著者
UENO Maomi
出版者
日本教育工学会
雑誌
Educational technology research (ISSN:03877434)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.59-69, 2005
参考文献数
25
被引用文献数
3

This paper proposes a design of Web based Computerized Testing System(WCTS) for distance education. The system is consistently designed to unify the functions of CATC(Computer Assisted Test Construction), CBT(Computer Based Testing) and CADA(Computer Assisted Data Analysis). The unique features of this system are addressed in the CATC and the CADA as follows : 1. The CATC assists teachers' shared use of item database, a cooperative construction of a distance test by teachers of different schools, and an interactive construction of a test. 2. The CATC has a test score distribution prediction function using past item statistics data in Item Data-Base. These functions show to the teachers the predicted score distribution during they are constructing a test. These functions are expected to assist the teachers' collaborative test construction. 3. The CADA assists an automated process of data input through test execution, marking, analysis and immediate feed-backs to the teachers, students, and the system. Especially, it is an unique feature to analyze the newly gathered data like the number of times which an student changed his/her answer to an item. Furthermore, this paper demonstrates some performances of this system for evaluating distance education between Japan and Thailand.
著者
直井 一博 大谷 尚
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.247-258, 2003-12-20
被引用文献数
1

本稿は,英語学習のための合宿における英語使用経験を対象とするエスノグラフィのための理論的枠組みの考察である.最近の第二言語学習(SLA)研究によれば,第二言語使用の経験とは,主体が置かれた状況,すなわち,他者ならびに場面との対話の中で,文化的に適切な行為を選択する一連の出来事と見なすことが可能である.そしてその学習を捉えるためには,場における言語使用とそれを行う主体との複雑な関係性の理解を目指す,エスノグラフィの考え方が有用である.本稿に関係の深い理論的立場としては,「言語による社会化」という考え方,並びに,「実践のコミュニティ」の考え方が有益である.以上を背景にしたエスノグラフィにより,英語学習のための合宿を一事例とする,人々が共同で第二言語を用いて達成する場の理解を深めることが可能となり,さらに,学習共同体がCSCL等でネットワーク化されつつある現在の教育環境における第二言語学習の理解を深めることが可能になる.
著者
林原 慎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.117-127, 2013

本研究の目的は,日本の高学年児童における,1)英語学習動機の因子構造,2)海外経験の有無,性差,学年差による英語学習動機の比較,3)英語学習動機に影響を及ぼす要因,の3点を明らかにすることであった.812名の5・6年生を対象とした研究の結果,英語学習動機は,「有用性」,「内発的」,「交流欲求」,「不安回避」の4因子で構成されていた.また,児童の海外経験の有無別の比較では,「不安回避」のみで海外経験がない児童に比べて海外経験がある児童の方が有意に高かった.男女別の比較では,「有用性」,「内発的」,「不安回避」の3因子で,女子の方が男子よりも有意に高い結果となった.学年別の比較では,5年生の方が6年生よりも「内発的」と「不安回避」において有意に高い結果となった.さらに,学校要因は4つの因子全てに影響を及ぼしていることなどが共分散構造分析によって明らかになった.
著者
木原 俊行 島田 希 寺嶋 浩介
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.167-179, 2015-12-25 (Released:2015-12-28)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究は,学校における実践研究の発展要因の構造に関するモデルを開発することを目的とするものである.そのために,4つの小中学校を対象として,研究推進リーダーを務めた教師に,実践研究の詳細について,聞き取り調査を実施した.得られたデータを,「専門的な学習共同体」の発展要因に関する先行知見を参照して整理し,また4校間で比較して,学校における実践研究の発展を促す要因の構造を暫定的にモデル化した.次いで,モデルの信頼性を検証するために,あらたに別の3つの小学校を対象として,研究推進リーダーを務めた教師に,同様の聞き取り調査を実施した.得られたデータを,再度「専門的な学習共同体」の発展に関する知見を用いて分析し,3校間で比較して共通項を導き出した.そして,それらとモデルの整合性を分析して,その信頼性を確認した.また,一部の要因を加えて,要因間の順序性や関係性を考慮し,モデルを精緻化した.
著者
根本 淳子 柴田 喜幸 鈴木 克明
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.259-268, 2011
被引用文献数
1

