著者
瀬戸崎 典夫 上妻 尭甫 岩崎 勤 森田 裕介
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.185-188, 2012
参考文献数
7

本研究は,タブレット端末によって視聴可能な天体学習用ARテキストを試作した.さらに,試作したARテキストが有するコンテンツを評価した.その結果,AR型動画コンテンツは,講師の解説による講義映像の提示が効果的であったことが示された.また,「見易さ」を考慮し,紙テキストに重畳表示する動画の画面構成や配置を検討する必要性が示された.AR型CGコンテンツにおいて,3DCGによる立体的な提示が有用であることが示された.また,タブレット端末を動かすことによる様々な角度からの能動的な観察が効果的であることが示された.
著者
松河 秀哉 齊藤 貴浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.217-226, 2011-12-20 (Released:2016-08-08)
参考文献数
12
被引用文献数
2

本研究では,大阪大学で行われてきた授業評価アンケートに関して,回帰二進木分析,相関ルールといった,データ・テキストマイニング技術を用いた分析を組み込んだ授業評価アンケート結果のフィードバックシステムを開発し,システムを利用した教員による評価を行った.その結果,システムを全体としてみた場合,利用者は授業改善に対して本システムが有効であると捉えていることが明らかになった.機能別にみた場合,相関ルールを活用した機能は利用者に有効と捉えられた一方,回帰二進木分析を活用した機能は,高い評価は得られなかった.今回のシステムは全体として授業改善の効果の観点からはおおむね高い評価を得たといえる一方,使いやすさ等に関しては相対的に評価が低かったため,インターフェースを改善していく必要性が示唆された.
著者
畠岡 優 中條 和光
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.339-350, 2013-02-20 (Released:2016-08-09)
参考文献数
22

本研究では,手順を説明する手続き的説明文の読解方略の使用と読み手の特性との関係を検討する.研究1では,自由記述で手続き的説明文の読み方を収集し,それらに因子分析を適用して,図表の活用,意味明確化,標識の活用,メタ認知的な活動,既有知識活用という読解方略の5つのカテゴリーを見出した.研究2では,読み手の特性として,言語性作動記憶と空間性作動記憶の容量の個人差が読み手の読解方略の使用に及ぼす影響を検討した.読解直後に5カテゴリーの読解方略の使用に関する質問紙に回答させた.その結果,図表の活用方略の使用に空間性作動記憶が関わること,また,意味明確化および既有知識活用方略は,二種類の作動記憶容量の高低によって方略の使用に交互作用の傾向が見られ,言語性作動記憶の得点が低く,空間性作動記憶の得点が高いほど,それらの方略を使用する傾向にあることが見いだされた.
著者
青山 郁子 藤川 大祐 五十嵐 哲也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.189-192, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
14

本研究は,小・中学生の「ネットいじめの芽」の経験,そうした状況における深刻度の認識,対処の自信・対処行動について調査した.調査対象者は小・中学生419名,調査時期は2015年2月である.結果は,ネットいじめの芽の状況に関して男子よりも女子の方が多く経験を報告した.対処の自信において性差と学校間に有意な差は見られなかった.深刻度の認識では,小学生の方が問題の深刻さを認識していた.また,小学生の方が概ね積極的な対処行動を回答する一方で中学生は回避的な対処行動を選択してした.これらの結果から,予防においては,いじめの問題の深刻度の共有とともに,問題解決へのより適切な対処行動が取れるよう,発達段階に応じた予防対策の必要性が示唆された.
著者
解良 優基 中谷 素之 梅本 貴豊 中西 満悠 柳澤 香那子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.57-60, 2017

<p> 本研究は,大学生を対象として授業内容に対する利用価値認知に働きかける介入を行い,課題価値および自己効力感に与える影響について検討を行った.半期の授業内で3回の介入を受けた介入群は221名,対照群は144名であった.研究協力者には,半期の授業の開始時と終了時の2時点で質問紙に回答を求めた.プレ時点の各得点を共変量とした共分散分析の結果,興味価値と実践的利用価値において,介入群の方が対照群よりもそれぞれのポスト得点が高いことが示された.以上の結果に基づき,本研究における介入授業が大学生の学習動機づけに与える影響について考察した. </p>
著者
上田 勇仁
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Suppl., pp.133-136, 2017-01-15 (Released:2017-03-06)
参考文献数
4

プロジェクト学習など実習型式の授業において,リフレクションの重要性がこれまで指摘されてきたが,毎回の授業の終了後に実施する個人のリフレクションを検証した研究は少ない.本研究では,(1)プロジェクト学習における個人のリフレクションにどのような特徴があるのか明らかにし,(2)PBLの各学習活動が個人のリフレクションにどのような影響を与えるのか検証する.その結果,個人のリフレクションの特徴として「報告」「解釈」「計画」「応用」の傾向が明らかになり,各授業の学習活動のうち発表活動を設定した授業回においては,「応用」に関する記述数の頻度が向上することが確認された.
著者
相良 かおる 音成 陽子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.99-107, 2004
参考文献数
9
被引用文献数
2

