著者
榎田 一路 LAUER J・J 前田 啓朗 磯田 貴道 田頭 憲二 阪上 辰也 鬼田 崇作
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では,大学英語教育において,ポッドキャストとウェブ型教材を,一斉指導,個別学習,およびICTを用いた協同学習に援用した。まず,ポッドキャスト教材及びウェブ型準拠教材を開発・配信した。次にこれらを利用して教室内指導と教室外個別学習を組み合わせた実践を行い,その結果を分析した。さらにデジタル・ストーリーテリングを通じてICTを協同学習に援用することの効果を探った。ポッドキャストを活用した一斉指導と個別学習の連携は,学習者の学習意欲を高め,英語学習の絶対量向上に貢献した。デジタル・ストーリーテリングは,扱った題材への理解を深めつつ,成果物を共有することによる学び合いを提供する点で効果があった。
著者
藤田 正範 島田 昌之
出版者
広島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

【目的】乳牛では乾乳の初期に古い乳腺細胞が脱離し、新しい細胞に更新される。しかし、暑熱の影響によりこの更新が進まないときには秋季における乳生産が抑制されることが知られている。本研究では、乳生産に及ぼす暑熱の影響を理解する研究の一環として、乳腺細胞の機能性に及ぼす暑熱の影響を解析することを目的とした。このために,夏季乾乳・夏季泌乳牛と秋季乾乳・秋季泌乳牛の生乳中乳腺細胞のプロラクチン負荷に対する乳腺細胞プロテインキナーゼ活性などの比較調査を行った。【方法】ホルスタイン種夏季泌乳牛8頭(試験期間内日平均気温;23。3℃)、秋季泌乳牛8頭(試験期間内日平均気温;10。9℃)を用いた。分娩1日と10日の14時に乳房静脈から採血し、分娩10日の8時に生乳を採取した。血漿中エストラジオール17-β濃度を高速液体クロマトグラフィーUV検出法で、血漿中プロラクチン濃度をEIA法で測定した。プロラクチン負荷に対する乳腺細胞のプロテインキナーゼ発現量の測定では、生乳から乳腺細胞を分離し、10^3個前後の乳腺細胞に100、500および1000ng/ml濃度のプロラクチンを添加培養後にプロテインキナーゼ活性を酵素法で測定した。【結果】夏季泌乳牛のTDN摂取量と泌乳量は、秋季泌乳牛よりも低い傾向にあった。分娩1日における血漿中エストラジオール17-β濃度は夏季泌乳牛で低い傾向にあり、分娩10日における血漿中プロラクチン濃度は夏季泌乳牛で低い傾向にあった。乳腺細胞のプロテインキナーゼ発現量は3段階のプロラクチン添加のいずれにおいても夏季泌乳牛で有意に高い値であった。以上の結果、プロラクチンの血中放出は暑熱により抑制される傾向にあるものの、乳腺細胞内のプロテインキナーゼ活性などの代謝機能性が亢進することにより、泌乳牛は暑さに対応して乳生産の機能性を維持するものと考えられた。
著者
吉田 裕久 大槻 和夫 植山 俊宏 三浦 和尚 位藤 紀美子 山元 隆春 牧戸 章 吉田 裕久
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究では、3年間にわたって、説明的文章・文学作品・文章表現・音声表現の四つの領域班に分かれて、それぞれ予備調査・本研究を実施しつつ「国語能力の発達」に関する実証的な研究を進め、国語科教育改善への糸口を見出そうとした。本研究で得られた各領域班の研究から導かれた知見を一言で集約することはむずかしい。が、得られた成果を仮に集約してみると、次のようなことを言うことができる。1音声表現領域班が追究した対話能力の研究なかでの、「共同案」を組替えながら話し合いを行っていくことのできる力と、文学作品領域班の調査で得られた小・中学生の「続き物語」のなかに見られた、参加者的スタンスと観察者的スタンスをバランスよく選択していくことのできる力は、どこかでつながりあっているのではないだろうか。これは、文集表現領域班における調査結果についてもあてはまることである。さらに、説明的文章領域班の考察のなかで明らかになった、小学校6年以降の「メタ認知能力」の伸長の問題とも、これはリンクすると言えるのではないだろうか。2.対象や他者に同化・一体化していくということが可能になるかどうかというところに、少なくとも学童期初期の国語能力の発達の「峠」のようなものがあるように思われる。その同化・一体化が果たされた後、再び自己はことばを媒介としながら対象や他者とは異なる、自らの内部の何かを捉えることになる。それを意識しうるか否か、表現しうるか否か、ということがその次の「峠」なり「節目」なりになる。3.このような営みのなかで、その主体が関心を差し向ける「焦点」は移り動き、関心の幅と深さのようなものが、少しずつ少しずつその域を広げていくのではないか。対象や他者に同化・一体化しようとしたときとは異なった意味で、対象や他者をより広いパースペクティヴで捉えることができ、それを理解したり、その理解のもようを報告できるかどうかということが、その次の「節目」となるように思われる。4.対象や他者の包括的な理解と平行して、自己の内部の拡張もおこなわれるはずである。対象や他者の認識が構造化され、さらに自己の内部で追い育った独自な世界を、対象や他者に匹敵するものとして構築することができるか否かということが、おそらくその次にくる発達上の問題である。5.この科研の各領域班の調査研究で、とくに小学校高学年から中学生にかけて観察された、発達上の<停滞>や<ゆるみ>とも解釈される事象は、子どもの内面に目をやれば、そのような内部での葛藤が営まれているものであると考えることもできる。詳細な研究成果は、平成9年度末にまとめた中間報告書に続き、平成11年度末に刊行する最終報告書『国語科教育改善のための国語能力の発達に関する実証的・実践的研究II』(A4版160頁)に集約した。
著者
丸本 浩
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

