- 著者
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玉木 宏樹
- 出版者
- 島根大学
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2008
【研究目的】サリドマイド(Tha)は多発性骨髄腫の適応で国内承認されたほか,種々の悪性腫瘍で有効性が報告されている.内分泌療法抵抗性前立腺癌においてもドセタキセル(DTX)との併用により臨床的有用性を示したとの報告があるが,その基礎的検討は十分に行われていない.そこで,ヒト前立腺癌細胞を用い,Tha単独あるいはDTXとの併用時における抗腫瘍効果について検討した.【研究方法】ヒト前立腺癌細胞は,アンドロゲン非依存性細胞株(PC-3)を用いた.PC-3は常法に従い継代培養し実験に用いた.PC-3を96穴プレートに播種後24hr培養し,Tha,DTXを単独あるいは併用にて一定時間曝露した.細胞生存率を蛍光ホモジニアス法を用いて測定し,種々の条件における抗腫瘍効果を比較した.【研究成果】1.Tha単独曝露:Thaの抗腫瘍効果は濃度・時間に非依存的であり,Tha 10μMにおける72hr曝露後の細胞生存率は約80%であった.2.DTX単独曝露:濃度・時間依存的に細胞生存率の低下を認め,DTX 10nMにおける24hrおよび72hr曝露後の細胞生存率は約60%および約40%であった.3.Tha前曝露後のTha/DTX併用曝露:DTX 10nM単独曝露群と比較して,DTX曝露期間中のみTha 10μMを併用した群では約10%,DTX曝露72hr前からThaを曝露した群では約30%,さらにDTX曝露期間中にもThaを併用した群では約50%の細胞生存率の低下を認め,Thaの前曝露およびDTXとの併用により抗腫瘍効果の増強が示された.これはThaのDTXとの併用における臨床的有用性を支持するものであった.また,DTX耐性PC-3を作製し,耐性化細胞におけるTha併用の有用性およびTha併用による抗腫瘍効果の増強メカニズムについて検討を行っている.