近年,大学生の学力低下,学習意欲の低下が指摘され,1年次を対象に導入教育を実施し,『大学での学び方』を指導する大学も出現している.しかしながら,看護師,保健師,社会福祉士などの国家資格の取得を目指す大学では,必須の専門教育科目が多く,導入教育を行う時間的な余裕はない.そこで,1年次を対象にした必須科目である一般情報処理教育において,レポートの書き方,情報検索などの学び方の指導,著作権やプライバシーの保護,インターネットを安全に利用する方法などの内容を盛り込み,実践を行った.著作権に関する授業,情報検索に関する授業,および,文書作成ソフトを使ったレポート作成の授業の効果を調べるために,本授業を受講した学生と本授業が開講される前の2001年度の入学生を対象に,1年前期終了時7月末提出の看護専門科目におけるレポートについて,文書作成ソフトを利用したレポートの数,参考文献の明記状況,参考文献リストにおけるインターネット検索の有無について,調査を行った.その結果,それぞれについて本授業の受講生の割合が高くなっていた.一方,本授業の受講生の中には,図書検索を行わずにインターネット検索のみでレポートを作成している学生がおり,インターネット検索で得られた情報の信頼性などに関する新たな指導が必要であろうことがわかった.
著者
福山 佑樹 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.309-319, 2012-03-30 (Released:2016-08-08)
参考文献数
23
被引用文献数
1

現代社会における深刻な問題の一つである社会的ジレンマを体験し,協力行動を促進する心理的要因の向上を目指すゲーム教材である「Connect the World II」を開発した.「Connect the World II」はこれまで広く社会的ジレンマのゲームとして用いられてきた個人レベルを対象とした社会的ジレンマゲームに「集団」の役割を追加し,個人と集団の2つの役割を参加者に担わせるという構造が特徴である.その評価のため,「Connect the World II」と「Connect the World II」から「集団」の役割を除外した個人レベルのみのゲームとの比較実験を行った.結果,本研究で開発したゲームでは,個人レベルのみを扱ったゲームと比較して,社会的ジレンマ状況において他者も協力するという「信頼」の向上が確認され,道徳意識の獲得に繋がるとされる「責任感」の向上の可能性が示唆された.
著者
山田 智之 野中 陽一 石塚 丈晴 高橋 純 堀田 龍也 畠田 浩史 小柴 薫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.61-64, 2010
被引用文献数
1

普通教室における日常的なICT活用を支える環境を検討するため,板書とプロジェクタ投影を組み合せることができ,入力ソースを左右任意のプロジェクタに投影可能な環境を構築した.実証実験を通して教員のICT活用経験による活用方法の違いや特徴について調査した結果,ICT活用の経験に関わらず投影画面内外の板書を組み合わせる授業が高い割合で見られた.エキスパートは非エキスパートと比較し,投影画面内へ書き込みをした授業数が約2倍であり,左右両方のプロジェクタを多く活用していたことから,エキスパートが授業の実態等に合わせて投影先を選択していることが示唆された.
著者
高橋 純 スミス デイブ 野中 陽一 堀田 龍也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.73-76, 2011
参考文献数
6
被引用文献数
1

英国において,日常的にICTを活用している小学校教員の国語と算数の授業過程におけるICT活用の目的・頻度・タイミングを調査した.その結果,1)教員のICT活用の目的は,一般的な授業過程における目的と類似し,2)一授業におけるICT活用の回数は3,5回,一回のICT活用の時間の平均は9.6分であり,3)授業の前半の15分と,後半の5分は,70%を超えた授業でICT活用が行われ,4)授業過程の前半ではPCが,後半にはVisualizer(実物投影機)がIWB(電子黒板)と組み合わされて活用されることが多い等が明らかとなった.
著者
堀田 龍也 高橋 純 丸山 紋佳 山西 潤一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.285-291, 2008
参考文献数
4
被引用文献数
5

日常的にICT活用を行っている教員を対象とし,一斉授業の授業過程におけるICT活用の目的・頻度・タイミングについて調査した.その結果,次の点が明らかとなった.1)1単位授業時間(45分)の中で,ICT活用を平均3.3回行っており,ICT活用の時間の平均は19.0分であった.授業の最初の5分間でICT活用が行われていた授業は83%であるが,その後にICT活用が行われた授業は常に半数前後であった.2)ICT活用の目的は,導入では課題の提示,展開では教員の説明資料,まとめでは繰り返しによる定着が最も多かった.3)教員が活用するICT機器は,プロジェクタが最も多く,次いで実物投影機,コンピュータの順であった.4)ICT活用の目的と教員が活用する機器の間には明確な一致が見られなかった.
著者
苅宿 俊文
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.24, no.suppl, pp.203-206, 2000-08-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
9

