパク質の発現を選択的に抑制した状態で確認した。【研究成果】DR-PC3に対するDTXのIC_<50>(Half maximal inhibitory concentration)は800nMでありPC3におけるIC_<50>6.25nMと比較して約100倍の抵抗性を示した。PC3においてsiRNAのトランスフェクションによりBcl-xLの発現を抑制した結果、DTXによるcell viabilityの有意な低下ならびにアポトーシスの著明な増加を認めた。これらの結果、Bcl-xLがPC3のDTX感受性の増強に関与していることが示唆された。現在、ThaがBcl-xLの阻害に影響を及ぼしている可能性について、PC3ならびにDR-PC3を用いて検討を行っている。これらの検討により、DTX耐性CRPCのDTX感受性を回復するための薬剤としてのThaの有用性が明らかとなる。
著者
山本 達之 松田 みゆき
出版者
島根大学
雑誌
島根大学生涯学習教育研究センター研究紀要 (ISSN:1347264X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-14, 2009-03

A new Japanese reading reader written in Japanese, named MATSUERIA, was developed by a newly formed Japanese teaching volunteer group. The reader was written in easy Japanese to introduce the culture of Matsue mainly to settled foreigners. It was composed of a number of chapters each of them has an original index label, which visually indicates the recognizability of the topic and the Japanese level of the chapter. The processes of making up the reader and its application to the class room gave important learning opportunities to the each member of the volunteer writers and editors. Such learning experiences may give a trial model which helps the effort to build up a distinctive multicultural society in Matsue region.
著者
三瓶 良和
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

汽水域の基礎生産によるCO2吸収能力の定量的評価およびその気候変化による変化特性について,日本の代表的汽水域である中海・宍道湖において,現環境および過去数百年間の関係を考察した。表層堆積物の全有機炭素(TOC)濃度は,中海南端~湖心では3.6~4.0%のsapropelicな高い値を示し1997年以降変化はなかった。宍道湖表層TOC濃度は,東部と西部を除き3.5~4.3%のsapropelicな高い値を示して2005年以降変化はなかったが,東部では約0.5%増加した。有機物の起源は,C/N比(7~9)と熱分解GC-MSのn-アルカン組成から判断して大部分が植物プランクトンに由来する。コア試料のTOC濃度は,中海・宍道湖ともに1800年以前は1%程度の低い一定の値を示し,1800から1900年にかけてさらに0.数%低くなり,その後現在に向かって急激に増加して4%程度になる。中海においては,表層TOC濃度が3.5%を超えると湖底水中に硫化水素が溶出されはじめ,両者に比例関係があり,H2S(ppm)=13.9*TOC(%)-52.1 (TOC>3.5%)で表されることが分かった。中海中央北東部における大気CO2濃度は,2013年4月~5月の平均値は約360ppmであり,春季の植物プランクトンブルーミングによって湖上の大気CO2濃度が低くなった影響が考えられた。また,最大80ppm程度の大きな昼夜差が見られた。Carbon sinkについては,金井ほか(1998,2002)の堆積速度を用いれば有機炭素埋積速度OCARは中海が7.0 mgC/cm2/y, 宍道湖が4.0 mgC/cm2/y,全域では中海で約6,000トン/年,宍道湖で約3,200トン/年と見積もられた。コア試料については,中海では,50~25cm(1770-1890年:世界的な寒冷期のLittle Ice Age期間)はTOC濃度が約1%と過去最も低く約2,000トン/年となり,これは現在の約1/3である。宍道湖コアでは,30~20cm(1830-1890年)で約0.7%と過去最も低くなり,約1,300トン/年となる。汽水域は半閉鎖水域で有機物の分解が遅く,かつ,水深が浅いために有機物の堆積が速やかに起こるので,気候変化に対しては非常にレスポンスの速いcarbon sinkとして特徴づけられた。
著者
北川 裕之
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

