著者
楢崎 正也 藤本 佳子 谷口 浩司 柏原 士郎 横田 隆司 鈴木 克彦
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

阪神・淡路大震災において被災した分譲マンションの復興過程に関して平成9年度から継続して行ってきた調査結果の分析を行い、最終結果としてまとめる作業を行った。これまでの調査結果を一度展開した上で、被災からの時間経過に伴った以下のストーリーで集約し直し、それぞれの項目に関して、調査結果に基づく分析・検討を行った。1.マンションの被災状況2.震災後の居住者の対応行動3.被災マンションの復興過程における事例4.マンション復興における法的諸問題5.被災マンションの管理組合の対応6.被災マンションに対する管理組合の対応7.復興過程における住民の合意形成過程とコンサルタント・設計事務所の役割8.復興過程における住民の合意形成過程とまちづくり協議会9.建替えマンションの建物状況と居住者の生活実態10.被災マンションの復興再生方策特に、本研究の着目している「合意形成過程」に関しては、管理組合自身での合意形成過程の調査のみならず、そこに係わっていたコンサルタント・設計事務所・住民組織への聞き取り調査を行い、行政との橋渡しなど様々な側面でのその役割が大きかったことを明らかにした。また、平成10年度までの研究で不十分であった項目に関する今年度の補足調査としては「9.建替えマンションの生活実態」を行い、震災から5年が経過した現状での生活実態について明らかにした。
著者
牧野 幸志
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は,現代の児童・生徒を対象とするコミュニケーション・スキル訓練を開発し,実施することにより,スキルを高め,不登校やいじめなどの問題が発生することを予防することであった。スキル尺度を作成し,児童・生徒を対象としたスキル訓練を行った結果,訓練後に,生徒の多くのスキルが向上していた。また,参加者の8割の生徒は,訓練前よりスキルが上がっていた。また,コミュニケーション・スキルの高い生徒ほど,友人関係が良く,友人関係に満足しており,精神的健康状態も良かった。
著者
石崎 嘉彦 飯島 昇藏 山内 廣隆 柴田 寿子 川出 良枝 中金 聡 太田 義器 柘植 尚則
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

この研究が目指したことは、大きく分けて以下の四点の纏め上げることができる。いずれの点でも十分な成果をあげることができた。第一は、シュトラウス文献の読解である。日本語版『リベラリズム 古代と近代』(ナカニシヤ出版、2006年),『僭主政治について』(上・下、現代思潮新社、2006-07年)を刊行するとともに、Persecution and the Art of Writing, The City and Man, Thought on Machiavelli, What Is Political Philosophy?などの翻訳を進め、その中で、啓蒙の弁証法、哲学の歴史的研究、市民社会と共同性、自然権、ユダヤ思想、僭主政治、哲人統治、アルキビアデス問題などの諸問題に考察を加え、そこからシュトラウス政治哲学の解釈を試みた。第二は、シュトラウスの秘教的教説と著述技法の問題を明らかにし、ポストモダン的哲学の試みとしてシュトラウスの哲学を理解することに努め、またその観点から、現代社会の諸問題に対処するために、哲学の歴史についての研究と哲学的思考の復権させることの重要性を明らかにすることができた。第三は、シュトラウスとシュトラウス学派の思想の世界的広がりとその影響力についての研究であったが、この方面の研究では北米、ドイツ、フランス、中国でのシュトラウス政治哲学の受容とシュトラウス研究の進展、シュトラウスの読解法による古典研究の進展、シュトラウスの思想と現代思想の関わりについての研究の進展を確認することができた。第四は、シュトラウス的哲学の現代のグローバル世界の中での意味についての研究であったが、この問題に対しても、共著書の形でわれわれの研究成果の一部を公表する機会を得た。研究成果のいくつかは、時間的制約もあってまだ公表されていないものもあるが、それらもこれから順次公表されていくはずである。
著者
三成 美保 栗原 麻子 福長 進 山本 秀行 高田 京比子 京樂 真帆子 長 志珠絵 森 紀子 山辺 規子 河村 貞枝 井出 千春 沖野 真理香 田端 泰子 小浜 正子 田端 泰子
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