本稿は, 実践を通して, 「プロセスの作品化」が, 外化を通しての自己理解を深める時に, 外化過程の支援をする方法の一つであることを明らかにしていく試みの報告である.「プロセスの作品化」の実践として, 本稿では, 描いたプロセスを再生することができる「再構成型描画ソフトウエア脳の鏡」で描いた後に, 自己の描いたプロセスを見直し, 他者に制作のプロセスについて語り, それを文字化し, 絵と併せて表現していくという「心の花」という実践である.「脳の鏡」は, 外化支援のツールとして位置づけている.
著者
備瀬 美香 伊藤 智子 鈴木 雅之
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S41054, (Released:2017-10-13)
参考文献数
12

本研究は,英語学習方略の中でも英文読解方略に着目し,中学校における方略指導の実態を明らかにすることを目的とした.中学英語教師85名と中学3年生303名を対象に調査を行った結果,中学校ではボトムアップ方略の指導が重視されている可能性が示唆された.また,教職歴の長い教師ほどトップダウン方略の指導を行う傾向にあることが示された.さらに,生徒の方略被指導経験と動機づけの関係について検討した結果,方略の種類に関係なく,方略を指導された経験の多い生徒ほど読解意欲や効力感が高く,長文が好きである傾向にあった.
著者
池尻 良平 大浦 弘樹 伏木田 稚子 安斎 勇樹 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.53-64, 2017-05-20 (Released:2017-05-26)
参考文献数
20

MOOC(大規模公開オンライン講座)の普及によって遠隔地であっても無料で大学の講義を受講できるようになっている.しかし,講座の学問領域において何が学習されているかを実証的に評価している研究は少ない.そこで本研究では,MOOC の歴史学講座の受講による学習効果を評価した.講義内容を視聴し課題に取り組んだ実質的な受講者を分析した結果,歴史領域の知識の獲得を要する各週課題の平均得点率はどれも80%以上,歴史的思考力を要する講義課題の平均得点率は68%であることが確認された.一方,事前事後の質問紙・テストで測定した歴史的思考力は事前に比べて事後で有意に向上したものの,効果量としては小さいということが示された.これらの結果を踏まえ,講義映像と掲示板で構成されるMOOC に対し,より歴史的思考力を育成する方法として,対面学習と組み合わせたり,CSCL 研究の知見を踏まえた機能を追加したりする改善方法も示した.
著者
神邊 篤史 永井 久美 松原 行宏 岩根 典之 岡本 勝
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.143-150, 2009-10-10 (Released:2016-08-06)
参考文献数
7

運動学習による動作訓練は,新たな身体技能の獲得や日常生活における身体機能の再獲得において重要である.本報告では上肢の大きな動作の学習のための仮想環境について提案する.本システムにおいて,学習者は環境内に提示されるポインタの位置を視覚や触覚を通して確認することで,動作を修正しながら目標位置に向かって上肢を動かしていく.具体的には,cube型環塊と三次元迷路環境の2つの環境での訓練により,上肢の大きな動作を行う際の運動の計画,運動の実行と修正や,問題のある筋の特定が可能である.健常大学生を対象とした実験では,本システムを用いた動作習熟の可能性を確認できた.
著者
西之園 晴夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.67-77, 1999
参考文献数
29
被引用文献数
4

わが国が当面している課題として,多数の現職教員に高度の職能専門教育を目指した大学院修士レベルの教育を提供する問題がある.この場合,旧来の研究後継者養成で採用されてきた研究方法論では対応できず,教育実践に通した研究方法を開発する必要がある.教育方法の研究方法として経験的アプローチ,規範的アプローチおよびシステムズ・アプローチに区分したとき,ここでは経験的アプローチについて論じている.修士課程に在籍する現職教員を指導するにあたって,経験的な実践知を一定の手順によって形式化するために,カテゴリー,概念,モデルならびに命題によって表現した形式知とする方法を採用した.経験的知識をこのように形式化することは,情報ネットワークによって実践知を流通するために不可欠である.
著者
山室 公司 久保田 賢一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.Suppl., pp.1-4, 2010-12-20 (Released:2016-08-07)
参考文献数
11
被引用文献数
3

本研究の目的は,教育工学の研究方法と研究対象について分析し,今後の研究の方向性を展望することである.2003年度から2008年度まで6カ年分の「日本教育工学会論文誌」に記載された論文を対象に研究方法と研究対象について分析を加えた.研究方法に関しては,量的研究法が約4分の3を占めていた.質的研究法のデータ収集法としてはインタビューが多用され,量的・質的両方を併用している研究もある.研究対象の校種別では高等教育が6割以上を占めている.量的研究の場合は被験者が学習者である研究が多く,校種は万遍なく分散しているが,質的研究の場合は研究対象が教授者もしくは高等教育の学習者に偏在していることなどが明らかになった.