著者
梅森 拓磨 中山 恭秀 安保 雅博
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.201-207, 2019 (Released:2019-10-05)
参考文献数
18

目的:前方リーチ動作における下部体幹の運動は,姿勢制御のために肩関節屈曲運動に先行して,運動を行う反対側に体幹側屈運動が起こると言われている.一方で,運動を行なっていない側の鎖骨,肩甲骨からなる肩甲帯を含む上部体幹の動きについての報告は渉猟した限り認めない.今回,健常成人男性の前方リーチ動作ではリーチ動作を行なっていない側の肩甲帯がどのように動いているかを解析し,その結果をもとに,運動を行なっていない側の肩甲帯の動きについて,体幹運動の影響の違い,および利き手と非利き手による違いを姿勢制御の観点から検討することである. 方法:右利き健常男性6 名(年齢平均27.8 ± 2.5 歳)の前方リーチ動作時の非運動肢肩甲帯挙上角度を三次元動作解析装置にて測定した.各組み合わせ(利き手・近位条件,非利き手・近位条件,利き手・遠位条件,非利き手・遠位条件)について,フリードマン検定を用いて統計解析を行った. 結果:到達時では,非利き手・遠位条件群に,最大角度では利き手・遠位条件群にそれぞれ有意差を認めた. 考察:非運動肢肩甲帯を用いて姿勢評価定量的に行える可能性があること,また,損傷側や運動麻痺側が利き手か非利き手かによって,到達する上肢機能のレベルが異なることが示唆された.
著者
長谷 龍太郎 山田 孝
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.256-267, 2007-03-25 (Released:2017-10-27)
参考文献数
83
被引用文献数
1

作業療法は治療における推論を重視し,クリニカルリーズニングとして教育している。この概念の実践場面における利用についての文献研究を行った。我が国における1983年から2005年までの検索では,クリニカルリーズニングに言及した論文は4篇あり,精神障害と発達障害の症例に対する介入変更をリーズニングの類型から分析したものと教育方法の影響に関する調査研究であった。欧米における1956年から2005年までの検索の結果,該当した論文数70編であった。 93年までの論文はクリニカルリーズニングの概念や類型を議論するものであって,それ以降は新たなクリニカルリーズニング概念の概念枠組みは提示されておらず,従来のものが継続して用いられていた。論文は,作業療法の教育と臨床に関するものが過半数をしめており,クリニカルリーズニングが作業療法教育と臨床に関連していることが示されていた。特にPBLやEBPにおいてクリニカルリーズニングが重要であると考えられていた。一方で作業療法の教育および臨床に関連する論文を領域別に比較すると,精神障害領域の論文が少なかった。
著者
岩佐 由美
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.181-191, 2019 (Released:2019-10-05)
参考文献数
22

目的 国内の女性の健康課題に関する研究パラダイムの変化を知り今後に示唆を得ることを目的とした。 方法 「女」「婦」「母」をキーワードに医学中央雑誌で検索した1980 ─ 2014 年の論文タイトルの語を分類する分野と対象者の2 系統のコードを作成し,テキストマイニング法で分析した。コードを健康課題解決のための研究パラダイムと捉え5 年ごとに分析した。 結果 29,082 論文がコーディングされた。対象者コードのうち妊産婦に分類された論文が全体の30.9%だった。1990 ─ 94 年は40.0%,2005 ─ 09 年は24.2%だった。分野コードのうち周産期が最多だった。1994 年以前は感染症,薬物,周産期が多く,1995 年から運動器,月経が多かった。2000 年以降は心理,育児,睡眠疲労が有意に増加した(P < 0.05)。 考察 産み育てる性である女性の健康が研究パラダイムの中核であったが減少し,1990年代から2000 年代に広範なライフサイクルの女性の身体や生活習慣へ,2010 年頃に向けて介護,育児等の役割の困難さへ,シフトしたと考えられた。
著者
宇佐 英幸 竹井 仁 畠 昌史 小川 大輔 市川 和奈 松村 将司 妹尾 淳史 渡邉 修
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.155-164, 2011-12-25

