著者
後藤 弘志
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

マルティン・ゼールの美学を、主としてその著『現出することの美学』(2000)におけるカント、シラー、ニーチェ、アドルノらとの対決に依拠して、客観的認識か主観的感情か、感性的認識かイデア的認識か、美的対象は実在か仮象か、自然美の優位か芸術美の優位かといった、従来の美学思想の分類項目をすべて包括する美学として美学思想史上に位置づけた。これによってよき生の枠内における美的要素の意義について再検討する基礎を確立した。
著者
縫部 義憲
出版者
広島大学
雑誌
広島大学日本語教育学科紀要 (ISSN:13415298)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-10, 1995-03-31

The present article aims to find out the problems of Japanese language education in the special Japanese language classrooms designed to help foreign students learn "Basic Interpersonal Communication Skills" (BICS) in Japanese at elementary schools in Hiroshima Prefecture, and to posit solutions for them from the standpoint of bilingual education.
著者
山本 直樹 戸田 常一
出版者
広島大学
雑誌
広島大学マネジメント研究 (ISSN:13464086)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.171-177, 2005-03-19

本稿は,「いつまで経っても完成しない」という広島市の都市づくりについて,その背景にある問題の本質を,リスクマネジメントの視点から探ることを目的とした論稿である。広島駅前市街地再開発事業を具体的な事例として取り上げ,硬直的なリスク処理,不正確なリスク範囲の認識,さらには曖昧なリスク分担を事業の遅延を引き起こす要因として分析した。さらに,広島駅前地区の戦災復興の過程について,類似地区である大阪市上六地区との比較を通じて検証した結果,行政主導の閉鎖的なリスク処理の実態が明らかとなった。そして,こうしたリスクに適切に対応するためのリスクマネジメントの必要性と,それを実現する市民と行政の間のリスクコミュニケーションの重要性を指摘した。
著者
織田 泰幸
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第三部, 教育人間科学関連領域 (ISSN:13465562)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.35-43, 2004-03-28

Management Theory has come to focus on "knowledge" which is considered as an important resource for organizational management in the knowledge society. This knowledge management movement in the West was strongly influenced by Japanese management theorists, Nonaka & Takeuchi (1995), who wrote the book "The Knowledge-Creating Company". David H. Hargreaves, a British educational sociologist, was inspired by this book and applied the Knowledge Management Theory to school organization. In his theory, he attempts to construct the networking system for supporting and sustaining the knowledge-creating schools that is capable of bringing about continuous innovation. This paper will illustrate and analyze the Knowledge-Creating School Theory with a particular focus on the distinction between knowledge-creating process and knowledge assets in school, since Hargreaves hasn't differentiated them well.
著者
梶井 芳明
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第一部, 学習開発関連領域 (ISSN:13465546)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.35-44, 2003-03-28

This paper discusses the changes of the objectives of the Japanese language education and Japanese writing in the Japanese National Standards after World War II and researches that examined the validity and reliability of the criteria for evaluating writing in the fields of Japanese language education and educational psychology. Results of the review show that objectives of the Japanese language education and Japanese writing have been changing. In the 1947-1968 Japanese National Standards, the objectives were activity-based, that is, developing children's speaking, listening, writing and reading skills. In 1977-1989, however, these objectives have changed to ability-based, focusing on the children's ability to express and understand. And in the New Japanese National Standards (1998), the objectives changed again to activity-based. Likewise, the system for evaluating children's compositions have also changed, that is, the criteria used for each grade level have been integrated, resulting in three sets of criteria; one each for low grade (Grades 1 and 2), middle grade (Grades 3 and 4), and high grade (Grades 5 and 6). Thus, teachers need to use the criteria more carefully, taking into consideration the actual grade level of the children. In terms of research, there is a need to clearly define the evaluation items and for the teachers to experience the use of these items in order to improve the validity and reliability of the evaluation of compositions.
著者
入川 義克
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.41-48, 1995-03-10

