著者
森田 裕介 中山 実 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.167-175, 1999-12-20
被引用文献数
8

本研究では,図的表現のひとつであるコンセプトマップの効果的な表現形式を実験的に検証した.学習内容は,キーワードに包含関係または順序関係があるものを用いた.まず,コンピュータディスプレイを用いて,コンセプトマップ表現と文章表現を比較する提示実験を行った.次に,実際の授業を想定し,講義室でOHPを用いた提示を行い,コンセプトマップ表現と文章表現を比較した.そして,コンセプトマップ表現は,記憶学習に有効であることを示した.ただし,キーワードの上位・下位関係を表示画面の上下方向に一致させないものは,効果がないことを併せて示した.コンセプトマップは,キーワードの上位・下位関係を表示画面の上下方向に一致させて表現することによって,学習内容の全体構造を把握することが容易になる.そのため,学習内容の提示における有効利用が期待できる.
著者
望月 博文 山田 朗
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.73-76, 2013

プログラミングにはパズルを解くような楽しさがある.しかし,プログラムの作成を行うためにはプログラム言語の習得が必要であり,その難解なルールを覚えなくてはならない.そこで,プログラミングの持つ楽しさのみを取り出すために,カードを並べることでプログラム言語を記述する代わりとすることを試みた.更にフローチャートとあみだくじの類似性を利用して,遊びながらプログラミングの学習ができるカードゲームを開発した.
著者
木原 俊行 島田 希 寺嶋 浩介
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.167-179, 2015

本研究は,学校における実践研究の発展要因の構造に関するモデルを開発することを目的とするものである.そのために,4つの小中学校を対象として,研究推進リーダーを務めた教師に,実践研究の詳細について,聞き取り調査を実施した.得られたデータを,「専門的な学習共同体」の発展要因に関する先行知見を参照して整理し,また4校間で比較して,学校における実践研究の発展を促す要因の構造を暫定的にモデル化した.次いで,モデルの信頼性を検証するために,あらたに別の3つの小学校を対象として,研究推進リーダーを務めた教師に,同様の聞き取り調査を実施した.得られたデータを,再度「専門的な学習共同体」の発展に関する知見を用いて分析し,3校間で比較して共通項を導き出した.そして,それらとモデルの整合性を分析して,その信頼性を確認した.また,一部の要因を加えて,要因間の順序性や関係性を考慮し,モデルを精緻化した.
著者
宮田 明子 山本 朋弘 堀田 龍也 伊藤 三佐子 片山 淳一 鈴木 広則
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.49-52, 2016

校務支援システムを導入した小・中学校の教員を対象に,校務支援システムの運用前・1年後・2年後の3回において質問紙調査を実施し,校務の状況に関する教員の意識および校務支援システムの機能の必要性についての経年比較を行った.その結果,校務支援システムの運用前と比較して1年後・2年後に,教員は校務の状況が改善されたと感じること,校務支援システムの機能の必要性を高く感じることが示された.また,校務支援システムの利用年数が1年目の教員と比較して2年目以降の教員は,児童生徒の状況把握や帳票印刷の機能に対して,より高く必要性を感じていることが示された.
著者
近藤 智嗣 芝崎 順司 有田 寛之 真鍋 真 稲葉 利江子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.45-48, 2006
被引用文献数
8

本研究の目的は,ミクストリアリティ(MR)技術を博物館の展示に応用し,1)MR型展示システムと 2)推定支援型展示手法を提案することであった.本研究では,国立科学博物館新館の恐竜コーナーを研究事例の対象としたシステムを開発した.このシステムは,MR型展示の機能として,生体復元された恐竜の3DCGを化石骨格標本に合成させて提示でき,また,そのコンテントは恐竜の解説だけでなく,推定支援型展示の機能として,重さや皮膚の模様などを推定しながら見学するという内容であった.評価調査の結果,3DCGの安定性については問題点が指摘されたが,これらの展示手法については高い評価が得られた.
著者
吉岡 敦子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.115-123, 2007
被引用文献数
2

インターネット情報検索は,検索テーマに関する既有知識と検索したサイトから得られる知識を体系化させながら検索を進めていくことから,本研究では,インターネット情報検索を知識構築過程と捉えて,知識構築を促すメタ認知とメタ認知活性化のための支援の効果について,特徴的な事例を挙げて質的に検討した.その結果から,「検索テーマについての既有知識や検索経験を検索のリソースにするためのメタ認知」と「サイトの文書から有効な情報を得て検索のリソースにするためのメタ認知」が有効なことが明らかになった.求める情報を得ることができた検索者は,これらのメタ認知を促して確認したり理解するなどの認知活動を行っている一方,求める情報を得ることができなかった検索者は,メタ認知を活性化できないために判断できず迷っていることが示唆された.また,これらのメタ認知を促す支援を与えることの有効性も示唆された.今後の課題として,検討した事例数が少ないことから,量的なデータにもとづいた分析を行うことと,本研究で与えた支援だけでは効果がみられなかった検索者に対する支援方法について解明することが挙げられる.
著者
伊藤 清美 柳沢 昌義 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.491-500, 2006
被引用文献数
7