「マスキュリニティの比較文化史」につき、3点を明らかにした。(1)「マスキュリニティ史」は「男性史」とは区別されるべきであり、ジェンダー史の一領域として「歴史学におけるジェンダー主流化」を牽引する重要な役割を果たす。(2)「マスキュリニティ」は多様であり、男性の属性とは限らない。「覇権的/従属的マスキュリニティ」の差異化は、時代と社会により異なる。(3)「同性愛」概念は19世紀に登場し、私的な同性愛関係はしばしば公的領域(政治・経済・軍隊)の人的紐帯を決定した。
著者
大谷 由紀子 藤井 伸生 畑 千鶴乃 趙 王文女正 Kikuchi Koko Chung Ick-Joong
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、養育困難な子育て家庭に支援をつなぐ在宅支援の要、地域支援拠点の整備を考察した。結果、自治体規模や福祉に資するリソースの質・量から、都心型「分散ハブモデル」、小規模自治体と中核市による「自治体間ネットワーク+集約ハブモデル」を提示した。先行するカナダ、北欧の地域支援の取組みから、ワンストップで適切なサービスにつながる仕組み、子どもと家族の生活支援を包摂した多様なサービスのコーディネート機能、サービスを効果的に届ける拠点空間デザインの必要が示された。
著者
田中 直人 足立 啓 後藤 義明 古賀 紀江
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

国内外の高齢者居住施設における事例調査から、レミニセンスを導入して日常の生活環境への配慮としている事例を確認できた。本研究で目的としている感覚誘導システムに関連する事例も海外事例で確認できた。続いて国内施設へのアンケート調査で、環境要素として感覚的誘導に用いることが可能な「レミニセンス事物」の抽出を行った。その事物を導入した効果を確認するためビデオカメラで長期観察実験を行い、さらに実験後に施設スタッフからもヒアリングを実施し確認した。感覚的誘導の効果として、(1)放尿抑制効果、(2)個室への侵入防止などの抑制効果があることが確認できた。また、T字型の歩行空間を想定した画像実験から、高齢者の記憶に残る感覚的な誘導方法についての可能性と効果を検証確認できた。本研究結果を生かしさらに継続発展させる知見が得られた。
著者
海老瀬 潜一 井上 隆信
出版者
摂南大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

水田群から排出された農薬・栄養塩・耕土は,下流域生態系や水環境への微量化学汚染・富栄養化をもたらし,資源の無駄使いともなっている。茨城県内の霞ヶ浦流入河川の恋瀬川流域における水田群を対象とした流出特性の詳密調査から,これらが用排水管理の不十分さや農薬・肥料等の肥培管理や移植作業の省力化等に起因することを裏付けた。特に,この流域内では兼業農家のウエイトが大きいために,代掻き・水稲移植作業がゴールデンウイ-ク中に,除草剤の農薬散布がその1週間後の休日に集中した。その結果,空中散布の場合と同様に,農薬・栄養塩の高濃度・高負荷量現象が出現した。それも,集中した除草剤散布後の数日間内に豪雨があれば,その高濃度・高負荷量の傾向がさらに顕著となった。効果的な農薬・栄養塩・耕土の流出や制御や抑制管理のために,個別水田で異なる用排水管理手法二よって,農薬・栄養塩の流出特性の詳細な実態調査を実施した。水田群内における無農薬栽培水田では,他の水田から排出された農薬で高濃度になった河川水を用水とし,ほとんど検出限界以下の濃度まででの浄化して排出することを確認した。当該水田では散布されなくて他の水田で散布された農薬が用水として流入する場合も,同様にほぼ検出限界以下にまで浄化して排出されていた。流域内で同時期に多く施用される農薬は,下流側水田で浄化されると期待することは難しく,上・中・下流ともほぼ同じ濃度,かつ,同じ流出率で流下していた。したがって,農薬散布作業の時期的集中をやめて分散化(したがって,水稲移植作業も分散化)するほか,同一種の農薬の施用を避ける,降雨が予想される数日前には農薬散布をしない,等がまず必須である。その上で,灌漑用水の多重使用で排水の浄化を行うとともに,無農薬・減農薬栽培水田や休耕田の下流側立地という樓み分けによって,水田群システムとして浄化を全うする等の立地規制が根本的には必要と考えられる。
著者
小嶋 康生
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.69-97, 2000-02