夏休み・冬休みには,まとまった量の問題を解くという課題が多かった。また,授業を振り返ってみても,クラスという学習集団を対象として,数学的な知識・技能を伝達し,解法の過程をあらかじめ予想して進める形態の授業が多かった。限られた時間内で教えなければならない現状を考えれば,このような進め方も必要である。しかし,授業の展開の仕方にもよるが,このような進め方だけでは,多くの生徒にとって受け身の授業になってしまう。生徒の多様な考え方を引き出したり,数学的な考え方や数学に対する興味・関心を高め,生徒が学習の主体者として意欲的に課題に取り組んでいく課題や授業を計画的に取り入れていけば,私達が期待する以上の効果を上げることができる。
著者
上山 大信
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究の目的は,反応拡散モデルを空間離散化した場合にあらわれるカオス的な動きをするパルスの出自の解明と,その普遍性を明らかにすることであった.結果として,P-modelおよびGray-Scottモデルにおいて,カオス的パルスの存在が示され,特にP-modelにおけるカオス的パルスの出自については,数値的に解の大域構造を得ることに成功し,2つの経路を経て,カオス的パルスが出現することがわかった.周期的な振る舞いからカオス的な振る舞いへの遷移は大きく分けて"Intermittency","周期倍分岐","トーラス分岐を経るもの"の3つに大別されるが,我々が対象としているカオス的パルスは,"Intermittency"および"周期倍分岐"の2通りの遷移により生じていることが判明した.また,連続モデルとの関係において,粗い空間離散化により,カオス的パルスが得られるパラメータ領域において,細かな,つまり十分連続モデルの近似となっているような接点数でのシミュレーション結果は,興味深いことに動きのないスタンディングパルス定常解であることがわかった.これは,これまでの空間離散化の影響に関する研究が主にスカラー反応拡散方程式のフロント解に関するものであり,その場合には,動いているフロント解が離散化の影響により停止するというものであったが,それとは全く異なる結果である.つまり,空間離散化により,停止しているものが動きはじめる場合があるというはじめての例である思われる.これらの成果については,フランスにおける国際研究集会「Invasion phenomena in biology and ecology」において発表を行った.
著者
NISHIOKA Midori HANADA Hideki MIURA Ikuo RYUZAKI Masashi
出版者
広島大学
雑誌
Scientific report of the Laboratory for Amphibian Biology (ISSN:03863166)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-34, 1994-12
被引用文献数
2

The sex chromosomes of Rana rugosa distributed widely in Japan were analyzed by the methods of conventional staining, C-banding and late replication (LR)-banding on 196 frogs consisting of 105 females and 91 males belonging to 24 populations of one group and three subgroups. The chromosome numbers of these frogs were all of 2n=26. The 12 pairs other than chromosome pair No. 7 had no sex differences in all the populations. In chromosome pair No. 7,sex-specific changes were found among some local populations. Seven populations belonging to the northern subgroup of the eastern group, including the Asahikawa and Sapporo populations in Hokkaido region, the Hirosaki, Akita and Inawashiro populations in Tohoku region, the Murakami and Kanazawa populations in Hokuriku region and the Katata population in Kinki region of the southern subgroup, had chromosome pair No. 7 which was the sex chromosomes of the ZW type. The Z chromosome was subtelo- or submetacentric, while the W chromosome was metacentric. By the C-banding and LR-banding patterns, the Z chromosome was divided into five types, Z^A, Z^B, Z^C, Z^D and Z^O, while the W chromosome was divided into two types, W^1 and W^2. Five populations of the southern subgroup of the eastern group, including the Toba population in Kinki region, and the Oigawa, Hamakita, Miyakoda and Yonezu populations in Chubu region,...
著者
緒方 茂樹
出版者
広島大学
雑誌
Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (ISSN:13408364)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.219-222, 1997-12-28