研究目的:平成22年度の先行研究に続いて,「たたら製鉄法(けら押し法)」の基礎的な実験データの積み重ねを行い,(1)「たたら製鉄法」の操作方法の改善と収率の向上,(2)「たたら製鉄法」によって作った「けら(鋼)」の加工方法の開発と工夫,(3)「鉄」や「鋼」に関する情報収集および教材開発の3つの柱を立てて研究に取り組んだ。研究方法:(1),(2)は,実際に「たたら」を操業して,さまざまなデータを計測し,得られた「けら(鋼)」の中に含まれる不純物を「電気炉」を用いて加熱・加工して取り除く実験を行った。(3)は,「たたら製鉄法」や「鉄」に関する博物館等へ行き、資料や情報を収集して教材開発を行った。研究成果:(1)平成22年度の先行研究で得られた成果をさらに発展・充実させ、鋼の収率の改善や操作時間の短縮,炭の種類の違いによる影響を緩和する操作方法の開発,収率の向上などの成果を得ることができた。(2)「たたら製鉄法」によって得られた「けら(鋼)」に含まれる不純物を,電気炉を用いて加熱・除去する操作は非常に困難な作業で,何度か試みたが納得のいくような加工ができているとはいいがたい。今後,さらに研究を継続し,教材として完成させたい。(3)「たたら製鉄法」を中心にして「鉄」や「鋼」を題材とした授業を構築するめどをたてることができた。今後、授業実践を行い,教材の完成度を高める取り組みを継続していきたい。
著者
遠部 卓 上 真一
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