本論文は,教育実践において学習デザインの定期的な改善サイクルを実現することでよりよい教育実践を生み出すことの重要性に焦点を当てたデザインベース研究のアプローチによる実践研究の報告である.国内では新しい学習デザインであるストーリー中心型カリキュラム(SCC)を採用した実践を取り上げ,SCC応用の可能性の手がかりを探りつつ,より深い学びを目指した実践に取り組んだ結果から得られた知見を整理した.学習デザインの定期的な改善サイクルを通じ,実践者のリフレクションを促すだけではなく,学習者の内容理解を深めていくことについて確認した.その結果,学習者個人と学習共同体双方への影響を確認することができた.本実践は,本論文の対象である2008年度と2009年度の実践を踏まえ,現在三回目のサイクルの最終段階にある.更なる検証を通じ新しい学習アプローチがより広く使われていくために,知見をデザイン原理として整理し,SCC実践に関する学習者の声を収集し整理していくことが課題となる.
著者
森 陽子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.109-118, 2004
被引用文献数
4

本研究では,動機づけと自己制御学習方略の使用との関連について検討した.被験者は中学生1381名であった.質問紙として,学習方略尺度と学習動機づけ方略測定尺度(motivated strategiest for learning questionnaire[MSLQ])から自己効力感と内発的価値を測定する項目を用いた.そして,中間テストの結果を失敗と捉え,その原因を努力に帰属する生徒の努力観について調査した結果,努力を統制可能で内的,不安定なものと捉えている生徒が238名と最も多く,次いで努力を統制可能で内的,安定したものと捉えている生徒が192名であった.また,その生徒を分析対象とし,努力観,自己効力感,内発的価値および自己制御学習方略に対する有効性とコストの認知が自己制御学習方略の使用に及ぼす影響について検討した結果,自己制御学習方略に対する有効性とコストの直接的な影響と,努力観,自己効力感,内発的価値の間接的な影響がみられた.
著者
奈田 哲也 堀 憲一郎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.353-363, 2014

教員に求められる資質能力である学び続ける力を教員の多くは獲得できてないことから,学び続ける力の礎と考えられる質問力と相対主義的認識論的信念を学生時点で獲得させることを目標に,大学の半期の講義を通して介入を行った.その際,講義内容は同じだが,講義内容を自身の経験と重ね合わせながら聞くことを推奨する講義(重ね合わせ条件)と特に推奨しない講義(統制条件)を行った.その結果,重ね合わせ条件の方が質問を多く生成していたが,半期の講義を通した認識論的信念の程度は,両条件とも変化していなかった.また,講義で感じる楽しさの内容は条件間で異なっていた.これらのことから,講義内容と経験を重ね合わせることで,様々な気づきが生まれやすくなり,この新たな気づきに楽しさを感じるとともに,疑問が生じやすくなり,質問を生成しやすくなるが,そういった気づきも,認識論的信念を変化させるまでには至らないことが明らかになった.
著者
大杉 成喜
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.205-208, 2005

韓国の特殊教育の情報化(ICT活用)について現地調査を行い, 我が国の現状と比較した.両国の特殊教育制度, 教育情報化の方針は似ているが, 運用の実際では多くの相違点が見られた.重度・重複障害教育への対応に力点を置いてきた我が国に対し, 韓国は軽度障害への利用に力点を置き, 教育情報発信の量が多い.毎年特殊教育政策全体を分析・報告し次年度の具体的目標を明示する韓国のシステムを取り入れることで我が国の特殊教育情報化の推進が期待できる.
著者
木村 敦 木村 あやの
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, no.Suppl, pp.17-20, 2016-01-25 (Released:2016-02-12)
参考文献数
13