健常者24名(男女各12名)を対象に(平均年齢:男性21.3歳女性20.6歳),大腿・骨盤の動きと仙腸関節・腰仙関節・腰椎椎間関節の動きを,腹臥位と腹臥位・膝関節伸展位での股関節5・10・15°伸展位,15°伸展位から10・20N・mの伸展方向への加重を大腿遠位部に加えた肢位の6肢位で撮像したMRI(Magnetic Resonance Imaging: 磁気共鳴画像)を用いて解析した。結果,男女とも,股関節伸展角度の増加に伴って,大腿は骨盤に対して伸展し,骨盤は前傾した。股関節非伸展側の仙腸関節では前屈,第3/4・4/5腰椎椎間関節と腰仙関節では伸展の動きが生じた。しかし,第3/4腰椎椎間関節を除く各部位の動きは,10N・m加重時と20N・m加重時の間では女性だけにみられた。これらの結果から,他動的一側股関節伸展時の腰椎骨盤-股関節複合体を構成する関節の正常な動きが明らかになった。
著者
立山 清美 山田 孝 清水 寿代
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.231-239, 2013
参考文献数
16

本研究は,日本版の青年・成人前期向けの感覚調整障害を評価する質問紙の開発を最終的な目的とし,その質問項目の選定への示唆を得るために,JSI-Rを大学生および専門学校生120名に実施した。その結果,前庭感覚・触覚・固有受容感覚では,幼児期よりも大学生および専門学校生の方が出現率の低い項目が多く,聴覚・視覚・嗅覚・味覚では,大学生および専門学校生の方が出現率の高い項目が多かった。その要因として,前者では年齢や成長により楽しめる活動や感覚探求の行動が変化していること,聴覚・視覚・嗅覚・味覚は回答者が自覚しやすく,チェックがつきやすいことが考えられ,日常生活に支障をきたすくらいになど,基準を示す必要性が示唆された。
著者
渡邊 淳子 恵美須 文枝 勝野 とわ子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.21-30, 2010
参考文献数
26

目的:本研究の目的は,熟練助産師の分娩第1期におけるケアの特徴を明らかにすることである。本研究においての熟練助産師とは,助産師として20年以上の経験をもち,さらに分娩介助の経験が1,000件以上ある助産師をいう。研究参加者は4名の助産師であり,それぞれの助産師が関わった9例の分娩を参加観察し,援助場面を中心に半構成的インタビューを実施した。分析の結果,<経過における特徴的な反応を生かしたケア><からだのバランスを調えるケア><自然な流れを尊重したケア><家族の出産を演出するケア><産婦自身の力を引き出すケア>の5カテゴリーとそれに含まれる12のサブカテゴリーが抽出された。熟練助産師は,自然分娩に対する自己の信念を持ち,経験から導かれた感覚を用いて判断し,それに基づいたケアを行っていた。
著者
本道 和子 須藤 直子 川村 佐知子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
東京保健科学学会誌 (ISSN:13443844)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.12-21, 2001
被引用文献数
2

退院調整過程を客観的に明らかにしていく第1段階として, 退院調整における退院調整看護婦の判断過程を明確にすることを目的に, 別の病院に所属する2名の退院調整看護婦のそれぞれ1名の利用者に対する退院調整における判断内容を調査し, 退院調整過程に沿って分析し, 以下の結果を得た。1)退院調整看護婦は, 調整依頼を受けた後, 調整内容を確認し, 調整対象か否か, 利用者の希望と依頼内容の合致, 家族の希望と利用者の希望の合致, すべての調整課題の調整の可能性, 利用者と家族の意思決定の状況, を順に判断し, 調整を行った後評価していた。この結果を基に, 判断樹の試案を作成した。2)家族の在宅療養希望の意思が固まっていない場合は, 家族が希望する他の療養方法についても同様に査定を行い, 実施可能な療養方法を判断し, 利用者と家族に提示していた。3)退院調整を基準化するには, 利用者の身体状況の判断, 調整課題抽出の判断, 導入可能な社会資源による療養の可能性の判断について, 判断基準を作成する必要がある。
著者
田中 千鶴 荒巻 奈美 高 英淑
出版者
日本保健科学学会
雑誌
東京保健科学学会誌 (ISSN:13443844)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.213-216, 1999