バブル後、日本経済は恐慌状態に突入したが、中小企業への打撃が大きく、その影響は地方経済にも大きな傷跡を残した。なかでも中小工業の集積度の高い大阪経済は全国で最も事態は深刻である。小論は、いま、大阪の中小工業に何が起こっているか、その実態を究明するとともに先行きの展望を試みた。大阪経済は、袋小路にはいってしまっている。一つは循環的要因で、もう一つは構造的な要因によってである。"平成恐慌"の影響は大きい。バブル後この10年間、局面によって干満の潮の差はあるが、中小金融機関の破綻、相次いだ企業倒産、失業者の増加、地価・株価の急落、消費不振による"縮み現象"が続く。全国で大阪の数値が一番、厳しい。アジア貿易の比重が高いだけに大阪の失速は海外にも波及、アジア各国経済をも揺さぶった。この危機を脱するため政府の一連の緊急経済対策が幾度も出され、財政、金融両面において最大限の梃入れがあった。とりわけ金融再生を眼目にした制度改正の実施、そのなかで相次ぐ日銀特融、史上最低のゼロ金利、全都市銀行への国家資金注入など異例ともいえる措置が連発された。他方、毎年、巨額な赤字国債が組まれ、大型の財政出動が"財政危機"のなかで繰り返された。それら効果もあり、99年年初から潮の目は変わったとされるが、大阪経済は改善の兆候は99年夏現在まだ、でていない。最悪の状態は脱したとしても一本調子に反転、浮揚とはいかない。なぜか。海外市場要因もあるが、構造的な問題を抱えているからである。とりわけ、中小工業の経営者は先行き不透明感を抱く。それは、金融ビッグバンに代表される財界標準への制度移行が絡んでいるからである。自由化、規制緩和などにより、戦後続いた経営の枠組みが変更され、ビジネス環境は様変わりとなりつつある。その路線を、この機に、さらに推進せんとするのが、経済戦略会議の『日本経済再生への戦略』であり、産業競争力会議がまとめた「産業再生」関連法である。日本経済10年の足踏み、この遅れをどう取り戻すか。基本は規制緩和、自由化、国際化とする。この流れに棹さすのが、大企業の多国籍化、グローバルな展開である。それは世界的な潮流になりつつあるとはいえ中小企業にとっては敵対的路線である。バーゼル協約が銀行の貸し渋りを生み、企業倒産が相次いだ事例を見ても明らかである。このような状況の中で大阪の中小工業は二重、三重の負荷を背負わされる。一つは傾向的に進む円高による輸出不振。為替レートが大企業の貿易レートで決まっていることを見れば、その被害者といえる。二つ目は、大企業の工場の海外移転に伴う産業空洞化現象。三つめは"大競争時代"とはやし立てられているが、途上国からの製品流人、Uターン流入。要素資源格差で敗退を余儀なくされている。四つめは大企業の内製化が進んできており、発注減に。五つめには親会社の製品多角化についていくための技術的、資金的な困難である。このような難題が相次ぎ産地企業、下請け企業を問わず、倒産、廃業が急増している。間違いなく産地は崩壊、また下請け企業が集積したクラスターも瓦解寸前にある。この事態はいずれは大企業にも跳ね返り、このままでは大阪経済は縮小し、地域社会にも甚大な影響をもたらすであろう。方向転換が求められている。これまでの大企業追随のあり方を清算、オルタナティブな道の模索なくして、明日の中小工業はない。
著者
瀬戸 宏
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

民国期中国シェイクスピア受容史上での三つの重要公演に焦点を絞って研究した。上海戯劇協社『ヴェニスの商人』(1930)、上海業余実験劇団『ロミオとジュリエット』(1937)、国立劇専『ハムレット』(1942)について調査し、三公演それぞれを主題に全国学会で報告した。上海戯劇協社『ヴェニスの商人』公演、国立劇専『ハムレット』公演についてはすでに論文化した。上海業余実験劇団『ロミオとジュリエット』公演は瀬戸の体調不調などで論文の完成が遅れたが、近く公開できる見通しである。これ以外に中国シェイクスピア受容史黎明期の問題で論文執筆・公開し、関連内容で、中国の学会で報告した。
著者
家本 真実
出版者
摂南大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アメリカ著作権法では、他人の著作物を許諾を得ずに使用し、新たな著作物を制作しても、フェア・ユース(公正な使用)であるとされれば著作権侵害とならないことを定めている。しかしどのような場合にフェア・ユースだと判断されるのかを先例から見極めることは非常に難しく、実務においてこの法理が役立っているといえるのか、議論になることも多い。そこでこの研究では、著名な芸術家の現代アート作品をめぐっておこなわれた裁判をフェア・ユースが争われる最近の事例の1つとして取り上げて検討し、芸術のコミュニティにおいて他人の作品を使用する際の指針としては不十分であり、さらなる判決の積み重ねが必要であることを明らかにした。
著者
西川 浩平
出版者
摂南大学
雑誌
摂南経済研究 (ISSN:21857423)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.21-36, 2012-03