瀬戸内海において1‐3時間間隔で25‐72時間にわたって採集された海産枝角類の育房内の胚発生段階を調べ、Penilia avirostris(ウスカワミジンコ)では仔虫放出の日周性はないが、Evadne nordmanni(ノルドマンエボシミジンコ)及びEvadne tergestina(トゲナシエボシミジンコ)では夜間暗黒時にのみ産仔行動が起ることを再確認した。Evandne属は極めて大きい黒色の眼をもつので、仔虫放出直前のメス個体は育房中に多数の黒点をもち非常に目立ちやすいため、この時期を暗黒時にのみ経過することは視覚による捕食者を回避するための適応的戦略とみなされる。また、購入した赤外線カメラ撮影装置を装置した高画質顕微鏡ビデオ装置により、育房中の胚発生の経過と夜間暗黒時におけるEvandne tergestinaの産仔行動を撮影することに初めて成功した。特に、産仔は母虫の速やかな脱皮とともに起り、放出された仔虫は直ちに泳ぎ去る過程が明らかになった。この研究成果については「第3回国際枝角類シンポジウム」(ノルウエー・ベルゲン、1993年8月)において講演する予定である(Onbe,T.:Nocturnal release of neonates of the marine cladocerans of the genus Evandne,with observations by infraredlight video microscopy)。また4種の海産枝角類Penilia avirostris,Podon leuckarti(オオウミオオメミジンコ),Evandne nordmanni及びEvandne tergestinaの消化管内容物中の植物プランクトン色素(クロロフィル及びフェオ色素)を指標として、摂食活動の日周性を調べた。その結果前2者については色素量は昼間より夜間において有意に高く、顕著な日周性を示すことが明らかとなった。しかし、Evandne属2種については、摂食活動の日周性は認められなかった。この内容は現在日本プランクトン学会報に投稿中である。(Uye,S.&T.Onbe:Diel feeding variations of the marine cladocerans in the Inland Sea of Japan.Bull.Plankton Soc.Japan)。
著者
前杢 英明 井龍 康文
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は,沿岸の岩礁に付着する完新世石灰岩の形成過程を使って,当該期間にプレート境界で発生してきた地震履歴を切れ目なく解明することを目的としたものであった.13年度は,室戸岬周辺の45地点で採取した石灰岩より,94枚の岩石薄片を作製した.薄片観察の結果,石灰岩の枠組み(フレーム)の形成者として最も多くみられるのはヤッコカンザシとサンゴモで,以下,被覆性底生有孔虫,造礁サンゴ,フジツボ,イワノカワ科の藻類(石灰藻),カキがこの順で続くことが確認された.14年度は,14C年代がほぼ同時代を示す,もしくは同時代と推定される隆起石灰岩ごとに,それらを構成している付着生物の量をポイントカウンティングで決定し,その結果を従来の現生生物の帯状分布データと比較した.その結果,石灰岩を6つの岩型に区分した.それらは,サンゴとサンゴモが卓越する石灰岩(タイプ1),サンゴモが卓越する石灰岩(タイプII),サンゴモとカンザシゴカイとフジツボが卓越する石灰岩(タイプIII),サンゴモとカンザシゴカイが卓越する石灰岩(タイプIV),被覆性コケムシと被覆性底生有孔虫が卓越する石灰岩(タイプV),軟体動物(カキ)が卓越する石灰岩(タイプVI)である.また,エボシ岩付近の岩型の垂直方向の分布は,下から順に,タイプIの石灰岩,タイプIIの石灰岩,タイプIII,もしくはタイプIVの石灰岩の順で分布していることが明らかになった.15年度は石灰岩の内部構造に上記の帯状分布(6つの岩型)を適用し,相対的海水準変動を復元する作業を行った.その結果,コアを形成する石灰岩の中には6つの岩型のうち,タイプIとタイプIIを交互に繰り返すもの,またタイプIとタイプIIIまたはタイプIVを交互に繰り返すものなどがあることがわかった.
著者
信國 好俊 堂前 純子 烏帽子田 彰 藤本 成明
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

大規模ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーを用いたゲノム機能遺伝学的方法で、細胞内コレステロール代謝輸送、そして高脂血症に関与する可能性のある候補遺伝子を探索し、既知あるいは機能未同定の遺伝子を複数明らかにすることに成功した。これまでに188の変異細胞の解析から、細胞内コレステロール代謝輸送関連(候補)遺伝子として49の既知遺伝子と32の機能未同定遺伝子の解明に成功した。
著者
矢ヶ崎 一幸 伊藤 秀一 柴山 允瑠
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