切迫早産と診断されて入院する妊婦は, 様々なストレスを感じているといわれている。今回, 妊娠中期に早期破水となり, 絶対安静を余儀なくされた2例の妊婦の看護を経験した。この2例は全く同じような状況に置かれながら, 対照的な心理的反応を示した。この2例のケアから, 次のような示唆を得ることができた。1)同じような状況にあってもその人の性格や生活背景によって, ストレスの表現は全く異なる。2)絶対安静を強いられる妊婦は, 表現するしないに関わらず, 多くのストレスを感じている。3)妊婦が児の生存をどれくらい現実的に感じられるかということが, 妊婦の治療意欲に大きく影響する。
著者
吉澤 寿
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.116-121, 2007-09-25 (Released:2017-10-27)
参考文献数
19

神経性食思不振症(AN)を基礎疾患に有する18歳の女性の症例において,比較的稀な消化管壁内に多発性の気腫を示した腸管気腫性嚢胞症(PCI)の症例を経験したので報告する。ANに伴う自己誘発性嘔吐,無月経,甲状腺機能低下を示し,慢性的な便秘も有していた。腹部膨満感が出現したため,某院救急外来を受診した。腹部単純X線写真,腹部CT検査にて,腹腔内遊離ガスと上行結腸から脾彎曲部に線状の腸管壁内ガス像を認め,PCIと診断され,高圧酸素療法(HBO)目的で当院紹介入院となった。安静,絶飲食とし,1日170分,週5日間のHBOを開始した。自覚症状の軽減を認め,第6病日より飲食を再開した。腹部単純X線写真にて腸管壁内ガス像の改善を認めたため第17病日退院とし,外来にて1日85分,週5日間のHBOを実施した。HBO開始1ヵ月後の腹部単純X線写真にて病変は消失し,HBOを終了した。本例は,高度の便秘症と自己誘発性嘔吐から腸管内圧上昇をきたし,PCIを発症したと推察された。
著者
喜多村 章一
出版者
日本保健科学学会
雑誌
東京保健科学学会誌 (ISSN:13443844)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.218-225, 2002-03-25 (Released:2017-10-27)

データをある関数で記述して最も適したパラメータを決定し,その背後にある意味を理解することはデータ解析の上で重要な部分である。我々は最尤推定法(maximum likelihood method)で最も適したパラメータ(最尤推定値,maximum likelihood estimate)を能率よく決定するための簡便なアルゴリズムを確立した。これはまずn次元パラメータ空間を等分に分割して,各点で尤度関数(likelihood function)を計算して,この値が最も大きくなる点を捜す。次にこの点のパラメータを初期値として,歩幅の大きさと方向を調節しながら尤度関数の傾きの方向に進み,これが最大になる点を効率よく求める。このアルゴリズムによる解法をC言語でコード化してプログラムMLFITを作った。そして実験データと尤度関数を使って最も適したパラメータを推定した。これはパソコンや小型ワークステーションで利用することができる。このプログラムは一般に尤度関数として非線形関数を想定しているので,非線形関数を使った最小二乗法にも応用できる。また保健科学関連のデータ解析にも利用できる。
著者
清水 準一 長内 さゆり
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 = The Journal of Japan Academy of Health Sciences (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.177-183, 2014