第1章序論 音楽がもつ治療効果を巧みに用いた音楽療法の技術にみられるように,音楽は生体の心身両面に対してきわめて効果的な影響を及ぼしうる媒体である。音楽行動のひとつである鑑賞という場面を考えた場合,そこにはまず音楽があり,次に聞き手としての生体の存在がある。聞き手にとって音楽は外部環境として捉えられ,一方で生体自身がもつ内部環境として,身体の生理過程が作り出す生理的状態と,それに密接に結びつく意識あるいは心理的状態が存在する。特に受動的音楽鑑賞という音楽行動において,身体的には静的な状態におかれている場合が多く,その際の生理的状態である覚醒水準は容易に低下する可能性があると考えられる。一方,心理的状態は,まず外部環境としての音楽自体と接することに対して動機づけられた態度,すなわち心理的「構え」のあり方が問題とされねばならない。その上で,主観的な報告として聞き手が外部環境としての音楽を享受していたとするならば,そこには音楽に対する興味や注意,あるいは情緒的反応のような特異的な心理的状態の存在を推定することができる。本研究の目的は,音楽を鑑賞することによって生じる心理的状態の変動を,生理的状態の変動から客観的に明らかにすることが可能かを検証することにある。この領域における従来の研究の多くは,音楽鑑賞時に明らかな覚醒を維持した状態のみを資料として扱っており,生理的状態の変動である覚醒水準の変動そのものを取り扱った研究はみられない。本研究では従来の考察枠組みに対する反省に基づき,脳波を生理的状態の指標とし,音楽が生体に与える影響を一連の覚醒水準の変動として捉えた。一方で生体の心理的状態の変化を知るために,音楽に対する聞き手の主観的な体験についても同時に求めた。この生理的状態と心理的状態の関係から,受動的音楽鑑賞時における生体の覚醒水準の変動について検討を試みた。このことによって,精神生理学の分野にあって未だ包括的な知見が得られていないこの領域において,音楽療法あるいは環境心理学等に関わる基礎的な理論構築に有効な所見が得られるものと考えられる。第2章実験1. 音響的環境条件と心理的「構え」が脳波的覚醒水準に及ぼす影響 本研究ではまず,受動的音楽鑑賞時における生体の全般的な覚醒水準の変動パタンを把握するための実験的検討を行った(実験1)。実験場面,すなわち外的環境は聞き手にとって可能な限り演奏会会場に近い,自然な音楽鑑賞の場面を設定するよう努めた。対照条件は,従来行われてきた研究との比較のために無音響と一定音圧の白色雑音を用いた。さらに実験中の入眠について統制する心理的「構え」に関する条件を付加した。受動的音楽鑑賞時において,生体の覚醒水準は明らかな覚醒状態を維持するとは限らず,半睡状態(入眠移行期,段階S1)にあることが多いことが明らかとなった。さらに主観的体験として被験者は「睡眠状態にあった」とする自覚体験に乏しいことも明らかとなった。また実験中に可能な限り覚醒状態を維持するよう求めた場合(心理的「構え」の条件),脳波的にみて特徴的な所見が認められた。すなわち,音楽鑑賞時と白色雑音聴取時の間の脳波活動の相違は,特に入眠移行期において認められ,その相違は少ないが,徐波帯域成分値あるいはスペクトル構造の相違として捉えることができた。このことは,音楽を鑑賞することによって鎮静効果がもたらされた可能性を示唆するものである。一方,各脳波的覚醒段階の出現比率に関しては,音楽鑑賞時と対照条件との間に有意な量的差異が認められなかった。従来の研究の多くが用いてきた一定音圧の白色雑音は,対照刺激としての妥当性に問題があった可能性がある。今後は,生体の覚醒水準の変動に直接的に影響を及ぼす,楽曲に固有の音響的な要素(音圧等)を統制する方法論的な工夫が不可欠である。第3章楽曲の定量化と新たな対照刺激の開発 脳幹網様体賦活系の働きを重視する古典的な理論では,覚醒水準は刺激入力の強さあるいは量に依存して変動すると考えられている。ここで音楽のもつ物理音響的側面からみた3大要素には,高低(pitch),音圧(loudness),音色(timbre)がある。音楽という外部環境が,生体の内部環境である覚醒水準に影響を与える場合,刺激入力の量あるいは強さは,これらのうち音圧の要素が最も直接的に関わっていると考えられる。このことから本研究では,まず音圧の要素に着目した楽曲の定量化を試み,次に楽曲のもつ音圧の時間的な変動をシミュレートした白色雑音を出力させる変調装置を開発した。この変調装置は,元の楽曲のもつ音圧変動を選択的に抽出し,その変動パタンに従って,一定音圧の白色雑音を変調するものである。このことから,元の楽曲と同一の音圧変動をもつ白色雑音を,対照刺激として呈示することが可能となった(変調雑音)。
著者
菅野 信夫 網谷 綾香 樋口 匡貴
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第三部, 教育人間科学関連領域 (ISSN:13465562)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.291-299, 2002-02-28

The purpose of this study is to clarify what the parents think about non-attendance at school of their children and how they will do with their children when they absent themselves from school. The results showed that the parents whose children had a tendency of school refusal persuade them to go to school although they tried to understand the situation from the standpoint of their children. The investigation also showed that there was a difference between parents and teachers as for understanding and attitude toward school refusal.
著者
杉山 政則 的場 康幸
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

キャディと名付けたタンパク質と複合体を形成したチロシナーゼの結晶に, 銅イオンをソーキングすると, チロシナーゼの活性中心に 2 つの銅イオンが導入された。 また, キャディ分子中に2 つの銅結合部位が見出され, キャディがチロシナーゼへの銅輸送を担うと考えられた。本研究では, ソーキング時間の異なるチロシナーゼ・キャディ複合体の結晶構造, および, チロシナーゼと銅イオン輸送能力が低下したキャディ変異体との複合体の結晶構造を, 高分解能で解析した。その結果, キャディがチロシナーゼの活性中心に銅イオンを輸送する分子機構を明らかにすることができた。