eラーニングやコンピュータを使う授業などでは,Web教材を使った学習が使われている.しかし,それらの教材は主に学習者のディスプレイ上に表示されるため,教科書や印刷教材のように自由に書き込みを行うことができない.本研究では,学習者が印刷された教材に書き込むのと同様にWeb教材に書き込めるシステム,WebMemoを実現した.学習者はWeb教材にメモ・蛍光ペン・図などを自由に書き込み・保存・閲覧することができる.Webページに描画されたデータはシステム内のデータベースに保存され,次回参照時にも表示される.大学生を被験者とし,実際の授業で3種類の評価実験を行った.その結果,紙と同様にWeb教材に直接書込むことの有用性が評価され,Webへ書き込んだ内容を見直すことによる学習効果があることが明らかになった.また,紙への書き込みと比較した結果,直線,囲みなどといったインタフェースの改良の必要性が示された.
著者
高橋 純 高坂 貴宏 前田 喜和 森谷 和浩 堀田 龍也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.317-327, 2014

韓国の公立小学校の1人1台の情報端末の導入初期段階において,1名の教員の3時間分の算数科の授業を対象に,活用されたICTの種類や時間,授業過程や授業形態の特徴の検討を行った.その結果,1)教員は,93%の授業時間でICTを活用しており,最も活用時間の長いハードウェアは大型提示装置であり,ソフトウェアは授業支援システム(81%)であった.2)教員が授業支援システムで最も活用した機能は,ペン描画と児童のデジタルノート一覧と提示であり,限られた機能が多用されていた.3)児童は,57%の授業時間でタブレットPCのみを活用しており,最も活用時間の長いソフトウェアは授業支援システム(90%)であった.4)授業過程は,導入,展開,まとめといった我が国でも典型的にみられるものであった.展開では2〜4回の課題解決学習が繰り返し行われていた.5)授業形態では,一斉指導が最も長く(58%),次いで個別学習(29%)であった.
著者
森田 英嗣
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-13, 1994-09-20
被引用文献数
6

多桁減算の領域を対象にして,学習者が他者の犯す誤りから学ぶことを目指すコンピュータ利用の学習環境を設計した.この環境は,デバッギングの機会を保障するために,コンピュータにバグをもつ学び手の役割を担わせ,教え手としての学習者がコンピュータの演示する誤りを指摘・修正するという活動を導くものである.83名の小学二年生にグループ活動として適用した評価研究の結果,次のことが示唆された.すなわち,(1)システムとの型通りの形式的な相互作用だけでは効果が導かれない.(2)誤りを導く意図的な問題作成をなすこと,誤りの指摘・修正活動を通して誤った手続きの対象化をなすことが,効果を生む要因である.(3)活動の文脈がシステムの効果を決定する重要な要因になっている.(4)グループが協同的でない時は成員間に効果の差異が生じる,等が明らかにされた.最後に,環境改善のポイントが検討された.
著者
安斎 勇樹 益川 弘如 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.287-297, 2013

本研究の目的は,協同制作を課題とした大学生向けのワークショップにおいて,創発的コラボレーションを促すプログラムの活動構成の指針を示すことである.本研究では,ジグソーメソッドと類推の効果を組み合わせた「アナロジカル・ジグソーメソッド」という活動構成を仮説として設定した.アナロジカル・ジグソーメソッドのほかに,ジグソーメソッドと類推の有無によって合計4群の活動構成を設定し,それぞれ2回(各6-7グループ)の実践を行い,各グループの制作プロセスを質的に分析した.その結果,アナロジカル・ジグソーメソッドによって活動を構成すると,創発的コラボレーションが促されることが示唆されたほか,視点の相違から類推が活用され,さらにそれが異なる視点から再解釈されたり,複数の概念を結びつけたりする可能性が示された.
著者
向後 千春 岸 学
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.161-166, 1996-12-20
被引用文献数
3

映像と文字情報の提示についてのデザイン原則への示唆を得ることを目的として,外国映画の字幕つきビデオを視聴するときの眼球運動を分析した.実験材料として,字幕版のビデオ,「JFK」と「マルコムX」を用いた.それぞれから5分間程度のシーン4つを選び,編集したものを,アイマークカメラを装着した被験者に視聴してもらい,そのときの眼球運動を記録した.1行6文字,1行13文字,2行13文字,2行20文字の4種類の字幕パターンに注目し,それぞれにおいて,眼球運動を,字幕への反応時間,先頭への移動時間,実質的な読み時間,(2行字幕の場合)改行時間,に分解し詳細に調べた.その結果,字数が増えれば増えるほど文字あたりにかかる時間が長くなり,そこでは行数の要因と文字数の要因とが効いていることが明らかにされた.
著者
足立 隆弘 山田 玲子 山田 恒夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.93-101, 2006