目的:2012年に診療報酬上評価された緩和ケアについて専門性の高い看護師(NHPCS)が行う訪問看護師との療養者宅への同行訪問の実施可能性を地理情報システム(GIS)により検討した。方法:都道府県別にNHPCSの分布や養成機関の位置との関連を検討し,NHPCSが少ない都道府県について,所属医療機関と訪問看護ステーションの位置等の関連をMANDARAにより分析した。結果:老年人口あたりのNHPCSの分布は都道府県間で2.6倍の差があり,近隣にがん関連認定看護師養成課程の定員が多い県で多くなっていた。NHPCSが少ない県では,訪問看護ステーションの半径10km圏内にNHPCSが所属する医療機関がない割合が高かった。考察:GISの利用によりNHPCSと養成機関の偏在や実施困難な地域の存在が明らかになり,国内及び都道府県内の人的資源の均てん化のため同行訪問の取り組みの必要性が示唆された。Background : The purpose of this study was to examine the feasibility of home visit by nurses with higher palliative care specialty (NHPCS) with visiting nurses, which became covered by Japanese national medical insurance system in 2012, using a geographical information system (GIS). Methods : We examined the distribution of NHPCS among prefectures and the association between the number of NHPCS and the location of the training institutions. Furthermore, in the prefectures with a small number of NHPCS, the geographical associations between the hospitals to which the NHPCS belonged and the home visiting nursing centers are analyzed by MANDARA Results : The distribution of NHPCS per aging population differed by 2.6-fold among the prefectures, and the number of NHPCS was higher in prefectures with a high admission capacity into certified nurse training courses relevant to cancer. In the prefectures with a small number of NHPCS, the percentage of cases in which the hospital to which the NHPCS belonged was not within a 10 km radius of the home visit nursing center was high. Discussion : From this analysis performed using the GIS, the uneven distribution of NHPCS and home visit nursing stations, and their geographical association became clear. Elimination of disparities in both human resources and training institutions among and also within prefectures is recommended.
著者
鈴木 薫
出版者
日本保健科学学会
雑誌
東京保健科学学会誌
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.9-14, 2003

境界性人格障害とはDSM-IVによると,対人関係,自己像,感情の不安定及び衝動性の広範な様式で,最も対処の困難な人格障害である。今回,境界性人格障害患者に関する既出文献を総覧し,患者の問題行動に対する研究を整理,分析し,有効と考えられる看護を導き出した。
著者
安田 美弥子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
東京保健科学学会誌 (ISSN:13443844)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.16-20, 1999-06-25 (Released:2017-10-27)

アルコール依存症の専門クリニックで「家族はシステムとして機能しており, 家族の一員に変化を与えれば, 家族全体も変化する」という家族システム論に基づいて依存症者の家族を対象にして家族教室を行っている。今回は, 家族教室の参加者を教室での観察と詳細な個別面接によって現在の共依存的な問題, 生育歴上の問題, 会への出席状況と依存症者本人の回復状態, 家族会の役割などについて調査した。その結果, 現在の共依存的な問題は, 依存症者の言動に巻き込まれている, 依存症者の起こした問題の尻拭いをする, 家族全体に対し支配的であるの3要素に大別された。また, 生育歴上の問題が多く, 家族自身がAC(Adult Children)であることが分かった。出席が定期的な場合は依存症者本人も回復しつつあった。さらに家族自身の言葉から家族教室の機能を分析し, 看護者の家族教室での関与を家族看護の視点で考察した。
著者
柳澤 健 新田 收 笠井 久隆 猫田 泰敏 飯田 恭子 菊池 恵美子 長田 久雄 福士 政広 齋藤 秀敏 福田 賢一
出版者
日本保健科学学会
雑誌
東京保健科学学会誌 (ISSN:13443844)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.276-281, 2000-03-25 (Released:2017-10-27)

東京都立保健科学大学生の国家試験合否予測などを目的として、東京都立医療技術短期大学生の入学・在学時成績と医療系国家試験合否との関係を(1)入学選抜方法と国家試験合否, (2)入学選抜方法(一般入試・推薦入試)と退学・除籍者数, (3)一般人試成績と国家試験合否, (4)学内成績と国家試験合否, (5)一般入試成績と学内成績, および, (6)国家試験の得点予測の6項目に分けて統計学的に分析した。対象は同短期大学に入学した1,132名で, 入学選抜方法, 一般入試成績, 学内成績, および国家試験の合否を指標に調査した。その結果, (1)入学選抜方法の相違による国家試験合格率に有意差はなかった。(2)一般人学に比べ推薦入学で退学・除籍者が多い傾向がみられた。(3)一般入試の成績は国家試験合格群と不合格群の間で有意差がなかった。(4)多くの学内主要科目の成績において国家試験合格群は不合格群に比べ高得点であった。(5)一般入試成績と学内成績との間に相関はなかった。(6)4学科のうち2学科で国家試験の得点予測式を試作した。
著者
山崎 幸子 藺牟田 洋美 橋本 美芽 繁田 雅弘 芳賀 博 安村 誠司
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.20-27, 2008-06-25