解析的および数値的な手法を用いて,偏微分方程式系や離散格子系などの,さまざまな無限次元力学系において起こる分岐現象およびホモ/ヘテロクリニック挙動を明らかにした.特に,偏微分方程式系のソリトンやパルス解,フロント解に対応した,常微分方程式系のホモ/ヘテロクリニック軌道に対して,サドル・ノードおよびピッチフォーク分岐が起こる条件を求めるための摂動的な方法を開発し,その軌道まわりの変分方程式の微分ガロア理論の意味での可積分性との関連を明らかにした.
著者
成田 健一
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究では、都市内に存在する緑地のもつ環境調節効果を多角的に把握する目的で、以下の二つの測定を実施した。一つは、夏季に行った短期集中観測で、グラウンドから樹林を通って市街地へとつながる側線を設定し、夏季における卓越風向に沿った緑地内部とその周辺の詳細な気温分布を測定した。その結果、これまでの数値モデル計算では表現されていなかった、平均流に逆らって乱流で輸送される水平熱輸送の存在が指摘された。このことは、たとえ風下側に位置するとしても、周辺市街地は緑地内部の熱環境に大きく影響を与えていることになり、緑地計画において緑地の規模を論議する場合にも、このような現象は無視できないと考えられる。二つめは、設計データとしての緑地効果の定量的な把握を目的に行った、1年間にわたる長期気温測定である。これまで我が国では「みどり」の熱的効果というと夏季の暑熱緩和機能のみが注目されてきたが、実際の設計を考える上では、冬季も含めた年間の環境把握がまずもって必要である。今回、1年間を通してのデータを解析することにより、落葉樹林における日中の気温低下には樹木の落葉・展葉と対応した明確な季節変化があること、それに対し夜間の気温差は年間を通して一定していること、緑地と周辺市街地との日最高気温差は盛夏には日中の最高気温時、秋以降は日没後の夕方から夜間にかけて出現頻度が高いことなど、興味深い成果が数多く得られた。
著者
樋口 聡
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第一部, 学習開発関連領域 (ISSN:13465546)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.9-15, 2003-03-28

This paper examines Richard Shusterman's ""Somaesthetics and Education"" from the viewpoint of learning theory. The points of the discussion are: (1) what is somaesthetics?, (2) three fundamental dimensions of somaesthetics, (3) educational value of practical somaesthetics, (4) somaesthetic exercise and school curriculum. Significance and capability of somaesthetics would be considered in three aspects in terms of the problems of learning and education: (1) rethinking the pragmatism in education, (2) new framework of the relationship between theory and practice, and (3) reconsidering the dualistic scheme of mind and body.
著者
植木 研介
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

平成18年度にザ・タイムズ・デジタル・アーカイヴを通して入手したディケンズに関する記事をさらに細かく分析した。その結果次のような内容が明らかになった。○ザ・タイムズの編集者への手紙はディケンズが亡くなるまでに12通あること。よく知られている公開処刑の廃止に関するものの外に、自分が編集している『ハウスホールド・ワーズ』に関するものが2通、たまたま乗り合わせていた列車の事故について1通。といろいろな内容が含まれているが、ザ・タイムズど論争をしているものは無く、ディケンズとタイムズ社の関係は良好であったとかんがえられる。○ディケンズの名前が出てくる記事が20あるが、初めのころは『ハウスホールド・ワード』の宣伝になっているもゐが見られ、まだデイケシズが公開朗読をするようになると、その内容を伝える記事になっており、ディケシズとザ・タイムズの関係は良好である之分かった。平成19年の夏にアメリカのスタンフォード大学でコピーできた「デイリー・イーヴニング・トランスクリプト』には、アメリカだ到着したディケンズが歓迎晩餐会に出席するという、ディケンズ歓迎のニュースとなっており、半年後のコピーライトを巡る騒動の影も形も見られない。以上のことから、1845年暮れからのディケンズとザ・タイムズの反目と漫画戯画雑誌『メフィストフィリーズ」のディゲシズに対する皮肉な戯画は一時的なもので、ディケンズが新しい新聞『ザ・デイリー・ニューズ」を創刊することに対する反目が原因で、彼が新聞編集から手を引いたあとは『メフィストフィリーズ」もわずか3ケ月で廃刊になっている。このことから発行人の詳細が不明な『メフィストフィリーズ』も裏でザ・タイムズ系の何者かがその発行に関与していたとも考えられる。いずれにしてもディケンズとマスメディアはほとんどいつも良好な関係であったと結論してよかろうと思われる。
著者
安野 正明
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

西ドイツの建国は1949年だが、当初は権威主義的で反民主主義な1933年以前からの政治文化との連続性が強く、戦後民主主義の定着は自明だったのではなかった。政治文化の本質的変化を伴いつつ民主主義が根付いた「第二の建国期」と言うべきは1960年代で、そのテーゼを裏付ける様々な社会分野の変動と近代化プロセス、また1968年の抗議運動のインパクトを分析した。また、ドイツでの未刊行一次史料の発掘を行いつつ、1960年代ドイツ社会民主党史の実証研究を進め、「研究成果」に記すようにいくつかの不適切な定説を修正した。
著者
佐藤 裕哉
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