本研究では, 学生による授業評価アンケートを匿名で実施した場合と記名で実施した場合とで評価結果に差異があるかどうかを検討した. 平成25~26年度の情報環境学専門科目 (小グループ演習を含む講義科目)2科目において, 匿名の授業評価アンケートに加えて記名の授業評価アンケートを履修者に実施し, 両アンケートに含まれる同一の評価項目4項目について評定値 (各5段階評定) を比較した. その結果, 全16項目中13項目については匿名条件と記名条件での差はみられなかった. 一方で, 3項目については条件間で有意差がみられたことから, 回答分布を比較して条件間の差異に関与する要因を議論した.
著者
小山 義徳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.49-52, 2008

本研究はリスニングの理解には学習者の音声情報の認識能力と情報の継時処理の2つの要因が関与していると考えた.リーディングとリスニングの情報処理過程には共有部分があるとする先行研究に基づき,英文速読訓練を行い継時処理スキルを向上させることが,英語リスニング能力の伸長につながるか検討を行った.リスニングのプレテストスコアを共変量,ポストテストスコアを従属変数,音声情報認識能力テストの高低を実験変数とした共分散分析を行ったところ英文速読訓練が英語リスニング能力の伸長に与える効果は,音声情報認識能力の高さによって異なることが明らかになった.
著者
酒井 博之 田口 真奈
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.35-44, 2012
被引用文献数
2 5

本研究では,個人の大学教員が担当する単一の「コース」に焦点を当て,そのデザイン,実施,学生の学びについて教員が反省的に記述するコースポートフォリオの実践プログラムを開発し,その試行を通じて教員にコースの振り返りや改善を促すことを確認した.本実践プログラムは,授業実施期間を含む約半年間で個人教員がウェブ上でコースポートフォリオを効率的・効果的に作成する過程を支援するもので,ポートフォリオ作成支援のためのテンプレート及びワークブックを開発し,教員間のピアレビューを含む研修プログラムとしてデザインされた.3名の大学教員による試行において,本実践プログラムによるコースポートフォリオ作成過程を通じ,各教員のコースの振り返りが促進されたことを確認するとともに,今後のコースの改善へ結びつく可能性が示唆された.
著者
向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.257-263, 2002-12-20
被引用文献数
1
著者
村川 弘城 白水 始 鈴木 航平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.109-112, 2013

本研究では,ゲームにおける学習と動機付けの関係を検討するため,カードゲーム型学習教材「マスピード」を用いて,方略を振り返る活動が,生徒の動機付けや継続的な学習意欲を高めることを示す.中学1年生102名を,「計算力向上」という価値を強調して同一化的動機付けを引き起こす「勉強条件」,ゲームとして楽しませて内発的動機付けを引き出す「遊び条件」,プレイごとに簡単な振り返りをさせる「方略発見条件」という3条件に割り振り,比較した.結果,方略発見条件が動機付けの程度でも数学的な方略の質でも上回り,方略の振り返りが,統合的動機付けと学習意欲の向上に寄与することが示唆された.
著者
平澤 泰文 松川 節 川田 隆雄 小南 昌信
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.89-92, 2012
参考文献数
1
被引用文献数
1

近年急速に成熟してきた情報通信技術,いわゆるICTを効果的に学習に,具体的には博物館学習に利用するために,アップル社のiPadを利用したガイドシステムを構築した.このシステムを博物館で開催された展覧会へ実際に導入した上で,高校生・大学生を対象としたアンケート調査を実施して有用性をはかった.本稿では,2008年に構築した携帯情報端末PDA(シャープ社製スマートフォン)を利用した博物館音声ガイドシステムの実証実験の結果と比較を行った本システムの評価結果を報告する.なお,これらの結果を受けて,大谷大学人文情報学科では全学生へのiPadの配布が決まり2011年より授業で運営するまでに至った.