本稿では,ニューヨーク州のメディケイド市場を対象とし,HMOの普及がFFSの支出額を低下させるという,スピルオーバー効果について実証的に分析した。分析結果より,ニューヨーク州のメディケイド市場では,HMOが低価格で販売されているカウンティほど,FFSへの支出額も低下していることが明らかになった。したがって,Baker and Corts(1996)が提唱している,HMOの活動水準が高まることでFFSの価格も低下するという,スピルオーバー仮説は支持されたといえ,HMO の普及が医療費支出の適正化効果を促す効果が確認された。
著者
朝日 素明
出版者
摂南大学
雑誌
摂南大学教育学研究 (ISSN:13498118)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.21-32, 2009-01

本稿は、摂南大学教職教室が2008年2月から4月にかけて東京都を除く関東甲信地方8県に所在する市町村教育委員会を対象として実施した質問紙調査(「関東甲信8県市町村教育委員会調査2008」)の、単純集計結果では報告しきれない自由記述回答を部分的に紹介し、若干の考察を加えることを目的としている。我々がこの調査を実施したのは、時期的には地教行法一部改正法が成立し改正地教行法が施行される前後になる。したがって、この度の地教行法改正の概要は我々が2005年に行った調査の時点では明示的ではなかったことから、今回の調査は前回調査と時期的な比較対照が可能であるとも考えられる。本稿はこうした観点から、この度の地教行法改正の概要に即して調査の結果を補足検討しようとするものである。まず教育委員会の組織について、教育委員の本務職業は無職が圧倒的に多いほかは、比較的、実務時間が自律的に調整可能な職業が上位に並んでいる。また、教育長を除く一教育委員会の構成人数を4人として算出すると、児童生徒の保護者が0.66人となり、前回調査時点から倍増していることから、教育委員として保護者を選任することを義務化した2007年の地教行法一部改正法の影響が現れたとも推察できる。教育長の多くの回答からは、教育委員に選任される保護者の代表性を担保するための工夫は窺うことができなかったが、PTA役員経験が現実的だと捉えられているようだ。さらに、保護者が教育委員として会議に臨む際の配慮事項として、保護者の立場からの意見を尊重しようとする配慮と守秘義務への配慮の二つが特に目立った。次に教育委員会の設置単位について、3割弱の教育長が市町村の連合(共同設置)による広域化を望ましいと答えていた。
著者
吉野 絹子 山岸 みどり
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.211-237, 1997-07

保有資源に格差のある社会で,個人目標,集団目標,社会全体の繁栄という3つの異なるレベルの目標連成にむけて,他者と交渉しあいながら,個人利益と集団目標の調整,集団間の競争と協力,個人利害と社会全体の福祉とのジレンマなどの問題に直面するSIMSOC(模擬社会ゲーム)を大学生に2事例実施し,援助や協力といった社会的態度の変化とゲーム展開の関連について検討した。ゲーム体験前,ゲーム体験直後,2ヶ月後の3時点で測定された社会的態度の変化のパターンは,ゲーム展開が友好的であったか敵対的であったかによって異なっていることが認められた。以前に実施された5事例を含めた分折からも同様の結果が得られた。
著者
下川 倫子
出版者
摂南大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

粉体に加えた外力がある臨界値を越えると粉体は動き出す。これを粉体の集団運動としてみると、静止した固体から流動化した液体に相転移が起こっているとみなすことができる。粉体の相転移現象を理解することを目指し、斜めに傾いた容器に粉体を入れ、振動加える実験を行った。この実験で粉体は重力に逆らって,斜面を登る。斜面上部に輸送される過程の中で、粉体は容器表面に様々なパターンを自発的に形成する。外力が大きくなるにつれ、表面には縞パターン,クラスターパターン,バブルパターン,無秩序パターンが出現する。また、独立に鉛直方向と水平方向に振動をかける実験から、鉛直方向だけのときよりも、水平方向の振動モードを加えたときのほうが斜面上部に粉体が輸送しやすくなることから、水平方向の振動モードは粉体を輸送する上で重要であることがわかった。さらに、高速度カメラの観察から、粉同士の衝突による相互作用が表面パターンを形成する上で重要であることもわかった。
著者
堀井 千夏
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.13-24, 2011-02