平成22年度は,以下の3点について取り組んだ。1)地図のラスター/ベクター変換と修正,2)データベース構築と修正,3)デジタル地図と被爆者データのGIS上での結合と修正である。1)については,爆心地から2~2.5kmの範囲のデジタイジングと属性入力を行った。結果として,約15,000軒分の家屋ポリゴンを作成し,1,000軒の地番コードと500軒分の世帯主名を家屋ポリゴンの属性として入力した。そのほか,道路線(ラインデータ)を作成した。また,平成21年度に作成した家屋ポリゴンと鉄道線,市内電車線,河岸線について,他の地図資料を参考に修正した。2)については,原爆放射線医科学研究所が保有する「原爆被爆者データベース」の被爆住所(地番)をコード化した。データベース内の地番まで住所が確認できる約20,000人分について,10桁の数字を附しデータベースに格納した。3)については,家屋ポリゴンとデータベースに附した地番コードにより,GIS上で自動的にマッチングできるように作業を行った。長屋など複数の建物に同一の地番が割り当てられている場合は,うまくマッチング出来ないことが明らかとなった。そのほか,昭和初期の広島市中心部のデジタル地図が成果として得られ(平成21年度と22年度の合計で約62,000軒分),貴重な地図資料を劣化しない形で保存することができた。また,このデジタル地図を作成したことにより,今後,他の空間データと重ねあわせて分析することが容易となり,原爆被害の実相解明につながる新たな知見へと結びつく可能性を持つ。一方で,家屋の高さや材質など入力する属性を増やすなど改善の余地も残されている。
著者
小林 芳規 佐々木 勇 沼本 克明 月本 雅幸 鈴木 恵 原 卓志 山本 真吾 西村 浩子 佐藤 利行 山本 秀人 青木 毅 来田 隆
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

醍醐寺蔵宋版一切経6,104帖の悉皆調査により,角筆の書き入れを調べ,古代東アジアにおける言語文化の交流と影響関係を考察する目的の本研究は,2007~2009年に5回の現地調査を行い,書誌事項と共に角筆の有無を調べ,4,453帖に角筆による漢字と諸符号の書き入れを見出した。その精査は第二次調査を期している。又,東大寺図書館の調査で,唐代写経に角筆の梵唄譜とヲコト点様の単点・複点を発見し,新羅写経に角筆の新羅語の真仮名等と符号を発見して,解読を進めている。
著者
亀井 清華
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

動的無線ネットワークに適した分散アルゴリズムとして,安全に収束する自己安定分散アルゴリズムの研究をおこなった.これは,故障が起こった後の任意の状況から短時間で(解の質を問わない)安全な状況に遷移し,そこからは安全性を崩さずに最適解に収束するという性質を持つ分散アルゴリズムである.様々な最適化問題にモデル化される分散問題について,この性質を持つ分散近似アルゴリズムの設計を行った.
著者
福嶋 正純
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

18世紀後半における大道歌の語りの部分と歌の中には未婚の母による嬰児殺人を主題とするものが多数みられる。嬰児が無残な殺され方をすることも少なくないが、罪は専ら女性の性的ふしだら、官能的快楽の追求にあるとされて誘惑する男性の罪を咎めることは殆んどない。大道歌の公演は当局の厳しい検閲を受けるため庶民の困窮の基盤となる政治体制批判、差別問題は全くとりあげられず、批判の的は専ら弱者に向けられる。一方時代思潮を先どりしているシュトルム・ウント・ドラング時代の文学作品は、誘惑する男性の罪が弾がいされ同時に貧困に苦しむ民衆を描いて社会批判を鋭く行なっている。大道歌においては事件や犯罪の原因を厳しく追求する事は稀で悲惨な事件の描写に終止する。苦難の生活を強いられている庶民は、罪を厳しく問われて処刑される犯人の物語、鉱山事故、大災害の描写を耳にし、災難をまぬがれている自分を幸せと感じ、自分は人生をもっと幸せに送っていると考えて自己満足に浸る。大道芸人の語りは庶民に安っぽい同情と満足感を呼び起こし、処刑される犯人への同情などは焔情的な事件を垣間みたいと言った残忍な気持と表裏一体をなしている。大惨事の描写においては事故や災害の原因は追求されず全ては運命の糸の導きとして諦められる。神を恨んだり神の仕業に疑念を抱くことはなく、神は常に善行を報い正義を許えてくれるものとなる。この世の罪悪が神の所業とされることはなく事件や犯罪行為は神の責任の範囲外にある。神はこの世の運命、摂理の良い面だけを代表するのであって人間世界を支配する最高神とはならない。大道歌で語られるのは基本的にキリスト教徒の倫理であって善行、誠実、慈悲はキリスト教徒の備えている属性であり、悪行、邪悪、残忍は非キリスト教徒、とり分けイスラム教徒の属性に仕立てあげられていて、トルコ人の非人道的行為を描写する大道歌も数多くみられる。
著者
鳥谷部 茂
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