外国語の聞き取りや発音の学習教材では,数多くの音声サンプルを学習者に呈示する.その際,さまざまな通信速度に適応したり,限られた容量に多くの音声サンプルを格納したりするために,音声を圧縮して使用する場合が多い.しかし,音声のききとりや発音の学習では,圧縮による音質低下が学習効果に影響を及ぼす可能性がある.本論文では,日本語母語話者にとって聞き取りが困難な英語音声を対象に,それらを圧縮することにより明瞭性がどのように変化するかを,現在一般に広く使用されている音声圧縮形式を対象として検討した.その結果,音韻の種類によって明瞭性が低下する圧縮形式が存在し,同音声形式の音声を用いて聞き取り訓練を行った場合,その訓練効果が圧縮前の原音声の聴取能力に般化しにくい場合があることが明らかとなった.この結果から,CALL教材で使用する音声は,明瞭性が高いものを使用することが望ましいことが示唆された.
著者
内田 君子 大矢 芳彦
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.49-52, 2011

大学の情報教育において,ペアによる課題解決時に生起する問題点を検討する目的で,情報基礎演習科目受講者約280名を対象に,15分間の文書処理検定試験問題に準拠した実技試験を個人とペアで2回行った.その結果,双方ともペア試験成績が個人試験成績を下回った(EP(-))ペアは全体の約21%認められた.これらのペアは,発話量が相対的に少なく,ペア内の基礎学力差が大きいことや,ペアよりも単独解決を支持するなどの特徴が見られた.また,問題別のペア効果値(EPQ値)から判断すると,正答率が低い試験においてペア効果が時系列的に下降傾向を示すことも明らかとなった.
著者
古川 雅子 柳沼 良知 山田 恒夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.161-164, 2005
被引用文献数
2

本研究では, 学習者特性に応じた映像教材の効果的な提示方法を明らかにするため, 学習者にマルチアングル映像を呈示した場合の「気づき」の内容や再生箇所や注視箇所が, 社会文化的背景など学習者特性によって差異があるかどうかを検討した.マルチアングル映像に対応した観察ツールの開発を行うとともに, 面接映像を観察者21名に視聴させ評価実験を行なった.その結果, 日本人学生は映像の非言語情報に着目しがちであるなど, 観察者の属性によって映像の観察傾向が異なることが明らかになった.
著者
三浦 元喜 杉原 太郎 國藤 進
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.279-287, 2010
参考文献数
15
被引用文献数
1

本稿では,一般教室における無線デジタルペンを利用した授業システムを,日常的な運用を可能とするために行った2つの改良について述べる.まず我々が構築してきた超音波方式ペンとPDAによるシステムの操作と準備作業を軽減するため,近年利用されているアノト方式によるデジタルペンを利用可能とし,両システムを比較した.その結果,後者のシステムによる簡便性および誤差の減少が,理解度の低い生徒の積極的参加を阻害せず,またシステムが筆記をチェックすることに対する,理解度の高い生徒の緊張感を緩和することを確認した.次にアノト方式デジタルペンを用いた授業実践時に,ペンIDと受講者,およびその座席の対応関係を管理する際の教師負担を軽減する「筆席マップ方式」を提案し,システムに導入した.小学校における実践を通じて,筆席マップ方式の可用性と有効性を確認した.
著者
瀬戸崎 典夫 吉冨 諒 岩崎 勤 全 炳徳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.85-88, 2016

本研究は,遠隔地での学習者に長崎にいるような実感を与え,主体的な学習を促す次世代型平和教育教材の開発を目的とした.そこで,全天球パノラマVR教材を開発し,教育的利用の観点から評価した.その結果,臨場感の高さや印象の強さなどの理由から,実感を高める教材としての有用性が示された.実感を与える効果については,地理的な情報把握や,原爆投下を自分とは切り離した事象として捉える学習者にとって有用であることが示唆された.さらに,本教材のインタフェースが主体的な学習を促す一助となり得ることが示された.一方,コンテンツの充実や発達段階を考慮した授業設計の考案など,改善すべき点が明らかになった.
著者
UENO Maomi
出版者
日本教育工学会
雑誌
Educational technology research (ISSN:03877434)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.59-69, 2005-09
被引用文献数
3

This paper proposes a design of Web based Computerized Testing System(WCTS) for distance education. The system is consistently designed to unify the functions of CATC(Computer Assisted Test Construction), CBT(Computer Based Testing) and CADA(Computer Assisted Data Analysis). The unique features of this system are addressed in the CATC and the CADA as follows : 1. The CATC assists teachers' shared use of item database, a cooperative construction of a distance test by teachers of different schools, and an interactive construction of a test. 2. The CATC has a test score distribution prediction function using past item statistics data in Item Data-Base. These functions show to the teachers the predicted score distribution during they are constructing a test. These functions are expected to assist the teachers' collaborative test construction. 3. The CADA assists an automated process of data input through test execution, marking, analysis and immediate feed-backs to the teachers, students, and the system. Especially, it is an unique feature to analyze the newly gathered data like the number of times which an student changed his/her answer to an item. Furthermore, this paper demonstrates some performances of this system for evaluating distance education between Japan and Thailand.