本研究では,都市部在住高齢者における閉じこもりと家族関係,社会関係の特徴を検討し,閉じこもり予防・支援のための基礎資料を得ることを目的とした。東京都A区在住の65歳以上の住民に対する郵送調査の有効回答者3,592名から,要介護者等を除き,訪問許可のあった閉じこもり95名,性別と年齢,移動能力をマッチングさせた非閉じこもり95名を対象とした。調査完了者は閉じこもり69名,非閉じこもり73名であった。分析の結果,閉じこもりは,1.同居家族との会話が少なく,同居している他世代との家計が一緒である傾向が示され,2.同居家族がいる場合には家庭内における役割が少なく,3.居宅から30分以上の距離圈における交流人数や,情報的サポート,外出援助に非閉じこもりと差異があることが確認された。以上から、閉じこもりの同居家族に対する情緒的依存傾向や,周囲との関係性が非閉じこもりと異なっていることが推察された。
著者
山内 寿恵 山田 孝
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.98-104, 2005-09-25
被引用文献数
1

クライアント中心の作業療法である「カナダ作業遂行モデル」に基づく「作業遂行プロセスモデル」による介入を試みた。これはクライアントが問題の優先順位を決め, 行動計画を立て実践し評価するために作業療法士と協業することを目指している。しかし筆者は, 彼らの掲げる問題を解決しても彼らの生活になんら益することがない, あるいは明らかに実現不能な問題に固執するケースも経験し, 協業のあり方について確信が持てずにいる。クライアントの問題が持つ意味を知ることの重要性を認めるが, 評価ツール「カナダ作業遂行測定」ではそれを理解し難いことが多かった。そこで「作業遂行歴面接第2版」を導入したところ, 生活歴叙述がクライアントの人生観や彼らが作業に与える意味を共感する一助となり, 協業のあり方について考察を得たので報告する。
著者
石 岩 谷村 厚子 品川 俊一郎 繁田 雅弘
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.82-89, 2013-09-25

本研究の目的は,日本における1995年1月から2010年3月までの文献をレビューし,在宅高齢者の主観的健康感に関連する要因の先行研究を整理・検討することにより,高齢者の主観的健康感の促進施策に資する知見および今後の研究の方向性を探索することである。文献から抽出した主観的健康感の関連要因をKJ法に準じて整理した結果,(1)医学的な心身機能,(2)身体機能の維持・促進習慣,(3)趣味・活動への参加,(4)社会的・人的環境,(5)人生観,(6)基本属性の6つのカテゴリーが生成された。高齢者の主観的健康感を高めるためには,医学的な心身機能を維持・改善するだけではなく,社会性を維持すること,ポジティブな考え方を持つことの重要性が示された。今後は,日本におけるライフスタイルや社会文化的背景を踏まえた研究が必要であると考えられる。
著者
小澤 昭彦 菊池 恵美子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.200-213, 2008-12-25

運輸7業種の事業主478名を対象に,「精神障害者雇用に対する事業主の態度尺度評価・改訂版」(ATEP II)の信頼性と妥当性を検証した。精神障害者雇用に対する運輸業の事業主の態度構造および態度形成要因について因子分析を行った結果,「精神障害者の雇用に対する意欲」「精神障害者の活動制限」「精神障害者に対する信頼」「精神障害者の受け入れ態勢作りの意欲」「精神障害者の注意配分」「精神障害者に対する危険視」「精神障害者の雇用管理に対する自己効力」「精神障害者雇用のメリット」および「能力重視の採用基準」の9因子が抽出されたが,構成概念妥当性の検証には確認的因子分析の実施が課題に残った。また,α係数と再検査信頼性係数の結果から,内的整合性と再検査信頼性が検証された。さらなる統計解析の結果,態度形成要因として,企業の特徴(運輸業以外の業種の有無,常用労働者数,雇用中の障害者数),常用労働者の特徴(雇用継続の期間,学歴に関する必要条件)または回答者の特徴(年齢,管理職か否か,障害者の雇用に関する経験)が示唆された。