黒鉛製のスライドボートを用いた液相成長法によりp型熱電材料Bi_<0.5>Sb_<1.5>Te_<3>とn型熱電材料Cu添加Bi_<2>Te_<2.85>Se_<0.15>を作製した。ボートスライド方向が熱電変換に適した結晶方位を有していることを確認した。キャリア濃度制御を行った結果、室温付近で大きな出力因子を有する材料がp型n型ともに再現性良く得られた。
著者
ROSER Barry・P
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本州、北海道、韓国の主要なテレーンで採取した砂岩-泥岩試料は全岩化学組成の上から顕著なコントラストを示す。本州では、四万十-丹波、三波川、黒瀬川テレーンにおける砂岩-泥岩試料は主・微量成分、希土類元素に関して、比較的分化の進んだCIAまたはACM堆積物の特徴を示す。コンドライトで規格化したREEパターンはLa_N/Yb_N比平均値はそれぞれ10.4-10.9、8.2、9.2であり、また、Gd_N/Yb_N比はそれぞれ1.72-1.33、1.45、1.71と違いがある。低いGd_N/Yb_N比はジルコンやガーネットの濃集を示している。負のEu異常はこれら3テレーンのすべてに共通して認められる(Eu/Eu*平均値は0.77-0.73,0.63,0.79)。渡島半島テレーン(北海道)の珪質岩に於ける高いLa_N/Yb_N比(平均値11.00)とより大きな負のEu異常(Eu/Eu*=0.64)は比較的成熟した起源物質を示している。蝦夷層群下部イドンナップ帯岩石における低いLa_N/Yb_N比とEu/Eu*比(平均値9.74と0.69)は苦鉄質物質のより大きな影響を反映して、より上位に向かって減少(6.76と0.78)していく。Gyeongsang累層群(韓国)における平均的なLa_N/Yb_N比(13.5)は、この累層群に対比される関門層群中のもの(8.8)に比べ、より大きいが、Eu/Eu*比平均値は類似している。四万十、三波川、大島、蝦夷イドンナップテレーンのNdモデル年代は著しく異なる。四万十帯のモデル年代は、大部分が1.0-1.4Gaにはあるものの、0.74から1.6Gaの幅を示し、領家と肥後テレーンの起源物質の中間的な年代値となっている。二つの三波川結晶片岩試料は1.04と1.2Gaという類似したモデル年代を示し、四万十帯プロトリス、つまり源岩の共通性の可能性を示唆する。渡島半島テレーンのモデル年代は著しく古く(1.44-1.85Ga)、Yangtzeクラトンの年代と類似し、おそらくそれらを起源とする。下部蝦夷イドンナップテレーンのモデル年代は、渡島半島テレーンものより若く(1.05-1.31Ga)、上部蝦夷イドンナップテレーンにおいてはさらに若く(0.71-0.93Ga),このことはおそらく付加体内においてリサイクルした海洋地殻の影響が反映されているのであろう。造山帯としての日本列島の平均的な上部地殻組成(JOAUC)に対する元素組成規格値は、同じテレーンにおいて、REEやHFSEは良く類似しているにもかかわらず、ある種の元素(例えば、Fe,Mn,Mg,Ca,P,Sc,V,Cr,Niなど)は負の異常を示す。元素の枯渇は渡島半島、蝦夷イドンナップ、四万十テレーンにおいてもっとも顕著であり、また、泥岩に比べ砂岩で著しい。この異常はJOAUC平均値の中で、ある種の元素については修正しなくてはならないであろうことを示している。
著者
石野 陽子
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

少産を施策で誘導し少子化社会となった中国と、様々な子育て支援施策にもかかわらず少子化が深刻な日本において、両国の青年達・若い既婚者達は、結婚や子育て、家族、そしてそれを取り巻く制度などをどのように考え、家族をめぐる諸問題へどのように取り組んでいるのであろうか。これらの事柄を、両国でのインタビュー及び質問紙調査によって探った。その結果、中国の青年は、日本の青年よりも家族を大切にし、自分の生活の豊かさや家族の繁栄のために自分はどう将来を歩むべきかを中心に考えていた。したがって、進学や就職、結婚の如何は、自分自身や家族の将来を左右するのであり、慎重かつ積極的に考えていることが示された。
著者
松本 一郎
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

理科学習の中でも野外学習を伴うものは、その観察学習の実施率が低い。それは、自然自体の多様性により観察対象物が、地域や場所ごとに変化するという本質に由来するものである。また、学校外に観察対象があるため、時間や費用、また観察対象となり得る適当な場所の確保も問題である。本研究では、上記の課題解決のため、学校を支援するための野外学習プログラムの開発・実践を行った。小学6年「土地のつくりと変化」、小学5年の「流れる水のはたらき」の単元において地点の選定、学習の実施などのプログラム化に成功した。本取組期間に延べ、39校園、生徒児童数で1515名にプログラムを提供できた事は、本取組の大きな成果である。
著者
小川 巌
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学・人文・社会科学・自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.17-27, 2013-12-25

子どもを取り巻く諸環境との関連性で発達や障害をとらえる近年の概念・モデルの検討から、学校での学習と学外での生活・社会参加を結びつけるカリキュラム横断的な授業の重要性が示唆された。次に、知的障害児教育におけるカリキュラム横断的な学習形態である「領域と教科を合わせた指導」に適合する学習理論の条件について考察した。結果、従来の認知・学習理論にはない、実践的・社会-文化的文脈をとりいれた状況的学習論の適合性が高いことが明らかになった。さらに、知的障害児の領域・教科を合わせた指導における授業設計や評価のための要件について、状況的学習理論や活動理論の観点から検討した。
著者
高須 晃 亀井 淳志 ロザー バリー 赤坂 正秀 大平 寛人 KABIR M.F. OROZBAEV. R. JAVKHALAN O. 松浦 弘明 貝沼 雅亮
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

三波川帯のエクロジャイトの変成作用は,①高温型変成作用イベント,②2回のエクロジャイト相変成作用イベント,そして③藍閃石片岩相-緑れん石角閃岩相変成作用イベントの4回の変成イベントが認められる.これらの変成作用は120-90 Maの比較的短時間に,海洋プレートの沈み込みの開始(大陸側プレートによる接触変成作用),沈み込みの継続(地温勾配の低下による低温エクロジャイト変成作用)海嶺の接近(地温勾配の上昇による高温エクロジャイト変成作用)そして海嶺の沈み込み(狭義の三波川変成作用と変成帯全体の上昇)によって説明できる.