バブル経済崩壊後に導入された新たな資金調達方法について、民法の制度設計から、従来の担保制度と整合的な基準を明確にすることにより、堅実で、かつ、効果的な効力(当事者間の効力、第三債務者に対する効力、第三者に対する効力)を導くための検討を行った。その結果、公序良俗による制限、包括根担保による制限、担保構造(被担保債権額、目的債権の特定、第三債務者の特定等)による制限、第三債務者保護による制限、当事者の変更(交替)等による制限などを前提とした再構築が必要であることを明らかにした
著者
関矢 寛史
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の第1の目的は,プレッシャーが運動制御に及ぼす影響を調べることであった.また,第2の目的は,プレッシャー下における意識的処理や注意の処理資源不足などの認知的変化ならびに生理的情動反応が運動制御に及ぼす影響を解明することであった.実験1では,大学生24名を実験参加者として,プレッシャーがゴルフパッティング課題に及ぼす影響を調べた.実験2では,大学生30名を実験参加者として,プレッシャーが卓球フォアハンドストローク課題に及ぼす影響を調べた.両実験において,低強度のプレッシャーが実験参加者に負荷された.パフォーマンスの得点はプレッシャーによる影響を受けなかったが,ボールの停止位置やバウンド位置はプレッシャーによって偏向した.また,身体運動ならびに身体運動以外の対象への注意がプレッシャーによって増加した.実験1では,テイクバック期及びフォロースルー期の運動変位の減少ならびにダウンスイング期の運動速度と加速度の減少という運動学的変化が生じた.また,テイクバック期におけるグリップ把持力の増加という運動力学的変化が生じた.そして,注意散漫度が増加した実験参加者ほどインパクト時のクラブヘッドの向きがターゲットに向かって右に偏向し,心拍数の増加という情動反応が生じた実験参加者ほどダウンスイングの速度と加速度を増加させた.実験2では,プレッシャーによって打点が前方に移動し,インパクト時のラケット面がターゲットに向かって左を向いた.さらにフォワードスイング期の運動速度が低下し,ボール速度も低下した.また,注意が増加した実験参加者ほど運動の変動性が増加した,これらのことから,課題によって,プレッシャーが運動制御に及ぼす影響は異なるが,プレッシャー下で生じる認知的変化ならびに情動反応の変化によっても運動制御に生じる変化が異なることが明らかとなった.
著者
白銀 夏樹
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第三部, 教育人間科学関連領域 (ISSN:13465562)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.71-76, 2002-02-28

Bildungsbegriff, der eigentlich vielfaltige Bedeutungen impliziert, hat auf der sukzessiven Zeitvorstellung konstruiert. Die Modell dieser Zeitvorstellung ist Bildungsroman wie philosophische Texte Hegels. Aber in der Moderne --so Adorno lautet-- ist these Zeitstruktur schon verfallen. Abfolge der "punktlichen" Gegenwart-- das ist die neue Dimension der Zeitstruktur in der Moderne. Die Hauptthese dieser Arbeit lautet, dass Adornos Bildungsbegriff, der die Moglichkeit von Menschlichkeit in der Moderne in Betracht zieht, auf eine asthetische Zeitvorstellung konstruiert. Die Gegenwart ästhetischen Augenblicks bezieht auf Vergangenheit und Zukunft, und weiter sie bewegt als eine Dynamik von Bildung wie von Modernismus, welche ist anders als Dynamik von hegelischer Bildung.