大学教育において学生が習得する専門分野は,基礎から応用へとその範囲は幅広く設定されている.また,近年は,従来からある専門分野と他の分野を融合させた複合分野が増えるなど複雑な学問体系になっている.これらの点から,大学生が学部4年間で習得する専門分野の位置づけや関連性を適切に把握することは非常に困難であり,専門分野の知識を深める上で大きな障害となっている.こうした問題を解決するために本論文では,教育現場で利用されている教科書や参考書といった専門図書に着目して各専門分野を階層構造として可視化し,学生が学習領域を効果的に確認できる学習支援システムを提案する.本システムは,学習分野や未学習分野の関連性を目視で確認することができることから,学習への動機づけを強めることが期待される.
著者
有馬 善一
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.93-106, 2011-02

本研究の目標は、ハイデガーの芸術論を手がかりにしながら、芸術の本質、つまり、芸術とは何か(Was)という問いに対して、芸術作品はいかに(Wie)あるかという問いを対峙させ、さらにここから、芸術作品の創造とその享受を、単に比喩としてではなく、根源的な意味において「世界の開示」として捉える道を開くことである。そのために、『存在と時間』の世界論における被投性と気分の意義を再確認した上で、世界とは存在者の存在のあり方(Wie)として理解されるべきこと、進んで「芸術作品の起源」における芸術と世界との連関を明らかにした。芸術作品は、ある気分において世界を開示する。そして、それはまさに存在者のあり方を具体的に描出することによるのである。
著者
田中 幹大
出版者
摂南大学
雑誌
摂南経済研究 (ISSN:21857423)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.53-78, 2011-03

本論文は、戦後復興期大阪で敗戦とともに崩壊した中小機械金属工業集積がどのようにして再度形成されていったのかについて、生産復興の特徴、地域的な集積の動向などを分析している。大阪の中小機械金属工業は、闇経済が広がるなかで問屋・ブローカーと結びつきながらさまざまな消費財生産をする形で生産復興を遂げ、また軽機械製品の生産を軸として、それに関わる機械・金属製造業、加工業が展開することで再集積を果たしたことを明らかにした。
著者
内田 照雄
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、測定時間の大幅な短縮をはかりかつ分光強度パターンと蛍光寿命パターンを同時測定するため,光源の二重振幅変調と高速撮像素子としてのイメージインテンシファイヤーの利得変調方式を併用した検出器内部ヘテロダイン検出法を考案し,その理論的解析を行なった。さらに,装置の試作を行い、装置の動作確認を行なった。まず、イ)高速撮像素子としてのイメージインテンシファイヤー、ロ)レーザ、ハ)2台のAO変調器、ニ)3種類の変調用正弦波発信器,ホ)タイミング回路、ヘ)I.I.の蛍光面画像撮像用CCDカメラ、ト)パソコンからなる装置の試作を行った。レーザとしては小型空冷アルゴンイオンレーザを用い、2個の直列に配置したAO変調器を二重に正弦波変調を行い、蛍光試料を変調励起する。この変調信号とわずかに異なる変調信号でイメージインテンシファイヤーの利得変調を行った。2個のAO変調器(No.0とNo.1)のうちNo.1のAO変調器はNo.0のAO変調器(変調周波数 f_0=20.0000MHz)とイメージインテンシファイヤーの利得変調周波数(f_2=19.9990MHz)の差の周波数(f_1=1kHz)の正弦波で変調される。たとえ,f_0,f_2の周波数が時間的に若干変動してもf_1は常にf_0とf_2の差となるように,ミキサー回路を用いた。この結果CCDからは,No.1のAO変調器による変調をOFFにすることにより,通常のDC蛍光像が得られる。また,No.1のAO変調器による変調がONの状態におけるCCDの蛍光像から,OFF時の蛍光像信号を差し引くことにより,蛍光寿命情報すなわち蛍光寿命パターンが一括して得られる。アクリジンオレンジ等標準蛍光試料測定により,nsオーダの蛍光寿命が計測可能であることが分かった。蛍光像信号のSN比向上が今後の課題である。